「ッ……どうなってんだ!?」
リョウスケとイエローは旅館から外に出て今何が起こっているのかを見た。緑の装束の連中が……好き勝手に街中で暴れているのだ。それで傷ついている建物や一般人も数少なくない。
「あれは……」
そしてそれに対を成すように騒ぎを止めようとしている連中もいる。その連中は赤い装束を纏っている。そしてその連中を、リョウスケは知っている。
(マグマ団だよな……!?緑のほうはわからないけど、あれは絶対にマグマ団だ、見覚えがある)
ゲームでも出てきた組織、マグマ団だ。
(ゲームによっては敵だったり味方だったりしたが……!?)
カセットのカートリッジによって、マグマ団は悪の組織か、または悪の組織を止める側の味方だったりした。今目の前にいるマグマ団が、どちら側なのかはわからない。
「リョウスケさん!あの暴れている人達を……止めましょう!」
考えていたリョウスケにイエローから声がかかる。今考えるべきはそこじゃない、とにかくこの騒ぎを止めることが第一だ、とリョウスケは考えを切り替えた。
「……ああ、行くぞイエロー!」
~~~
「ハッハァー!!」
街中でスカイ団員数人が暴れ、それを止めるようにマグマ団員が戦っている。スカイ団員はズバットといった飛行タイプのポケモン、マグマ団員はポチエナやドンメルといった地上のポケモンを出している。
「ドンメル、火の粉!」
マグマ団員も敵を倒すべく指示を出す。が、攻撃は簡単にかわされてしまう。
「そんなノロい攻撃当たらねーよ!ズバット、吸血だ!」
「ちぃっ……!」
相手のポケモンの火力も低いから決定打には至ってはいないものの、このままではジリ貧だとマグマ団の一人は考える。こちらの攻撃が中々当たらないからだ。
「ブースター、火炎放射!!」
「オムすけ、冷凍ビーム!」
ならば次の手はどうしようか、そんなことを考えていた矢先にどこからか物凄い勢いで炎と冷気が飛んでくる。それもドンメルが放ったような火の粉とは段違いのスピードでだ。
「ギィッ!?」
あっさりとズバットは打ち落とされる。突然の出来事に、マグマ団も、やられた側であるスカイ団ですら一瞬呆けてしまう。そしてマグマ団の一人が気がつく。バタフリーが、空を飛んでいた。
「ッ!?身体が痺れっ」
そのバタフリーがスカイ団員の上空から何らかの粉を撒き散らしていた。様子を見る限りあれは痺れ粉であろうか、とマグマ団員は思う。
「大丈夫ですかっ!?」
気がつけば、子供二人がこの場に来ていた。
~~~
リョウスケとイエローは暴れていたスカイ団員を鎮圧した。そしてそれを止めるべく戦っていたマグマ団員に大丈夫かと声をかけた。
「ああ……って、一般人のガキだあ?」
ガキ、という言葉にリョウスケとイエローは少しカチンと来たのか、不機嫌そうな表情を見せる。それに気がついたマグマ団員もはは、悪いなと言って、
「ガキだろうが大人だろうが助けてもらったことには変わりねーわな、素直に感謝する。……だが、何で来た?」
何で来た、という言葉には組織同士の争いに何で来た、なのかそれとも危険から逃げずに何で来た、なのか。リョウスケにもイエローにもそれはわからない。
「何でって……旅館にいたら、いきなり爆音が響いて……それで暴れている連中がいたから、それを止めに来たんですよ!」
ただ、リョウスケもイエローも自分の意志のままに来た。止めたいから、ここに来た。それだけのことである。
「へっ……勇敢なガキだな、そういうの俺は嫌いじゃあないぜ」
「あの、あいつらは何なんですか?……あと、ガキって言わないでくださいよ!俺にはリョウスケって名前があります!あと、こいつはイエローです」
麻痺している緑の装束の集団に指差しながら、リョウスケはマグマ団員に問いかける。その際についでみたいに言わないでくださいよっ!何て声がイエローから聞こえてきたがリョウスケはスルーする。
「あいつらはスカイ団って連中でな、何の目的かはわからんがあいつらが暴れていたのはリョウスケもイエローも見ただろう?んで、俺らはそれを潰すようにうちの幹部から命令されてるってわけ」
あ、俺らの組織はマグマ団って言うんだけどな。って下っ端のマグマ団員は付け足すように言う。リョウスケもイエローも何が目的だろう……?と考え込む。その時、マグマ団員が動き出し、
「おう、スカイのクソ共。ここで暴れていたのは何が目的だ?あ?」
と、痺れているスカイ団員に脅しをかける。横にはドンメルがいつでも攻撃できるように準備している。
「ッ……ただ、暴れていればいいって幹部からの命令で」
「ふーん、それで暴れるだけならず、一般人から金品まで奪い取ってたってわけか。救えねぇクズだな。……おい、お前ら。こいつらの目的がわかったぞー」
