本当に、感謝です。そしてこれからも、この作品をよろしくお願いします!
イエローと別れ、海岸沿いを歩きセキチクに向かうリョウスケ。
「えっと、ここからだいぶ真直ぐ歩いてから左に曲がって……意外と距離あるなぁ」
ゲームでは数秒歩くだけで町にたどり着くものだが、いざ自分の足で歩くとなるとそれなりの距離がある。
『おい、面倒くさいから飛んでいこうぜー』
『まぁ、リョウスケも初めての場所だし少し歩いて回りたいんじゃない?そんなに焦る必要も無いだろうし』
『……ま、それもそうか。でもずっとボールの中ってのも退屈だな。おーい、リョウスケー!』
『んー、それは僕も少し共感できるかも。居心地はいいんだけどね』
(元気だなこいつら……ってか、ボールに居たがらないって某アニメのピカチュウかよ)
アニメにいたSトシくんのピカチュウは、ボールに入りたがらない性質なのだ。この二匹のやりとりを見ていると、それに少し被る。
(……でもまぁ、天気もいいしこいつらにとっても初めての場所だから無理もないか)
とリョウスケは思い、
「……お前ら、ボールから出るか?」
『出せー!』
『……僕も出てみたいかな』
「おっけーおっけー。でも暴れるなよ、特にボーマンダ」
『……おい、どういう意味だ?』
『そのまんまの意味でしょ』
『あ?』
『何さ』
(元気だなこいつら……)
そしてリョウスケは二匹をボールから出し、一緒に歩く……のだが、
『おい、何でイーブイがリョウスケの肩に乗ってるんだ?』
ボーマンダは普通に歩き、イーブイはリョウスケの肩に乗っている状態である。
『何でって言われても、居心地がいいからとしか』
(……結構重い)
『甘ったれてるなー、おい。自分の足で歩こうとは思わないのか?本当にセンリに厳しく鍛え上げられたのかよ?』
『いいじゃん、ボールから出てくることなんてそんなに無いんだし。それとも、リョウスケの肩に自分は乗れないからって嫉妬でもしてるの?』
『バッ……馬鹿か!?なわけねーだろ!』
「おい、お前らケンカするな。暴れるなって、さっき言ったばかりだろーが。あとボーマンダ、お前は絶対肩に乗るなよ……主に俺の身が危ない」
リョウスケが口を挟むことで両者はようやくおとなしくなる。心なしか、ボーマンダの表情が少し寂しそうに見えた。
(……ボーマンダ、マジで乗りたかったとか思ってないよな?いや、無いとは言い切れない所が怖ぇ……今後も用心はしようか)
~~~
それからしばらく歩いた後、ようやくセキチクに行くための左に曲がる地点にたどり着いた。
「っと、やっとここで曲がる場所か。……もう夕方になっちまったのか、早いな」
ここでボーマンダはある事に気がつく。
『なぁリョウスケ、あの海岸のところに……やけに傷ついているポケモンがいね?』
「俺からは見えないけど……イーブイは見えるか?」
『僕も見えないけど……』
リョウスケとイーブイはこの現状に全く気がついていない。
ボーマンダも俺の思い過ごしか?と一瞬頭をよぎったが……
『……いや、いる』
思い過ごしなんかではない、あれは確実にいる。そう判断したボーマンダは、
「って、おい!?」
バサァッ!と翼を広げ突如飛び去る。
「ったく、イーブイ、追いかけるぞ!」
『うんっ!』
イーブイも肩から降り、急いで走ってボーマンダを追う事に。
~~~
「ッ、何だよこれ……!」
ボーマンダを追った先にいたのは……身体中にひどい傷を負ったあるポケモンの姿。
「とにかく、傷薬で治療しないと……!この傷なら凄い傷薬とか使っていかないとやばいな」
(何でセキチクのすぐ近くに生息地不明のラプラスがいるのかわからんが……そんなことは今はどうでもいい。とにかくこのままじゃ危ない)
ラプラスとは本来、ゲームではイベントでしか手に入らない珍しいポケモンだ。それが傷だらけの身体で、セキチク近くの海岸に打ち上げられているのである。
『なあ、これならボールで捕まえてセキチクのポケモンセンターで回復したほうが早いんじゃねーの?』
『あっ、確かに……』
ボールに入れてポケモンセンターに運ぶことが出来れば、すぐに全回復させることが出来る。傷を早く回復させるには、その方法が一番効率がいいだろう。
……だが、リョウスケは
「……いや、ダメだ。」
『えっ?』
「今日はここで野宿だ。日も落ちてきたし、ちょうどいい。……ボーマンダ、イーブイ、悪いけどさ、このラプラスが他の野生ポケモンに襲われないように交代で見張りを任せても大丈夫か?」
『おうよ、任せとけ』
「……本当に、悪いな」
『ちょっとリョウスケ?そんな事するより急いで運んだほうが……』
