ガールズ&ユンゲ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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エキシビションⅠ

 

「シッッ――」

 

「吶喊……!」

 

「ハーハハーーハハハ―――ハハハハハハハハ――――ッッ!」

 

 遠く、砲撃音が響く森の中三者三様に呼気と哄笑がある。

 足の踏み場すらおぼつかない、常人ならば平地通りに歩くことすら難しいほどに木々が生い茂り、木の根が隆起している。

 白虎と刃客、そして蛮族。

 

「フッ―――」

 

 短い呼気と共に木々を蹴りながら白いバトルスーツに身を包んだ白虎が何度も瞬発する。縦横無尽、三次元的に高低を生み出しながら蛮族へと疾駆し、

 

「――!」

 

「っとぉ!?」

 

 蛮族の脇を駆け抜けると共に逆手持ちのククリ――刀身が内側に歪曲したナイフ――で切りつける。蛮族もまた特殊カーボンで作られたインナースーツから同素材真紅のジャケットを重ねているから肉体そのものへのダメージは少ない。

 だがそのダメージはそれぞれのスーツに備え付けられたセンサーによりダメージは記録される。

 故に積み重ねることに意味がある。

 

「おらぁ!」

 

 無論、それも蛮族を理解しているのだからそのまま捨て置くはずもない。

 蛮族の選択は単純だ。懐の白虎から視線は外さず、しかしその手は彼ではなく届く範囲にあった木だ。手の届く範囲にあった木を両手で鷲掴みにして、

 

「だらおらぁ!」

 

 即席の棍棒として振り回す。

 当然ながら棍棒として使った木と周囲の木々とが激突し、轟音を立てながら折れて砕けていく。細かい狙いを付けない暴虐は、乱雑極まりないがしかし危険性が高いことに変わりない。

 何より懐に忍び込まれて鬱陶しくて仕方がない。

 その思考を白虎は理解していた。暴虐の嵐が吹き荒れる直前、彼は脱出を選択していた。

 ククリ刀を暴嵐圏外の木の枝に投擲し――柄から繋がるワイヤーが枝に括り付けられ、瞬発すると共にワイヤーを引き寄せながら跳躍、蛮族の暴嵐から脱出して枝に着地しつつ、

 

「――行け、神風丸」

 

「承知……!」

 

 白虎が離脱した嵐に刃兵が突き進む。

 踏み込みと共に全身を駆動させ、右手に握った一刀を迅風を纏わせながら叩き込む。

 

「死ね!」

 

「こいつの殺意どうにかしろ!」

 

 カーボンスーツがあるから死ぬことはまずないが、しかし怪我がないわけではない。

 刃兵の刺突はスーツやジャケットの上からでも怪我になるだろう。一撃を目前にした蛮族は手にしていた即席棍棒――暴嵐を作ったせいで手に残るのは最初の四分の一程度の長さ――を刃兵へと投げつける。

 

「吶喊……!」

 

 が、しかし刃兵は気にも留めない。

 刺突は完成された一連の動きであり、少しの妨害では止まることはない。

 必殺の一撃は蛮族へとぶち込まれ、

 

「カチュゥゥシャ様ぺろぺろぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「--っ!」

 

「お――せぇ!」

 

 一瞬が連続する。

 まず刺突が着弾する直前に空から迷彩柄のコンバットスーツの変態が奇声を発しながら、降ってくる。どこからか射出されたのか知らないが、しかし的確に蛮族へと落ちてきて、

 

「武器ゲェェェェット!」

 

「へぶっ!?」

 

 着地するよりも早く蛮族が変態の足を鷲掴みし、

 

「おらぁ!」

 

「ぬぅ……!?」

 

 刃兵へと薙ぎ払う。

 流石にこれ堪らなかった。攻撃はキャンセルされる。どう考えても変態にもダメージが行っているはずだが奇声を発していただけで済んでいる当たり変態の耐久力が伺える。

 それにしても変態が現れた。

 そして耳をすませば――森の外、ゴルフ場から聞こえてくる砲撃音の量が増えている。そう考えた時に耳にノイズ音が届き、

 

『――こちらあんこう、今通信大丈夫ですか?」

 

『こちら()()()()。大丈夫だ、そっちはどうだ武部』

 

『はい、ゴルフ場で聖グロとプラウダに挟撃されました。大洗は全車無事ですが、知波単は残り二台まで減ってしまったのでルートFで市街地へと向かいます。とらさんもこっちに合流してください』

