世界を旅することを夢見た者たち   作:ウグり

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第二十三話 秘密の場所での出来事

『ガフッ……ハァ……くそっ』

 

 

 

腹部に大きな傷を負ったラティオス。ダメージもかなり大きい。

 

突如パアァ、とラティオスの身体を優しい光が包み込む。……ラティオスは自己再生が使えるのだ。

 

 

 

『……ちぃっ』

 

 

 

とは言っても、全回復とまではいかない。応急処置程度のものだ。それに、喰らったのが一発とはいえ強烈な一撃だったので、傷はまだ残っている。

 

 

 

『……フン』

 

 

 

ラティオスは思う。あのボーマンダは悪しき心を持った奴ではないと。何故ならあのボーマンダが怒っている理由に、自分のトレーナーを侮辱されたからというところがあるからだ。

 

信頼関係が無ければあそこまで激怒はしない。その信頼関係が生み出されるのは、良いトレーナーと良いポケモンでしか生み出されない。

 

 

 

『(……少し、申し訳ないことを言ってしまったかもな)』

 

 

 

この状況を見て、勢いのまま出てきた言葉とはいえラティオスも言ってはいけない事を言ってしまったという自覚はある。そしてその事は詫びなければいけないということも。

 

だが、些細な事ではあるが言い争いからこのバトルに発展している。そしてこのまま引き下がるというわけにもいかない。……単なる、♂(オス)の意地だ。

 

 

 

『おいこら、まだ勝負は終わってねぇぞ』

 

『……こっちとしても、勝負を終わらせたつもりなど微塵も無いっ!!』

 

 

 

そして引かない理由にもう一つ。単純に、ラティオスがボーマンダのことを気に食わないからだ。……最も、それはお互い様なのかもしれないが。

 

 

 

『そうかよ。……だったら、さっさと動きやがれ!』

 

 

 

ゴォォッ!!と、ボーマンダの火炎放射がラティオスに向かって一直線に放たれる。ボーマンダはこれを相手が避けると核心している。そして避けた方向に向かって追撃をしようと始動の準備をするが……

 

 

 

『フン……こんなものぉっ!』

 

 

 

キラン、とラティオスの瞳が光る。そして放たれた炎の軌道が――――ラティオスを避けるように曲がる。超能力……サイコキネシスだ。

 

 

 

『……なっ!?』

 

 

 

予想外の攻撃の避け方をされるボーマンダ。そしてその気の動きが、わずかながら隙を作る。

 

 

 

『フンッ!!』

 

『……ぐおっ!?』

 

 

 

その隙を突いたラティオス、お返しと言わんばかりのドラゴンクローが炸裂しボーマンダを吹き飛ばす。

 

さらにラティオスは攻撃の手を緩めず、超能力で周囲の草や葉を操り吹き飛んだボーマンダに向かって高速で飛ばしていく。言わば、葉っぱカッターのようなものだ。

 

 

 

『……痛えぇぇ!?』

 

 

 

ズバズバズバッ!!とボーマンダの身体に無数の切り傷をつける。そして吹き飛んだボーマンダがようやく起き上がる。

 

 

 

『……ってーな、この野郎が』

 

『チッ、体力だけはあるらしいな』

 

『こっちは普段から鍛えてるんだよ……まだ俺の気は済んでねぇぞおらぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

……それからというものの、お互い一歩も引かず徐々にダメージが蓄積されていく。

 

ボーマンダが力でどんどん押していき、ラティオスが超能力をうまく使いトリッキーに攻めていく。攻撃のタイプこそ違うものの、お互いここまでは拮抗している状態だ。

 

 

 

『ハァ……ハァ……』

 

『ハァ……ちぃっ、さっさとテメーもぶっ倒れやがれ!』

 

 

 

お互い、既に限界に近い。だが、その眼に宿る闘志はまだ燃え上がっている。

 

 

 

『(ちっ、どうする……?)』

 

 

 

ボーマンダは一つ考えていたことがあった。

 

