私が十六夜咲夜であるために   作:pumpkin

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改めて、弾幕勝負は成立しないと宣言させて頂きます。

前回に加え今回の話は予告していたことや、予想しやすい展開であった為、
なんとか変化を付けられればと、しばらく唸ってました。


EP6.月夜の独白

 ――――咲夜が使いを頼まれた日よりも前の前日。

 

 紅魔館の主、レミリア・スカーレットが起床するのは決まっていつも昼前時だ。

 何も惰眠を貪っているわけではない。種族柄、我々は日が沈んでから活動する。

 むしろ日が昇っているうちから起き始める私は異端の部類だ。

 

 レミリアが起きると、ちょうど五分後に咲夜がドアをノックする音が聞こえる。

 朝食をテーブルに並べて、その隣に咲夜特製の紅茶を置く。

 咲夜特製とは文字通りの意味、血液入りだ。

 我々吸血鬼という種族はその名の通り、人間など動物の血を吸って糧とする妖怪だ。

 私は、小食の部類だがそれでも数日摂取を怠ると身体に偏重を来たす。

 幻想郷に来てからは、とある事情でスキマ妖怪から望まぬクソ不味い血を献上させていたが、

 咲夜が我が館に来てからはそんな妥協した生活とはおさらばだ。

 

 咲夜の血は美味しい。

 それも私の好みとすこぶる相性が良い。

 もはや咲夜なしでは生活できない。なんて罪な子なのかしら。

 カップを持ち上げ、ひとしきり香りを楽しんだ後、ゆっくりと口に含みながら味わう。

 

「ふふ、最高ね」

「光栄でございます。お嬢様」

 

 咲夜がどこか誇らしげに一礼し、答える。

 あぁやはり貴方は最高だわ。

 

 咲夜を拾ってから、まだまだ間もない。

 人間にとっては短くない時間なのだろうが、

 私にはとってはせいぜい一晩寝むった程度の感覚でしかない。

 

 人間は、寿命が短い変わりに恐ろしく成熟するのが早い種族だ。

 だが、咲夜の見た目はせいぜい十才程度、まだまだ未熟ね。

 私の前で見栄を張っているのか、今も表情を変えず静かに佇んでいるが、

 本当の咲夜はもっと落ち着きが無く、愉快な一面を持つのだ。

 きっと私にはバレてないと思っている。そんなところもまた可愛いじゃないか。

 願わくばどうかそのままであってと真摯に願うばかりだわ。

 

「咲夜、食事はもういいわ。下げなさい」

「かしこまりました、お嬢様」

 

 そんな時だった。

 咲夜がテーブルの食器を片付ける為私に近づいたとき、

 私の能力が、やがてくるとてつもない運命を啓示する。

 

「…………っ!」

「いかがなさいました、お嬢様?」

「…………なんでもない。パチェの所に行く用を思い出しただけよ。あとはまかせたわ」

「はい、お嬢様」

 

 ここしばらくは、これほど鮮明に運命を視ることも無く、

 あっても、つまらない些事ばかりだったが今回は無視できない。

 私の本能が目を逸らすなと言っている。

 さっそくパチェに協力してもらいましょう。忙しくなるな……。

 咲夜の。そして紅魔館の命運を決めるべく決断をする為、図書館へと急いだ。

 

 

「それで? 大事な読書時間を邪魔をしにやってきて相応の理由があるんでしょう?」

「四六時中読んでる奴が何を言う。…………咲夜の運命が見えたわ」

「そう。咲夜の」

 ずっと本に目を向けたままだったパチュリー・ノーレッジは、その時初めて顔をあげてレミリアを見た。

「それだけじゃない、全ては一筋の線のように繋がってる。紅魔館全体の問題でもあるわ」

「へぇ。詳しく話して」

「それが――――」

 

 この先咲夜の身に起こる事。その先に続く運命の事。

 

 ――――少女説明中。

 

「止めても無駄ね」

「やるわ。今回はさすがの私でも絶対なんて言えない。それでもやり遂げてみせる。

 パチェ、咲夜が来る時に張った罠、ヤツラに破られてはいないか?」

 

