それと気がついたらお気に入り100件越え+UA10000越え……正直ここまでこの作品を読んでくれる人がいるとは思ってなかった。感謝です。
旅行初日も時間が流れ、現在の時刻は――――12時。
くたくたになった子供なら、普通ならぐっすり眠るような時間だろう。……普通ならだが。
「……ぐぅ」
(イ、イエローは寝たかな?)
疲れているはずなのに眠れていない少年が一人、そう、リョウスケである。まだ子供とは言え男の子なのだ、同部屋に女の子がいてちょっぴり意識してしまうのも無理はないのかもしれない。
……一方のイエローだが、ベッドに入り込むや否や、すぐに眠りについてしまった。流石、寝ることに関しては一級品である。
(……眠れねぇぇぇ!!くそっ、こういうときは……メリープが一匹、メリープが二匹……)
よくある寝る為の方法である。ここで羊と言わずにメリープと言うところが、この世界にリョウスケが慣れてきたというのもあるのかもしれない。
~~~
時刻は過ぎ――――12時半を迎えたところ。
「……ぐぅ」
「ぐぉー……」
二人とも、眠りに着いたようだ。何だかんだ結局そこまで意識しないあたり、まだまだ子供という所であろう。
カチッ。
突然、何かが開くような音が鳴る。モンスターボールの開閉スイッチだ。
『……あ?』
ボンッ!という音を立てて中から出てきたのは、ボーマンダだ。普通なら開閉スイッチの音が鳴って、さらに体長がかなり大きいボーマンダが出てきたのだ、リョウスケかイエローが気がついて起きてもおかしくはない。
『……ちっ、またアイツか』
それでも、周りは気がつかない。まるで、何かに音が遮断されているかのように。
『ったく、超能力で防音ってか。わざわざ俺をボールから出したってことは……外に出ろってか?面倒くせぇ……俺だって寝てたのに』
何か身に覚えのあるような振る舞いを取るボーマンダ。しょうがねぇな、と一言呟き外に出ることに。
~~~
『あ、来た来た♪』
『こんな事するのって、やっぱりお前しかいないよなぁ……ミュウ』
アルトマーレの深夜の外。
この時間帯にわざわざボーマンダを呼び寄せたのは……ミュウである。
『やっほー、久しぶりだね!何ヶ月ぶりくらいだろ?』
『俺は出来れば会いたくなかったけどな……』
笑顔のミュウとは対照的に、既に疲れたような顔のボーマンダ。いかに過去に、ボーマンダがミュウに振り回されていたかわかるだろう。
『……で、何で呼び出した?俺、もう寝たいんだけど』
『まぁまぁ、そんな事言わずに。ちょっとね、面白いところがあるんだよ?』
『……面白いところ?』
それはミュウからしてなだけであって俺からすると面倒くさいだけではないのか、そんなことをボーマンダは思った。
『そ、ついてきて!』
と、一言だけ言ってふわっと空中に浮きながら移動するミュウ。それに対しボーマンダは、いかにも重い足取りでのっしのっしとゆっくり歩いていくのだった。
~~~
ミュウの跡を追い、暗い暗いアルトマーレの夜道を歩いていくボーマンダ。
『しかし……こんな道もあるんだな、まるで迷路じゃねぇか』
今歩いているのは、表の大きい道ではなく、普段人があまり出歩かないような……裏道だ。
表道が綺麗な道と言うならば、この裏道は不思議な道といった言葉が合うだろう。
『……ん?』
ミュウを追ってたどり着いた場所。それは……
『何だここ……植物園か何かか?』
周りには様々な草が生い茂り、昼間にはポッポのような野生ポケモンが周囲を飛び回りそうな場所だ。今は深夜なので、ホーホーがおとなしく木に止まっているだけだが。
『あ、来た来た。こっちだよ、こっち!』
『こっちって……壁じゃねーか。ぶっ壊した先に何かあるってのか?』
『そんなわけ無いじゃん。馬鹿?』
『……』
怒りをこらえろ、あいつのペースに乗るな。ボーマンダは自分に言い聞かせ冷静を保とうとする。
普段割と短気なボーマンダがこのような思考になるということは、過去によっぽどミュウに対して懲りていることがあるのだろう。
『さってと。じゃあ、行くよー♪』
ヒュン!!と、壁に向かって勢い良く飛び込むミュウ。普通なら激突するはず。だが、激突どころかミュウは壁をすり抜け消えてしまったのだ。
『……はぁ!?』
目の前に起きたことが信じられないボーマンダ。とりあえず、壁を調べる。
『……おぉ』
ボーマンダは自分の足を何度も壁に出し入れして確認する。足が壁にすり抜けたり出てきたりするその光景は、なかなか奇抜なものだろう。
『とりあえず……入ってみるか』
ずっとここにいても仕方が無いので、ボーマンダは壁の向こうの世界へと進んでいく。
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壁の向こう、短い暗い通路を抜けた先。そこでボーマンダが見た光景とは。
