「しかし、だ……」
ワタルはこの目の前にいるリョウスケに対して大きな疑問を一つ抱いていた。
「何故ここがわかったとか、何しに来たか、などのちっぽけな問題はどうだっていい。大方、場所は大きな権力を持っている奴から聞き出し、来た理由なんて俺たちの計画を止めたい、とかそんなもんだろう」
大きな疑問、それは。
「何故、ここに来た?」
リョウスケはよく言葉の意味がわからなかった。何しに来たかという理由と同じではないのか?と。
「不思議そうな顔をしているな。場所を聞いたとき、そいつは四天王の恐ろしさを知っていたはずだ。そして、お前もそれを聞いているはずだろう?」
「……何が言いたいんですか?」
「逃げようとは思わなかったのか?普通なら思うはずだ。そしてこれは予想だが、場所を教えた奴もお前がここに向かうことなど望んではいなかったはずだ。むしろ、危ないから逃げろとか言ってはいなかったのか?」
「……」
「今から尻尾巻いて逃げようとも、別に俺は追いかけたりはしないさ。命が惜しいなら、それも懸命な判断だ」
ワタルの言っていることは恐らく本心だ。
今リョウスケが逃げたところで、追撃をすることも無いだろう。お前なんかに興味も沸かないから逃げたいなら勝手に逃げればいい。目がそう語りかけてきている。
「……友達が」
「ム?」
「友達が、危険に突っ込んでいるのに助けない奴なんてそれは友達なんて言えないでしょう?」
「……賛辞を送りたくなるくらい勇敢なことだな。いや、ここまで来るとむしろ愚かしいほど無謀とも言えるか?」
ワタルの目が変わった。全く興味を持っていなかった目が、少しだけ興味を持つような目に。
「……名前だけ聞いておこうか?」
「……リョウスケ」
「リョウスケ、お前は生き残る手段を自分で捨てたのだ。もう後悔しても遅いぞ?」
「……上等ですよ。俺はここで、あんたに勝つ!」
スオウ島での決戦、ここで幕が開ける――――
~~~
スオウ島入り口付近。
イエローは連絡が途切れたリョウスケが心配でしょうがなかった。
(何故連絡が途切れたんだろう……何かリョウスケさんの身に起きたとしか思えない)
どうしよう、もう内部に進むべきか。そんなことを考えていた矢先に
「なにしょげてんのよ!!」
上空から、聞いたことのある声が聞こえてきた。
「ブ……ブルーさん!……とマサキさん!?」
「そうや来たでえ、久しぶりやな」
「イエロー、あなたの危機を知って追ってきたのよ。この四天王の本拠地スオウ島まで」
新たな助っ人が加わったことにより、気が楽になるイエロー。
「なあイエロー、さっきまで相当表情が暗かったけど……どないしたんや?」
「あの、実は……」
イエローは上陸してから起きたことを二人に話した。
リョウスケがこの島にいること、そして連絡が突然途絶えたこと。
「なんやて?もしかして既に危険に巻き込まれてるんじゃ……」
「多分……四天王の誰かと遭遇したと見て間違いないわね」
その情報から、冷静にブルーはそう分析した。
「そんな、だったら……早く助けに行かないと!」
「慌てないで、慌てても何もいい事は無いわ」
「でもっ……!」
「あなたが言うにはそのリョウスケ君というのは強いんでしょう?だったら、彼を信じましょう」
(盗聴してた癖にリョウスケ君というのはなんてよく言うわ……)
心の中で突っ込みを入れるマサキ。
「どちらにせよ向こうの場所もわからないし、突き進みましょう。それが彼と合流する一番の近道よ」
「……そうですね」
「とにかく、このブルーさんが来たからには敵の好きにはさせないわ」
ブルーはそう言ってとりあえず行動指針を定め、ブルーを落ち着かせる。だが、彼女も
(一般人を巻き込んでいるのは予想外ね……ピカと互角に遣り合える位の実力はあるみたいだし、無事だといいのだけれど)
と内心少し焦っていた。
そしてこちらもまた、スオウ島内部へと進むため動き出す――――
~~~
スオウ島内部のとある場所。
(一匹一匹なんて余裕は無い。最初から全勢力で思い切りいくっ……!)
