ガールズ&ユンゲ   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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感想でパスタのゲシュタルト崩壊……


アハト

 放課後のアンツィオの校内へと繰り出せばお祭りの雰囲気は一層強くなっていく。

 もし自分が何も知らずに此処にこれば学園だなんて信じないだろう。街並みもみ含めて完全に異国――ローマのそれであり、あちらこちらに大きな神殿とかテレビで見たような泉とかのような()()()()()ものが至る所に装飾として施されている。聞くところによると観光客も来るほどの人気で一種のテーマパーク化すらしているらしい。

 確かに外国に行くのには金が掛かるし、アンツィオ学園艦に訪れれば簡単に異国気分を味わえるわけだ。

 そして多分、一番人気なのは、

 

「……この屋台市か」

 

 生徒によって経営されている大量の屋台が並んでいる通りだ。

 平日にも拘らずその光景はまさしく祭りの日かと見間違うばかりだが、アンツィオでは恐るべきことにこれが平常通りらしい。基本的にあまり裕福な学園ではないらしく、生徒自身が屋台等を経営して少しづつだが学園の予算として足しにしているとか。 

 そのあたりのバイタリティは素直に参考にできるものかもしれない。

 

「味も結構いいんだよ? アンツィオは料理の授業もあるわけだし、大体の生徒が自炊してるから手慣れてもいる。何年も生徒の間でレシピは受け継がれて研鑽されてるからね。それぞれの屋台がサークルとか部活みたいな感じになってて秘伝の~~みたいな奴も結構あるんだ」

 

「へぇ……お前はどこかに所属してるのか?」

 

「いいや、僕は戦車道の兵站部隊を任させてもらってるからね。食堂もあるから屋台の方には所属してるわけじゃないよ。といっても所属してないだけでちょくちょく戦車道受講者がずっと続けてる屋台の方には顔を出してるけど」

 

「……パスタか?」

 

「無論、パスタだ」

 

 パスタって何だろう。

 確実にアンツィオに来てからゲシュタルト崩壊を起こしているパスタに頭を痛めつつ、改めて屋台市を見回す。

 賑やかなものだ。

 サンダースもそうだったが、しかしここはそれ以上だ。観光客らしき者も少なからずいるし、生徒も生徒で客も店員も関係なく騒ぎまくっている。並んでいる店はやはりパスタが多いがそれ以外にもピザやサンドイッチもよく見かける。デザート系ではアイスやケーキもあるし珈琲ショップらしきものもあるようだ。

 しかしふと疑問に思ったのは、

 

「なんか味噌と抹茶多くないか? 味噌ソースとか……抹茶スイーツとか……イタリア関係なくないか」

 

「あぁ、アンツィオは学校の本拠は栃木なんだけど母港は静岡だからね。そのせいで静岡とか愛知からの入学者が多いんだ。ほら静岡はお茶特産だし、愛知県は味噌がソウルフードだろう?」

 

「あぁ……なんかなんにもでも味噌掛けるって話聞いたな。……いやでも噂だろうそんなん」

 

「まぁでも好きなのは確からしくてね。結構食べたがる子が多い。お茶の方は純粋に入荷が多いし、皆好きだからそういうのが多くなってくるんだ。味噌研究会、お茶研究会ってのもあるし」

 

「へぇ……」

 

 本当に食に対するこだわりが深い学校だ。

 

「こだわりすぎて授業も戦車道もそっちのけなんだけどね」

 

「本末転倒じゃねぇか」

 

 しかしアホばかりのこの学園ならばそんなものかと思ってしまう。

 なんだろう、ここの勢いはちょっと良く解らないがしかし妙な汚染力がある。アホたちの光景を見ていて僅か一日で『まぁこんなもんかな』と思ってしまうのだ。もしも黒森峰に持ち込めば一発で風紀粛清対象だろう。

 黒森峰の風紀委員は全学園艦を通して最も恐ろしいと噂だったりする。

 生徒間ではゲシュタポなどと呼ばれていて、何か事件を起こすとどこからともなく風紀委員が出現して粛清を執行したりする。男子女子問わず異常なまでに腕っぷしが強く、それこそ歩兵道でもやればいいのにと思う。

