世界を旅することを夢見た者たち   作:ウグり

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第二十六話 起きる騒動と動き出す人々

「っと、ラプラス、橋が見えてきたぞ!あそこくぐれば、あと少しだ!」

 

 

 

リョウスケ達はトップを維持したままこの橋の手前付近までやってきた。この勢いを持続すれば、トップは堅いといった感じのリードだ。決して油断をしているわけではないが、リョウスケもそれを徐々に実感してきた。

 

だが……そこに、思わぬ落とし穴が存在した。

 

 

 

『――――ッ!!』

 

「おい、どうしたラプラス?って、ちょ、おお!?」

 

《……どうした?様子がおかしいぞ!?》

 

 

 

ラプラスは見たくはないものを見てしまった――――かつて、自分に集団で暴力を振るってきた集団。緑の装束。……スカイ団を。

 

そしてその動揺がいけない状況を生んでしまった。ボートに乗っているリョウスケは勿論、実況者や一般の見ている人達ですらわかる。動きが明らかにおかしく、ボートの動きがぶれているのだ。

 

 

 

《――――ッ!!まずい、あの状況で直角カーブに向かってしまってはっ!!》

 

「まずっ……!?」

 

 

 

危ない動きのまま橋をくぐり、直角カーブに到達する。だが、動きが明らかにおかしくスピードが落ちないまま曲がり切れないという状況になろうとしている。そんなことが起きたら……リョウスケが物凄い勢いのまま、壁に激突する。

 

 

 

『ッ!!リョウスケさん!!』

 

 

 

それでも何とかラプラスはリョウスケを守ろうとする。曲がり切れないのなら――――自分がリョウスケの壁になるしかない、と。

 

 

 

《な、なんとぉっ!!ラプラスがリョウスケ選手の盾になるかのように壁に激突してしまったぁっ!!》

 

 

 

ガツンッ!!と大きな音が鳴り、壁にはラプラスが思いっきりぶつかったためひびが入る。モニターで見ていた人も、大丈夫なのか?と心配の声があがる。

 

 

 

「……げほっ!!おい、ラプラス!ラプラス!?」

 

 

 

リョウスケも盾になったラプラスにぶつかり多少身体を痛めはしたが、それでも壁に思いっきり叩きつけられるよりは相当マシだ。リョウスケとラプラスはその勢いのまま水の中へと落ちていった。

 

 

 

「早くボールに戻さねぇと……!」

 

 

 

身体にダメージを負い動かなくなったラプラスをボールに戻し、リョウスケは何とか陸に上がる。

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 

 

《リョウスケ&ラプラスコンビ、無念のリタイアだぁっ!!だが、最後にラプラスがトレーナーを守る姿勢、感動したぜっ!!》

 

 

 

周りからも、よくやったぞー!や、感動した!などの声と共にかなりの拍手がリョウスケ達に送られる。リョウスケはラプラスの入ったボールを見る。何故、あそこでラプラスが変な動きをしたのかはリョウスケにはわからない。だが、そのような状態でありながらも自分のトレーナーであるリョウスケをラプラスは身体を犠牲にしてまで守ったのだ。

 

 

 

「……サンキューな、ラプラス」

 

 

 

一言、ねぎらいの声をかける。リョウスケもずっとここにいないでイエローと合流しなきゃ、と動き出す。あと旅館に戻ってラプラスの回復と、自分の服も着替えなきゃな、と。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「……アルトマーレに来たはいいんだが」

 

 

 

ちょうどレースが終わろうとしていた時間。スカイ団幹部、ショウは人通りの無いところで一人寂しげに呟く。

 

 

 

「どこにあるんだよ、お目当ての心の雫とやらはよ。……いいなぁ、俺もレース見たかったなぁ」

 

 

 

はぁー、とため息を吐くショウ。任務で心の雫という宝石を持って来いとボスに命令されたはいいものの、何に使うかも検討が付かないし、アルトマーレのどこかにあるということ以外の情報は全くわからない。

 

自分の部下を先に派遣させたはいいものの、昨夜は色々なハプニングもありまともに調査が出来ていないといった状況だ。

 

 

 

プルルルルルッ!!

