転生したら猫かぶりのあの子になっていた   作:秀吉組

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第3話

秀吉が虐めにあっていた事件からまたしばらくの時が経ち、小学校の卒業式が近づいてきたそんなある日のこと。その夜自室で勉強をしていると何やら不安そうな表情で秀吉が私の部屋にやってきた

 

 

「姉上、少しいいかの?」

 

 

「うん?…何かあった?秀吉」

 

 

私がそう言うと少し驚いた様子で

 

 

「ど、どうしてそう思うのじゃ?」

 

 

「わからないならそこの鏡で自分の顔を見てみなさい、凄い不安そうにしていて泣きそうな顔になってるから」

 

 

私にそう言われて鏡をのぞき込む秀吉。これは何かあったな

 

 

「どう?見てわかったでしょ?…それで?一体何があったわけ?」

 

 

「…もうすぐワシらの卒業式があるじゃろ?その卒業式にワシが歌を歌うことになっての」

 

 

「へ~、凄いじゃない!でもそれがどうかしたの?」

 

 

秀吉は演技の一環として歌唱力も磨いおりそれはそこらの合唱団が束になっても叶わないほどのモノで音楽の先生も舌をまくほどのモノだったはずだけど何か問題でもあったのかしら?

 

 

「歌うということはそれは、…皆の前で歌うことになるじゃろ?もし歌って変に思われたら…」

 

 

「また前のように虐められるかもしれない、と?」

 

 

私がそう尋ねると黙って小さく頷いた

 

 

秀吉が虐めにあっていた事件の後はこちらの励ましによりなんとか落ち着きを取り戻していたのだがやはりまだあの時のことが頭から離れないようだ

 

 

私は椅子から立ち上がると秀吉の頭を撫でた

 

 

「あ、姉上?(///)」

 

 

突然のことに顔を少し赤くなりながらも気持ちよさそうにする秀吉

 

 

「あの時にも言ったと思うけど堂々してればいいのよ♪それにこれはチャンスかもしれないわよ?」

 

 

「チャンス?」

 

 

「そう、アンタがどれだけ真剣に演劇に打ち込んでいるか、ね。不安なら私に向かって唱えばいいわよ」

 

 

「でも姉上がどこにいるかわからんのじゃ」

 

 

「それなら大丈夫よ♪私は必ず最前列にいるから」

 

 

「どうしてそう言い切れるのじゃ?」

 

 

「学年の中で最も優秀な生徒が卒業式に卒業生代表として挨拶する為に最前列にいることになっているのよ。もちろんその優秀な生徒ってのは私だけどね♪」

 

 

「姉上…それを自分で言うのもどうかと思うのじゃが(汗」

 

 

「何よ?文句ある?(ギロり)」

 

 

手をポキポキと鳴らし威嚇行動に移る姉

 

 

「ワ、ワシが悪かったのじゃ」

 

 

「まったく…。まあとにかくアンタは何も気にすることなく思いっきり歌ってみなさい!いいわね?」

 

 

「わ、わかったのじゃ」

 

 

そうは言うものの秀吉の表情から不安の色は拭いきれてはいなかった

 

 

「…、よし!秀吉、今日私と一緒に寝るわよ?」

 

 

「な、なんじゃと!?」

 

 

 

 

 

その夜、優子の部屋に二枚の布団が隙間を少し空けて敷かれていた

 

 

「な、なんじゃ寝るとはこういう事じゃったか」

 

 

「そうだけど?あ、アンタ!もしかして変な事考えてたんじゃないでしょうね?」

 

 

「そ、そんなことはないのじゃ!!(汗」

 

 

「怪しいわね、…まあいいわ。寝るわよ」

 

 

そう言って布団に入る姉につられ秀吉ももう一つの布団の中に入った

 

 

「秀吉、手を出しなさい」

 

 

「ん?一体ワシの手をどうするつもりなのじゃ姉上?」

 

 

「いいから出しなさい!」

 

 

そう言われて慌てて布団から出した手を優子はぎゅっと握った

 

 

「姉上?」

 

 

「アンタが寝れるまでこうしてあげるわよ、ありがたく思いなさいよね?」

 

 

「な、なんか恥ずかしいのじゃ(///)、しかしなんじゃろかこうして手を握られていると安心してきて、なん…だか…眠…気が…」

 

 

 

「秀吉?」

 

 

隣を見るとすぅすぅという息使いで秀吉が眠りに入っていた

 

 

「あらら、もう寝ちゃったか」

 

 

秀吉が寝ていることを確認すると秀吉の枕元まで行くと頭を優しく撫でた

 

 

「明日の卒業式、こいつにとっていい方向に向かうモノになるといいんだけどな」

 

 

弟の成功を祈りつつ自身もまた卒業式の挨拶を任せれているので眠ることにした

 

 

そうして卒業式当日を迎えることになる

 

 

卒業式は学校の体育館中で行われその中は卒業生、卒業生の保護者、在校生で一杯になっていた

 

 

卒業式は淡々と進んで行き、遂に秀吉が歌を披露する時がやってきた

 

 

たくさんの視線を浴び不安そうな表情になるがこちらを見つけると少しホッとした顔になった

 

 

そんな秀吉に私がウィンクするとさっきまで硬かった秀吉の表情が柔らかいものになりすぅと小さく息を吸うと歌を歌い始めた

 

 

歌が始まるとそれまで騒がしかった周りが静まりそこが人で一杯だったとは思えない静寂の中そこに居た皆がその歌に聴き惚れていた。私もいつの間にかその中の一人になっていた

 

 

歌が終わると溢れんばかりの拍手が起こり秀吉は一瞬なにが起こったのか分からない様子だったが事態を飲み込むと笑顔で拍手に答えていた

 

 

私の方はというと普段から鉄壁の優等生を演じているのでこの程度のもので崩れるはずも無く無事に挨拶を済ませ卒業式は幕を閉じた

 

 

その日の夜、前日の夜とは違って嬉しそうに秀吉が私の部屋にやってきた

 

 

「姉上!姉上!聞いて欲しいことがあるのじゃ♪」

 

 

「はいはいどうしたのよ?そんなに嬉しそうにしちゃって」

 

 

「あの卒業式が終わった後ワシを虐めてきた男子たちがやってきたのじゃが」

 

 

「なっ!?なんですって!また虐められたの?」

 

 

「そうじゃないのじゃ、ワシに謝りにきたのじゃすまなかった、と。それと歌とっても良かったと褒めてくれたのじゃ!何だかワシの事認めてもらったようで嬉しかったのじゃ♪」

 

 

「そっか♪良かったわね秀吉」

 

 

あの卒業式の歌が秀吉にとっていい方向に向かった事に思わず頬が綻んでいた

 

 

「うむ♪じゃがあの時の男子達ちょっと様子が変じゃったのじゃ」

 

 

「どういうこと?」

 

 

「何故かワシに目を合わせないし、妙におどおどしておるしワシ何かしたのかの?」

 

 

…おいおいおい!?それってまさか

 

 

「あ、あのさ秀吉一つ聞くんだけどアンタと目を合わせた時その男子顔を真っ赤にさせてない?」

 

 

「おお、確かに目を合わすと何故か真っ赤になっておったの。何故分かったのじゃ?姉上」

 

 

その歳から既に男子のハート打ち抜いていたのかアンタは…

 

 

無自覚のまま男のハートをぶち抜く弟に思わず頭を抱える姉であった


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