「すっごいバカなお兄ちゃんです!」
「すっごいバカなお兄ちゃん?」
「はいです!」
すっごいバカなおにいちゃん、で検索
……
………
………検索終了。 検索件数が多すぎます。
ダ、ダメだ。 私の中で検索してみたが該当者が多すぎて誰なのか分からない
でもまあ……
「そっか♪ なら私達と行き先は同じだね」
Fクラスにいけば居るでしょ。 あそこはバカには困らないクラスだし
新たに小柄な女の子を加えてFクラスに向かうことになった
「へえ~、葉月ちゃんはドイツから来たんだ」
「うん。家族一緒にこっちに来たです」
へー、この子葉月ちゃんっていうのか
Fクラスに向かう途中でお互いに通じるものがあったのかクリスさんと葉月ちゃんが話しこんでいた
それにしても……
「クリスちゃんはイギリスから来たんだ。 日本語上手です」
「えへへ、ありがとう。 こっちに来てから色々とミヤビに教えてもらったからね」
二人の仲睦ましい様子を見てやっぱりこう思ってしまう……
クリスさん、どうやっても葉月ちゃんの同級生もしくは下級生にしか見えません……
あれで女子大生ですといって一体どのくらいの人が信じてくれるのだろうか……
そんなことを考えているうちに旧校舎のFクラスの近くまで来ていた
普段はまるで廃屋のような教室だが清涼祭のためか綺麗に清掃され飾り立てられていた
お店の名前は中華喫茶ヨーロピアン
中華なのにヨーロピアン?
「ここはFクラスになったのですか。 Eクラスは隣になったんですね」
「え? 雅さん達の時は違うんですか?」
「ええ。 私達が居たときはここはEクラスでしたから。 年々入学者が増えたからクラスを増設したのでしょう」
「まあこの学園には他校比べて受験生を集めるネタが色々ありますもんね」
「……まあその反面問題も抱えていますが」
問題? 一体なんの問題がと聞こうとしたがFクラスに入っていったので急いで後を追いかけたが入り口あたりで雅さんが足を止めた
「ど、どうしたんですか? いきなり止まって」
「どうやら我々は悪い時に来てしまったようですね」
雅さんが向いている視線の先を追うと
「こんな店営業できなくしてやるぞ!」
「そんな! そっちが勝手に食べたくせに!」
なにやら吉井君達と客が言い争いをしていた
確かに不味い。 店内に生徒や生徒の保護者が居る状況の中でこんな騒ぎを起こせば……
「なんだなんだ?トラブルか?」
「……お店変えようか?」
こういうことになってしまう……
そんな中、ガタッと音を立て一人この場から離れようとしていた
あれは教頭先生……?
「……こんな時に何処に行かれるのですか? 教頭先生」
出て行こうとする先生を雅さんが呼び止めた
「お、お前は松島!? なぜ此処に!」
「私もいるよ」
「上城までいるのか!」
二人の登場に驚きを隠せない教頭先生
しかしこの三人、過去に何かあったのだろうか
「私達はここの卒業生なんですから清涼祭に来ても何の問題もないはずですが?」
最初は驚いていた教頭先生だったが今は鋭い目つきで二人を睨んでいた
「それよりもあの通り学生同士のトラブルが起っているのにまさか何もせず黙認するおつもりじゃないですよね? 保護者の方々が見ている中で」
保護者という部分を強調し周りに聞こえるように話す
そうなると周りの目がこちらに向くわけで……
「なっ!? そ、そんなことある訳ないじゃないか! これから彼らを止めに行こうと思っていた所なのだよ。 勝手な推測は止めたまえ!」
「そうでしたか。 それはすみませんでした。 ではお願いできますか?」
怒りを露にする教頭先生に対し雅さんはお店と同じ、いやそれ以上の笑顔で対応していた
だけどその笑顔はこちらの気のせいなのだろうかすごく怖いものに感じたのは何故だろう……
「常村君、夏川君。 一体何をしているのだね! 君達三年生はこんなところで油を売っていていいのかね!」