 

 

『(この技を使えば絶対に奴を潰せる。……だが、俺自身がこの技をコントロールできねぇ)』

 

 

 

確実に決めれると核心している技をボーマンダは持っている。だが、自身がコントロールできないため使うことをためらっているのだ。

 

 

 

『(どうす……ッ!?)』

 

『……おおおおおおッ!!』

 

 

 

ラティオスが今までに無いほどのエネルギーを溜めているのだ。それを見たボーマンダは、決心する。

 

 

 

『……迷ってる暇はねーな』

 

 

 

お互いの最高の一撃を放とうとする。そこで決着がつくと思われた――――が。

 

 

 

『兄さんやめてっ!』

 

『んー、それだけお互い力を解放するとこの場所が危ないんじゃない?』

 

 

 

ラティオスを兄と呼ぶポケモン――――ラティアスと、一体どこからやってきたのか、ミュウの介入により……思わぬ形で、バトルは終了する。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

『……で、』

 

 

 

現在バトルを終え、ミュウがどこからかわからないが持ってきた大量の傷薬によりボーマンダとラティオスは一応のところ応急処置は終了した。

 

だが傷は回復してもボーマンダの苛々は収まらない。

 

 

 

『おいこらミュウ、お前どこにいやがった』

 

『んー、何かちょっと目を離した隙にバトルが起こってたからさ、避難しながら止めるためにラティアスを呼んだ、みたいな?』

 

『……お前絶対確信犯だろ?』

 

 

 

このバトルもわざとミュウが仕組んだに違いねぇ、と思うボーマンダであった。

 

そして一方、ラティオスとラティアスといえば……

 

 

 

『兄さんったら、こんなに暴れて!いくら怪しいからって、それがこんなに暴れていいって理由になると思ってるの!?』

 

『……だけどなラティアス、そうでもしないと止めようがなかった』

 

『言い訳はいらないっ!!』

 

『……はい』

 

 

 

一方的な説教をラティオスが受けていた。それを見たボーマンダが、内心でざまぁと思っていたりとか。

 

 

 

『でもさー、君思っていたよりも強かったんだね?ボクより強いんじゃない?』

 

『あ?……さぁな』

 

 

 

ミュウがボーマンダからすると思いもよらぬことを口にした。だがボーマンダもミュウの奥底知れぬ力を実感しているため、自信満々に当たり前だろ!とは口には出せなかった。

 

 

 

『ただ、最後にやろうとしてたのあるじゃん。多分、あれ使ったなら君が圧倒してだだろうけど、制御できずに辺りがぐちゃぐちゃになってたんじゃないの?』

 

『……多分そうだろうな。あの力を制御するのが当面の俺の課題だ。と言っても、上手くいかないんだけどな』

 

 

 

自分でもわかっている強大な力の制御。ボーマンダは次の強さのステップを踏むための過程は理解しているが、なかなか上手くいっていない。

 

 

 

『……お?』

 

 

 

説教をされ終わったのか、ラティオスがこちらへ向かってくる。

 

 

 

『……何だよ?』

 

『いや、これだけは言っておこうと思ってな……すまなかった』

 

『……ん?』

 

 

 

ボーマンダからすると、何について謝られているのかわからないのだ。……心当たりがありすぎて。

 

 

 

『お前のトレーナーを侮辱したことだ。お前があそこまで怒ったということは……よっぽどお前が信頼しているトレーナーだったからだろう』

 

『あ?あぁ……まぁ、うん、謝ってくれるんならいいよ』

 

『……だが』

 

 

 

と、一言ラティオスは言ってから

 

 

 

『お前自体は気に食わん』

 

『……あ?』

 

『短気だし、馬鹿だし、戦っててこっちが苛々してくるんだよ、お前は』

 

『……その台詞、そっくりそのまま返してやろうか?』

 

 

 

……お互いの相性が悪いのだろう、とにかく性格が合わない。

 

 

 

『はぁ……兄さんったら』

 

