私は学園長室から出てとぼとぼとした足取りで自分の教室に向かっていた
しかしなんで学園長はあんなことをしたんだろう?
室内でのやり取りを思い出す
他の会話をしながらでの筆談。これは明らかに誰かに内容を知られないようにするため
そうするのは何故か? 決まっている。 あの部屋が盗聴されているかも知れないから
そうでもなきゃあの時私に 「話し合わせろ」 というメモなぞ見せないはずだ
学園長室に入った時に見せた学園長のあの行動
あれは盗聴器を探すためのものだったのだろう
仕掛けられていた場所はたぶん学園長がじっと見つめていた部屋の端付近
……なんにしろこの清涼祭の裏で何かが起ころうとしているらしい
私はそれにまんまと巻き込まれてしまったみたいだ
「ああ…。本当に災難続きだわ…」
「なかなか危なかったけどnegotiation(ネゴシエーション)完了だね!」ビシッ
「ありがとう! 工藤さん!!」
「貴方は私たちの恩人だよ!!」
「こ、怖かった……(ガタガタ)」
憂鬱な気分で教室に戻ってみるとガタガタと震えるクラスメイトがいたり、愛子に涙ながらお礼を言うクラスメイトがいたりと訳の分からない状況になっていた
「え、え~と? これは一体どういう事?」
「あ、優子。 お帰り~」
「愛子、何かあったの?」
「え!? えーと、なんと言ったらいいか……。 う~んしっと魂に燃え上がった優子ファンの抗議?みたいな?」
「……なにそれ」
「ま、まあそれは何とかなったから気にしないで」
すご~く怪しかったが清涼祭を翌日に控えているので今日はそのことに追求はせず明日に備えて各自帰ることになった
「あー、召喚大会か~」
「うん?召喚大会に出るの?優子」
「まあ、ちょっと出るようになってね。 愛子は出るの?」
「うん。 こういう面白そうなイベントは見逃す訳にはいかないからね♪」
あちゃ~、坂本君達を優勝させないといけないのにもういきなり強敵登場確定とは。どうしよう
「代表はどうするんだろうね? 出るのかな?」
「どうなのかしらね? 聞こうと思って一緒に帰ろうと思ったんだけど……」
一緒に帰ろうと誘おうと探したのだけれど何故か教室に代表の姿はもうなかった
「ボクの予想じゃ出ると思うよ? なんかチラシみて凄い目つき変わってたし」
「目つきが、変わった……?」
なんだろうスゴ~く、いやかな~り嫌な予感がする……
「あ、あのさ? ちなみにどんな目つきになってたのかな~?」
「う~ん、そうだね。あえて言うなら……魔王さえも屈服させちゃうくらい?」
「今すぐチラシ見せて!? 今すぐ!!」
優子がカバンからそのチラシを出してもらい見せてもらい召喚大会の事が書かれてある部分に目を通すと
え~と?景品が賞状とトロフィーと白銀の腕輪?どんな腕輪か知らないけどこれはまあほっといてもよしと。えーと最後が…
「如月ハイランド…プレオープン…プレミアムチケット?」
「あ、そこ知ってるよ。 今建設中の巨大テーマパークだよ。 日本一高い観覧車や世界で三番目に速いジェットコースターできるとかで今話題になってるよ」
「ふ~ん。それでこのプレミアムチケットに何か特典とかある?」
「そりゃあグランドオープン前に遊べるから人混みとか気にしないで良い所じゃないかな?他に何か書いてないかな?」
愛子にそう言われてチラシを注意深く見てみると
カップルで行くと結婚式が体験できます♪ と楽しげに書いてあった
ガクッ!?
「ど、どうしたの優子!? いきなり落ち込んじゃって」
これが狙いか~(泣) 日頃坂本君との結婚を目論む?代表にとって願ってもないチャンスに違いない
入手すればすぐにでも行くだろう。その場の勢いで本当に式を挙げる事も考えられる。 ……恐らく半強制的に
そんな闘志?をあげる代表に召喚大会辞退してくれなんて言える訳がない。 ……私だって命は惜しい(汗
とにかくこれで二年で一番敵に回してはいけない人物を敵に回すことに……
学園長の頼まれごとの難しさに痛感しながら家路につき、そして清涼祭当日を迎えるのだった