 何度かゲシュタポには誘われたものだ。

 あまり興味がなかったので断ったが。断ったら粛清とか言いだすキチガイもいてそいつらの張り倒したら軽く風紀委員と一人で戦争を起こして、まほさんやみほには心配を掛けたものだ。結局ゲシュタポ全三十人程を正面から殴り倒してことなきを得たわけだ。

 そういう意味では歩兵道の訓練染みたことをしていたことになる。

 

「……お前はどうだ? 歩兵道の訓練とかまだしてるか?」

 

「んー、まぁまだ腕が鈍らない程度には」

 

 頬を掻きながらディアボラは答え、

 

「皆もそうだろう? 神風丸ほどに歩兵道にうちこんでるわけじゃないけどね? 先生に教えてもらったことだし、忘れたくないし忘れようにも忘れられないしさ。――それに僕の場合は特にね?」

 

「……確かにな」

 

 ディアボラという男の特記事項それは即ち、集中力であると俺は考える。 

 俺たち先生に歩兵道を教え込まれた孤児院卒院者はそれぞれがそれぞれに特技だったり、人特筆できる能力がある。先天的な素質を伸ばしたり、後天的に得たものと差異はあるものの人一倍、ないし数倍優れているのは間違いない。

 俺の場合反射神経とバランス力。

 そしてディアボラの場合――それが集中力なのだ。

 

「時間が止まって見える――だったか?」

 

「あはは、一番調子いい時に限るけどね?」

 

 集中力、それはつまり思考の能力と言ってもいい。本人曰く、一番調子がいい時は時間が止まって見えるほどらしい。一部の競技者や芸術家ではゾーンに入る等と言うがディアボラはこれに入りやすいという。俺自身ゾーンの経験があまりなく、自覚もしてないので良くわからないのが正直な所だ。

 ただゾーンに入ったディアボラが強いのはよく解っている。

 一度入ると味方ならばこれ以上ないくらいに頼りになるし、敵になれば恐ろしいことこの上ない。

 

「ま、そういうとこもアンツィオだろう? ノリと勢いがあればゾーンも入れるだろうけどノリと勢いなきゃ無理無理」

 

「……それは劣化してないのか?」

 

「いやアンツィオ流って怖い。ほんと怖い。入学時は普通にまじめだったのに一か月たったらアンツィオ流に染まってるもん。神風丸だって一か月ここにいたらパスタパスタ叫ぶようになるって」

 

「えぇ……」

 

 それはちょっと見たくない。

 

「何にしても僕なんて一発屋だよ。普通に戦ったらやっぱ直かジャバウォックが二強じゃない?」

 

「……さてな。誰が強いとか弱いとかなんて時の運とその場に掛けている想いだろう」

 

「あはは、直らしい答えだね」

 

 強いとか弱いとかは正直興味のないことだ。

 そんなことよりも、

 

「……欲しい答えは別にある」

 

「自分探しの旅ねー。それらしいっていうか逆に意外っていうか。このアンツィオで何か得られるといいけども。とりあえずあと一時間くらいしたらドゥーチェがコロシアムで対大洗戦の秘密兵器公開するらしいけど行ってみるかい?」

 

「ん、どうだろうな。……っていうか一時間もどうするつもりだ?」

 

「え? 言っただろう――パスタを作るんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 会話が全部パスタに収束するせいで頭がおかしくなりそうだが、しかしそれにもなれそうになっている自分が怖い。結局ディアボラは宣言通りに秘密兵器公開とやらの為にパスタを作り始めた。先ほども言っていた戦車道屋台に入り、販売の為にパスタを作っている生徒とは別に場所を使っている。慣れたものらしく、ディアボラも先に屋台にいた生徒も当然のように受け入れている。

 

「兄さん! 味見してくださいよこれ! 新作なんすよぉ! ――カルボナーラにティラミスぶち込んだら結構うまいんすよこれが!」

 

「確かに素材的に合ってるし味も結構いいけど人の前でティラミスぐっちゃぐっちゃ混ぜるのはやめよう! 絵面が気持ち悪いしね!」

 

