「大丈夫ですか!?」
ボーマンダの上に乗っていたリョウスケは、間一髪のところで攻撃を喰らいそうになっていたエリカを守ることに成功する。
「ええ、おかげで助かりましたわ。……あなたは?」
「俺はリョウスケ、あなたはエリカさんで合ってますよね?色々聞きたいことがあったんですが……」
「ええ、エリカで合っていますが。……ですが」
この現状、のんびりとお喋りを出来るような場面ではない。
「そんなことを言っている場合じゃないようですね。まずは、この周辺の軍団を片付けましょう!イーブイっ、ラプラスっ!」
「そのようですわね。モンジャラ、ウツボット!」
両者共にボールから全てのポケモンを繰り出し、四天王の軍団と対峙する。
『おらあぁぁっ!!』
『ええいっ!!』
リョウスケが指示を出さずともボーマンダは火炎放射で敵を焼き払い、イーブイは電光石火で次々と敵を倒していく。
この二匹は戦い方というのを知っているのだ。勿論、トレーナーの指示があったほうがスムーズな動きをすることが出来るのだが、そうでなくてもかなり無駄の無い動きをすることが出来る。過去の特訓などのおかげで、戦い方がある程度身体に染み付いているのだ。
そしてリョウスケもそれが出来ると信頼しているため、この二匹に関してはさほど心配すらしていない。問題は、最近加わったラプラスのほうだが……
『はあっ!!』
ごおぉぉっ!と、凄まじい冷気を持った冷凍ビームが敵に放たれる。氷に強いはずの氷ポケモンですら凍って動けなくなってしまうほどの冷気だ。
(……こっちも、俺が心配しなくても大丈夫みたいだな)
こちらも問題無しに動けている。リョウスケは知らないことではあるが元々このラプラス、敵に囲まれて圧倒的不利の状況の中数人を撃退することが出来るだけの実力は持ち合わせているのだ。
……そして一瞬のうちにこの周辺の軍団は全て倒した。
「はぁっ……よしっ」
「取り敢えずのところは、全て片付けることが出来ましたね。……本当に助かりました、お礼を申し上げますわ」
「お礼だなんてそんな……大したことしてないですよ」
「謙遜しなくても大丈夫ですのよ。……さて、確かあなたは私に聞きたいことがあると?」
「はい、えっと……」
そしてリョウスケは自分の気になっていることをエリカに問いただすことに。
「まずは……ここにいきなり現れた氷ポケモンの軍団は、四天王と関係がありますか?」
「ええ、確信というわけではありませんが……十中八九、そう見てもいいかと。何故、あなたが四天王のことを?」
リョウスケはこれまでのイエローに出会いそれとなく聞いたこと、そして噂になっていたことなどの経緯を話した。
「なるほど、あなたはあの少年と出会って……」
「はい、イエローとはあそこで別れましたが俺も今のカントーの状況や四天王などの情報が気になってここに来てエリカさんに聞こうと思ったんです。そしたら……」
「あの四天王の軍団が現れた、ということですね」
コクリ、とリョウスケは肯定の頷きをする。
「私……いや、私たち正義のジムリーダーズで四天王の動向や行方不明になったレッドの情報などを今まで探ってきました」
「正義のジムリーダーズ?」
ジムリーダーは全部で8人いる。原作と違って正義があれば悪もあるのか?そんなことをリョウスケは思った。
「私含め、ニビのタケシ、ハナダのカスミ、グレンのカツラさんの4人のことです」
「……なるほど」
「……勿論、探ってきた中でわかった情報もいくつかはあります。何故、あなたはその情報を求めるのですか?」
エリカは探るようにリョウスケに問う。
「あなたの戦いは先程見ていました。ジムリーダーである私にも引けを取らないほどの、すばらしい動きでした。もしかしたら、四天王にも対応しうる力もあるかもしれない」
ですが、とエリカは一言置いて
「あなたのような少年を、命の危険性のある場所に送りたくは無い。それが私の本音です。もし、あなたがこの情報を聞いて飛び出していくなら、私はこれを教えたくないという気持ちがあります」
「……」
リョウスケは思った。
エリカの言い分も痛いほどわかる、まだ自分のような少年を戦場に送りたくない、これは本心だろう。そして自分のことを気遣ってくれているということも。
だが、リョウスケにも向かう大きなひとつの理由がある。
「カントー地方を救いたい、なんて大きなことは言わないです。……けど、俺にも行きたい理由があります。それは」
「……それは?」
「イエローを助けたいんですよ。うーん、何というか……初めてのポケモンバトルの相手をした、まぁ俺からすると友達なんです。危険なのもわかってます。そしてそれはイエローもわかっているはず。そんな危険を冒す友達を助けたいという理由じゃ、ダメですか」
リョウスケの嘘偽りの無い気持ち、そして台詞。
(この意志……そしてこの目は)
エリカはリョウスケの目を見る。
奥底に潜む揺るがぬ意志、目の奥にはそんなものが潜んでいそうだった。そして、この目は過去に見たことがあるような気さえした。
(レッドの……いや、それよりもどちらかといえばイエローの目に近いでしょうか。決めたことは曲げない、そんな目)
ハァ、と諦めたようにエリカはため息をつく。
「何故、最近出会う子はこうも頑固な子が多いのでしょう?……しょうがないですわね、ただし条件があります」
「条件……ですか?」
