世界を旅することを夢見た者たち   作:ウグり

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題名で何となく察した人もいるかも。


第二十話 修羅場

「リョウスケさーん!!」

 

 

 

バトルを終えたリョウスケの元へ、イエローは駆けつける。

 

 

 

「お、イエロー!……俺のバトル見てた!?」

 

 

 

非常にいいバトルを終えたせいか、満足気で笑顔のリョウスケである。

 

それに対し、イエローは。

 

 

 

「それはもう、ずっと見てましたよ!あんな周囲に火の粉飛び散らすくらいですから……というか、ボクのこと走って置いて行かないでくださいよ!」

 

「あ、わりぃ……」

 

 

 

リョウスケはバトルがやっていることを知るや否や颯爽と走っていったので、そのことに対してちょっと怒っているイエローであった。

 

 

 

「ん、お友達かい?」

 

「あ、はいそうです……あの、バトル楽しかったです!ありがとうございました!」

 

 

 

カガリに対し、いいバトルが出来たことに対してお礼を言うリョウスケ。

 

それを聞いたカガリは、

 

 

 

「……フン、こっちも楽しめたよ。じゃあね」

 

 

 

とだけ言葉を残し、その場を後にする。

 

 

 

「あー、しっかし……疲れたなぁ」

 

「そりゃ、あれだけのバトルの後ですからね……時間もちょうどいい頃ですし、そろそろ宿に戻ります?」

 

「そうだな……今日は、ゆっくり休むか」

 

 

 

リョウスケとイエローもまた、宿に戻ることに。

 

 

 

「おう、少年!明後日の大会出てくるなら、楽しみにしてるぜ!」

 

「そうだそうだ、明後日出ろよ!」

 

 

 

周囲の人々は、今のバトルを見て明後日に行われる大会にリョウスケが出ることを願って、声をかける。

 

周りも、リョウスケの実力を完全に認めたということだ。

 

 

 

「はい、是非出たいです!……じゃ、戻るか」

 

「そうですね!……おいしい食べ物とか、たくさん出てくるのかなぁ」

 

「俺も……腹が減ったな」

 

 

 

これからの楽しみを二人で語りながら、その場を後にした。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

そして、リョウスケとイエローは宿に着いた。

 

二人は少し部屋でくつろいだ後に、レストランに向かい豪華な食事が出てきたことに、とてもおいしい、そして楽しい時間を過ごした。手持ちのポケモン達も同様だ。

 

食べることに関しての時間だけでも、お互いかなり有意義な時間を過ごすことが出来ただろう。

 

しかし、こんなすばらしい、楽しい時間もついに崩壊の時がやってきた。……主に一人だけだが。そう、イエローである。

 

事の発端は、こうだ。

 

 

 

「さて、飯も食ったし一緒に風呂入りに行くか!!」

 

 

 

なんてことを、部屋でリョウスケが言い出したのだ。

 

……いや、これは友達と一緒に宿、あるいはホテル特有の大きい風呂に入りに行くぞー!的なテンションが上がってはしゃいでいる子供にはよくある、普通の台詞である。

 

リョウスケは、特に間違ったことを言っているわけでもない。……普通なら、の話だが。

 

 

 

「……」

 

「……どした、イエロー?さっき、食べ過ぎて少し体調が悪くなったとか?」

 

 

 

特別イエローが食べ過ぎたわけでもないし、体調が悪くなったわけでもない。……ある意味泣きそうではあるが。

 

今、イエロー……彼女は、この場をどうするべきか真剣に、真剣に悩んでいるのだ。

 

 

 

(リョウスケさんには、特別隠していたわけでも無いんですけど……)

 

 

 

結果的にだが、自分が女であることを隠してしまっている。

 

これまでの生活からすると多分ではあるが、リョウスケは自分のことを完全に男だと思い込んでいるだろう。そうイエローは思っている。

 

 

 

「……リョウスケさん」

 