「え?」 「な、なんで!?」
吉井君達と言い争いをしていた客はどうやら三年の上級生だったらしい
注意されて驚いた様子だったけどなんだろこの違和感
普通こんなトラブルを起こせば先生がくるのは予想できる筈なのに……
なんでこんなに驚いているんだろう
そう考えている間に教頭先生が二人を引き連れて教室から出て行った
「さっきは一体なんの騒ぎだったの? 吉井君」
「あ、木下さん。さっきの三年の上級生が勝手に食品サンプル二つも食べちゃって」
「食品サンプル?」
テーブルの上には小さい皿と大き目の皿がそれぞれ一枚ずつあり小さいほうは何も残ってなかったが大きいほうには食べかけのオムライス?らしき物が残されていた
「えーと、これは?」
「小さいほうの皿にはムッツリーニが作った胡麻団子があったんだけど食べられちゃって」
「ふーん。 で、大きいほうは?」
「え、えーと。その……」
その反応……、なんか嫌な予感がするんだけどもしかして……
「……姫路さん?」
「あ、あはは……うん」
やっぱり……
「で、これをさっきいたあの三年が食べてしまった、と?」
「うん。 それで急いでAED使って心肺蘇生させたんだよ。 いや~あの時は危なかったよ」
なぜここのクラスにはAEDが常備管理されているんだろう……
それにしてもやはりまだ無理だったか
「姫路さんの料理は木下さんの特訓でなんとかなったんじゃないの?」
「確かに薬品を使うのを止めさせたし、玉子料理はなんとか作れるようにはなった」
「それじゃあなんで」
「正確には玉子「単体」で作る料理は、ね」
「え?それじゃあ……」
そう、玉子「単体」で作る料理以外はまだ全然だめなのよね……
そもそも彼女の料理の考え方が料理=科学なんてとんでもない考え方をしているのでおかしなことになってる
恐らく好きな人の前でいい所見せようとして作ったのだろう。まあ出来上がったものは最悪な物だが……
「とりあえずコレは下げておきなさい。 姫路さんが何か言って来たら私が言っていたと言えば文句は言わないはずだから」
「う、うん。 分かったよ」
しかし心肺蘇生とはね……。 まだまだ特訓しなきゃだめか……
ふと見るとテーブルの横に紙切れがくっついているのを見つけた。 それに書いてあったのは
超刺激的オムライス!! 完食した方には豪華商品が!! と書かれてあった
……絶対無理だわなこれ
「ん? あいつら出て行ったのか? ったくこれからじっくり「交渉」しようと思ったんだが」
店の奥から蝶ネクタイをした坂本君が出てきた
「……蝶ネクタイなんかしてどうしたの? 坂本君」
「ああ、秀吉の姉貴か。 それは俺がここの店長だからな」
「ふーん。 それでさっき言ってた「交渉」はどういうものなのかしら?」
「な~にやたらとうちの店にいちゃもん付けてくる先輩方に分かりやすいようにパンチから始まり、 キック、 そして最後にプロレス技で締める「交渉」をしようと思っただけさ」
それはなんとも過激な交渉術をお持ちのようで……
「あ、そうだ。 坂本君と吉井君に」
今から紹介しようとした時、横からすぅっと雅さんが前に出た
「すみません。 貴方が坂本さんですか?」
「はい、私がこの店の店長の坂本で御座いますが」
坂本君は雅さんを客と認識したのかいつもと違う口調で対応した
うわ~なんか凄く違和感を感じるんだけど……
「あ、いたいた。 雄二! どうしよう! なんか客足が」
「おい明久、今接客中だぞ」
「で、そっちの君がアキヒサだね?」
いつの間にかクリスさんも前に出ていた
「ふぇ? だ、誰?」
こうしてこの文月学園のかつての問題児と今の問題児が出会うことになる
その頃……
「「ガタッ!!」」
「ど、どうしたの代表?」
「な、なにかあったの!? 永姫ちゃん」
「「雄二(先輩)に女の影が!!」」