転生したら猫かぶりのあの子になっていた   作:秀吉組

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第17話

「分かりやすくはっきり言うわね…、とても食えた物じゃないと言っているのよ」

 

 

私がそう言うと周りは何もなかったかのように静まり返っていた

 

 

「な、何を言っているの!? 木下さん!!」

 

 

「そ、そうよ! 土屋達あんなに美味しそうにしてたじゃない!」

 

 

てっきり私が上手くフォローを入れるものだと思っていたのだろいきなりの本音を言ったことに動揺しつつも何とかフォロー入れようとする二人

 

 

「そうですよ! それに永姫ちゃんははっきりと美味しいって言ってくれました!」

 

 

二人の後押しに強気に反論する姫路さん。こりゃ手厳しくいかなきゃダメか…

 

 

「そうね、確かに美味しいって言っていたわね。でも美味しいと言っている人間が食べた次の瞬間倒れたりするかしら?」

 

 

「そ、それは…そう! 余りの美味しさの余り失神しっちゃったんだよ!」

 

 

「そうそう!!」

 

 

依然姫路さんをフォローしようとする吉井君と島田さん。あくまでそう言い切るのなら…

 

 

「へ~、失神するほど美味しいのなら私も一口貰おうかしら?」

 

 

そう言って箸でおかずの一つを摘み口の方に持っていこうとすると

 

 

「だ、ダメだ! 木下さん!」

 

 

「ア、アキ!!」

 

 

「あ!……」

 

 

ごめんね吉井君。今回貴方のその優しさ利用しちゃう真似して…、でもこうしないとあの子はきっと分からない

 

 

「ど、どうして止めるんですか? 吉井君?」

 

 

まさか止めるなんて思っても見なかったのだろう明らかに動揺する姫路さん

 

 

「それはね私が倒れるのを心配し思わず言ってしまった一言なのよ姫路さん。嘘だと思うなら貴方のお弁当一口食べてみたら?」

 

 

畳み掛けるかのように挑発する。これで相手がかかってくればチェックメイトだ

 

 

「いいですよ! 美味しいに決まってますから! あとで何を言っても遅いですからね!」

 

 

姫路さんは自ら作ったお弁当の中のおかずを箸で掴むと勢い良く口に放り込んだ

 

 

そして…

 

 

「ウッ!?ぶは!?ゴホッゴホッ!?!?」

 

 

放り込んだおかずを口から吐き出すと訳が分からないといった顔で咳き込んでいた

 

 

「これが真実よ姫路さん。貴方の作ってきたコレはお弁当じゃなくて毒物なの、お弁当に普通薬物なんか入れたりなんかしないの。貴方は恐らく化学反応でより美味しくなると思っていたらしいけどそんなのはとんでもない勘違いなの」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

私が放った言葉に傷つき座り込み泣き出してしまった

 

 

「どうしてそんな酷いことを言うの! 木下さん!!」

 

 

「そうよ! 瑞希は私達の為に一生懸命作って来たのよ! それを!」

 

 

「確かに酷いことを言っているかもしれないけど誰かが言ってあげないと彼女の為にならないのよ! 傷つけないように嘘をついてフォローすればその場はいいかもしれない、でもね?それを続ければ続けるほどバレたときに一番傷つくのは彼女なのよ? 自分の作った物をあんなに美味しい美味しいと言っていた自分が信頼していた人達に嘘をつかせて苦しめていたってね」

 

 

「そ、それは……」

 

 

どうやら少し感情的に話してしまったようで吉井君達が黙ってしまっていた

 

 

「さて……」

 

 

少し気持ちを落ち着かせると泣いている姫路さんの近くに行き座り込むと

 

 

「それで何時まで泣いているつもりかな?(ぺシッ)」

 

 

姫路さんのおデコにデコピンを御見舞した

 

 

「痛ッ!! な、なにするんですか!?」

 

 

ちょっと強くしすぎたのかおデコが少し赤くなっていた

 

 

「それで貴方はどうするつもりなのと聞いてるの。このままベソかいたまま何もしないの?」

 

 

「だ、だって……私の料理はもう……」

 

 

「そうね「今回」はダメだった。でも次はそうなるとは限らないし私は一言も改善できないとも言ってはいないわよ?」

 

 

「!?」

 

 

「人間誰だって間違ったりするわ。貴方の場合間違えるベクトルが普通の人より大きかったけどね、自らの失敗を自覚し改善しようと言う意思があればまだ何とかなるんじゃないかと私は思っているんだけど?……やっぱり諦める?」

 

 

私がそう言うと弱々しい目から何かを決意した強い目に変わっていき私にこう言った

 

 

「諦めたくないです!! 皆に本当に心から美味しいって言って貰える物を作りたいです!」

 

 

「よし!よく言えました♪ なら善は急げよ!学校終わったら私の家で特訓するわよ!」

 

 

「へえ!?特訓!?」

 

 

「そうよ? このまま最悪の評価のままじゃ嫌でしょ? だから明日リベンジするのよ!それにまた薬品を調味料代わりに入れないか監視する人が必要だしあんな事言ったんだから協力するわよ。それとも迷惑だった?」