「ん、どした?」

 

 

 

彼女は一つの覚悟を決める。

 

 

 

「今から見せること……そして話すこと……驚くなって言うほうが難しいかもしれないですけど」

 

「……何だよ、急に改まって?」

 

 

 

自分が隠してきた秘密を、明かす覚悟を。

 

 

 

「……いきます!!」

 

 

 

パサァッ、と自分の被っている麦わら帽子を脱ぐ。……そこからは、女の子のかわいらしいポニーテールが、露となった。

 

 

 

「……えーと」

 

「」

 

「あの……リョウスケさん?」

 

「」

 

「ちょっと……リョウスケさん……?」

 

 

 

今のリョウスケの顔面状態及び精神状態を表すとするならば……ポケモンがこおり、まひ、こんらんといった状態異常を同時に受けているような感じである。

 

それほどまでに、ひどい。……いや、ひどいの一言で済むレベルではないかもしれない。

 

 

 

「お……」

 

 

 

そんなリョウスケであるが、約5秒というイエローからすると何分もの時間に感じる時を経て、ようやく口を開く。

 

 

 

「おおおお女ぁ!?女の子!?イエロー!?ボク!?え、え?」

 

 

 

……明らかにぶっ壊れてしまった感は否めないが。

 

 

 

「……リョウスケさん」

 

(いやマジかマジでかイエローが女の子……!?うぇぇぇぇ!?しかも結構可愛いし何だ何だ一体何がどうして」

 

「へっ!?か、可愛い……!?」

 

「!?」

 

 

 

あまりの動揺に、思わず心で思っていたことが口に出てしまったリョウスケであった。

 

……しかも、その言葉で二人はさらに動揺してしまう。

 

 

 

「ボク、そんな事言われたことほとんど無かったのに……」

 

「待て待て待て!俺今何て言った!?」

 

 

 

あまりの動揺っぷりに少し前のことすらちゃんと覚えていないリョウスケ。

 

 

 

「えっと、言っていいんですか……!?」

 

「お、俺何かイエローを傷つけるようなこと言っちゃったかな!?」

 

 

 

動揺しすぎて何かひどいことを言ってしまったかもしれないとリョウスケは物凄く焦る。

 

……ある意味では、ひどいことを言っているかもしれないが。

 

 

 

「い、いや、そういうわけじゃないんですけど……あの、その……か、可愛い、って」

 

「……」

 

 

 

突然黙ってしまうリョウスケ。

 

……だが、いきなり彼は動き出す。

 

 

 

「うおおおぉぉぉっ!!」

 

「え、ちょっと……ちょっとおおお!?リョウスケさああん!?」

 

 

 

突然、ベッドの枕元に移動したかと思えば枕に思いっきりヘッドバッド連続をぶちかましているのだ。

 

 

 

「俺のばかああぁぁぁぁああ!!!」

 

「お、落ち着いてくださあぁぁぁい!!」

 

 

 

……恐らくこの二人、生まれてきてから最も大声を張り上げた日となっただろう。それはもう、テレビでやるような大声選手権でぶっちぎりのトップになれるほどの。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「お、落ち着きました?って、ボクが言えることでもないんですけど……」

 

 

 

イエローも秘密を暴露する際は、かなり落ち着きの無い状態だった。

 

……だが、そんなイエローが可愛いくらいにリョウスケの焦りっぷりは半端ではなかった。

 

 

 

「……よし、落ち着いた」

 

 

 

そんなリョウスケも何とか、いつもに近い状態を取り戻す。

 

 

 

「えーと、イエローは……女、でいいん……だよな?」

 

「……はい」

 

「うん。……でも、何でわざわざ?」

 

「?」

 

「いや、その……」

 

 

 

リョウスケが特に気になること。それは何故イエローが、今まで女であることを隠してきていたのかだ。

 

……しかし、もしかしたら聞いたらまずい事情でもあるんじゃないかと思ったリョウスケは、なかなかそのことを聞き出せない。

 

