ガールズ&ユンゲ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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フュンフ

「Nice to meet you! 話は聞いてるわよ、ナオ!」

 

「……うむ、宜しく頼む」

 

 トレーニングルームを離れ、シャワーを浴びて着慣れた白いパーカーをサンダースの制服の上から着る。その後ヒロに連れられて会ったのは眩しいくらいの笑顔を浮かべた金髪碧眼の少女だった。

 サンダース大学付属高校戦車道隊長ケイ。

 名前や容姿の簡単な噂は聞いていたが、噂以上に活力あふれるらしい。

 

「ヒロのFriendは皆Personality溢れてるけれど、貴方がしっかりしてるってのは聞いてるわ! サンダースにしばらくいるのよね? Enjoyしてって!」

 

「……隊長、いきなり突っ込み過ぎてこの人困ってるぽいですよ」

 

「うちの隊長にそんなこと言っても無駄でしょう」

 

 広い部屋に四つのベッド、四つの机。大型の液晶テレビやパソコンもあれば大きな冷蔵庫、ウォーターサーバーまである。流石は全国有数のお金持ち高校だ。寮の部屋一つ見ても黒森峰よりよっぽど設備が整っている。本来四人用の部屋を三人で使っているのだろう。四つの内ベッドと机の一つずつは物置場として使われているようだ。

 ケイと一緒に部屋を使っているらしい少女が二人。

 短い茶のツインテールとそばかすのアリサと銀のベリーショートの鋭利なイメージを持つナオミ。この二人がケイのルームメイトでそれぞれサンダース戦車道の副隊長らしい。少し部屋を見回せば戦車のポスターや模型があるのは戦車道受講者らしい。

 しかし仮にも女子の部屋に簡単に踏み込んでもよかったのだろうか。トレーニングルームの後

 

「HAHAHA、No Problem! 細かいことは気にしなくていいよナオ! よく此処でもPartyしてるからね!」

 

「Ahh,私としては毎日hallでBigなPartyしたいんだけどね、ヒロが止めるから此処で押さえてるのよ!」

 

「Nop、Nop! それは駄目だよケイ! 僕らはStudentなんだから平日は確りStudyしないと!」

 

「Oh,全くヒロはなんだかんだ真面目なんだから!」

 

「君は本当にParty好きだね!」

 

「HAHAHAHAHAHA!」

 

「HAHAHAHAHAHA!」

 

 ヒロとケイの笑い声が響く。

 なんというか深夜の通販番組みたいな光景だった。

 

「……こいつら、いつものこんな感じなのか?」

 

「まぁそうね。二人揃うと笑い絶えないっていうか、特に面白いことないのにひたすら馬鹿笑いしてるわよ。正直ついていけなくて居心地悪いわ」

 

「…………」

 

「な、なによ」

 

「いや、別に」

 

 なんとなくサンダースの人間はコミュ力高い愉快な連中ばかりだと思っていたからこういう意見も意外だっただけだ。途中の廊下ですれ違った生徒はほとんどが元気に挨拶してきたからその分だけ少し驚いた。

 いやまぁ学園艦は生徒の性格を染め上げる謎の力があるが、個性があるのは当たり前か。

 

「……」

 

 事実ナオミもヒロとナオの話に唇の端を歪ませる程度の小さな笑みを浮かべているだけだった。イメージ通りにクールなキャラクターらしい。

 色々なキャラがいるものである。

 

「それで! ナオはしばらくいるから私たちに挨拶。なるほど――Partyをしろってことね!」

 

「HAHAHA! ――Yeah。ナオのWelcome Partyをしよう」

 

「――FOOOOOOOOOOOOOOOOO!!! Oh My Gosh!」

 

 尋常ではない喜び方だった。

 若干俺が引きつつも、ケイは歓喜の声を上げながらヒロへと抱きつき、

 

「まさかヒロがGo Sign 出してくれるなんて! Awesome! 今日は素敵な日ね!」

 

「おいおいケイ! それじゃあまるで僕が頭のHardなやつみたいじゃないか! 僕はEvery time Gentle Manだぜ?」 

 

「Oh……そうだったわね!」

 

「HAHAHAHAHAHA!」

 

「HAHAHAHAHAHA!」

 

「………………」

 

 一体何なんだろうこいつらは。ちょっと理解ができない連中だった。

 

「あのー、隊長。そろそろ試合のブリーフィングの時間ですよ。テンション高いのもパーティも結構ですけど、こっち優先してくださいよ」

 

「Opos! もうそんな時間だったのね! あ、ヒロとナオはどうする? 一緒に行く?」

 