 

 

「え!?そ、そんなことないです!よ、よろしくお願いします!」

 

 

「とまあそういう訳だけどいいかな?吉井君、島田さん?」

 

 

「う、うん。僕はいいよ」

 

 

「ウチも大丈夫」

 

 

こうして二人から了承を得た。倒れてしまった三人にはまた後日と言うことになった

 

 

「さて話も決まったところでこの三人保健室に連れていかないとね」

 

 

体格のいい坂本君は吉井君と秀吉の二人がかりで、土屋君は島田さん、永姫ちゃんは私と分担が決まり、まず永姫ちゃんから運ぼうとしたとき吉井君達に呼び止められた

 

 

「うん?どうかした?」

 

 

「あ、あのね、その…、ごめん!!酷いこと言っちゃって。僕らがもう少し上手く言っていればこんな事にはならなかった筈だし」

 

 

「本当ごめんなさい」

 

 

そう言って頭を下げる吉井君と島田さん。あちゃ~気にしちゃったか

 

 

「別に気にしなくていいわよ。あの場合どちらが正しいなんて誰にも分からないしそれに私ももう少し上手く言えば姫路さんを泣かすような事にならなかったはずだしね」

 

 

そう言って永姫ちゃんを支えながら屋上を後にしようとすると後ろから

 

 

「あの後ろ姿かっこいいわね、なんか背中で語る男子みたい」

 

 

などと全然嬉しくない賞賛を島田さんから受けていたのは忘れることにしよう……

 

 

 

 

 

 

三人を保健室に送り届けるとお昼休みも後僅かだったので私と秀吉以外のメンバーは購買で何か買ってお昼を済ませた。若干一名水で済ませた者もいたが…

 

 

 

それから放課後になるとその日たまたま部活が休みだった秀吉と一緒に帰ることになった

 

 

「おや? 姉上姫路はどうしたのじゃ? 今日うちに来ることになっておるのじゃろ?」

 

 

「ああ、姫路さん一旦家に戻ってから来るそうよ? うちの場所分からないから学園近くの駅前で待ち合わせすることにしてるのよ」

 

 

「ほう、そうなっておったのか」

 

 

それからどちらが話しかけることもなく無言の間がしばらく続き、丁度家と学園との中間位の所で私が口を開いた

 

 

「そういえばあの屋上のやり取り、あの時アンタ一言も言わなかったわね? てっきり何か言ってくるかと思ったんだけど?」

 

 

「それはあの時姉上がわざと皆を怒らせる事を言って悪役になるつもりなのが分かったからじゃ。姫路に自覚させるためにのう」

 

 

「あれ?知ってたの?」

 

 

「当たり前じゃ♪ 何年姉弟やっとると思っておるのじゃ? 姉上」

 

 

「そっか。しかしいっちょ前に見抜くなって生意気だぞ♪ このこの♪」

 

 

そう言って秀吉の首に腕を回し絞める姉

 

 

むにゅ♪

 

 

「なっ!や、やめるのじゃ姉上!! そ、その当たっておる!! 当たっておるのじゃぁぁ!!」

 

 

そんな弟の悲鳴(?)を聞きながら帰宅するのであった

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく時間が経ち姫路さんを迎えに行きいよいよ特訓が始まった

 

 

「あの~お家の人とか大丈夫なんですか?」

 

 

「ああ、うち両親共働きだから。そして今日は二人とも仕事が忙しくて帰れないらしいから心配しなくても大丈夫よ」

 

 

「ところで特訓と言っても何をするつもりなのじゃ?姉上」

 

 

「特訓と言ってもそんな特別な事はしないわよ? ただ姫路さんの料理を作るところを見ておかしな所を指摘して改善していくのが目的だから」

 

 

「なるほどのう。それならワシも手伝えるのう」

 

 

「とまあそういう事だから準備はいい? 姫路さん」

 

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

こうして特訓が開始されたのであった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が!しかし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ! ちょっと! 知らない間に目を盗んで薬品いれるんじゃない!!」

 

 

「い、いや、その、この位なら大丈夫かな~と思って」

 

 

「全然良くな~い!!」

 

 

「あ、姉上!!何やら鍋から怪しい煙が出てきたぞい!!」

 

 

「すぐに換気しなさい!!」

 

 

「ああ!!鍋の底が穴が開き始めたのじゃ!!」

 

 

「ええええ!?これダイヤモンドコーティングされたお鍋よ!?何で穴が空くのよ!!」

 

 

特訓と言うよりも二人に取って普通では起こり得ない現象の時間になっていた

 

 

そうしてそんなこんなで翌日の朝日を迎えることになった

 

 

 

「あ、姉上、朝日じゃ、朝日が登っておる」

 

 

「あ、あはは、ホントだ~キレイね~」

 

 

「そうじゃの~、あはは」

 

 

『アハハハ………、(バタン!!)』

 

 

「ええ!! ふ、二人ともしっかりしてくださ~い!!」

 

 

 

 

 

 

その日木下姉弟は学校を休んだ。ちなみにその日リベンジで出してきた姫路の料理はちょっと塩辛い卵焼きだったそうな


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