世界を旅することを夢見た者たち   作:ウグり

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第二十一話 温泉~女湯編~

イエローが秘密を暴露してからしばらくたった後。

 

お互い、色々なことを楽しくお喋りなどをして時間を潰していたのだが……

 

 

 

「ようしっ、風呂行こうぜ!」

 

 

 

と、声を出す男が一人。そう、リョウスケである。

 

 

 

「えっ……?」

 

「いや……ちげーよ!別に一緒にとかじゃないから、そんな顔するなって!?」

 

 

 

……こんなやりとりもあったり。

 

 

 

「……ほら、今日一日疲れただろ?だからさ、しっかり風呂入って疲れを取ったほうがいいだろ?」

 

「それはそうですね……あっ、ここの温泉」

 

「ん?……おお!」

 

 

 

……さて、突然だが大きな温泉施設になると、ポケモン浴場というものを置いていたりする施設もある。

 

具体的には男(♂)と女(♀)で、人間とポケモンが共に利用することが出来るといったものだ。常に身体から電流を放出している電気タイプのようなポケモンや、自分で体温をコントロールできない氷ポケモン等は一部利用が制限されていたりはするが。

 

そして、リョウスケとイエローがいるこの宿も、このポケモン浴場というものが設置されているのだ。

 

 

 

「俺、ポケモン浴場ある施設初めてなんだよなぁ」

 

「ボクもです!何か、これだけでも旅行に来てよかったって思えますね」

 

 

 

二人ともこのような大きな施設を利用するのは初めてである。それ故に、お互いワクワクするところがあるのだろう。

 

 

 

「じゃ、これ頼む」

 

「ん?ラプラスのボール?」

 

「そ、俺のラプラスは♀だからさ。女湯へ向かうイエローに預けるってことで」

 

 

 

本来なら男一人で来た場合、♀のポケモンは受付に預けることとなっているが、男女で来た場合は信頼の置ける人物なら、男が女に♀のポケモンを預けるといった行為は許可されている。逆も然りだ。

 

 

 

「あっ、了解です!じゃ、これも」

 

 

 

イエローも同じように腰のボールをリョウスケに預ける――――全部、である。

 

 

 

「えっ?」

 

「ボクのポケモン、全部♂なんです。リョウスケさん、お願いしますね!」

 

「お、おう……」

 

 

 

まさかの事態に、リョウスケは困惑していたり。そんなこんなで、お互い別々の浴場へ向かうことへ。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

女湯――――

 

欲求に飢えている男からすれば、まさに桃源郷。……まぁ、そんな幻想を除けば設備も何も男湯と変わらないものではあるが。

 

そして男湯としっかりと区切られているので、何かを期待している人からすると残念ではあるが、特に変な?イベントは期待できない。

 

 

 

「うわぁ……!」

 

 

 

浴場を利用している人がたくさんいるのは勿論のこと、辺りに様々な種類のたくさんのポケモンもいる。

 

 

 

「そうだ、ラプラス!」

 

 

 

イエローもリョウスケのラプラスを出す。

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

ラプラスも嬉しそうに出てくるのかと思いきやそうではなく、ちょっと複雑な表情をしているのだ。

 

 

 

(……どうしたのかな?)

 

 

 

イエローもその表情が気になって、ラプラスの気を読み取る。

 

 

 

「ラプラス……大丈夫だよ?」

 

 

 

イエローが読み取った気、それはまだラプラスの心に残っている人間への不信感だ。トレーナーであるリョウスケや友達のイエローは信頼できるのだが、このような大きな施設には危ない人間もいるのではないかという思いがどうしてもよぎってしまうのだ。

 

 

 

「ほら、ここにいるポケモン達の表情を見てごらん?」

 

 

 

どのポケモンも、楽しそうだったりくつろいでリラックスしたような顔をしている。

 

 

 

「危ないトレーナーがいたら、ポケモン達もあんな表情は出来ないから。ここにいるポケモンのトレーナーは、きっと良い人たちばかりだと思うよ!……だからさ」

 

 

 

未だ複雑な表情をしているラプラスに、イエローは一言。

 

 

 

「ラプラスもそんな顔しないで……せっかく来たんだから、楽しもう?」

 

 

 

