「イーブイ、影分身!」
まずはセンリがイーブイに指示を出す。
(恐らくコモルーはイーブイより力は強いがすばやさが遅い……コモルーの技を当てるためには俺がうまく指示しなくてはならない)
リョウスケは考える。
(どうする、どうすればいい)
「リョウスケ君、考えていてばかりでは何も出来んぞ!イーブイ、電光石火だ!」
ガッ!
イーブイの電光石火がコモルーに衝突するが、あまりダメージは通っていない。
(コモルーは耐久もあるから何発かは凌げる……だがあのイーブイも相当鍛えられているから何回でも凌げるって訳でもない)
それでもなお、リョウスケは考える。
(真正面から攻撃が来たならカウンター気味に攻撃を与えることも出来るが、そんな甘い攻撃はセンリさんはまずしないだろう)
今の電光石火もコモルーの裏から攻撃を仕掛けたものだった。
(……いや、待てよ?もしかしたら)
ふと、単純ではあるが効果的な作戦をリョウスケは思いつく。
「コモルー!周りの影分身に対して火の粉だ!」
『おっけー!』
リョウスケの指示を受けたコモルーは、周りに大量の火の粉を吹く。だが、
「そんな闇雲な攻撃で当たると思ったか?イーブイ!」
(……来る!)
「隙を見て、とっしん!」
ここでリョウスケは、自分の考えた作戦を実行する……!
「……今だコモルー!後ろに向かって竜の息吹!」
「なっ!?」
『任せろっ!』
リョウスケは何もないはずの所に攻撃するように支持を出し、コモルーも迷いもせず攻撃をする。
ゴォォォォン!!
コモルーの竜の息吹が、「何か」に、炸裂する。
(……どうだ?うまくはまってくれるといいが……)
攻撃の際、出来た煙から出てきたのは……
『……ぐっ』
攻撃を受け、ダメージを食らっていたイーブイの姿だった。
(……よし、作戦は成功した!だけど、仕留め切れなかったのは痛い)
リョウスケとしてはこの一撃で終わらせるつもりだった。そうしなければ、今度はだんだん自分が不利になっていくことをわかっていたからだ。
もうこんな作戦は通用しないだろう。次はどうすべきかと考えていた矢先に、
「……オーケー、ポケモンバトルは終了だ」
センリから突然の終了宣言が、言い渡された。
~~~
(……何故だ?コモルーもイーブイもまだ戦闘不能にはなってないはず……)
まだ勝負が決していないにも関わらず、バトルを中断させた事に対してリョウスケは疑問を抱く。
イーブイを傷薬で回復させ、ボールに戻したセンリはリョウスケに質問した。
「リョウスケ君、何故君はイーブイが後ろから仕掛けてくると読めた?」
「センリさんなら……まず真正面からの攻撃はありえないと思いました。そこで俺は、一つの策を思いつきました」
リョウスケの策。それは
「策、と言っても単純なんですけどね……攻撃を誘って、それに対してのカウンター攻撃です。」
「フッ……あの闇雲に放った火の粉も相手を誘い出すための餌ってことか」
「はい……まぁ、背後から来るか、横から来るかは結構ギャンブルだったんですけどね。あと俺の指示に迷いなく受けてくれたコモルーのおかげでもあります」
火の粉を放ちわざと隙を作り、相手を誘い込む。そして攻撃の瞬間、カウンター気味にこちらも背後に対応する。左右からの可能性もあるので、単純な計算なら三分の一のギャンブルである。……だが、格上のセンリに対して三分の一という確率は、まだバトルに慣れていないリョウスケにとっては割と可能性の高いギャンブルでもあるのだ。
……だが、この三分の一も、もし仮にコモルーがリョウスケの指示に疑問を抱き攻撃が遅れたなら成り立たない賭けでもあるのだ。
リョウスケの作戦、そしてコモルーがリョウスケに対する信頼関係。
これらが重なって、ダメージを通すことが出来たということである。
「随分と危ない賭けをするもんだな、だがイーブイにダメージを与えることが出来たのも事実……フッ、リョウスケ君。一つ目の試験は合格だ」
センリから見てこの作戦が最善の策とは言い難いが、ダメージを与えるという一つの結果を残したのだ。
そしてそれは、合格点に達するレベルであると。
「……!」
『やったなリョウスケ!ま、当然っちゃ当然かな?』
「では次に二つ目の試験だが……」
「え!?すぐに試験ですか!?」
まさかの連戦に、さすがに焦るリョウスケ。自分もコモルーも、クタクタである。
「まぁ、試験と言っても一つの質問に答えてくれるだけでいい。君は、ポケモン……まぁ、君からするとそこのコモルーか。君はポケモンとは何だと思う?」
「ポケモンとは、何か……ですか?」
リョウスケは考える。
ゲームをやっていたときは、遊び道具……いわば玩具だ。まぁ、これはあくまでゲームなのだから仕方ないのだが。
こっちの世界に来てからはどうだ?最初はズバットに襲われかけた。恐怖もした。
だが、コモルーはどうだ?
