「……着いたー!長かったー!」
「うわぁ、ここがアルトマーレですか……綺麗なところですね!」
リョウスケとイエローの二人はクチバからの長い長い船旅を終えて、ここアルトマーレにたどり着いた。
ちなみにクチバを出たのが午前中で、現在はもうすぐ夕方を迎える時間帯だ。
「しかし、疲れたなぁ……俺、実は船旅なんて初めてだからさ」
「ボクも何回か乗ったことはありますけど、未だに慣れないですね」
慣れない船旅を終えて、二人ともクタクタである。
「あれ……今日のこれからの予定ってどうなってるの?」
「えーっと……今日は、特に無いみたいですね。明日がこの町の名物とも言える水上レースで明後日の午前中がポケモンバトルの大会、お昼に船で帰るって感じみたいです。ほら、ここに」
イエローは手に持っていたパンフレットをリョウスケに見せる。
「どれどれ……おっ、本当だな。んじゃあ、今日の残りの時間は自由行動って感じかな?」
「そうですね、せっかくですしこの町を色々見て回りたいです」
「俺もその意見には賛成だな。……んじゃ、さっさと荷物置いて観光と行きますか!」
こうして二人は、指定された宿へと向かうことに。
~~~
二人はようやく宿に到着しお互いの部屋を探す、が。
「……ん、どうやら同じ部屋っぽいな」
「まぁ、さすがにペアでの当選ですからね。別々の部屋って訳にもいかないでしょう」
「それもそうか」
リョウスケとイエローはそれぞれ荷物を部屋に置く。
(あっ……!?)
……そして、この時一人は頭に電流が流れたかのようにとんでも無い事に気がついてしまった。
その一人、とはイエローである。
むしろ何故、今この瞬間まで気がつかなかったのか。イエローは困惑する。
(……ああああああっ!!お、同じ部屋って……同じ部屋って!何でこんなことを今までスルーしてたんだろう、ボクの馬鹿!)
このようにイエローが焦っている原因、それは。
(お、男の子と女の子が同じ部屋って……まずい、まずいです!)
……結論から言うと、リョウスケ、男。イエロー、女。
元々イエローは、トキワの力を除けば町に住んでいる何の変哲も無い女の子だった。……だが、レッドを探す旅に出る際、ブルーに女であることを隠したほうがいいと言われ一人称を私からボク、そしてポニーテールを隠すように麦わら帽子を常備するようになった。
事件が解決してからも、イエローは癖が抜けなくなったのか一人称もボクのまま、外に出るときは肌身離さず麦わら帽子を被っている。
パッと見だけなら、普通の麦わら少年だ。半年間トキワに住んでいるリョウスケでさえ、現在のところは完全に男だと思って接している。
(えーっと、どうすれば……この状況……いや、リョウスケさんなら別にやましいことは考えないはず……ってそんな問題じゃなくて)
色々と混乱しているところに、
「イエロー?」
「ひゃ、ひゃい!?」
リョウスケがイエローを呼びかけた。本来なら何の変哲も無い呼びかけなのだが、現在のイエローに対しては効果が抜群だったようで……とんでもない声が出る。
「……なんか、ごめん?」
何をしたのかわからないけど、色々と凄かったのでとりあえず謝っておくリョウスケ。
「え、えーと?何ですか?」
「いや、そろそろ出かけないか?って言おうとしたんだけどさ、やけに驚かせちゃったみたいで」
「あ、そそそそうですね!時間もあれですし、行きましょう!」
(……なんでイエローこんなに落ち着きがないんだ?)