『……すげえ』
一言しか出ない。夜ですらその美しさがわかる幻想的な自然あふれる場所だ。入り口よりも草木が生い茂り、さらに噴水がその美しさを引き立てている。昼間なら、もっと綺麗に見えていることだろう。
『で、結局ここはどこなんだ?……それと、ミュウの野郎はどこ行きやがった』
本当にわからねぇ、ここに呼んだ意図すらもわからねぇ、そうボーマンダは思った。
『……せっかくだし、色々と探索してみようか』
ずっと止まってても、暇だしなーなんて事を考えながらボーマンダは歩き出す。
……だが、ここでボーマンダからすると予想もつかないようなことが身に起きる。
『んー、草ポケモンとか水ポケモンとか住みやすそうだな、ここは。ここもいいけど、俺みたいなポケモンだったらやっぱり洞窟とかのほうガァッ!?』
ドォォォン!!と、ボーマンダの大きな身体が思い切り吹き飛ぶ。見えない何かが突然ボーマンダに突進してきたのだ。
『……ってーな、クソがぁ!!いきなり何しやがるってんだぁぁぁ!!』
と、大声を張り上げながらボーマンダは周囲を威嚇する。
『(雑魚ならこれだけで戦意を喪失するはずだ。最も、油断していたとはいえあそこまで強烈な一撃をぶちかましてきた奴が戦意を喪失するとは思えねぇが……!?)』
ビュンッ!!と、再び見えない何かがボーマンダに向かってくる。……が、
『見えなくてもなぁ、ある程度戦意が伝わってたら余裕で避けられるっての!!』
素早い動きで、見えない何かの攻撃をボーマンダは軽くかわす。
『どうせ見えなくなるのも何かしらの力を使ってるんだろ?俺には通用しねぇ。とっとと姿現して攻撃に全ての力つぎ込むとかしろっての。なめてんじゃねぇぞ!』
この姿を消すということにも、力を使っている。つまり、姿を消しながらの攻撃は全力で攻撃をすることが出来ないのだ。ボーマンダは、それを瞬時に見抜いた。
ただでさえリョウスケの手持ちでは最も強かったのだ。それでいてさらに、ボーマンダのレベルはこの半年間でアップしている。
そしてボーマンダの呼びかけに応えるように、姿を消していたものがその姿を現す。
『……お前は何故ここに来た?何が目的だ?』
姿を表したその青いジェット機のような翼を持った存在が、ボーマンダに対し問う。
『あ?知らねーよ、そんなもんはこっちが聞きたい位だっての。俺だって早く帰って寝たいんだよ』
『……訳がわからんな、お前は。だがな、ここに無断で来た以上はいそうですか、何て帰す訳にも行かない』
この存在……ラティオスは、この場所を外部の者に知られただけでも相当困るのだ。万が一、ということもある。ラティオスからするとこのボーマンダが本音でそう言っているとは限らないため、簡単に帰す訳にもいかないのだ。
……だが、ボーマンダからするとそんな事は知ったこっちゃ無い訳で。
『は?んなもん知らんって。俺は別に荒らしに来たわけじゃないの、わかる?』
『……馬鹿と話すのは疲れるな。どちらにせよ、しばらくの間お前をここから出すわけにも行かない』
『あー、これだから頭のお堅い奴は面倒くせぇ。いいよ、別にこの場所を荒らすつもりは無いけどよ……てめー個人には苛々してんだよ』
そのボーマンダの言葉が皮切りに、両者共に突っ込んでいく。ガァァン!!と、お互いぶつかった音が鳴り響く。
『短気な奴め……』
『あ?』
両者の力が拮抗し、競り合いの状態が続く。
『お前は野生か?』
『ちげーよ、ちゃんとしたトレーナーがいるっての!』
ブンッ!!と力任せにラティオスを吹き飛ばす。しばらくしたところで、ラティオスは空中で静止する。
『フン、お前の様子を見る限り大したトレーナーでもなさそうだな。そんな短気なのも、トレーナーが大したことないからだろう?』
ラティオスは別にボーマンダのトレーナーのことを知っているわけでもないし、本気でそういったわけではない。相手を怒らせるための、ただの挑発である。
……だが、挑発とは時にとんでもない地雷を踏むこともあるのだ。この場面がそうである。ラティオスは、ボーマンダの踏んではいけない地雷を踏んでしまった。
『……ふざけんじゃねぇぞ、コラ』
『(……あのボーマンダの威圧感が上がった?)』
怒り、といった一線を越えたような状態である。それをラティオスも、肌で感じる。
『てめぇは言ってはいけないことを言った。正直、一発ぶん殴ってそれで終わらせようと思ってたんだがなぁ……』
そしてボーマンダの鋭い目つきが空中のラティオスを捕らえたかと思えば――――目に見えないような速さで飛んで行き
『ガハァッ!?』
ボーマンダのドラゴンクローが、ラティオスの腹部に炸裂する。その勢いでラティオスは地面に吹き飛んだ。
『予定変更だよ、半殺し確定だ。五体満足で終われると思うなよ』
今にも燃え盛りそうな青き竜の目。この竜は、今何を思いながらラティオスを見ているのか。