イエローのラプラスにも楽しんで欲しいという純粋な気持ちからの一言である。

 

その一言でラプラスの気持ちに変化があったのか、表情も柔らかくなる。

 

 

 

「じゃ、早速露天風呂にでも行こう!……あっ、その前にちゃんと身体洗わないとね」

 

 

 

イエローは自分の身体を洗った後ラプラスの身体を洗ってあげて、お互い露天風呂に行くことに。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

露天風呂――――に限った話ではないが、ここポケモン浴場では大型のポケモンも利用できるように、通常の温泉施設よりも大き目の広さに作られている。……さすがにホエルオーのような大きすぎるポケモンは無理ではあるが。

 

この露天風呂でも、人を背中に乗せるほどの大きさであるラプラスでも利用できるくらいの広さはあるのだ。

 

 

 

「あー……気持ちいいなぁ……」

 

 

 

あまりの気持ちよさに、ちょっぴり腑抜けてしまっているイエローである。

 

 

 

「ラプラスも、気持ちいい?」

 

 

 

その問いに、こくんと首を縦に振って返事をするラプラス。

 

 

 

「うん、それならよかっ……たぁぁぁー……」

 

 

 

ちょっぴりどころか、完全に腑抜けてしまっているイエローであった。

 

 

 

「ぁぁぁ……あれ?」

 

「ん?あれ、アンタは……」

 

 

 

イエローはどこかで出会った事があるような、そして相手も同じことを考えていた。

 

 

 

「確か、リョウスケと一緒にいた……」

 

「あっ、リョウスケさんとバトルしてた人だ!」

 

 

 

その相手とは、夕方にリョウスケとバトルをしていたカガリである。

 

 

 

「……」

 

「……えっと?」

 

 

 

会話が続かず、気まずい空気が流れる。とりあえず会話をつなげようと思ったイエローは、

 

 

 

「あ、そういえばお互い名前わからないですよね!ボクはイエローです!」

 

 

 

と、とりあえず自己紹介をする事に。

 

 

 

「ふーん、イエローねぇ。あたしはカガリ……いやあ、男だと思っていたけどまさか女だったなんて。さすがのあたしもわからなかったよ」

 

「あぁー……はい。実は、さっきまでリョウスケさんにも言ってなくて」

 

「……は?」

 

「そりゃ、さすがに驚きますよね……ちょっとした、事情があったんです」

 

「はーん……まぁ、あたしはアンタの事情なんて興味はないけど」

 

 

 

何故かカガリはニヤニヤしながらイエローに問う。

 

 

 

「男女仲良く旅行ってことかい、それはそれは楽しそうだねえ?」

 

「いや、カガリさんが思っているようなことじゃないですってば!確かに、楽しいですけど!」

 

「……あたしは何も言ってないけど?」

 

 

 

嵌められた!とイエローは思った。自ら、墓穴を掘ったような感じだ。

 

そして、それとは別に先程の会話に少し違和感を感じていた。

 

 

 

「あれっ、何でカガリさんはボク達が旅行に来ていると?」

 

 

 

ここは旅館ではあるが大きな施設がたくさんあるので、地元の人も利用する人が多い。それにも関わらずカガリは旅行、と言い切ったのだ。

 

 

 

「なあに、簡単なことさ。この町はそれほど広い町ではない。リョウスケのようなバトルの強い少年がもし地元にいたら、普通なら周りもわかるはずだろう?」

 

「あっ、周りはリョウスケさんのことを初めて見たような反応をしたから……」

 

「そういうこと。だとしたら考えられるのは、他の地方から来たって事くらいだろう?ここに他の地方の人が来る目的なんて、観光旅行くらいなもんさ」

 

「はぁー……なるほど」

 

 

 

イエローは素直に感心していた。バトルが強いトレーナーというのは、バトル以外でも洞察力が優れていたりするものなのかな、とイエローは思った。

 

 

 

「で?」

 

「……はい?」

 

「色々事情はあったのかもしれないけど、男女で旅行に来るくらいだ。アンタ、ぶっちゃけリョウスケのことどう思ってるんだい」

 

「えっと……?」

 

 

 

……まぁ、確かにこのような会話の流れになるのもしょうがないのかもしれない。仮にこんな所で本音を言おうが言わなかろうが、結局リョウスケに伝わることはないだろう。

 