「ちょっ、仮にも部外者ですよ! ヒロはともかく日向さんはを連れてくわけにはいきませんて!」

 

「えー、アリサ――そんなケチなんだからタカシにbroken Heartなのよ!?」

 

「なんで知ってるんですか!?」

 

「いや……流石にブリーフィングにまで口を突っ込む気はない。その辺はわきまえてるよ。適当にぶらぶらしてくるから気にしないでくれ」

 

「Yes! 彼のことは僕が案内するからね。ケイは次の試合の為のCoolな作戦を頼むよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の試合――大洗、かぁ」

 

 艦内の廊下をヒロと共に歩きながら、思わず呟く。

 トーナメント表は当然知っている。順当に行けばサンダース、マジノ、プラウダ――そして黒森峰という風に大洗が当たることになるだろう。当たり前というべきか戦車道の全国大会に出るということは確かな実力がなければ出場しない。大洗のような無名校は寧ろ場違いですらある。

 特にサンダースは全国一の戦車数を誇り、優勝候補の一角だ。

 大洗が勝つのは難しい。

 

「気になるかい?」

 

「……ん、まぁな」

 

「そうか」

 

「……」

 

 深く切り込んで来ないんだなと、思う。

 これがジャバウォックだったら事情を知っているから盛大に煽るだろう。ディアボラなら少し悩みつつ手探りながらも話を聞いてくるだろう。パヴロフは思ったことをそのままぶつけてくる。神風丸ならば日本人男児云々吼えるだろうし、シンならば何か意味深なことを適当に言うはずだ。

 でも、ヒロはなにも言わない。

 それが少しだけ助かる。

 日向直と西住みほの関係は、あまり自分から触れたいことではない。思い出すのは辛いものがあり、けれどそれはどうにかしないといけないことだと思う。

 どうにかが何か、というのが問題だがとにかくどうにかしたい。

 その為の、ヒロ曰く自分探しの旅なのだ。

 ただこの旅はまだ始まったばかりで自分の中で確固たる答えが見つかっていない。だから心象を語れと言われれば少しだけ困る。ヒロを初めとした古馴染連中ならば語れないこともないんだけど。

 こういう時、気の使い方が上手い男なのだ。

 

「……悪いな」

 

「No Problem」

 

 流暢な返しに思わず苦笑する。

 どうにかして借りを返さないといけないと考える。

 考えて、

 

『――侵入者だぁあああああああああああああああ!!』

 

 反響した声が響いた。

 

「……侵入者」

 

「……侵入者らしいね」

 

 視線を合わせ、

 

「――俺が行こう」

 

 早速ではあるが借りを返すにはいい機会だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 オットボール三等軍曹こと秋山優花里はサンダース高校の学園艦内を全力で疾走していた。背後からは自らを追うサンダース高の生徒たちの怒号。一応撒いているが、しかし土地勘は向こうの方が上なのだからいつ補足されるか解ったものではない。

 なにせ、自分は侵入者のスパイなのだ。

 自分が所属する大洗戦車道の次の相手サンダースは戦力的に自分たちよりもはるかに強大だ。戦車の数だって試合では倍ほどもあるだろう。それだけに勝つのも難しい。みほはどうにかして策を打とうとしているが、それでも相手の戦力幅が大きすぎて出場してくるであろう戦車の種類も解らなければ手の打ちようもないのだ。

 だから侵入である。

 ぶっちゃけ自信はあった。

 上手くコンビニ艦に潜り込んで、上手く制服を入手して、上手く潜り込んだと思う。

 が、最後で詰めを誤った。ブリーフィングに潜り込んだのはよかったが突っ込み過ぎて侵入がばれてしまったのだ。結果逃亡中の自分である。

 そもそも自分はコミュ的なアドリブには弱いのだ。いきなり所属と名前はとか鋭い声で言われればかなりビビる。

 ……今でもクラスでいきなり声掛けられるとどもるのであります……!

 友達とか全然いなかったからしょうがない。

 いや、でも今は違う。かつてのぼっち秋山優花里とはわけが違うのだ。今の自分はニューユカリ。友達がいる。これは実際大きい。その為にここまで来たんだから何が何でも絶対に情報を持ち帰らなければならない。

 ……西住殿に褒めてもらうであります……!

