転生したら猫かぶりのあの子になっていた   作:秀吉組

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第33話

「勝者、Fクラス!」

 

 

おおおおおおおおお!!!

 

 

「ごめん、負けちゃった・・・」

 

 

Fクラスの歓声を背に優子はとぼとぼとAクラスの元に戻った

 

 

「仕方ないよ。なんせ相手はあの姫路さんだったんだからさ」

 

 

「そうだよ!姫路さん相手に十分善戦したって!気にする事ないよ」

 

 

「そうそう♪」

 

 

Aクラスの誰ひとり負けたことに責めるものはいなかった

 

 

「そう言ってもらえると助かるわ。はあ・・・勝てるとおもったんだけどな~。・・・・(まあ近づけたと分かっただけでも良しとするかな・・・)」

 

 

「?優子?どうかしたの?」

 

 

「え?ううん、何でもない」

 

 

「しかし驚いたよ、木下さんの点数があれ程のモノだったなんてね。僕もこれを機に気合を入れて頑張らないと」

 

 

「久保君。まあたまたまかもしれないけどね。・・・それじゃあ今度姫路さんを相手にするのは久保君に任せようかな♪私は勉学に励むのはしばらくお休みにするわ」

 

 

「ん?それはどういう意味だい?」

 

 

「私ってさ一年の頃からねプライベートの時間削って勉強してたの。まあそれは自分が勝手にライバル視してた人に勝つためだけになんだけどね。でもそれはバイトやってみたいとか友達と遊びに行きたいとか色んなこと我慢してやってた部分とか多くてね、だから今度はそっちの方に時間かけて見ようかなってね。あ、だからと言って諦めたわけじゃないから。あくまでしばらくの間、ね」

 

 

「なるほどね。まあ確かに試召戦争だけが学校生活じゃないからね」

 

 

「でしょ?・・・まあそれはこの後の最終戦に勝てば、の話だけどね」

 

 

そう言うと優子は今だ歓声が鳴り止まない様子の姫路を中心に輪になっているFクラス、の外にいて何やら考え事をしている雄二に目をやっていた

 

 

さてこのまま原作通りに事は動くのか、それとも・・・

 

 

「・・・大丈夫、私達は勝つ」

 

 

そう声を掛けられ後ろを振り向くと代表が居た。表情は普段と余り変わらないが目から強い決意のようなものが感じられた

 

 

「代表、どうだった?・・・間に合った?」

 

 

優子にそう聞かれると翔子は何も語らなかったがぐっと親指を立て高橋先生の元へと向かっていった

 

 

「高橋先生、早く五回戦を始めて貰っても構いませんか?」

 

 

「分かりました。では五回戦を行います!代表前に!」

 

 

「さてと。俺の出番だな」

 

 

そう言って坂本君が前に出てきた。遂にこの戦争の勝敗が決まる最終戦が始まる

 

 

「教科はどうしますか?」

 

 

「教科は日本史、内容は小学生レベルで方式は百点満点の上限ありだ!!」

 

 

ざわ・・・!!!

 

 

「上限ありだって?」

 

「しかも小学生レベル。満点確実じゃないか」

 

「これはもう注意力と集中力の勝負になるぞ・・・」

 

「ひょっとしたら万が一何て事も起こるんじゃ・・・」

 

 

坂本君のこの宣言でAクラスに動揺が走った。負けるはずがないと思っていたのがいきなりそれが揺らぐものに変わってしまったのだから無理もなかった

 

 

「分かりました。そうなると問題を用意しないといけませんね。少しこのまま待っていてください」

 

 

そう言うと高橋先生は問題作成のため教室を出ていった

 

 

「ねえ?優子。・・・代表勝つよね?」

 

 

珍しく愛子が不安そうな顔で私に聞いてきた

 

 

「当たり前よ!私達はただ代表が勝つことだけを信じるだけよ」

 

 

それはもしかしたら愛子だけでなく自分自身にも言い聞かせて言ったものだったのかもしれない

 

 

それからしばらくして高橋先生が戻ってきて作成した問題を行う為に代表と坂本君を視聴覚室に連れて行った

 

 

私達は教室のモニターから見守ることになった

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれより問題を配ります。制限時間は五十分。満点は百点満点です。もちろん不正行為は即失格になります。いいでですね?」

 

 

「・・・はい」

 

 

「分かっているさ」

 

 

「では始めてください」

 

 

二人の手によって問題用紙が表にされる

 

 

「ついに始まったね・・・」

 

 

「ええ。これで勝負が決まるわ・・・」

 

 

周りが静寂に包まれる中モニターに問題を解いていく二人を映すと共に二人が解いている問題が映されていた

 

 

『次の( )に正しい年号を記入しなさい』

 

 

(  )年  平城京に遷都

 

(  )年  平安京に遷都

 

( )年  鎌倉幕府成立

         ・

         ・

         ・

         ・

         ・

         ・

 

(  )年  大化の改新

 

 

 

おおおおおおおおおおお!!!!!