 

 

 

と、突然ショウのポケナビが鳴る。どこからか、連絡が来たようだ。

 

 

 

「……あ?切るぞ」

 

「うおーい!ちょっと、その反応はおかしーい!」

 

「お前からの連絡なんていつもロクな事がねーんだよ、カナミ」

 

「どうせやる気なかったんでしょー?カナミがわざわざ、ショウのやる気スイッチを押すためにわざわざ連絡を入れてやったのだっと!」

 

 

 

カナミ――――年は十二歳で且つ女の子でありながら、スカイ団幹部であり、K部隊のリーダーである。

 

 

 

「……あ?やる気スイッチ?」

 

「ふふん、とっておきのやる気スイッチだよ!」

 

「何だよそれ……ッ!?」

 

 

 

その時、ショウですら予想していなかったことが起きる。ボガァァァン!!と、突然町のどこかで激しい爆発の音が鳴ったのだ。その音は一つだけじゃない。町のあらゆるところで、何度も、何度も。町の人達はキャアアッ!!などと悲鳴をあげる。

 

 

 

「カナミのK部隊を向かわせて、ある作戦を命令していたのだよっと!その命令は……好きに暴れちゃって♪」

 

「おい、てめえ……!」

 

「お、やる気出たかな?ちなみに本来の任務である心の雫を手に入れたら、K部隊は引き下がるように言ってあるからね。無駄な犠牲を出したくないショウなら、これで早く任務を終わらせなきゃってなったでしょ?あ、ちなみにカナミ、心の雫のありかを知っていたり!」

 

「……だったら、さっさと教えやがれっ!!」

 

「ふふーん、そんな怖い声出さないでっと。えっとね、その在り処は……」

 

 

 

カナミはショウに心の雫の在り処を教える。その間にも……スカイ団K部隊は暴れまわり、あらゆるところで騒動が起こっている。

 

 

 

「わかった?じゃ、頑張ってねー♪」

 

 

 

ピッ、と連絡が途絶える。ショウは一人、クソッたれ……!とだけ、一言漏らしやり場の無い怒りを静めるためにガンッ!と壁を拳で一発殴る。

 

そして彼はすぐに連絡を入れる。……自分の部隊の部下にだ。

 

 

 

「あ、ショウ様!こちらタクです!……今の爆発は!?」

 

「……K部隊の奴らだ」

 

 

 

なっ!?とタクは驚きの声をあげる。ショウも知らなかったのだ、S部隊の下っ端がK部隊の下っ端がこうして騒動を起こしていることに気がついていなくても無理は無いだろう。

 

 

 

「いいか、俺はすぐにやるべきことがあるからお前ら全員に連絡を入れて指示をしている時間はねぇ。だからタク、お前が俺の指示をまわせ」

 

「はっ!S部隊はどうすれば!?」

 

「お前らは……何もするな」

 

 

 

ショウの言っている言葉の意図が読み取れず、タクは思わずは……?と間の抜けた声をあげてしまう。だが、ショウは立て続けにこう言う。

 

 

 

「暴れているのはK部隊だが、第三者から見たら全部同じスカイ団に見えるだろ……お前らが変に出てきたところで、鎮圧されて捕まる可能性だってある。お前らが動いたところで、損しかねぇんだよ。だから……どっかに隠れでもしてじっとしてやがれ」

 

 

 

ショウはS部隊の隊員に悪いことが起きることを望んでいない。それを聞いたタクもようやくショウの言っている意図がわかり、直ちに伝えます!とだけ言って連絡を切った。ショウもフゥー……とだけ一息ついて、

 

 

 

「俺も……急がねぇとな」

 

 

 

と言って、目的の場所まで全力で走っていく。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

騒動が起きる少し前、場所は変わって旅館。

 

ここにはレースを終え着替えるために戻ったリョウスケ、それと合流したイエローがいた。

 

 

 