リョウスケの行動に少し納得がいかないイーブイ。
だがボーマンダはそんなイーブイを落ち着かせるかのように、
『おいイーブイ、野宿は決定だっての』
と声をかける。だが、イーブイはまだ納得がいかず、
『……何でさ?ボーマンダもそれでいいの!?』
と少し声を荒げる。
『ま、リョウスケにも考えがあるんだろ、いいんじゃねーの?』
『でも……』
『それにさ、こういう時こそトレーナーであるリョウスケを信じるもんじゃね?よくわからんけど』
『……ッ!』
信じる、という言葉で説き伏せられるイーブイ。
そんな現状を察して、リョウスケも声をかける。
「……イーブイも、悪いな」
『……うん、わかった』
一応のところ納得したイーブイ。
そして今夜はここで、野宿をする事に。
~~~
そして深夜、今はイーブイが見張りの時間だ。
「……ぐぅ」
『ぐぉー……ぐぅ』
『……何でだろ、未だにわからないや』
イーブイは考えていた。
何故リョウスケは、あそこにいる傷ついたラプラスを捕まえないで手当てだけをしてこのようなことをしているのか。
いくら傷薬で応急処置をしたとしても、かなり傷ついていたため完全には治っているわけではない。ポケモンセンターに運べば、すぐに完治できる話なのに、だ。
『ぐぉー……』
『……すぐに信じる、なんて言えたボーマンダが少しうらやましいかも。……ま、くよくよしてても意味無いかな』
切り替えてしっかり見張りをしよう、そう考えた矢先の事。
『……んっ』
『……あ、目が覚めた!』
傷ついて気絶していたラプラスが、ようやく目覚める。
『……ここは?』
『セキチクの近くの海岸だよ、ラプラスはそこに打ち上げられていたんだ。それを見つけた僕のトレーナーが、手当てをしたんだ』
『……』
『……ねぇ、何でそんなに傷だらけになってここにいたの?』
当然の疑問だ。
身体中が傷だらけになって打ち上げられるなんて事は、普通ではありえないことである。
『……あっ、話しにくいかな』
『いえ……大丈夫です』
そしてラプラスは自分の身に起きたことを話す。
『私がいつものように、海を漂っていた時のことです。いきなり羽のマークのついた服を着た人間たちが、飛行ポケモンと共に空から襲撃してきて……』
『……襲撃?なんで?』
襲撃という言葉に何だよそれ、信じられないというかのようにイーブイは問いかける。
『それはわかりません。……ですが、恐らくはただの暇つぶしでしょう。彼らは笑いながら集団で攻撃してきて、私は一匹だったので数人を撃退するのがやっとでした』
『暇つぶし……だって?そんなひどい人間が……』
目的は定かではないが、もし本当に暇つぶしであるならば、かなりひどい話だ、とイーブイは思った。
ポケモンはストレス解消の道具なんかではない。センリも言ってたし、リョウスケだってそんなことを聞いたら間違いなく怒るだろう、と。
『……ええ、私はそれを傷つきながら見て思いました。人間とは、こうも醜いものなのか、と』
『……』
イーブイは言いたかった。全てがそんなひどい人間じゃない、リョウスケのような優しい人間だっている!と。
……だが、今のラプラスにそう言っても通じるかといえば、絶対通じるとは言い切れないとも思ってしまった。それほどまでにひどい仕打ちを受けているのだから。
『……でも』
『……ん?』
『イーブイのトレーナーのような優しい人もいるのですね。見ず知らずの私の手当てをしていただけるなんて』
『……うんっ、リョウスケは僕の自慢のトレーナーなんだ!』
よかった。
まずイーブイはそう思う。自分のトレーナーであるリョウスケを認めてもらえたのもそうだが、ずっと人間を憎んでいるのではラプラスの為にもならないと思っていたからだ。
『それに……私を気遣ってくれたのでしょう?』
『……気遣う?』
気遣うの意味をちょっと理解できなかったイーブイは、反復して問いかける。
『ええ。……こんなことを言うのも何ですが、傷ついた私を捕まえようと思えばすぐ出来たはず。それをしなかったのは……』
『……もしかしてリョウスケは』
『何となくですが、私がこのようにやられたと言うことを予想していたのではないでしょうか?それで人間にやられたところを人間が捕獲したら私の心がもっと傷つくとか考えていたのかも……ポケモン思いと言うか、面白い人ですね』
『あっ、そういうことか……!』
イーブイは理解した。なぜ、リョウスケは最も早い方法で身体の傷を治そうとしなかったのか。
『身体の傷は治せても心が傷つく……そういうことか』
身体の傷を治すことも大切だが、それよりも心のほうを優先したのだ。
心の傷とは、身体と違って簡単に治るようなものではないから。