だが、忘れないでほしい。ここが、どこであるのかを。そう……ポケモン浴場である。

 

そして……ここにはリョウスケのポケモンである、ラプラスがいる。

 

 

 

『(何か聞いても私は聞かなかったことにしたほうがいいのでしょうか……?)』

 

 

 

さらに言えば、本来ならばポケモンに聞かれていようが聞かれていなかろうが、関係無いだろう。

 

だが……リョウスケならば、関係がある。そう、彼はポケモンと話すことが出来るのだから。

 

そして、イエローもそのことに気がついていた。

 

 

 

(ボクが言ったことラプラスに聞かれたら……色々とまずいのかな?)

 

 

 

イエローはもう一度改めてリョウスケのことを考える。

 

出会ってから約半年が立った。自分で思うのもなんだが、親友と言ってもいい関係にはなっているだろう。

 

そして今日、女ということを明かした。男女としてはどうだろうか?と。

 

 

 

(うーん……うーん?)

 

 

 

イエローが出した結論は、こうだ。

 

 

 

(……いまいちわからないや)

 

 

 

今までリョウスケはリョウスケとして見てきたわけで、あまり男として意識したことは無かった。いきなりどうとか考えても、わからないのも仕方ないだろう。

 

……今日で今までとは多少は考え方が変わったというのは否めないが。

 

 

 

(はぁー……年端もいかないガキが、何必死に考えているんだか)

 

 

 

複雑そうに考えるイエローの表情を見て、カガリはそう思った。こういうことを必死に考えているということイコール、本人がよくわかっていないということだ。

 

 

 

「あー……いいよ、そんな必死に考えるくらいならさ。こういう質問って、パッと答えられなきゃ面白くないし」

 

「あっ、すみません……でも、これだけは言わせてください。リョウスケさんは、大切な親友です!」

 

「……親友ねぇ」

 

 

 

その時突然、プルルルッ!と電話音が鳴り出した。カガリの対防水式ポケナビだ。

 

 

 

「っと、何だってんだい人がくつろいでいる時間に……じゃあね、イエロー。また会えるといいね?」

 

 

 

愚痴りながらも、カガリはポケナビを持って風呂から出て行った。

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

ため息の主は、イエローだ。リョウスケのことをどう思っているかとの質問をされて、自分でもいまいちわかっていないということを考えさせられたからだ。

 

 

 

「まぁ、いっか」

 

 

 

だがお気楽思考のイエロー、そこはあまり気にしなかった。

 

 

 

「ラプラスは、どう思っているのかな。……そっか、ラプラスはリョウスケさんのことが好きなんだね」

 

 

 

イエローは手をかざしラプラスの気持ちを読み取った。この好きとは、愛情ではなく好意のほうであるが。多少の憧れや尊敬といった感情も混じっていた。

 

 

 

「んー……難しいことを考えるのはやめようっと!せっかくだし、思いっきり楽しまないとね」

 

 

 

もうちょっとゆっくりしてから風呂から上がるかな、そんなことをイエローは考えた。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「ったく、こんな時間に掛けて来なくてもいいんじゃないの?こっちは、温泉に浸かっていたんだからさ」

 

「ハハ、それは悪いな。だけどそっちの都合なんて知らねえっての」

 

 

 

カガリは浴場から出て、電話の相手と話していた。

 

 

 

「で、用件は?」

 

「まずは一つ、グラードンの調査についてだ」

 

「はっ、そんな情報こんな場所にあるかっての。リーダーだってそう思っているだろうし、アンタだってそう思ってるんだろう?」

 

 

 

カガリは、マグマ団団員……それも幹部である。現在アルトマーレにいるのは、単なる観光何かではなく任務で来ているのだ。

 

そしてこのカガリの電話の相手もマグマ団団員であり、同じく幹部であるホカゲ、という男だ。

 

 

 

「まぁな。でもいいだろ、半分遊びに行けたようなもんなんだからよ」

 

「結構退屈だったけどねぇ……まあ、今日は久々に面白かったけど」

 

「……何かあったのか?」

 

「ただ、バトルの強い奴を見つけただけさ。それもガキと来たもんだ。しかも、実力もかなりのものさ。戦ったけど、引き分けだったよ」

 