「いやぁ、それにしてもリョウスケさん凄いレースでしたよね。もう少しで優勝出来たじゃないですか!」

 

「ああ、俺もいけると正直なところ思ってたんだけどなぁ……ってかさ」

 

 

 

換えの服に着替えながら、リョウスケは一言。

 

 

 

「いや、ここまで戻ってくるときにレースお疲れ!とか凄かったぞ!って言ってくれるのは嬉しかったんだけどさ……人多すぎだろ!こっちは濡れて早く着替えたいのに、色々な人に囲まれて」

 

 

 

帰り際の出来事にちょっとした愚痴をもらすリョウスケに対してアハハ、と苦笑いをするイエロー。リョウスケのすぐに旅館に行きたいという気持ちとは裏腹に、なかなかそれが出来なかったのだ。

 

 

 

「でも、それだけいいレースが出来たってことじゃないですか?人を感動させるって、なかなか出来ないことですよ!」

 

「そうだけどさ……うーん」

 

 

 

いまいち表情が冴えないリョウスケ。何か引っかかるところがあるのだ。その表情を見たイエローは、

 

 

 

「どうしたんですか?……あっ、ラプラスですか」

 

 

 

と声をかける。それに対しリョウスケもそうなんだよ、と返事をする。快調に飛ばしていてトップだったのにも関わらず、突然様子がおかしくなったことをリョウスケは気にしている。

 

 

 

「なーんで、いきなりあんなことになったのかなぁ……」

 

 

 

その答えはラプラス本人しか知らない。リョウスケもラプラスが元気になってからその事を聞くつもりだ。今は大きなダメージを受けているので、旅館の近くにあったポケモンセンターに預けている。

 

 

 

「とりあえず……今は、この話はいいか。うーん、イエロー、これからどうする?」

 

 

 

レースは午前中に開催され、現在は昼間である。昼からの予定は特に無かったので、言ってみれば暇な状態ということになる。

 

 

 

「そうですね、昨日はリョウスケさんがバトルに熱中しちゃうから中々街の中を歩けませんでしたし……ボクは、中心部を見たいかな?お土産も買いたいです!」

 

 

 

うっ、とリョウスケは口ごもる。バトルが長引いて街を歩けなかったというのは事実である。リョウスケもそれを自覚していたため、今日はイエローのやりたい事を優先させるつもりでいた。

 

 

 

「そうだなー、じゃ、早速出かけるか?」

 

 

 

はいっ!とイエローは返事をする。

 

……だが、その時不審な音がかすかに聞こえてくる。

 

 

 

「……なあ、イエロー。今遠くで変な音聞こえてこなかったか?」

 

「え?ボクは聞こえなかったですけど……」

 

 

 

うーん、気のせいかな?とリョウスケは考える。……だが、その音は遠くだけではなく。

 

 

 

ボガァァァンッ!!!!

 

 

 

「……ッ!?」

 

「……何ですか今の音!?」

 

 

 

鈍くて嫌な音が、このリョウスケとイエローのいる旅館の近くでも鳴り響いた。リョウスケもイエローもすぐに嫌な予感を察知し、

 

 

 

「外に出るぞ、イエロー!」

 

「はいっ!」

 

 

 

頼りになる自分たちのポケモンを持ち、外の様子を見に行く。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ……ここか」

 

 

 

スカイ団幹部、ショウはカナミから連絡があった場所にようやくたどり着いた。かなり息を切らしていることから相当急いで来たことがわかる。だが、その間にもアルトマーレでの被害は確実に増えている。

 

 

 

「チッ、その心の雫ってのは……どこにありやがる」

 

 

 

早く見つけてさっさと終わらさねぇと、とショウは呟く。通り抜けられる壁など、ショウにとっては興味を引くものもあったのだがそんな余裕は彼にはない。手当たり次第に、この秘密の場所の怪しそうな所を探っていく。

 

 

 

「……おい、カナミ!」

 

 

 

ショウはポケナビでカナミと連絡を繋げる。ポケナビからどったの?などと陽気な声が聞こえてきた。

 