『……まぁ、ケンカするほど仲が良いって言うくらいだしいいんじゃない?見てる分には面白いし』

 

 

 

その様子を見ているラティアスは呆れ、ミュウは面白半分に見ていた。

 

 

 

『しかし、だ……ここ最近邪悪な気配を感じていたからお前もその仲間かと思っていたが違ったようだな』

 

『俺が邪悪に見えるってのかよ?』

 

『ああ、特に目つきが』

 

『……おい』

 

 

 

自分の目つきの悪さは自覚しているので、言い返せないボーマンダであった。

 

 

 

『ってことは何だ、俺にいきなり攻撃を仕掛けてきたのは嫌な予感がしたからで、普段ならおとなしくしてたってのか?』

 

『そりゃそうだ……おい、お前は俺がそんな物騒な奴だと思っているのか?』

 

『うん』

 

『……』

 

 

 

ラティオスも何か言い返そうと思ったが、現に先に攻撃を仕掛けたのは自分のため言い返せないのであった。

 

 

 

『……まぁいい、お前はポケモン性はともかく一応無害みたいなもんだからな、忠告はしておく』

 

『……そこは無害って言い切れよ』

 

『近いうちに、ここアルトマーレで何かが起こる可能性がある。良く無い事がだ』

 

『何でそんな事がわかるってんだ?……ってか、お前は一体何なんだよ?』

 

 

 

ボーマンダは疑問に思っていたことがあった。ラティオス、そしてラティアスは何者なのか。そしてこの場所は何なのか。

 

 

 

『俺……ラティオスと妹のラティアスはこの島の守護者だ。そしてこの場所には大切な物が置いてある。だからだよ、ここに知らない人やポケモンを寄せ付けたくないのは』

 

『なるほど、守護者なぁ……って、大切な物?』

 

『心の雫という宝石だ。……今は関係の無い事だが』

 

 

 

ふーん、と一言だけ返事を返すボーマンダ。別にボーマンダ自身は宝石などに興味もないため、あまり気にしなかった。

 

 

 

『ま、どうせ俺と俺のトレーナーがいるのもあと二日だけだし?用心だけはしておくわ』

 

『話は終わった?』

 

『って、いきなり出てくるなよ、びっくりしただろ』

 

 

 

ボーマンダとラティオスの話のキリが良くなったと見るや否や、話に割って突然出てくるミュウ。

 

 

 

『……お前の素性は何となくわかった。が、こいつは一体何なんだ?』

 

『ん、ボクのこと?』

 

 

 

ラティオスの疑問、それはミュウが一体何者なのかということ。

 

ボーマンダに関しては色々話をしていくうちにわかった面もあるのだが、このピンクの生物に関しては全くわからない。しかもボーマンダをここに誘い込んだのもこのミュウというのだから、不思議でしょうがないのだ。

 

 

 

『……ラティアス、お前は何かわからないのか?』

 

『兄さんごめんなさい、ただあそこで暴れてるから止めて、と言われただけで……』

 

 

 

ふむ……と一言呟いてから、ラティオスはボーマンダのほうをチラッ、と見る。それに対しボーマンダはため息をつきながら、

 

 

 

『……まぁ、なんだ。ミュウは怪しい奴ではあるが、悪意があるわけではないと思う……多分』

 

 

 

と応えた。

 

 

 

『ねえ、そこははっきりと大丈夫な奴だって言えないの?』

 

『お前の普段の行動からどうやって大丈夫な奴って言えるんだよ』

 

 

 

と、今度はボーマンダとミュウが言い争いに発展しそうな勢いになってしまった。それを見たラティオスはキリがないと思ったので、

 

 

 

『お前ら……もういいから帰れ。これ以上あーだこーだ言っても、キリがない。とりあえず、お前らが怪しいって訳ではないって事はわかったから』

 

 

 

とボーマンダとミュウを止めることに。

 

 

 

『ああ、言われた通りに帰るとするよ。俺はもう眠い』

 