「……へえ、珍しい奴もいるもんだな」

 

 

 

ホカゲもカガリと長い付き合いであり、性格もよく知っている。

 

まずカガリが興味を持つというだけでも珍しいことであり、バトルで引き分けるほどの実力を持っているということもさらに珍しいことだ。何せ、ホカゲはカガリの実力を知っているのだから。普通なら、まず負けないほどの実力は持っているということを。

 

 

 

「ま、そっちの話も気になるが、もう一つ……スカイの連中についてだ」

 

「……スカイの連中がどうかしたってのかい?」

 

 

 

スカイの連中とは、ホウエン地方にある組織の一つ、スカイ団というものだ。

 

ホウエンにはマグマ、アクア、スカイといった組織があり、それぞれが自分たちの目的のために活動をしている。それが犯罪に近いような過激な活動であってもだ。

 

 

 

「アルトマーレに何人かいるといった情報を手に入れた。近いうちに何か動きがあるかもしれねえ」

 

「ふーん……で、あたしにそいつらをぶちのめせと?」

 

「……大きな動きがあるならな」

 

「はいはい、気が向いたらね」

 

「フン……そっちは任せたぞ」

 

 

 

そこでホカゲとの連絡は途切れる。

 

 

 

「はぁー……めんどくさ」

 

 

 

基本的には自分の興味のあることしかやらないカガリ、かといって放っておくわけにもいかない任務なのだ。

 

疲れたから今日は寝よう、そう考えたカガリはさっさと着替えて自室へと戻っていく。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「はぁー、いいお湯だった!」

 

 

 

ラプラスをボールに戻し、幸せそうな足取りで自室へと向かうイエロー。

 

 

 

「リョウスケさんは、戻っているかな?」

 

 

 

男の人の風呂と女の人の風呂ってどっちのほうが早いんだろう?とよくわからないことを考えながらイエローはドアを開けるが、

 

 

 

「あ、リョウスケさん戻ってたんですね!って、あれ?何で元気ないんですか……?」

 

 

 

先に戻っていたリョウスケ。だが、風呂から戻ってきたばかりだというのに何故か元気が無いように見えるのだ。普通ならばイエローのように、元気になるはずなのに。

 

 

 

「お、おうお帰り……いや、7匹のポケモン管理しながらなんて……ゆっくりしてられねぇ」

 

「……あっ」

 

 

 

圧倒的に♂ポケモンのほうが多かったために、リョウスケの負担が大きかったのだ。

 

 

 

「いや、まぁイエローのポケモンはまだおとなしかったからいいんだ……問題はこいつらだな」

 

 

 

リョウスケは自分のボール、ボーマンダとブースターを指差す。

 

 

 

「ボーマンダは浴場で俺以上にはしゃぐしブースターはそれを止めようとしてお互いケンカになるしで……疲れた、マジで疲れた」

 

「はは……お疲れ様です?」

 

「だからといってこいつらばかり見てるわけにもいかなかったしな……イエローのポケモン全てをチェックするのにも骨が折れた。……あぁ、何でこんなに疲れたんだ?」

 

 

 

自分のポケモンには悪いけど、明日の風呂の時はリョウスケにポケモンを預けるのは遠慮したほうがいいな、そんなことを考えたイエローであった。




さてさて、感想を頂いた中で質問がいくつかあったのでこちらでも答えます。

※イエローとの恋愛はあるのか?

これに関してですが、期待していた方がいましたら申し訳ないですが、無いです。元々イエローは好きなキャラでオリジナル要素の中にも出番を多く増やす予定もありましたが、恋愛要素というものを作る予定はなかったので。あくまで、リョウスケの友達といった形ですね。ただ、リョウスケもイエローが女ということを知り、多少お互いに意識する描写はこれからも出てくると思います。

そしてオリジナル要素、スカイ団。ちょくちょくそれっぽいものは今まで書いていたのですが、ようやく名前を出せました。……まぁ、これはすぐにわかるかと思いますがマグマ=グラードン、アクア=カイオーガ、スカイ=レックウザといった感じですね。4章は絡みませんが、5章(ラスト)に大きく絡んでくる予定です。
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