『とてもいいトレーナーですね、リョウスケさんは』
『うん、今までもいいトレーナーだと僕は思っていたけど……今日でさらにその思いが強くなっちゃったかも』
『ふふっ……楽しそうですね、リョウスケさんとの旅』
その問いに対し、イーブイは笑顔でこう応える。
『うんっ!まだ旅を始めて間もないけど、凄く楽しいよ!それに僕の他にもボーマンダもいるしね。……ケンカばっかりしてるけど』
『ボーマンダ?』
『うん、あそこに寝てる……』
イーブイは寝ているボーマンダを指さすが、
『ぐぉー……イーブイ、お前次調子に乗ったら噛み砕いてやんぞ……ぐぉ』
『……』
ま、まぁ寝言だしね、そんなことにいちいち怒るほど僕は子供ではない、とイーブイは冷静になる。
『ぐぉ……短足イーブイ……』
『……ブチッ』
『……楽しそう、ですね?』
イーブイは思う。
あいつ後で殴る、と。
『っと、そんなことより……ラプラスも僕たちと一緒に、旅しないかな?』
『私も、ですか?』
『うん、きっと楽しいし……それにまだ、僕たちポケモンが二匹なんだ。水、氷の強力な技を使えるラプラスが加われば、怖いもの無しだよ!』
『そうですね……』
ラプラスは少し考える。
リョウスケのことはとても優しい人間であると認めているものの、基本的に人間がまだ憎いという感情のほうが勝っているのだ。そんな自分が一緒に旅をすればリョウスケに迷惑をかけるのではないか、と。
『それにリョウスケなら……』
『リョウスケさんなら?』
『どんな理由があろうとも、絶対ラプラスを歓迎すると思うよ。……きっとまだ、ラプラスにももやもやした感情が残っている気がするんだ。でも、リョウスケはそういうの気にしないと思うよ。むしろ、そのもやもやした感情という問題に、一緒に戦ってくれると思う』
『……』
考えるまでもなかったかもしれない。傷の手当までしてくれて、自分をここまで思ってくれる人間、いやトレーナーがいるのだ。ならばそれに応えるべきだろう。
『ええ、決めました。私は……一緒に旅がしたいです。そして私を手当てしてくれ、守ってくれたリョウスケさんを、守りたいです』
~~~
「ふぁ……よく寝たぁ」
朝になり、目覚めるリョウスケ。
「っと、そうだ。あのラプラスは大丈夫か?」
テントから出て、様子を見に行くが……
「お、いたいた!怪我のほうは大丈夫か?」
『あ、おはようございます。……この度は、本当にありがとうございます』
丁寧に礼をするラプラス。それに対しリョウスケは、
「ああ、いいってことよ」
と笑顔で応える。
『その……お願いがありますが』
「……どうした?」
『私も、リョウスケさんと一緒に旅をしたいです!どうか、お供させてもらえないでしょうか?』
「……なーんだ、そんなことか。お願いって言うからてっきり凄いことでも言うのかと」
リョウスケはさも当然かのように、ラプラスに
「……大歓迎だよラプラス、これからよろしくな!」
と、歓迎の言葉をかけた。
ここに三匹目の仲間であり友達である、ラプラスがリョウスケのパートナーとして加わることに。
……が、リョウスケはあることに気がつく。
「……なあ、イーブイとボーマンダを見なかったか?俺の手持ちのポケモンなんだけどさ」
『えっと……あそこに』
「ん……?」
ラプラスが示した方向、そこには
『てめぇぇっ!朝から俺に殴りにかかるたぁ、死ぬ覚悟は出来てるんだろうなぁ!?』
『そっちこそ、ボッコボコにされる覚悟は出来ているんだろうね?僕の悪口寝言で散々言っておいて』
『はっ、ちょうどいい、あの試験のときは中途半端な終わり方だったからな。完膚なきまでに叩きのめす!』
『それは僕の台詞だっての!』
『は?コモルー時代の俺にやられたくせに進化した俺に勝てると思ってるんですか?しんかポケモンとか言いながら未進化のイーブイくうぅぅぅん!?』
『ゼロ距離突進っ!』
『げふぅっ!?』
ドゴーン、バゴーン、ガゴーンと凄い音を立てながらギャーギャーと朝から暴れる二匹。
「……」
『……あの、止めなくていいんですか?』
「うん、まぁ……好きにやらせとけ」
あいつらの朝飯は抜き、ひっそりとそんなことを考えるリョウスケであった。
話を作っている最中、作者は
(そういえばイーブイって何kgあるんだろう?)
ま、そこまで重くはないだろうな~と軽い気持ちで調べてみたら……
6.5kg
意外と、ありました。
書き終えてから調べたので、修正するのも面倒くさくなってしまい……
(リョウスケの肩筋が凄いってことにしておけば大丈夫かな)
そんなことを重いながら、投稿。
ちなみに、ボーマンダの体重は102.6kgだそうです。