 

 

 

大化の改新、この問題が出た途端いきなりFクラスが騒ぎ始めた

 

 

「ね、ねえ?優子。大化の改新が問題に出た途端向こういきなり凄い事になってるんだけど一体どうしたのかな?」

 

 

「狙っていた問題が出た、って所でしょ」

 

 

「狙っていた?」

 

 

「そう、勝負を決するような・・・ね」

 

 

大化の改新、この勝負でキーポイントになる問題だ。原作なら例えこれを外しても坂本君が小学生問題と油断して点数があまり取れず代表の圧勝で終わるけどこの世界じゃ吉井君が久保君に勝つという原作とは違う流れが起こっている

 

 

そうなればこの勝負もどうなるか分からない

 

 

 

50分の制限時間はあっという間に経ち、そして採点結果は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本史勝負  限定テスト  100満点』

 

 

Aクラス  霧島翔子

 

100点

 

VS

 

Fクラス  坂本雄二

 

100点

 

 

「両者100点満点なので延長戦を行います」

 

 

えええええええええええ!!!!

 

 

この結果にまたFクラスが騒然とした。しかし今度は歓喜ではなく驚きまたは困惑気味のものだった

 

 

「大化の改新が出れば霧島は間違えて俺達の勝ちじゃなかったのかよ?」

 

「霧島正解してるじゃないか!どういうことだよ!?」

 

 

Fクラスの皆々が動揺していた。だが一番この結果に動揺を隠せないのはこの勝負を申し込んできた坂本君本人だ

 

 

それはモニターごしでもわかるくらいだった

 

 

「しょ、翔子!お前この大化の改新間違って覚えたままじゃ」

 

 

「・・・雄二」

 

 

「?」

 

 

「まだ勝負は終わってない。テスト中は私語を謹んで」

 

 

「くっ・・・」

 

 

そう言われ渋々席に戻る坂本君

 

 

その時だった。代表が少し苦しそうな顔で少し頭を手で抑える仕草をした

 

 

え?

 

 

もう一度代表を見るといつもの代表に戻ってはいたが・・・

 

 

代表、もしかして・・・

 

 

そんな中延長戦が行われたが先の結果で坂本君が動揺したのか

 

 

 

 

Aクラス  霧島翔子

 

100点

 

VS

 

Fクラス  坂本雄二

 

86点

 

 

 

坂本君は百点を取ることが出来ず代表が勝利した

 

 

 

この結果がモニターに映るとFクラスが視聴覚室に向かって走り出したので私達も急いで後を追った

 

 

「良い覚悟だ!殺してやる!歯を食い縛れ!」

 

 

「吉井君!落ち着いて下さい!」

 

 

「アキ!落ち着きなさい!アンタ百点どころか三十点も取れないでしょが!!」

 

 

急いで視聴覚室に行ってみると吉井君が姫路さんと島田さんに抱きつかれて止められていた。あれは恐らく制裁を加えようとして止められたな

 

 

「雄二!どういう事だよ!?大化の改新が出たら勝てるんじゃなかったの!?」

 

 

「うるせえ!俺だってなんでこうなったのか訳がわからねえんだよ!翔子、お前大化の改新間違えて覚えていたんじゃないのか?」

 

 

「うん、私は雄二に教えられた通り625年(無事故)で覚えてる」

 

 

「ならなんでさっきは正解したんだ?」

 

 

「確かに私は雄二に教えてもらった事は絶対に消えない。けど短時間ならその上から上書きが出来る。短時間で消えちゃう付け焼刃程度のものだけど」

 

 

「上書き!?」

 

 

「そう、代表に無理言ってやってもらったのよ」

 

 

「秀吉姉!それじゃあ今まで翔子の奴が奥に引っ込んでいたのは」

 

 

「貴方との対戦に備えて代表の番が来るまで上書きの作業をやってもらっていたの。まあそのせいで代表に痛い思いもさせちゃたけど・・・」

 

 

「・・・気づいてた?・・・大丈夫、優子。今はもう平気」

 

 

「平気な訳ないじゃない。ごめんね代表。こうなるまで気がついてあげられなくて・・・」

 

 

「だからもう大丈夫と言ってる。・・・うちのお母さんは心配症」

 

 

「なっ!だ、だから!お母さん言うな!」

 

 

代表とこんなやり取りをしてるとうちのクラスはなんかニヤニヤしてるし!そこ笑うな!!