 

『了解、こちらも合流する。ルートFならF,3地点で』

 

『お願いします!』

 

「あぁ」

 

 短く返しつつ、無線から意識を外す。

 

「――神風丸! 一端退くぞ!」

 

「ぬぅ……ぬぅっ……致し方なし……っ!」

 

 吶喊したいと全身全霊で叫んでいるが、神風丸も無線で西と連絡を取って現状を知ったのだろう。ゴルフ場に聖グロを追い詰めていたらしいのにどうやったらそこまで削られるのか。またぞろ吶喊したんだろうと白虎は嘆息する。

 

「あぁん!? 直てめぇ逃げるのかぁ!? させねーぞぉ!? 今俺の手には変態を武器にした棍棒――略して変態棒があるんだからなぁ!」

 

「その略は止めろ」

 

「うごご……」

 

 しかして実際に変態装備の蛮族がいては逃亡は難しい。

 だから白虎が狙ったのは蛮族ではなく――周囲の木々だ。

 

「何にしても――」

 

 ワイヤーナイフを投擲し、木や枝に絡みつける。一本や二本ではない。腰の布巻き――ナイフホルダーから次々と取り出し網のように張り巡らせ、

 

「行かせてもらう」

 

 枝から飛び降りながら思い切り引き寄せ、倒木を起こす。

 それにより蛮族たちの視界を潰す。

 頭上に降ってきた木々に埋もれながらも、力任せにどかせば、

 

「どわぁっぷ!? 小賢しいぞぉ……って、あれ」

 

 既に白虎と刃兵の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中を声もなく駆け抜ける。

 地面を走るというよりは木々の隙間、枝と枝を足場にして飛び跳ねる曲芸染みた疾走だ。枝に接している時間はコンマ数秒に見たないほどの速度であり、常人から見れば白虎の姿は白い影程度にしか見えないだろう。

 後方、数メートルを遅れて刃兵がやっとの思いで着いて来ているが速度を緩める気もなかった。

 そのまま数分間枝葉を跳び続け、

 

「――」

 

 唐突に森は終わり、舗装された道へ着地する。。

 街路樹が並ぶ中、さらに視線をズラせば―――並んで行進する戦車十台程の姿が。

 それなりの速度が出ているので普通に追いかけるのは手間だから、再びククリ刀を街路樹に投擲し、ワイヤーを巻きつけて固定。引き上げながら飛び上がり森のそれに比べると確りした枝に着地し、先ほどと同じように木々を駆け抜ける。

 向かった先はこげ茶色のカラーにあんこうを模したパーソナルマークの車体だ。

 それが見えた瞬間に無線から通信が入る。

 

『とらさん? もうすぐF,3地点通過しますけど今どこに――』

 

「もう着いた」

 

 返答と共に木から飛び降り、 

 

「――待たせたな」

 

「わっ!」

 

 ()()()という軽い音と共にあんこうの車体に着地する。

 

「……驚かせたか?」

 

「……少しだけ」

 

 苦笑気味に西住みほは日向直へと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、状況は良いとは言えないか」

 

「そうだね、少し押され気味なのは確かかな。流石ダージリンさんとカチューシャさんだよ」

 

 車体に腰かけ、キューポラから頭を出したみほと視線を合わせる。

 戦車道全国大会における大洗学園優勝から数週間――この日はそれを祝うエキシビションマッチが行われていた。

 大洗・知波単連合対聖グロ・プラウダ連合。

 大洗を舞台にしてこの四校が戦車道による試合を行っている。話によれば最初は大洗学園側は継続に依頼していたらしいが断られて知波単に役目が回ってきたのである。

 話が転がったのはそこからだ。

 知波単には全国大会出場校では唯一歩兵道科がある学校だ。それにより最早階段に近い領域で各学園に聖グロの蛮族モンスタージャバウォック、さらに全国大会決勝にてカチューシャの椅子になっていた変態パヴロフに白羽の矢が立った。

 ここ最近戦車道と歩兵道の合同試合は社会人チームや大学生チームでは行われており、四校中三校に歩兵道に参加できる生徒がいることから戦車歩兵道の合同試合が持ちあがり、

 

「そもそも直くんが受けてくれなかったらこうならなかったんだよね」

 

 歩兵道試合に参加できる生徒のいない大洗であるが――みほとの繋がりとジャバウォック、パヴロフ、神風丸を通して直の存在が伝わり、彼を大洗の歩兵としてエキシビションマッチが構成されたのだ。