 こうなっては、どんな説得も時間を無駄に費やすだけだ。

 パチュリーは伊達にこの吸血鬼の姫君と何百年も親友をしていない。

 出会った時からずっと、レミリアが己の信念を捻じ曲げられた所を私は知らない。

 後悔するとすれば、それはいつも己の下した決断の結果だけだ。

 だから、自分も親友の為に力を貸さんと言葉を紡ぐ。

 

「心配無用よ。最初は何度か斥候を出したり、自らやってきたりしたこともあったけど問題ない。

 保障する。誰にも破られたことは無いわ」

「よし。では我が館が誇るメイド長を紹介してやるとするか」

「美鈴……の事じゃないわね。咲夜は未だメイド見習いじゃなかった?」

「細かいわね、パチェ。

 私が言う以上決まっているのよ。たいした問題じゃないわ」

 

 言うが早いか。どの道私が決めたのだ。その結果に変わりはない。

 今回はどんなことをしてでもしくじれない。

 私の愛しい愛しい家族を救う為、咲夜、…………そしてフラン。

 

 会話もひと段落を見せ、二人の間に沈黙が流れた時、

 ノックの音が響き咲夜があらわれたので、その後何事もなかった様にティータイムを楽しんだ。

 

 

 ――――場面は変わって翌日の昼過ぎ頃。

 

 

 八雲紫はスキマの中から、こっそりと様子を伺っていた。

 

(あれほど幾重にも張り巡らされた罠が全て取り払われている。来いと言う事ね)

 

 吸血鬼異変以降、八雲と紅魔館のやり取りは極力最小限で行われていた。

 表向きには、幻想郷の管理者自らが当時侵略してきた吸血鬼の連中の大半を屠り、

 残った者は結界で封じ込めていると伝わっているが概ね間違っていない。

 

 正確には当時予想される侵略規模が広範囲に及ぶと判断した為、

 何人かに協力を要請した。その為侵略者を迎え撃ったのは八雲だけではないが、

 当時の首謀者を直接討ち取ったのは八雲紫本人である。

 

 紅魔館の連中は、一時的にこちらで拘束し、主導権を八雲が握っているとはいえ、

 連中が本気になれば少ないながら相応の対処が必要になる。

 あえて手を煩わされる必要もなく当時さほどメリット見出せなかったので、

 極力接触は控え単なる施すものと施されるものの関係でしかない。

 何より連中が得たいの知れない(スキマ妖怪)の事を嫌っている。

 

 そんなヤツらがわざわざ”秘蔵っ子”を紹介しに一人で寄越したのだ。

 いったいどんな用件かしらね。

 

 交渉事において、時として情報は命よりも大事である。自らの手のうちをわざわざさらすのは愚の極みでしかない。

 それでもあえて手を見せる場合はその裏には隠された莫大な利があり、またさらに次なる手が用意されていてもおかしくないのが交渉事の常である。

 

(お手並み拝見と行きましょう)

 

 紫は心の中でそっと笑った。

 

 

 ――――紅魔館、レミリア・スカーレットの自室。

 

「お招き頂き光栄ですわ。レミリア・スカーレット。レミリアとお呼びしても?」

「止めろ、虫唾が走る。もう一度呼んだらその首を食い千切ってやるぞ」

「あらあら、怖い怖い」

 

 剣呑な空気に場が凍る。

 そんな空気を割くように第三者の声が響いた。

 

「くだらないおふざけはやめて。

 時間は有言よ。レミィ、遊んでないで早く初めて」

 

 レミリア嬢が抗議する仕草を見せるが、諦めて本題に入ろうとする。

 レミリア嬢とは違い彼女は合理主義者ね。

 

管理された世界(幻想郷) 、少々ぬるくないか?」

「あら、やんちゃしにきて、その 世界(幻想郷) に痛い目にあったのはどこの誰だったかしら?」

 

 図星を突かれたレミリア嬢が苦虫を噛み潰した顔で答える。

 

