ズガァァァァァァァン!!
「うおっ!?……くそっ、どうなった?」
「うわあっ!?爆発の煙でどうなったか全く見えない……」
両者の技がぶつかり合い大爆発を起こし、煙が巻き上がる。お互い、自分のポケモンの様子が見えない状態だ。
だが、これだけの攻撃がぶつかり合ったのだ。両者ノーダメージ、ということはまず無いだろう。
「ボーマンダ、大丈夫か!?」
「ピカ、大丈夫!?」
両トレーナーが今出来ることと言えば、煙が晴れるまで自分のポケモンが倒れていないことを祈るのみ。
そして、ついに煙が晴れる――――
「……ピィ」
『……』
……現れたのは、戦闘不能になったピカとまだ立ち尽くすボーマンダの姿だった。
「(あれだけの攻撃でもまだ倒れないの!?)ピカ、戻って!」
イエローは倒れたピカを急いでボールに戻す。
イエローの手持ちでは、間違いなくピカが総合力では最も優れている。が、それでも倒しきれなかった。
(ボクの手持ちは後三匹だけど……あのボーマンダを倒せる気がしない)
切り札を破られた今、他では厳しいという考えに陥ってしまう。
……一方、そのボーマンダのトレーナーであるリョウスケは全く逆のことを考えていた。
(あれは……恐らくだが、もう駄目だな。あれだけのダメージを食らってまだ堂々と立てているのが奇跡なくらいだ)
本当に負けず嫌いな奴だな、とリョウスケは思った。……だが、これ以上ボーマンダに無理させるわけにはいかない。
「ボーマンダ」
『ハァ、ハァ……なんだ?』
既に息も絶え絶えのボーマンダ。限界だ。
「(……ったく、もうぎりぎりじゃねーか)終わりだ、ボールに戻すぞ」
『まだやれ……ッ!』
「無理すんな、立ってるのもぎりぎりじゃねーか……戻れ!」
リョウスケはボールにボーマンダを戻す。そして一言、
「サンキュな、最後まで負けない姿勢、嬉しかったわ」
『……チッ』
ボールの中のボーマンダが軽く舌打ちをしたような気がした。果たしてそれはまだ戦えるのに戻されたことに対する怒りか、それとも最後まで戦い抜くことが出来なかった自分への怒りか。
(ボーマンダを戻した……?やっぱりダメージは通っていたのかな?)
次は何を出してくるんだ、と身構えるイエロー。こっちも次に出すポケモンを考える、が
「……おい、イエロー」
「……何ですか?」
そしてイエローからするとありえない一言が、リョウスケから発せられる。
「いやー、負けた。あー、負けた負けた!」
「……えっ?」
そう、リョウスケから聞こえてきたのは、敗北宣言であった。
~~~
「いや俺さ、まだ手持ちのポケモン二匹だけなんだよ。だから、これで全滅ってこと。イエローは、まだ手持ちあるだろ?」
「えっ?えっ、はい、いますけど……」
唐突すぎる宣告に、まだ混乱しているイエロー。これからどう戦おうかと考えているところに、突然勝利が舞い降りてきたのだ。
(でも……全然勝てた気がしないや)
最初のイーブイにも初っ端からやられ、ボーマンダには相当苦しめられた。もしリョウスケが六匹のポケモンを所有していたなら、この勝負はどうなっていたかわからない。いや、むしろ負けている可能性のほうが高かっただろう。
「そーいうことで、俺の負け。……初バトル、勝ちたかったがなぁ」
「あの……二匹なら最初から二対二のバトルってルールでやればよかったんじゃないですか?」
「……あっ」
「……」
リョウスケ、わざわざ自分の首を絞めるようなルールを提案してしまうという痛恨のミス。
お互い無言という微妙な空気が、この場を支配する。
「いや、まぁあれだよ?二匹でどこまで戦えるか、っていう自分を追い込む「絶対嘘ですよね」……はい」
「(チクショウ、確かに二対二でなら、勝ててたか……?何故思いつかなかった、俺)っと、ポケモンの傷の回復やらないとな」
そう言ってリョウスケはボールから戦い終えた二匹のポケモンを出し、バックから傷薬を出そうとするが、
「あ、回復ならボクに任せてください!」
「え?いや悪いよ、傷薬負担させるなんてさ」
「いや、ええと……そういうわけじゃなくて」
イエローがすっと傷ついたポケモン達に手をかざす。するとポウッ、と柔らかい光がポケモンをかざすと同時に傷が徐々にふさがっていく。
「え、え?どうなってんの?」
「やっぱり、初めて見たら不思議がりますよね。ボク、ポケモンの傷を癒す力と何を考えているかなんとなく読み取る力、というのを持っているんです」
「癒す力と読み取る力……?」
聞いたことが無い、そして信じがたい力である。
もし本当なら、非常に強力で、便利だ。
『あー、気持ちいい。あー、そのもうちょい横の翼の傷ついたところも頼む』
「……イエロー、今ボーマンダが思っている事わかるか?」