「おぉ! 流石兄さん! あたしそんなこと全然気が付かなかったすよぉ!」

 

 ()()()()とティラミスをぐっちゃぐっちゃにかき混ぜるという食欲が消え去りそうなことをしているアホがいるが、あれで戦車道の副隊長らしい。もはや驚く気力もない。  

 自分の目からハイライトが消えていることを自覚しつつ、手持ち無沙汰故に屋台の方を手伝うことにする。

 なんだろう、こんなことの為にアンツィオに来たんだっけ。

 自分探しの旅、早くも二つ目で迷走中である。

 

「……いやいや」

 

 いやいやそうではない。

 本命は次の試合だろう。

 思い返せばサンダースでの滞在も結局の所ほとんどヒロに付き合って筋トレをしているだけだった。自分探しも何もあったものではないが、それでもその後の大洗対サンダースでは得るものは確かにあった。

 そもそも戦車道が核なのだ。

 ならば戦車道の試合でこそ見えるものがあるのも当然だろう。

 しかしそうなるとじゃあ学園艦巡りの意味はとか考えてしまうけど、まぁ旧友に会うというのも乙なものだし、最初に決めたことをあとからやめるというのは主義に反する。途中で心変わりしたなんて逸見に知られればどんな嫌味言われるか解ったもんじゃないし。

 まほさんにもみほにも顔向けできない。

 そんなことを考えながら、しかし現実としては屋台の売り子とかしていたら、

 

「うわー! 美味しそうでありますね!」

 

「へへへだろ!? ほい、アンツィオ名物鉄板パスタ、三百リラだ!」

 

「リ、リラ!? いつのレートでありますか!?」

 

「……いや、三百円。あっちの顔怖い仏頂面のに払ってくれ」

 

「了解であります! ―――‐って、あ」

 

「……」

 

 視線の先、そこには見覚えのあるモフモフ頭が。

 目が合う。

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、直。知り合いでもいたのかい?」

 

「気のせいだ」

 

 いや思い切り秋山優花里がいたのだけど。

 サンダースで派手に見つかったのに懲りていないらしいが、しかしアンツィオだと問題はないのだろうか。最も俺に見つかっているわけで隠密行動的にはまた失敗しているわけだが。 

 しかし秋山にはみほのことを頼んでいる。 

 それが本人に知られたと思うとどう対応していいのか困るがそれは置いておいて、頼んでいる以上ここで問題を起こされても困る。

 なので、見なかったことにして見逃す。

 あれで一度は俺を撃退しているわけだし、大丈夫だろうと思う。

 

「それで? パスタはできたのか?」

 

「勿論、完璧だ。そろそろ秘密兵器公開も始まるだろうし見に行くかい?」

 

「……いや、やめておこう」

 

 秋山もさっき副隊長(ぺパロニ)から秘密兵器とやらの話を聞きだして、尚且つそれの正体も解き明かしていた。その上で彼女もコロシアムに向かって、より詳しい情報を得ようとするだろう。一度見逃した以上、またそちらで顔を合わせるのも気まずいし彼女にポーカーフェイスができるとも思えない。

 

「秘密兵器は試合当日に取っておくことにしよう。どうせ驚くなら試合の時に驚きたいしな」

 

「なるほど。きっとドゥーチェは驚かしてくれるぜ」

 

 いや、うん。

 アンツィオVS大洗。

 いろんな意味でアホの極み(アンツィオ流)を見せつけられることになるのである。




日向直=???
アンツィオこわい
早くも自分探しの旅に疑問覚えたりしてたけど自己処理できたのでつづけることに。

ディアボラ
ゾーンとかちょくちょく入れる。
某所で時空を超えてドゥーチェへの愛を証明した。

ペパロニ
試合当日直の口を塞がらなくさせる。

秋山殿
忠犬再び



作者の運営する某やる夫スレでダイス振ってドゥーチェのキャラメイクしたらなんかとんでもないもののが生まれてしまって余波でディアボラ(AA安藤:『魔王』)までの出演が決定してしまってパスタとかいう謎概念の強さを証明したという意味が解らないことが起きました(こなみ

次回、知波単。
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