 

 

「え、えっとじゃあ……何故、ボクが隠してきたのかを……話したほうがいいです……よね?」

 

「……話しにくいなら、無理しなくても大丈夫だぞ」

 

「あ、別に物凄い言いにくい理由とかじゃ無いですから……そこは、大丈夫ですよ!」

 

「そ、そうか?……なら、聞きたい……かな」

 

 

 

そしてイエローは何故これまで女であることを隠してきたのかを話した。

 

レッドを探しに行く旅の最初にブルーに言われたこと。

 

そして気がついたらそれが色々と癖になってて、隠していたつもりではないが結果として隠し続けてしまっていたこと。

 

 

 

「……あー」

 

 

 

話を聞いたリョウスケは、そんなため息にも近いような一言を漏らした。

 

 

 

「ど、どうしました?」

 

「いやー、何と言うか……色々と納得は出来た、出来たんだけどさ……」

 

 

 

自分の見に染み付いたものは、なかなかすぐに直せるようなことではない。そしてそれはリョウスケも、わかっている。

 

でも、それでもだ。

 

 

 

「この半年間……どっかで……言えなかった?」

 

「うっ……それはその……」

 

 

 

リョウスケはこの半年間でのイエローへ対する様々な行動を振り返った。

 

完全に……イエローのことを男として接していた自分がいた。その行動を恥ずかしいとも思ったし、イエローに対して申し訳ないという気持ちも出てきた。

 

 

 

(まぁ……でも)

 

 

 

それでも、時間はかかってはいるがイエローは言ってくれた。その事実が重要である。これだけの時間がたっていたのだ、言うだけでもかなりの勇気が必要だっただろう。

 

 

 

「……リョウスケさん」

 

「……ん?」

 

「その……ずっと、今まで、言えなくて……ごめんなさいっ!」

 

「……はぁ」

 

「えっ!?な、何でため息ですかっ!?」

 

「だってさぁ……」

 

 

 

呆れ顔で、リョウスケは言う。

 

 

 

「イエローが謝る必要、どこにもないじゃん?……むしろ、こんな言いにくいことよく言えたな、イエロー」

 

「えっ……」

 

「いいんだって、ちゃんと勇気振り絞って言ってくれたんだろ?確かに、ちょっと……いやかなりびっくりはしたけどさ」

 

「リョウスケさん……」

 

「何だろ……こういうとき、なんて言えばいいんだ?えーと……」

 

 

 

何か難しい良い言葉があったような、そんなことを考えるリョウスケ。

 

……だが、結局は、

 

 

 

「いや、変な言葉はいらないな。要するに……これからもよろしくな、イエロー!」

 

 

 

シンプル且つ、リョウスケが思いついた言葉の中で最も良い言葉。

 

色々と驚きはしたが、結局のところイエローはイエローなのだ。これからの接し方も……まぁ、多少は変わることはあるかもしれないが何もこれで友達をやめるとかの話ではない。友達であることに、変わりはない。

 

それを聞いた、イエローは。

 

 

 

「……ありがとうございます、リョウスケさん。そして……これからも、よろしくお願いしますね!」

 

 

 

先程までの不安そうな顔はどこへやら、笑顔でそう応えた。

 

 

 

「お、おぅ……」

 

 

 

いきなりの笑顔に不覚にもかなり可愛い、そんなことをちょっと思ってしまったリョウスケであった。

 

 

 

「……でも、ボクって言うのだけでも直せないの?」

 

「あはは、完全に癖になっちゃいまして……昔は私ってちゃんと言えてたんですけどね、今なら意識しないとボクって言っちゃいますね……」

 

「……ボクっ娘」

 

「ち、違いますよ!いや、違わないかもしれないですけど!その言い方、何か嫌です!……ちょっと、ニヤニヤしないでくださいよっ!」

 

 

 

まだまだ、旅行先の夜の時間は続く――――

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