(センリさんって確か……ルビサファ主人公の父親で、ジムリーダーだったよな?何故、こんな所にいるんだ?)
ジムリーダーが何故りゅうせいの滝にいるのか疑問に思いつつ、リョウスケはこれまでの経緯を話す。
「なるほど……気がついたらりゅうせいの滝にいて、そしてズバットに襲われた所をこのタツベイに助けられ、今に至る、か」
「大体そんなところです。……あの」
「……どうした?」
「こんな事自分で言うのも何ですが……俺の話、信じてもらえますか?」
リョウスケ自身、自分でも明らかにおかしい事を言っているという自覚があるため信用してもらえるか心配なのだ。
……だが、センリはこう答える。
「にわかには信じがたい話ではある。……が、君の目が嘘を言っていないって訴えてくるんでな。信用はしよう」
それを聞いてリョウスケはかなりほっとする。こんな話、信じてもらえるとは思っていなかったからだ。
「君の話はわかった。……で、君はこれからどうしたい?」
「……どう、とは?」
「幸い近くにはカナズミシティもある、保護をする分には問題ないだろう。そこで普通に生活を送ることが出来るということは、私が保証しよう」
普通の生活か、それも悪くないとリョウスケは思った。訳もわからないままこの世界に来て、且つ普通の生活を送れるということは、よほど運に恵まれているのだろうとも思った。
……だけど、せっかくこの世界に来たんだ、それでいいのか?物足りなくはないか?とも思ってしまった。
(俺は……どうしたい?何がしたい?カナズミでのんびり暮らす?それも悪くない……だが、何かが違う)
「……そうだな、他には「待ってください!」……どうした?」
「俺は……」
そうだ、せっかくこの世界に来たんだ、これは諦めかけていた自分の夢をかなえる大きなチャンスではないのか?と、リョウスケは思う。……そして、センリに対してこう言った。
「俺は……ポケモントレーナーになりたいです。」
その言葉を聞いたセンリの目が少し険しくなる。
「……君に聞こう、何故トレーナーになりたいと思う?」
「俺は……生まれつき身体が弱いんです。そして、そのせいで俺は自分の夢を諦めかけてた。……ガキの頃から、夢だったんです、世界を旅することが。」
「……」
センリは無言でリョウスケの話を聞く。彼は一体、この少年の話を聞いてどう思っているのか。
そしてリョウスケもまた、話を続ける。
「言ってなかったですが俺、なぜかタツベイと会話出来たんです。そしてお互いの夢なんか話しちゃったりして、……ポケモンとこんなこと話すなんて変ですかね?って、ああ、そういうことじゃなくて」
『えっ、俺がどうしたって?』
リョウスケは興奮して話をまとめられないながらもセンリに対して語る。
「夢が同じだったんですよ、タツベイと。俺、思ったんです。こいつとなら、夢をかなえることが出来るんじゃないかって」
『リョウスケ……』
「……これが、俺のトレーナーになりたい理由です。なることが、夢をかなえるチャンスに繋がるんじゃないかと思って……」
リョウスケは自分の言いたいことを全てセンリに伝えた。
……そしてセンリはゆっくりと口を開く。
「……一つ言おう。ポケモンはトレーナーの夢をかなえるための道具じゃない」
『……てめぇっ!リョウスケはそんなつもりで言ったわけじゃ』
「タツベイよせっ!」
リョウスケは怒って思わず手が出そうになったタツベイを口で静止する。
自分の為を思って怒ってくれるのは嬉しいが、それと手を出していいかという話は別だ。
「勿論君がそんなことを思っていないということもわかっている。それに今のタツベイの俺に対しての怒りよう、それが君に対しての信頼を証明してるな。だが」
センリは丁寧にはっきりとこう言う。
「君がもしポケモンが道具ではないと心では思っていても、君が未熟ならば道具になってしまう可能性だってある。トレーナーは指示をするだけの存在ではない。トレーナーもポケモンと一緒に戦わなくてはいけないんだ」
「……トレーナーも戦う?」
聞いたことの無い話だ。
ゲームだけでしかポケモンという世界をわかっていないリョウスケにとっては、無理も無いだろう。
「ああ、そうだ。それに、君は身体が弱いと言ったな?」
やはり、駄目なのか。夢をかなえることは出来ないのか。そうリョウスケは思い込む。
「トレーナーになることを諦めろとは、まだ言わない。むしろ君の熱意は俺に伝わった」
「……まだ、とはどういうことですか?」
「俺はとある調査で3ヶ月、このりゅうせいの滝にいるんだ。その間に、君とタツベイを鍛えてあげてもいい、ということだ。俺もポケモントレーナーとしての腕は一応人並み以上に優れている自信はあるつもりだ」
「……その3ヶ月で俺がトレーナーになれるかどうか、見極めるということですか?」
「そういうことだ。……君はどうする?」
(センリさんが人並み以上の実力者というのは事実だろう……ゲームではジムリーダーだったくらいだし)
恐らくこのチャンスを逃したら、夢をかなえる事は出来ないだろう。なぜかリョウスケはそう思えてならない気がした。
『リョウスケ、やろうよ!俺たちでさ、がんばろ?』
タツベイもリョウスケを励ます。そして一緒に頑張ろうと言う。
……その言葉に応えるかのように、リョウスケは宣言する。
「勿論だっての……センリさん、俺、いや俺たちはやりますよ!トレーナーになるための特訓を!」
「……フッ、いい返事だな。衣食住くらいは、俺が用意する。粗末なテント生活だがな」
「提供してもらえるだけでも俺は大感謝ですよ……よしタツベイ、絶対強くなるぞ!ゲホッ」
『無理したらまた体調崩すって……強くなるってのは、勿論だけどね!って、あ、あれ?』
タツベイは何か身体に違和感を感じた。そしてその違和感とは、周りで見ていたリョウスケやセンリのほうが把握出来るような違和感だ。
「ん?どうしたタツベイ?って、何か光ってないか?」
「……進化だな」
「えっ?」
タツベイを強い光が包み込む。そして……
『あれ?コモルーになってる?』
「……何故?戦闘なんて特になかったのに」
進化とは本来、レベルアップまたは特別な道具を与えることによって起きるものだ。
このタツベイからコモルーへの進化の条件は、レベルアップ。そしてレベルアップとは普通なら戦闘で勝利した経験値を積んで起きるもの。
それだけに、リョウスケもこの状況にはかなり驚いている。
「恐らく、強くなりたいという気持ちが進化に繋がったのだろう。……戦闘以外での進化は、稀なケースではあるがな」
センリはこの状況をそう判断した。普通ならほぼありえない現象。だが、強い思いがそれを可能にしたということだ。
「君も、コモルーの意思に答えなくてはな?」
「……はいっ!」
そして、リョウスケのトレーナーになるための特訓が始まる……