『えー、ここ出た後にもう少し遊びに行かない?』

 

『やかましいっての!何で、いつも俺ばっか巻き込むんだよ!』

 

 

 

またもやギャーギャー騒ぎ出す二匹であった。そしてそのまま、帰るルートを歩んでいく。

 

 

 

『……さっきも言ったがお前たちにもう一度だけ忠告しておく。アルトマーレに邪悪な気配があるから用心しろ……って』

 

『兄さん、あの二匹はもう帰っちゃいましたよ』

 

 

 

ラティオスの忠告を聞くこともなく、二匹ともその場から立ち去ってしまったのだ。

 

 

 

『……ハァ』

 

『兄さん、かなり疲れてますね?』

 

『そりゃそうだ。まさかあんな奴らと絡むことになるとは思ってなかったからな……精神的に、きついものがある』

 

『……肉体的にも、ですよね?』

 

『……そんな訳ないだろ?』

 

『兄さんったら……意地っ張りですね』

 

『……あー、そうだ。どっちかというと肉体的負担のほうが大きいよ。自己再生しようにも、あの一撃は重すぎた』

 

 

 

ラティオスの身体は既にクタクタである。話をするのも疲れたというのも理由の一つだが、それよりも戦いの際に受けた傷だ。

 

戦いの中で色々な傷を負ったが……その中でも特に、ボーマンダを挑発した時に受けたドラゴンクロー。その傷がかなり大きいのだ。

 

 

 

『傷薬等で回復はしたが、それでもまだ若干痛むくらいだ。あれは力もそうだが、相当思いがこもってないと出ない一撃だな……そういった意味では、アイツはかなりの善だ』

 

『……ふふっ』

 

『……何だ?何がおかしい』

 

『いえ、散々言い争ってたにも関わらず善だなんて言うから……ちょっと意外で』

 

『……アイツ自体が気に食わんのは今も変わらん。だが、それとこれとは別問題だ』

 

 

 

ラティオス自身、ボーマンダの実力を認めている部分もある。その実力とは力だけではなくトレーナーとの信頼感など、様々な要素だ。それをトレーナー無しで感じることが出来たのだから大したものである。

 

 

 

『さて、アイツ等の話はいいとしてだ。最近この町にある気配についてだ』

 

 

 

ラティオスがボーマンダに対して過激に攻撃を行った原因でもある、最近のアルトマーレにある怪しい気配。

 

 

 

『しばらくはこの場所だけでなく町の様子もしっかり見ておいたほうがいいかもしれない。どちらかがここに残って、どちらかが町を見回ろう』

 

『人間に擬態して見回るということですか?』

 

『ああ、そんな感じだ。……悪いが、ラティアスがここに残ってくれないか?俺が町を見回る』

 

『良いですけど……何で兄さんが?』

 

『ラティアスは人間に擬態しても、人間の言葉を話すことは出来ないだろう?だけど俺はそれなりには人間の言葉を話せる。色々見回るなら、話せたほうが絶対楽だろう?』

 

 

 

ラティアス、ラティオスはいくつかの特殊能力がある。人間に擬態する、というのもそのうちの一つだ。そしてラティオスは、ラティアスと違い人間の言語を話せるというのだ。

 

 

 

『……本当に悪いな。危険かもしれないが、ここを頼む。何かあったら、夢写しで教えてくれ。俺もそうするから』

 

 

 

この夢写しというのも特殊能力の一つで、ラティアス、ラティオスが見ている景色をお互いに共有することが出来るというものだ。なのでお互いに離れていても、お互いの現状が把握できる。

 

 

 

『兄さんは心配性なんだから……大丈夫ですよ、任せてください』

 

『ああ、頼んだ。まぁ、何もないに越した事はないのだが……』

 

 

 

この守護者達――――二匹の護神の心配が現実に起こるのか、それとも何も起きずに済むのか。どちらにせよ、アルトマーレに不穏な空気が流れているのは、間違いない。

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