「確かに。他のヤツラがどうであれ、私達は安住の地を求めてこの地にやってきた。そして戦って負けた。そのことに遺恨などないさ。

 だがそろそろこの生ぬるい生活にも、世界にも飽きた。あれからもうずいぶんと経っただろう?」

「つまり?」

「進化を止めた先に残るのは停滞ではなく退化だ。

 既に少しでも力のある物なら無意識に感じているだろう。気づくのも時間の問題だ」

「っ! ならあなたはどうするべきだというのかしら?」

「腹黒い貴様のことだ、幻想郷に着て間もない私が気づいたんだ。

 とっくに何か考えているんだろう?」

「なにが言いたいのかしら」

「悪巧みは貴様の専売特許だろう? それに私も一枚かませろ」

「…………」

 

 紫はぶしつけな提案に対してしばし考え込むフリをする。

 要約すると、私に協力するかわりに紅魔館の解放と幻想郷の地位の確保。

 同席している魔法使いの方に視線を向けるが、我関せずと言った様だ。レミリア嬢に任せているのだろう。

 

 話の筋は通っている。でも、本当の目的はしゃべってないわね。

 

「まぁ、いいでしょう。

 ちょうどお相手を探していたところですの。

 すぐにとは行きませんがぜひお相手して頂けるかしら?」

「気色悪い、そのもったいぶった言い方を止めろ」

「あら、お互い様ですことよ。うふふ」

「ハハハ、前言撤回だ。少しはユーモアがあるなキサマ」

 

 少し侮り過ぎたかしら。

 初めて会った時は、ただの担がれただけの哀れな小娘だと思っていたけど、

 存外頭もキレるようね。それに他者を惹きつける力も見過ごせないわ。

 既に熟しつつある器量、その高慢ささえも王たる者の資質に値する。

 

 ――――少女説明中。

 

「同時に起こす異変は一つ。

 もしも複数が重なった場合はより大きな異変を第一とする。

 異変を起こした側は自らが立てた敗北条件が満たされたとき、無条件に敗北を受け入れる事とします」

 

 無秩序ほど醜いものはない。何事にも最低限のルールは必要だ。

 

「なるほど、つまり決まりさえ守れば誰でも自由に異変を起こしやすくするというわけだな。

 だが、一つ提案がある」

「なにかしら?」

「いるんだろう? 貴様の”秘蔵っ子”を、私に相手をさせろ」

「っ! どこでそれを。……いえ、貴方には視える(・・・)のでしたわね」

「あぁ、望むならその後も手助けしてやってやろうか? 高くつく(・・・・)がな」

「ありがたい申し出ですけど、一度で結構ですわ。あいにく人材には困ってませんの」

 

 話がスムーズに進むと思っていたけど、さすがにそんなに旨くは行かないわね。

 勝敗の保証された相手なら、今の巫女にすぐにでも始めてもらうつもりだったけど。

 

「それなら、しばし時間を頂きますわ。いくらあの子でも早すぎますもの」

 

 

 

 その後、

 八雲紫は「その時が来たら、知らせます」と言ってスキマの中へと消えて行った。

 

 

 私は無事戻ってきた咲夜に労いの言葉を掛け、メイド長であることを告げてやった。

 咲夜は慌てて、問い返してきたが忙しいと告げて、半ば強制的に退室させた。

 嘘ではない。これからは小さなミスも許されない。打たねばならぬべき手はいくらでもあるのだ。

 

 

 

 

 だがこれで、計画の第一段階は成った。

 

 運命が視えるからといって、思い通りに出来るとは限らない。

 そんなものは敗北者のセリフだ。

 

 私は運命を操る。従わぬ運命もねじ伏せてみせるさ。

 今宵は満月だ、最高に気分が良い。今ならあのスキマ妖怪も片手で捻り潰してくれよう。

 

 

 朧月が照らす月光の下、月に手を伸ばし、独白する。

 

「時は来た! 私は全てを手に入れてみせる!!

 

 咲夜が救う、フランを破滅から救う運命を!

 

 フランが救う、咲夜を破滅から救う運命を!!

 

 運命は、私のものだ!!」




その結果、レミリアが遅すぎる中二病にかかりました。

すいません、酔った勢いで書きました。
後日直すかもしれません。


※16/04/04 全話改訂しました。
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