どうせお前らも何が目的か知りたかったんだろ?とマグマ団員はリョウスケとイエローに言う。こういうところが慣れているのは、マグマ団といった組織に身をおいている故なのだろうか。
「で、お前達はこれからどうするんだ?俺達マグマ団がスカイの奴らを制圧しておくから、お前らが無理する必要はねーんだぞ?」
ま、俺達下っ端は実力が無いから制圧に時間がかかるかもしれないがな、とマグマ団員は笑いながら言う。それに対しリョウスケとイエローは、
「俺も……こいつらを止めます。俺らが動くことによって少しでも被害が減るところもあるかもしれないし」
「ボクもリョウスケさんと同意見です。こんな綺麗なアルトマーレの町を破壊するなんて許せないです!」
二人ともこの騒動を止めるという意見で一致した。正義感の強い二人からすると、見過ごせない事であるだろう。それを聞いたマグマ団員は、
「そっか、正義のヒーローもいいが無理はすんなよ」
俺はお前らみたいなガキは嫌いじゃねぇんだ、と一言。リョウスケもイエローもそうと決まったらすぐに動き出す。
「とりあえずありがとうおじさん、頑張って!」
と、リョウスケは去り際に一言。散々ガキと言われたことへの仕返しだろうか、マグマ団員も俺はおじさんなんて年じゃねぇ!と叫んでいた。
~~~
「おらァ!!」
リョウスケ達がスカイ団やマグマ団と遭遇した時、秘密の場所では幹部同士による戦いが繰り広げられていた。
カガリはキュウコンの尾から放たれる火球による圧倒的手数による攻撃、一方のショウは……まだボールからポケモンを出してすらいない。ひたすらに、攻撃を避け続けているのだ。
「ほらほらぁ!さっさと手持ちのポケモンを出さないとあんたが黒焦げになっちまうよぉ!」
ショウは攻撃のタイミングを取っているのだ。一撃で仕留められるタイミング、をだ。……だが、このまま自分の足だけでキュウコンの攻撃を避け続けるのは流石に無理である。自分が攻撃を喰らう前に、隙を見つけなくてはいけない。
(くそっ、攻撃が緩くなるタイミングがなかなか取れねぇ……)
まだ慎重に攻撃をしているのか、大きな攻撃こそ無いもののカガリの攻撃には全く隙が無い。
「……あー、じれったいねえ。ただ避け続けてるだけってか。いい加減苛々してくるねえ!?」
ポケモンを出さずに避けだけに専念していたショウに対し、ついに痺れを切らしたカガリ。元々、気の長いほうではない。
「だったらポケモン出させる前にお別れだよ。こいつで逝っちまいなあっ!!」
(……来るっ!!)
今まで一球一球別々に飛んできた火球が、全て同じタイミングで飛んできて一つの火球となる。単純計算なら、威力も大きさも尾の数である九倍だ。
「……へっ、そいつを待っていたぜ!」
だがそんな強大な攻撃に怯むどころか、むしろニヤリ、と笑みを浮かべるショウ。そして彼のボールの開閉スイッチを押し――――
「ッ、キュウコン、横に飛べ!」
ショウの笑みの意味を理解したカガリはキュウコンに指示を出す。が、時既に遅し。ボールから飛んできた何か、の攻撃を喰らい思い切り吹き飛ぶ。
「ちぃっ、最初からこれが狙いだったってかい。上手いことやられちまったよ。だが、アンタも無事ではないようだねえ?」
ショウも無事ではなかった。大きい火球を避けきることは出来ず、腕に火傷を負ってしまったのだ。しかも、完璧に攻撃が決まったわけではなかった。
「最後にちょっと反応しやがったな……チッ、一発で仕留めるつもりだったんだがな。そう甘くは無いってか」
ムクリ、とキュウコンが起き上がる。……厳密には、時既に遅かったわけでもなかったのだ。カガリがショウの意図をぎりぎりで読み取り、ぎりぎりのところで避ける指示を出した。そして、キュウコンは攻撃を喰らったものの致命的な急所を避けることは出来たのだ。
「だったら……こっからは正攻法で潰させてもらうぜぇぇ!!」
そしてショウは攻撃を放った後空中に飛んでいた自分のポケモンに指示を出す。
「……クロバット、翼で撃つだ!」
ショウのポケモン――――クロバットが、目にも止まらぬスピードで翻弄する。
「あーあー、全然見えない、とんでもないスピードだねえ?……だけどよお、考えられることは一つ、だ」
カガリはクロバットの驚異的なスピードにも全く焦る表情を見せない。
「そこから繰り出されるものは物理攻撃……それがわかってりゃあ、対処の方法なんていくらでもある」
そしてクロバットがついにキュウコンを捕らえ――――
「キュウコン、炎の渦!!」
られなかった。キュウコンが自分の身体の回りに炎の渦で防御壁を張ったのだ。
「クロバット!……くそっ!!」
逆に炎の渦に突っ込んでしまったクロバットが大ダメージを負ってしまった。炎の渦という防御であり、攻撃手段を予測できなかったショウは悔やんでしまう。……が、すぐに切り替え、
