「……ここにするか。出来るかどうか分からないけど」
そう言って優子は二枚のチラシのうちの一枚を手に取るとそこに書かれていた電話番号に電話した
「あ、すいません。バイト募集のチラシを見てお電話させてもらったんですが……」
翌日、学校を終えるとその足で優子はとある店に向かった
その店はメイド喫茶「ひだまりポケット」
変装や偽名を使って本人とバレないようにするシステムを取っているお店である
店の中に入ると中は洋風のアンティークショップのような内装だった
「すみません。昨日バイトの面接で電話した者なんですが」
レジ付近にいたメイドのお姉さんに声をかけた
「ああ。昨日電話を頂いた木下さんですね。こちらにどうぞ」
そう言って店の奥へと案内された
「あの店長さんは?」
「ん?店長はわたしですよ」
「え?でも髪型が」
お姉さんの髪型はショートヘアー。でもこの前見たときは確かロングヘアーのお姉さんだったはずだけど?
「それはきっとその時ロングウィング、ロングヘアーのカツラを付けていたからだと思いますよ。ここは髪型なども変えますからね。 さあ、こちらにお掛けになって楽にしてください」
案内された席に座ると店長さんは向かい側の席に座った
「では改めて自己紹介させてもらいますね。 私はここのお店の店長をさせてもらっています渡瀬茜(わたせあかね)と申します。 (ニコ)」
「わ、私は木下優子って言います。 ほ、本日はよろしくお願いします……(汗」
いきなりの笑顔につい見とれてしまっていた。これがプロの仕事か……恐るべし……
「さて、では早速ですが面接を始めますね。 木下さんはどうして今回うちのバイトに?」
「はい。理由はその~色々あるんですがまずはお店が自宅からも学校からも近くにあるという点です」
「そういえば木下さんのその制服、確か文月学園の制服ですよね?」
「はい。 ご存知なんですか?」
「ええ。 うちのお店に何人か文月学園の子がいますから。 それで他にも何か?」
「は、はい。えーと、その、実は私メイドさんについてあまり知らないんですけどメイドさんのあのひらひらした服が可愛いなと思いまして。どうせ働くならこんな可愛い服着てバイト」
してみたいですと言おうとした時だった。店長の渡瀬さんがいきなり私の手を両手で掴むと
「そうやろ?このメイドさんの服可愛いやろ♪ メイドさんの服は参考にするタイプがぎょうさんあってうちの制服作るの大変やったけんね~♪」
「………(呆然)」
「あ……。こ、これはどうも失礼しました(汗」 (赤面)
「え、えーと。さっきほどの話し方によると店長さんは関西の方なんですか?」
「あー、やっぱりそう思われますか。よくそう言われるんですけど私四国出身なんですよ。あれは伊予弁なんですよ」
「伊予弁?」
「ええ。普段は話すときは標準語を心がけているのですがテンションが上がるとつい出ちゃう時がありまして……。今みたいに」 (赤面)
さっきのことが余程恥ずかしかったのかまた赤面する渡瀬さん。なんか可愛いなこの人
「こほん。えーと、とりあえすうちの制服に興味を持ってもらえて嬉しいです。木下さんはバイト経験とかありますか?」
「いえ。その、今回が始めてのバイトなもので……」
「そうですか」
そう言うと渡瀬さんはじーと私の顔を見つめてきた
あれ?なんか評価下がる所だったんだろうか。 うーんやっぱりバイト経験ないとだめだったのだろうか?
そんな風に考えていると
「……。よし! 採用します」
「え? 採用……、採用!?」
「ええ。そうですけど?」
「えーとさっきも言ったんですが私バイトの経験ないんですけど一体私のどこを評価して決めたんですか?」
「それはですね。えーと………勘ですかね」
「勘!? 勘なんかで決めちゃっていいんですか? 私が言うのもなんですが」
「はい。木下さんはいい子だなとビビッときましたから。これでも私の勘結構当たるんですよ?今うちの店にいる子も全員これで採用してきましたから」
いいのかな?それで(汗
「それに商売の神様もちゃんと見守って下さってますから」
そう言うと渡瀬さんは上を見上げ私もそれにつられて見上げるとそこには
「関羽? あれ三国志の関羽ですか?」
「ええ。商売の神様ですから」
「それはそうですけど…。日本なら七福神とかじゃ?」
「まあそうなんですけどね。でもこのお仕事の一番大事なのは信頼ですから」
「はあ」
確かに関羽は義の人つまり約束を守るという象徴的な人物だからお客との信頼を守るという点ではあってるのかな?
まあ取り敢えずここで働けることが決まったのでした
伊予弁中々難しい