 

 

「その秘密の場所までは来た。心の雫ってのはどこにある?」

 

「えー、そんなことまではわからないのだよっと。あ、でも一つ注意したほうがいい事もあるかな?」

 

「注意だあ?」

 

 

 

ショウは最低限の警戒は保っていたが、それでもこの秘密の場所には特に何かがいるわけでもなかった。せいぜい、おとなしい野生のポケモンが少しいるくらいだ。だが、カナミが言うからには何かがいるのだろうと、ショウの中の警戒レベルを強めた。カナミはいちいちショウにとって癇に障るようなことをよくする存在ではあるが、基本的に嘘をつくようなことはしない。

 

 

 

「うん、あのね――――」

 

 

 

と言ったところで見えない何かがゴォォォッ!!と猛スピードでショウに向かって突撃してくる。それをショウは――――間一髪のところでかわす。警戒レベルを上げていたことが幸いした。

 

 

 

「そこには、守護者がいるんだって。だから、いくらショウといえど気をつけていたほうがいいよ?」

 

「……言うのおせぇっ!!」

 

 

 

それだけ聞いて、ショウはポケナビの連絡を切る。何かがいる、というのは感じた。姿は見えないが、それだけで十分だとショウは考える。

 

 

 

「……来るな」

 

 

 

再び、見えない何かがショウに向かって突撃してくる。それに対し、ショウはボールを――――構えるだけである。まだ、ポケモンを出さない。

 

 

 

(もっと、もっと……もう少しだ……今っ!!)

 

 

 

そしてようやく、ボールから何かが出てきて――――ガッ!!という大きな音だけが鳴り響き、出てきたポケモンはそのままボールに戻る。その動作だけだ。

 

 

 

「悪いな、出来るだけ傷つけたくはねぇんだが……」

 

 

 

ドサッ!!と見えなかった何かが姿を露にし、そして崩れ落ちる。ラティアスは、ショウの繰り出した何か、に一撃でやられたのだ。

 

 

 

「こうしている間にも意味のねぇ犠牲が増える。さっさと探して終わらせ……ッ!?」

 

 

 

突如。ヒュンッ!!と火球がショウの頬を掠める。いきなりどこからか飛んできたのだ。そして、その火球を飛ばすことを指示したトレーナーが姿を現す。

 

 

 

「あれ、おしいねえ。……上手く当てたつもりだったけど、ぎりぎりかわされた、ってか?」

 

「てめぇ……その装束、マグマの連中か?」

 

「ま、そーなるわな。そういうそっちは、スカイの連中だろ?」

 

「……お前も心の雫を狙いに来たってのか?」

 

「ん?そんなものには興味は無いよ。ただ、スカイの連中が何かをやらかすって情報だけはあったんでね、それを邪魔しに来たのさ。……それにしても、よっぽど焦ってるみたいだねえ?こっちの尾行に、全く気がつきもしないなんて」

 

 

 

チッ、とショウは舌打ちをする。何時もの自分なら気がつけたはずなのに、それを出来なかったのだ。目の前の相手が言うように、ショウはかなり焦っている状態である。

 

 

 

「さっさとアンタをぶっ潰して、こっちは早く帰りたいんだよ。ってことで、一応名乗っておこうかねえ?あたしはカガリ、マグマ団三頭火の一人さ」

 

「……どっちにしろ、お前を潰さなきゃ何も始まらねぇらしいな。俺はショウ、スカイ団三幹部の一人、S部隊のリーダーだ!」

 

 

 

ここアルトマーレ秘密の場所で、ホウエン地方の巨大組織の幹部同士の戦いが始まろうとしている。

 

だが、この時ショウもカガリも気がつくことは無かった。ラティアスが最後の力を振り絞って、目を光らせて何かの行動をしていたということには。




オリキャラ登場。二人目の幹部です。
何か自分の考えを持ちながら動くような幹部もいれば、純粋な悪意をもつ幹部もいてもいいんじゃないかなぁと。
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