問題は後回しにして、とにかくまず外に出て切り替えよう、とイエローは考えたのであった。
~~~
「それにしても、本当に綺麗ですよね!ここは」
特に目的も無く町を歩く二人。
イエローは何とか、一応落ち着きを取り戻したようだ。
「そうだよな、海の上に町があるって感じだよな……不思議な町だよなぁ。ってか、さっきから俺たち綺麗だ綺麗だしか言ってないよな?」
「言われてみれば確かにそうかも……でも、本当に綺麗ですからつい」
「そうだよなぁ……そしてこの夕日がまた、うん綺麗だ」
さっきから綺麗しか言ってないこの二人。
現在はちょうど夕日が出ているところで、それがまたこの元々美しかった水の都を、別の美しさへと変える。
……二人が綺麗しか言わないのもしょうがないのかもしれない。その綺麗という、シンプル且つ最大限の評価しか、出てこないような町なのだ。
「えーっと、地図によればこの道を抜ければ大きな広場に出るみたいですね」
「確かに水の流れている場所を見ているのもいいけど、町の内部も見てみたいな」
「あっ、そこの角を左に曲がります……って、あれ?」
曲がり角の先で何かを見つけるイエロー。
「ん?どした?」
「あそこで……ポケモンバトルやってません?」
「えっ、マジか!?」
イエローは先に歩いていたためリョウスケよりも早く広場で起きていることを見ることができた。そしてバトルという言葉に勢い良く食いつくリョウスケ。
半年特訓はしてきたが、人とバトルする機会はあまりなかったのだ。たまにトキワシティの同年代くらいの人とバトルをすることはあるが、結構圧倒してしまうことが多く物足りなさを感じていたのだ。
イエローともバトルをすることはあるが、切り札だったピカが抜けて、リョウスケが勝つ確率がかなり増えている。
「イエロー、早く行こうぜ!」
我慢しきれないのか、リョウスケは広場のほうに思いっきり走った。
「ちょっ……リョウスケさん!?ふふっ、本当にバトルが好きなんだなぁ」
イエローもまた、リョウスケの後を追いに広場へと向かっていった。
~~~
「ほおー……これで十連勝か、すごいなぁ」
「こりゃ明後日の大会に出るなら、確実に優勝候補だな」
広場でバトルを眺めていた人たちは、その強さを目の当たりにし率直な感想を述べていく。
……一方、その十連勝をしている人物といえば。
(……ちっ、バトル自由だったから暇つぶしのつもりだったけど……その暇すら潰せなかったね)
この人物は強い人物とバトルがしたく広場で戦っていたが、相手はどれもこれも雑魚ばかり。何も面白くも無かったということだ。
(あーあ、面白くないったらありゃしない。今日はさっさと宿で、寝るとするか……)
そしてその人物は広場を後にし宿へ向かおうとする――――が。
「お、少年もバトルをしにやってきたのか?」
「いいぞー!面白いバトルを見せてくれー!」
どうやらまた誰かが来たらしい。
「あなたがさっきまでずっと勝ってた人ですか!?俺ともバトルしてください!」
(……あー、面倒くさ)
もう休みたい、とも思ったが周りの盛り上がりがそれをさせてくれない。そして相手が少年だったということもありバトルをしてあげないというのも大人気が無いな、とこの人物は思った。
だったら、適当にバトルしてさっさと終わらせよう、と。
「……しょうがない。キュウコン、適当に遊んであげな」
ボールから自分のポケモンを出し、低いテンションのまますぐに終わらせようとした。相手も少年だし、どうせすぐに終わるだろうと。
……だが、この人物は思わぬものを目の当たりにする。
「ブースター、電光石火!」
ガゴォォォン!
ブースターの電光石火が炸裂しキュウコンは近くの壁へと吹き飛ぶ。
(なっ……!?)
「おお、あの少年すごいぞ!」
「連勝をストップさせるかー!?」
この相手、今までの人物とは違う。
この一つの攻防だけで、すぐにそう感じ取った。
~~~
「舐めないでくださいよ」
リョウスケは感じた。相手は適当にこの場を終わらせようとしていたと。
だがリョウスケはお互いに全力でのバトルがしたいのだ。自分のやりたいことはこういうバトルではない。
「ふっ、ふふ……」
相手が静かに笑い声をあげる。
「いやあ、すまないね?……実は、十連勝なんていっても歯ごたえの無い奴らばかりだったのさ。でもアンタは……さっきまでの雑魚とは違うみたいだね?」
さっきまでやる気の無い目をしていたこの人物も、一気に目が変わる。相手もまた、強者を探していたのだ。
「ようやく、全力で焼き尽くせるような相手が見つかったよ……アンタ、名前は」
「……リョウスケです」
「リョウスケか。……あたしはカガリ、じゃあさっそくやり合うとするか!」
一気に場を纏う空気が変わる。そしてリョウスケは感じる。このカガリという相手、強者だと。
「ふっ……ふふっ」
リョウスケもまた、静かな笑い声をあげる。俺、こんなキャラだっけ?なんて思いつつも、自然に出てしまったのだ。
それだけ久々に凄く楽しみということである。半年前に敗北してから、しばらく強い相手と戦うことは無かった。せいぜいイエローくらいのような物だ。そのイエローも、バトルを本気で戦うような相手かといえば、少し違う。
この半年間、かなりの特訓をしてきた。それを試したくてしょうがない。
「……行くぞ、ブースター。この半年間の特訓の成果だ!」
『うんっ!!』
ここアルトマーレの広場にて、熱い炎ポケモン同士の戦いが幕を開ける。
カガリさん登場。
ここで出るなんてん?って思った人もいるかもしれないですね。
ちなみにカガリは、ポケスペでも個人的に好きなキャラの一人です。