転生したら猫かぶりのあの子になっていた   作:秀吉組

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第8話

「姉上、そろそろ出るのじゃ」

 

 

「ハイハイ分かってるわよ。それにはい♪これ忘れる気?」

 

 

そう言うと可愛らしいキャラクターが描かれている布袋に入ったお弁当を秀吉に手渡した

 

 

「おお!すまぬのじゃ姉上。てっきり忘れる所じゃった」

 

 

「折角作ったお弁当なんだから忘れないでよね?」

 

 

こんなやり取りをしながら姉弟は家を出た

 

 

姉弟が文月学園の入学試験に合格して二度目の春が訪れていた

 

 

「ここの桜は綺麗なんだけど相変わらず坂はキツいわね」

 

 

「そうじゃのう。何でこんな坂の上がった所に学園を作ったのじゃろうか?」

 

 

「ただ単に土地が安かったとかそんなのじゃない?ふう…ようやく見えて来たわね」

 

 

勾配のキツい坂を上がった所に姉弟が目指す学園はあった

 

 

学園の入口前に差し掛かると浅黒い肌に短髪でスーツを着ているが体付きはまるでスポーツマンのような大男が学園に入る生徒一人一人に白い封筒を渡していた

 

 

「おはようございます西村先生」

 

 

「おはようなのじゃ西村教諭」

 

 

「お、木下姉弟か。おはよう、ほれ振り分け試験の結果だ」

 

 

西村先生を始めて見たのは入学式の時に会場の場所を聞いた時だった。一応原作でどんなキャラなのかは知ってはいたがいざ本人を見るとその時は声には出さなかったが「て、鉄人!!なるほど納得だ…」と思わず思ってしまうほどの印象だったのを今でもよく覚えている

 

 

この学園では二年生から振り分け試験がありクラスは成績順にA~Fと振り分けられる、言ってしまえば一年の時の努力の成果が試される試験のようなものだ

 

 

私は渡された封筒を開けるとそこに入っていた紙には「木下優子 Aクラス」と書かれてあった

 

 

「流石だな木下姉、我が校を代表する優等生のお前には当たり前の結果だったか」

 

 

西村先生は嬉しそうにそう言った

 

 

「いえ先生日々の努力があればこその結果ですよ♪」

 

 

ここでも鉄壁の優等生を演じる姉に少し苦笑いする弟

 

 

「さて、問題はお前だな木下秀吉」

 

 

先生にそう言われ秀吉に渡され開かれた封筒の中身をみるとそこには

 

 

「木下秀吉 Fクラス」と書かれてあった

 

 

この結果にさっきの私の時とは違い少し呆れた顔をする西村先生

 

 

そんな西村先生に苦笑いをする秀吉

 

 

「木下秀吉、お前ももう少しお前の姉さんを見習ってだな」と説教をされる秀吉

 

 

私と比較されてたか表情が沈みがちになってきたので助け船を出すことにした

 

 

「西村先生、確かに今回の試験の結果うちの弟は最悪の結果を出してしまいましたが私と比較する必要はないですよ?この子にはこの子なりのやり方があったと思いますしそれにこうなったら後はもう上がるだけなんですから。ですから起きてしまった事を言うのではなく前に向かって進むにはどうしたらいいか?それをうちの弟に教えて下さればいいかと思いますよ?」

 

 

「…そうだったな。すまん木下弟、先生は無意識にお前とお前の姉さんを比較するような目をしていたようだ許して欲しい」

 

 

そう言うと弟に頭を下げる西村先生。自身に非があると思うとそれが生徒でも頭を下げることが出来る見た目はちょっと怖いけどいい先生だなと改めて思った

 

 

「あ、頭を上げて欲しいのじゃ西村教諭!今回の結果はワシの努力不足な訳じゃったし…」

 

 

「…そう言って貰えると助かる。全てとは言わないが学力はこの先生きていく中で有効な武器の一つになるのは間違いないことだ。今回の試験で失敗してしまったのならこの一年間で頑張って次の試験で挽回してみせろ、お前自身が気付いていないだけできっと姉と同じくらいの才は持っていると先生は思っているぞ!精進してみろ」

 

 

ぽんと秀吉の肩に手を置きながら西村先生がそう言った

 

 

私と同じ才があると言われたのが嬉しかったのか「はい!」と元気な声で頷いていた

 

 

「では自分達のクラスに向かうように」と言われ私達は学園に入った

 

 

「あ、それと木下弟!学校に不要な小道具は持ってくるなよ!」と西村先生の言付きで

 

 

それぞれのクラスに向かっているとさっきまで元気だった秀吉がおどおどとこっちを伺うように話しかけてきた

 

 

「あ、あの姉上?」

 

 

「ん?何?」

 

 

「そ、その、…怒らぬのか?」

 

 

「怒るって何が?」

 

 

「それは、その…ワシがFクラスになった事じゃ」

 

 

「もしかしてその事が気になっておどおどしてたの?」

 

 

そう言うと気まずそうに頷く秀吉

 

 

「はあ~。十分反省している本人に対して傷口に塩を塗るような事しないわよ。あ、でも」

 

 

そう言って立ち止まると

 

 

「西村先生はアンタのことあんだけ買ってくれてるんだからその信用に答えなきゃダメよ?全教科とは言わないけどいくつかの教科はDクラス並みにはしときなさい、わかった?」

 

 

「う、うむ…」

 

 

自信なさげに答える秀吉

 

 

「もうそんな顏しない!それとも私と同じ才じゃそんなに頼りにならないかしら?」

 

 

「そ、そんなことないのじゃ!!」

 

 

「あら♪わかってるじゃない♪…まあ頑張ってみなさい」

 

 

そう言って少し秀吉の頭をなでるとくるっと新校舎のほうに身体を向け走り出した

 

 

「あ、姉上!ま、待つのじゃ姉上~」

 

 

こうして姉弟の新学期が始まるのだった


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