 そう心の中で誓い、捕まらない為に艦内を駆け抜け、

 

「―――っ」

 

 優花里は白い獣を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは突然、廊下の先から現れた。

 優花里には白い影にしか見えないほどの速度で廊下の壁を蹴りつけるようにして出現し、何度も同じことを繰り返しながら優花里の認識が追いつくよりも先に白は距離を詰める。

 認識が追いつかない。

 白い影が何であるか理解ができない。

 動体視力が追いつかず、白がそれほどまでに速いから解らないのだ。

 気づいた時にはもう懐に潜り込んでいて、

 

「――――――あちょー!」

 

 半ば無意識でその白へと拳を繰り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」 

  

 自分が繰り出した拳に白がぶっ飛ぶ。

 獣様な影は低い姿勢で駆け抜けたらしい人間であり、しかしそれを確認するよりも自分に対する驚きの方が強かった。

 ……やってよかったであります週間軍式格闘術ムック『ぐんかくっ!』……!

 毎週軍隊式格闘術の技を一つづつ乗せるムックなのだが、ムック一冊に技一つとか馬鹿らしいということで人気絶不調なのになぜか廃刊にならないマニアには堪らない書である。書いてあることはわりかしというかガチで勉強になったのだが、そもそも発揮する友達がいないので自分でも成果が解らなかったが学んだことに意味はあったらしい。

 そしてさらに言うならば自分はコミュニケーション的アドリブには弱いが――肉体的なアドリブには強いようだ。

 なぜならば、

 ……小学校の時からずっといきなり学校で事件があったらを妄想していたでありますからな!

 優花里の中では小学校は政府が作った最新鋭戦車の研究所のカモフラージュであり、ある日突然その成果を狙ってテロリストが襲撃してきて、自分がその戦車に乗って戦う場だったのである。休み時間授業時間を問わずにそんなことばっかり考えていたものだ。

 友達もいなかったし。

 ぼっちだかったらこそできた妄想だ。

 『タンカーウーマンユカリ』はシーズン7まであったはず。宇宙に適応して地球を飛び去ってそこで打ち切りになったのだ。高校一年まで我ながら良く続いたものだが、今はそんなことを考えない。なぜならば、

 ……妄想よりも西住殿たちとの戦車道について考える時間が多くなったでありますからな……!

 ぼっちだった。

 秋山優花里はどこに出しても恥ずかしくないぼっちだった――そう、過去形だ。

 今年から戦車道を初めて、友達ができた。一緒に戦車の道を歩む戦友ができたのだ。本当に戦車道に参加してよかったと思う。

 戦車道がなければシーズン8が始まっていたはずだ。

 子供の頃は超イかすパンチパーマ決めてて外見で嫌われる要素はないはずだから、やはり問題は自分にあった。ちゃんと自分の得意なフィールドで、自分を晒す必要があったのだ。

 婚活戦士ゼクシィ武部にはパンツァー・ハイとか言われてるけど事実なので受け入れよう。

 むしろ、

 ……パンツァーハイ状態でサンダースの説明をするであります……!

 覚悟を決め、前を向き、殴り飛ばした白を改めて見る。思い切りぶっ飛んだが、仕方ないはずだ。装填主の自分の正面の拳を受ければダメージは大きいだろう。筋トレには余念がなく、最近では麻子くらいならば片手で振り回せるようになったのだ。

 まぁしかしパンツァーハイの前では申し訳ないが伸びてもらおうと思い、

 

「――」

 

 次の瞬間、視界から白が消えた。

 

「――っ」

 

 そして首筋におかしなものを感じた。

 ()()()()と、形容のし難い感じたことのない感覚だった。

 本能的にそれに反応し、振り返ろうとして、先に視線だけ飛ばせば、

 

「――え?」

 

 そこに白い獣がいた。

 自分が殴り飛ばしたはずの影が、目を離したわけでもないのに背後までいる。十メートルくらいぶっ飛んでいたのにも関わらず背後にいるという現実を優花里の脳は処理しきれない。

 獣――そう、虎だ。

 直感的に優花里は猫科大型動物を連想した。

 しなやかで、しかし力強い百獣の王と並び称される野獣。

 つまりそれは、

 

「――白虎」

 

 呟いた瞬間白虎の手が霞み――気づいた時には地面に押し倒されていた。

 何が起きたのか解らない。まるで時間が飛んだかのように、綺麗すぎるほどに優花里は無力化され、

 ……あ、死んだ。

 思わずそう思ってしまう。

 そして、

 

「――――――秋山?」

 

「………………日向殿?」

 

 自分に馬乗りになった白い影――その白いフードから見えた顔は戸惑いを見せる日向直のものであることを秋山優花里は目撃した。

 

 

 

 

 

 




日向直=???
侵入者に突撃したら殴り飛ばされたので、やる気になって押し倒したら知ってる人だった
獣扱い

秋山殿=オットボール三等軍曹
つおい(確信
タンカーガール・ユカリはシーズン7まであるぞよ

ケイ
Party大好きガール



なんだかんだで劇場版までのプロット完成してしまったので多分やります。

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