 あくまで戦車道がメインであり、また歩兵数に限りがあるので各校から一人づつという変則合同試合。

 外連味がありすぎると直は考えるが、しかし大洗の優勝を祝うエキシビションマッチだ。

 そのくらいの遊びがあってもいいだろう。

 何より、

 

「みほの頼みだ。俺が断る理由がない」

 

「……えへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんぐっぎ……!」

 

「おい落ち着け装填主」

 

「うらやましぃ……っ、うらやまじずぎる……! 私も……私だっで……!」

 

「相手いないから不可能ですわね」

 

 

 

 

 

 

「……でも、コードネームだけど……本当にとらさんなんかでよかったの?」

 

「えーなんで? 可愛いじゃん!」

 

「いや可愛いけど……直君ぽくないっていうか」

 

「やはり自分の考えた奴の方がよかったでありますよぉ」

 

「えー? なんか物々しくない?」

 

 とらさん――それが現在大洗での直のコードネームだった。

 大洗では動物を模したパーソナルマークとチームネームがあるが仮にも戦列に加わるということで彼にそのような名前を受けていた。

 確かに基本的に無表情か、見方によっては仏頂面で愛想のない直には似合わないのは確かだ。彼自身、正直どうかと思ったが、

 

「みほはとらは嫌いか?」

 

「え? そんなことないけど」

 

「なら、それでいいさ」

 

「ふんごごごごっ!」

 

「こいつら憤死するんじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャプテンキャプテン、意外に日向さんノリいいですよね」

 

「確かに。祝勝会で宴会した時も一人でノリノリでキレキレダンス披露してたし」

 

「つまり――根性だ!」

 

「違うと思いますけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何にしても、もうすぐ市街地だ。どうするつもりだ?」

 

「予定通り、一度ばらけて確固撃破。その後はお互いの状況次第かな。分断作戦に乗ってくれれば大分やりやすいんだけど……」

 

「ダージリンは()()()()()。気を付けろ」

 

「うん。直君はどう?」

 

「……思いのほか面倒だな」

 

 ぼやきの理由はエキシビションマッチに於けるルール故だった。

 今回は戦車歩兵合同試合であるが、あくまでも主役は戦車だ。試合の準備も戦車道のそれが基本とされている。その場合、何が違うかというと、

 

「戦闘区域が限定されるのはやりにくい」

 

 映像の関係のせいで歩兵の戦闘区域が定められているのだ。試合の光景は街の各地に設置されたカメラや上空撮影で観客席の巨大スクリーンに送られるのだが、当然ながら戦車道に比べると歩兵道はスケールが小さい。或は、室内や閉所での戦闘が多くなる。そうすると撮影が大変だということで歩兵の戦闘可能区域というのは決められていて、それ以外ではセンサーへのダメージが記録されず行動不能にもできない。

 ナイフとワイヤーという武器の性質上、閉所や森のように障害物が入り組んだ場所の方がやりやすい直としては面倒なルールだ。

 或はそれ以上に、

 

「ジャバウォックとパヴロフってのがな」

 

 多分卒院組で一番相手にするのが面倒なコンビだ。

 異常なまでにしぶといパヴロフと歩く暴力であるジャバウォック――――変態棒(パヴロフ)装備の蛮族《ジャバウォック》とか目にも悪い。

 しかし倒さなければならない相手だ。

 パヴロフはともかく、ジャバウォックは単体で戦車を打倒しうる。

 フラッグ戦故にフラッグ車であるあんこう(みほ)を倒される危険性はある為になんとしても斃さねばならない。

 

「大丈夫、直君?」

 

「そこは腕と戦術の見せどころだな。それに」

 

「それに?」

 

「みほに勝星を送るのも悪くない」

 

 

 

 




婚活戦士ゼクシィ武部&アンコウニンジャサン
「■■■■■■ーー!」


三人称にしたり若干感じ変えつつ劇場版。

直=とらさん
別に戦う度に対価ダンス必要なわけではない
武器は小さめのククリ刀にワイヤー。

みほ
いちゃいちゃらぶらぶ

婚活戦士ゼクシィ武部
うらやましくて憤死しそう

アンコウニンジャサン
リトルボォォォォイ!

神風丸
地味に置いて行かれた

西さん
「出番は……?」

ジャバウォック
今日も元気に蛮族ライフ

パブロフ
変態棒

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