「ボーマンダ、イーブイ、ラプラスっ!」
ボボボボッ!!と全てのポケモンを出す。
「ホウ?見たことないポケモンだが、そちらも竜を所持しているのか、面白い!プテラ、ハクリュー!」
ワタルもボールからプテラ、ハクリュー二匹をボールから繰り出す。ちょうどお互い、三対三のバトルという形になった。
「(出し惜しみをしている暇なんてないっ!)ラプラス、冷凍ビームでプテラを狙え!ボーマンダはイーブイを背に乗せ、そのまま空を飛ぶっ!」
ゴウッ!と勢いのある冷気を纏ったビームがプテラを狙い打つ。かわされるが、プテラとハクリューを分断させることに成功する。
「フン、プテラとハクリュー達を分けたか……だが、それがどうした?」
プテラは冷凍ビームを避けながらラプラスにそのまま突進してくる。
「ッ!避けろラプラス!」
『くっ!』
間一髪で突進を避けることに成功する。だが、
「たまたま避けれたようだが……何時まで持つかな?」
(まずい……相性では完全に勝っているのにこのままだとラプラスは攻撃を受ける。だったら)
ラプラスには粘ってもらい、その間にまずはハクリューを倒しそしてその後にプテラを倒すしかない。と考えたリョウスケは
「ボーマンダ、空からの勢いでそのままハクリューに捨て身タックル!イーブイも勢いのまま突進!」
『おらあぁっ!』
『てやあぁぁっ!』
「……ム?狙いを変えたか。だが無駄なこと」
ハクリューはそのまま攻撃をかわすことも無く――――受け止めた。
「ッ!?」
「避ける必要が無いということだ。……ボーマンダの攻撃は思ったよりもダメージが深いが。イーブイにしても、思ったよりもダメージが大きいか?」
しかし、と一言加え
「それでも、倒れるほどではない。……このワタルの竜軍団をなめるなっ!ハクリュー、そのままたたきつけろ!」
『ぐぁっ!?』
『ちぃぃっ!!』
ハクリュー達のたたきつけるが炸裂し、ボーマンダは耐えるがイーブイはもろに大きいダメージを喰らってしまった。
「ボーマンダは耐えるか、中々やるじゃないか?だが、イーブイはもう虫の息だろう。そして」
『ぐっ!?』
「ラプラスっ!?」
「そっちのラプラスも粘ってはいたが、そろそろ苦しくなってきただろう?ボーマンダだけは唯一互角に戦えるかもしれないが、この三対一の状況で勝てるわけが無い」
ラプラスも攻撃をかわし続けていたが、何発か小さいダメージを喰らい、それが積み重なり体力がもうわずかしかない。
「なあ、リョウスケ。何故竜は氷を除き、竜同士としか相性がよくないと思う?」
「……?」
「それはだな、竜は竜でしかまともに相手することが出来ないからだ。氷も苦手ではあるが、攻撃が当たらなければどうということは無い。フフ……フハハハ!何が言いたいか教えてやろうか?このワタルの竜軍団に最初から勝ち目は無かったということだよ!フハハハハ!」
「ッ……!!」
竜とはそれだけ絶対的な強さを誇っている。
そしてその竜という絶対的な強さを、ワタルは持っているということだ。
「さて、この状況だ。今一度チャンスをやろう。尻尾巻いて逃げるというのなら、逃げても構わないぞ?」
「くそっ……!」
この現状、ほぼ勝ち目は無いかも知れない。ボーマンダもイーブイもラプラスもこれ以上傷つけたくない。ここで、引き返すしかないのか……?とリョウスケは弱気になってしまった。だが、そこに声がかかる。
『諦めんじゃねぇよ!!リョウスケ!!』
『そう……だって、僕もまだ……やれる!』
『そうです……ここで諦めるわけには行きません!』
「(……俺は馬鹿か、弱気に何かなってるんじゃねぇ)誰が、逃げるかってんだ……!」
「……そうか。そんなに死にたいなら、死ぬがいい。ハクリュー、破壊光線だ!」
ドシュッ!と高威力の光線がリョウスケに飛んでくる。
「まずっ……!?」
直撃は避けることに成功する。しかし余波と飛んできた岩を思いっきり喰らってしまう。
「ガハァッ!?」
「フン、直撃は免れたようだな。余計苦しくなるだけだというのに」
「誰が……ゲホッ、喰らうかっての、ゲホッ」
「ならば、もう一発だ。早く、楽になれ」
再びハクリューの口元にエネルギーが充電される。
『くそ、させるかってんだ……邪魔だどけっ!!』
ボーマンダは阻止しに行こうとするが、エネルギーを充電していないほうのハクリューに妨害され止めることが出来ない。
そしてラプラスもプテラと対峙しているため、そちらに向かうことは出来ない。
(くそ、万事休すか……!?)
リョウスケの頭に死という一文字がよぎった。先程諦めるなと言ったはずのボーマンダやラプラスですら、リョウスケがこのままでは死んでしまうと思ってしまった。
……だがここで、奇跡が起きる。
『させるかぁぁぁぁぁ!!!』
絶対にリョウスケを死なせない、そんな決意を表現しているかのようにイーブイの身体が光り始める。
もう少しで、カントー編が終わりそうです。
ここが終わったら、少しオリジナルの番外編の予定。