「ええ。……イエローもですが、あなたも。必ず、無事に帰ってくること。よろしくて?」
「……勿論ですっ!」
それでは、とエリカは残っていた数名の精鋭達に指示を出し、何か書かれた紙を持ってこさせる。
「これは私たち正義のジムリーダーズが調べた四天王に関する資料です。そして、私たちは四天王の居場所を突き止めることが出来ました」
エリカは、地図のとある島を指差す。
「四天王の本拠地は……ここ、スオウ島」
「……スオウ島?」
ゲームを一通りやっているリョウスケからしても、聞き覚えの無い島だ。
だが、今はそんなことはどうだっていいだろう。
「ここに……四天王がいるんですね」
「……改めて言いますが、必ず帰ってくること。よろしいですわね?」
コクッ、とリョウスケは頷く。
「本当に、ありがとうございました。必ず……無事に帰ってきます!」
そして彼はすぐにボーマンダ以外の手持ちをボールに戻し、タマムシから飛び去った。
「……ハァ」
「エリカ様、あの少年を向かわせて本当に大丈夫だったのでしょうか?」
そう問いかけるのは、精鋭軍の一人だ。リョウスケのような少年を向かわせるのは、誰からしても心配なのだろう。
「あの子は恐らく何を言っても折れなかったでしょう。それに……」
「それに?」
「彼ならきっと大丈夫……そんな気がしますわ」
確信など何もない。
……だが、少しの間だが四天王の軍団と対峙していたときの戦闘、そしてあの意志の強さ。それがきっと大丈夫、と思わせるような要因であろう。
「さて……私たちは私たちで今出来ることをしましょう。町の被害を最小限に食い止めなければ」
「「ハッ!!」」
~~~
夕方、スオウ島。
この地に青い竜に乗ってきた一人の少年ポケモントレーナーが上陸していた。
そしてその少年は勢いのまま、島の内部まで歩いていく。
「本当に……わけわからん島だ」
今までの他のカントー地方の場所なら、ある程度頭に入っていたので楽に移動することができたがここではそうもいかない。
(どちらにせよここは既に相手の本拠地、油断は出来ねぇ。……そういえば)
イエローも既に上陸しているのだろうか?と彼はふと思う。
(そういや、連絡先もらったんだっけな)
今、一応連絡したほうがいいなと考えイエローに電話をする事に。
「もしもし……この番号はリョウスケさんですか?」
「ああ、俺だけど……イエロー、今どこにいる?」
「スオウ島というところです。いる理由までは、話せないですけど……」
やっぱりスオウ島にいるのか、なら合流したほうがいいなと彼は考える。
「そっか。……俺も実はスオウ島にいるんだ」
「ッ!?な、なんでっ」
「そりゃ、手助けに来たんだよ。友達が困ってたら、助けに行くのが普通だろ?」
「で、でもっ……」
イエローは出来ることなら一般人を巻き込みたくは無いと思っていた。勿論リョウスケもあのバトルで仲良くなり、困ったことがあったらお互い相談できるくらいの仲にはなったが、ここには巻き込みたくなかった。
……しかし、そのリョウスケはこの地に来てしまった。自分のことを思ってくれて嬉しいと思う傍らで、やっぱり危険だから引き換えして欲しい、とも思う。
だがリョウスケはそんなイエローの気持ちを読んだかのごとく、
「言っておくが引き返すつもりはねーぞ。イエローが何か凄い敵に立ち向かおうとしてんのは知ってる」
「なら、何で……リョウスケさんも、危険だってわかってて」
「一人より、二人のほうが上手くいく確率は高いだろ?そういうことだ、協力して全て終わらして無事に帰ろうぜ」
これはもう説得しても無理だ、とイエローは思った。これだけの意志を持って来ているのに、帰ってくださいとも言えない。
そして何より思ったのが、
「何だか決めたことは曲げない頑固なところ、ボクそっくりですね」
「んなっ……頑固じゃねーよ!」
何だかんだ、来てくれたならばかなりの助っ人になる。イエローはそう思った。
リョウスケの強さは、戦った自分が一番わかっている。
「とにかく、一度合流しませんか?そのほうが安全な気もするので……」
「ああ、それは俺も思ってた……今、イエローどこにいる?」
「ボクはスオウ島の入り口付近です。辺りが暗くなってから動こうと思っていたので」
「げっ、マジか……俺、もうかなり先のほうに進んでしまったよ。詳しい位置教えてくれ、俺も戻ってそこに向かう」
「了解です。えっとですね……」
突如。
リョウスケの背中のほうが、ゾクゾクッ!!と感じる。かなりの威圧感を与えるものが、すぐ近くにいるのだ。
「わりぃ、後で再びかけ直すわ!」
「えっ、リョウスケさん?……リョウスケさん!?」
プツッ、とすぐに連絡を切る。そして、後ろにいた者がリョウスケに話しかける。
「お前が誰かはわからんが、お別れの返事は済んだのか?」
「……まだ死ぬわけでもないのに、お別れの返事なんていらないでしょう?」
背後の者の質問に、そう応える。
「フフッ、再びかけ直す、か……本当にそんなことが出来ると思っているならば、甘すぎる」
「やらなきゃダメなんですよ。友達を裏切るわけにも、いかないんで」
そして、リョウスケは後ろを振り向き威圧感を与えている者の姿を確認し、
「この四天王ワタルに勝とうと?……面白い冗談だな」
「冗談でも何でもないですよ、俺たちは勝ちます」
「フッ、フフ……フハハハハ……面白い、面白いな君は」
リョウスケと四天王の長ワタル、ここスオウ島にて対峙する。