 

 

「ってことはこっちの手も読まれていたって事か?」

 

 

「全てを読んでいた訳ではないわ。通常の戦争形式ではなく五人の代表戦に教科の選択権、この事を考えれば貴方が代表に勝てる何かを知ってると思うのが自然な訳だしね。(まあ原作読んで知ってました、なんて言える訳ないしね)」

 

 

「まあそれでも読まれていた時点で俺らは負けが決まっていたという訳か・・・」

 

 

「・・・ところで雄二」

 

 

床に膝をついている坂本君の前に出る代表

 

 

「約束・・・」

 

 

代表がそう言うと・・・

 

 

カチャカチャカチャカチャ!!!!

 

 

土屋君と吉井君が慌てて何か用意し始めた。あーそういえば代表に変な噂流れたまんまだったか

 

 

「わかってる。何でも言え」

 

 

「それじゃ・・・・、私と付き合って雄二」

 

 

 

『・・・・はい?』

 

 

代表のその一言にFクラスだけでなくAクラスからも出た言葉だった

 

 

「え?ええ?霧島さんって女の子が好きじゃなかったの?」

 

 

それらを代表していったかのように吉井君が状況が理解できないまま愛子に尋ねた

 

 

「それは単なるデマだよ吉井君。代表はずっと坂本君一筋だったからね♪ねえ優子?」

 

 

「ええ。でも坂本君素直じゃないみたいだったから今までは聞いてはもらえなかったみたいだけど」

 

 

「ちょ、ちょっと待て!?誰が素直じゃないだと!?俺は─」

 

 

「やっと想いが叶ったね!良かったね代表♪」

 

 

「おめでとう♪代表」

 

 

「うん、ありがとう愛子、優子」

 

 

「人の話を聞け!?俺は一言もなるとは、あああああああああ!!!!」

 

 

「・・・約束」

 

 

グギギギギギギ!!!!

 

 

 

拒もうとした途端に代表にアイアンクローを喰らう坂本君。南無・・・、恋する乙女は強いのだよ・・・

 

 

「さて、Fクラスの皆。お遊びの時間は終わりだ」

 

 

周りが唖然としている中いきなり野太い声が後ろから聞こえた。振り替えるとそこにいたのは西村先生だった

 

 

「あれ?西村先生。何か僕らに用事ですか?」

 

 

「ああ。今から『我がFクラス』に補習についての説明をしようと思ってな」

 

 

「え?『我がFクラス』・・・・」

 

 

西村先生のその一言に吉井君を始めFクラスの男子一同の表情が青ざめていった

 

 

「おめでとう。お前らは戦争に負けたおかげで、福原先生から俺に担当が変わるそうだ。これから一年、死に物狂いで勉強ができるぞ」

 

 

『嫌じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

Fクラスの男子全員が悲鳴を上げた

 

 

「いいか。確かにお前らはよくやった。Fクラスがここまでくるとは正直思わなかった。だがいくら『学力だけが全てではない』と言っても、人生を渡って行く上で強力な『武器』の一つだ。全てではないからと言ってもないがしろにしていいものではない」

 

 

こっちは原作通りになるのか。まあ・・・その・・・頑張れFクラス男子一同(。-∀-)

 

 

「とりあえず明日から授業とは別に補習の時間を二時間設けてやろう」

 

 

多くのFクラスの男子達が膝をついてガクリとしている中、西村先生はそう言うと教室を後にした

 

 

「さあ~て、アキ?補習は明日からみたいだし今日は約束通りクレープでも食べに行きましょうか?」

 

 

「え?美波、それは週末って話─」

 

 

「だ、ダメです!吉井君は週末私と映画を見る約束なんです!」

 

 

「ええ!?姫路さん、それは話題にも上がってないんですけど!?」

 

 

「・・・雄二、映画で思い出した。週末これ見に行くから」

 

 

「なんだ?ええと何々、地獄の黙示録完全版!?おい!これ三時間二十三分もあるぞ!?」

 

 

「・・・二回分」

 

 

「一日の授業より長いじゃねえか!!」

 

 

やれやれ。やっと試召戦争が終わったというのに・・・

 

 

目の前で起きているドタバタに呆れつつふと優子は学校の外に目を向けていた

 

 

外は桜が満開か

 

 

うん、桜か・・・。そ~だ( ̄▽ ̄)

 

 

優子は何やら思いつくとニヤニヤしながらピンチに陥っている哀れな男二人の前に出た

 

 

「ねえ?吉井君、坂本君。・・・助けて欲しい?」(ニヤニヤ)

 

 

「「助けてください!!!!」」

 

 

「そ、即答かい・・・。えーと週末代表達と一緒に私に付き合ってくれれば長時間の拘束と大量の出費をせずに済むけど?」

 

 

「「行きます!!」」

 

 

「え、えーとそれじゃあ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

お花見でも行かない?皆で」

 

 

 

 

 

 


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