「えっ?……うーん、こっちの翼の傷を治して欲しいのかな?」
『おっ、マジでわかるのか!』
「すげーな……」
俺は声が聞こえるからわかるけど、その言った希望を理解できたのならそれは本物だ、とリョウスケは思った。
イエローがそんな嘘をつくとは到底思えないし、それに実際に傷を治しているのだから、と。
「あっ!そういえば」
「ん?どうした?」
「リョウスケさん、ポケモンと……その、会話してますよね?」
「気づいた?……まぁ、不思議だよなぁ」
イエローがバトルの前から気になっていたこと。
それはポケモンと会話をすることが出来ているリョウスケの力である。
「ポケモンと会話できるっても、全てではないんだよな。俺の手持ちのポケモンとは会話出来るけど……なんだろ、信頼関係が築かれてる同士なら会話が出来るみたいな?俺も、何で会話が出来るのか自分でもわかってないんだよな」
会話が出来る条件というのも、あくまで推測の域でしかないが。本人ですらこの力が何故あるのか、どんな力なのかということを理解できていないのだ。
『お……傷が癒えた、凄いなこの力は』
『僕の傷も完治した!リョウスケ、イエローにありがとうって言っておいて!』
「……お、もう治ったのか」
無事、体力を回復した二匹のポケモンをリョウスケはボールに戻す。
「イエロー、俺のポケモン達がありがとう、だってさ」
「いえいえ、そんなお礼されるようなことじゃあ……って、リョウスケさんの力、やっぱり便利ですね」
「イエローの力も負けてないと思うけどな、癒しの力か……薬要らずだな」
「そうですね、僕もこの力を持っていてよかったと思います。ポケモンが傷つくのは、やっぱり嫌だから……そういえば、リョウスケさんはこれからどうするんですか?」
「いきなり話変わったな……」
と言われたものの、どうしようかとリョウスケは考える。
(一緒についていって四天王を倒す!なんて言ったらイエローは怒るだろうしなぁ……というか、カントーが今どうなっているのかすらわからないし、色々回って探ってみようかな?)
と、ふとリョウスケは気になることが出てきた。
「そういえばさ、イエロー」
「なんですか?」
「ここってさ、カントーのどこ?」
そう、カントーということはわかるのだがカントーのどこ、ということまではさっぱりわからない。
「えっと、セキチクの少し離れたところにある釣りの名所ですね……あっ、そういえばカントー来たばかりならここら辺の地理、わからないですよね。地図、いります?」
「えっ?お、おう……いいの?」
「地図は旅に出るときに予備に多めに持ってきているので大丈夫ですよ!」
そしてイエローはリュックからガサゴソ、と地図を取り出す。俗に言う、ゲームのタウンマップだ。
「サンキュー、なるほど、現在地はここか……」
地図を見たリョウスケはよし、と一言呟いて
「俺はセキチクに寄ってから、タマムシに行くかな。イエローはどうするんだ?」
「ボクは……これからグレン島に行く予定ですね」
「そっか、ならこれでお別れだな」
「そうですね」
あっ、と呟いてから紙に何か書き出し、それをリョウスケに渡す。
「これ、ボクの連絡先です。何か困ったら、気軽に連絡ください!」
「おっ、そうか?なら、俺も」
リョウスケも同じように紙に連絡先を書き、イエローに渡す。
「困ったときは、お互い様ってな」
「ふふっ、そうですね!じゃあ、これで……」
別れようとした時、突然ボールの中のボーマンダがリョウスケに何かを伝える。
「えっ、何?……おう、ちょ、ちょっとイエロー待って!……ちょっと、行かないで、本当に待って!」
「は、はい!?何かまだありました!?」
慌ててイエローを呼び止めるリョウスケ。
「いや、何かさ……ボーマンダが、そっちのピカチュウはまだ力出せるだろ、10万ボルト以上の……だってさ。」
「10万ボルト以上?ピカが?うーん、よくわからないですけど……」
「うん、俺もよくわからんから大丈夫だ」
10万ボルトとは電圧の強さではあるが、それと同時にポケモンの技の名前である。
以上、と言われてもいまいちピンと来ないものだ。
「でも、伝えるってことは何かあるのかな?……でもやっぱり、リョウスケさんの力は便利ですね」
「確かに、ポケモンの意志をはっきりとわかるってのは便利だな」
「……とにかく、アドバイスありがとうございます!……では、今度こそ」
「ああ、今度こそまたな、イエロー。どこかでまた、会えるといいな!」
こうしてリョウスケとイエロー、二人は別々の道を歩き出すことに――――
関係ない話ですけど、WBCやばいですね。
自分は日ハムファンなのですが、個人で井端選手のファンになってしまいました。