「物理は効かねえってか……なるほどな、それは厳しいな」
「はっ、諦めでもついたかい?」
「んなわけあるか……俺のクロバットは物理だけじゃねえ!」
「フン、それならそういうところを見せてもらおうかい。……それまでにくたばって無かったらの話だけどねえ!」
キュウコンの火球を何とかかわしていくクロバット。だが既に身体に大きなダメージを負っているため、先程までの圧倒的機動力はなくなっている。このままでは、いつかキュウコンの攻撃を喰らってしまうだろう。
「お望み通りに喰らわしてやるよ……クロバット、エアカッター!」
クロバットの四枚の翼から放たれる空気の刃。確かに飛んでくるスピードは中々のものだが、キュウコンが避けられないスピードというわけでもない。
カガリは最初の一撃急所を狙ってくるような作戦を取ってくると思っていただけに、この普通すぎる攻撃は意外だった。何も脅威ではない。次への攻撃の布石か?などと色々な思考を張り巡らせるが、この攻撃自体にはそこまで意味がない、そうカガリは解釈した。
「気をつけな、俺のクロバットのエアカッターは……曲がる」
キュウコンが動いた直前、四つの刃がランダムに変化したのだ。当然、そんな事は予測も出来なかったキュウコンは四つの内二つの刃をズバズバッ!!ともろに喰らってしまう。
「ッ!?」
「誰も直線のまま飛んでいくとは言ってねーぜ?そして……」
再び四つの空気の刃がキュウコン目掛けて飛んでくる。次も曲がってくるだろう、そう読んだカガリはキュウコンに動くな!の指示を出した。だが……今度は刃の四つの内二つは曲がらずに直線のまま飛んできたのだ。勿論、動かなかったキュウコンはズバァッ!!と攻撃を喰らってしまう。
「わかっていても避けられねえ、それが俺のクロバットのエアカッターだ」
「ちぃぃ、随分と面倒くさい切り札持ってるんじゃないのさ……だけど、そっちのクロバットもさっきの攻撃でかなりダメージを負っていたようだねえ?」
クロバットも空に浮遊することが厳しいくらい体力が削られている。身体中が火傷していて、徐々に体力が奪われていってしまったのだろう。
「とは言っても、こっちのキュウコンも相当ダメージを喰らってしまっているけどねえ……お互い、あと一撃喰らえば完全にダウンってとこか」
「……上等じゃねーか、勝つのは俺達だ!」
クロバットもキュウコンも最後の力を振り絞り、攻撃を繰り出そうとする。
……が、ある存在がそうすることを許さなかった。
『ギィッ!?』
『キャンッ!!』
「なっ、キュウコン!?」
「おい、クロバット!!」
見えない何かの攻撃を喰らい、共にダウンする。お互いすぐに自分のポケモンをボールに戻し、現状把握をしようとする。そして……見えない何かが姿を露にした。
「あれは……」
「ラティオス!?」
実はラティアスが気絶する前、最後の力を振り絞って夢写しでこの場の現状をラティオスと共有し、伝えていたのだ。そして、ピンチと知ったラティオスは猛スピードでこの秘密の場所に戻ってきたというわけである。
ラティオスは怒りのままに……自分の最大の技、ラスターパージを放つ。まばゆい光が開放されたかと思ったら、辺りがゴォォォッ!!と爆発し吹き飛ぶ。ラティオスにとっても大事な場所なはずなのにこの手加減のなさだ、相当きている証拠だろう。
「……くそっ、撤退なんてみっともない真似は嫌いだけどね……これは流石にまずいね、逃げさせてもらうよ!」
キュウコンが倒れ自分の身が危ないと感じ、すぐにその場から撤退するカガリ。
「なっ……おい、ちょっと待て!」
その場に取り残されるショウ。そしてラティオスの目線は……ショウ、ただ一人に向けられている。
「ちょっ、もうこれ任務とかの話じゃねえ……俺の命の危機いいぃぃぃ!!!」
続けざまに攻撃を繰り出すラティオス、だが悪運が強いのか奇跡的に攻撃をかわしていくショウ。秘密の場所から去ったことを見るや否や、追うことをやめた。ラティオスからすれば、逃げた小物よりも倒れているラティアスの介抱の優先順位のほうが圧倒的に上である。
……こうして、スカイ団心の雫入手任務は見事失敗に終わった。
ゲームでは明らかに弱い技なのに、文に書いてみたり、実際に起きたら強そうって技、ありますよね。
エアカッターも、炎の渦もゲームでは使った記憶が無いですし、弱かったイメージがありますが現実で起きたら何か強そうな気がします。
逆に、ゲームではかなり強いのにいざ書こうと思っても書けない技なんてものもあります。
……波乗りとか、どうやって攻撃手段として書けばいいんだ(笑)水ポケモンの技で書くとしたら、ハイドロポンプとかなら書きやすいんですけどね……