タツベイの時に出会い、助けてもらい、そして3ヶ月共に必死にトレーニングをした。
今ではリョウスケにとっては無くてはならない存在。
「何でしょうかね……俺の手持ちは、まだコモルーしかいないですけど」
そしてリョウスケははっきりとこう言う。
「友達、ですかね?人間とポケモンなのにおかしい、って言われるかもしれないし、笑われるかもしれないですけど……俺からしたら、大切な友達ですよ」
『そんなことねーよ!それでリョウスケを笑う奴がいたら俺がぶっ飛ばす!』
「……」
センリは黙ったままである。
リョウスケはやべ、間違えたことを言ってしまったか?でも俺の考えに嘘偽りはないから仮にここで認められなくても後悔はしない、と考えた。
……そして、センリがようやく口を開き
「……フッ、友達か。いい答えだ。二つ目の試験も、合格だ。……今言った言葉、絶対に忘れるなよ?」
ここにまた、新たな若いポケモントレーナーが誕生する。
~~~
「よ、よっしゃあああああ!」
『ま、リョウスケなら何とかなると思ってたよ?……いや何だよその目は、マジだって』
「ふっ、まぁお前のおかげでもあるよ。サンキューな、コモルー」
『ああ、これからも、当然よろしくな?』
リョウスケはトレーナーになることを認められたことを喜び、コモルーもそれを自分のことのように喜ぶ。
「おめでとう、リョウスケ君。……しかし、なんだ。今更かもしれないが、よく見ず知らずの俺なんかの特訓なんて受ける気になったな?」
「いやぁ、ははは……」
ゲームでジムリーダーだったから信用できた、何てことも思っているリョウスケであった。
だが、それ以外にも理由はある。
「ほら、見ず知らずの俺の言ってること信じてくれたじゃないですか。それもあって、信頼できる人だなって」
「なるほどな……よし」
センリは腰のボールを一つリョウスケに渡す。
「手持ちがコモルーだけだと寂しいだろう。俺のイーブイを、君にあげよう」
「えっ!?そんな、いいんですか?」
「確か、イーブイと話せるようになったと君は言っていたな?恐らくだが、君がポケモンと話せるように条件はお互いが信頼関係を築けている時だと俺は思っている。このイーブイは、君の頑張りをずっと見ていただろう?頑張っている君を見て、君を信頼するに至ったのだろう」
あくまで仮説でしかないがな、とセンリは付け加える。
「でも……」
「それに、このイーブイも君と旅をしたいんじゃないかな」
「えっ?」
予想外の一言に、リョウスケは驚く。
「俺は最初、君とのバトルにケッキングを出すつもりだった。だがな、ボールの中から闘志がみなぎってたんだよ、イーブイのな。君を気に入ってたがために、試験のバトルも自分が出たかったんだろうな。君を見極めるために」
「……そうだったんですか」
「そして、君はバトルで見事イーブイの気持ちに答えた……と言ってもいいはずだ。そんな君と旅が出来れば、このイーブイもきっと喜ぶだろう」
「……わかりました。これからよろしくな、イーブイ!」
『うん、よろしくリョウスケ!』
と、ボールから元気な声が聞こえてくる。リョウスケの新たな「友達」の誕生だ。
「さて、君も旅に出るなら最低限の道具は必要だろう。このリュックを持っていくがいい」
センリから渡されたリュックには傷薬やモンスターボールなどが入っていた。
「何から何まで……本当にありがとうございます!」
「気にするな。……リョウスケ君、君はいいトレーナーになれる。君の旅がうまくいく事を祈っているよ」
「はいっ!絶対いいトレーナーになります!な、コモルー?……コモルー?」
リョウスケがコモルーに呼びかけたが、そこにいたのは……
『……何か身体が光ってるんだが』
前にも見たような異変を起こしている、コモルーの姿であった。
カッ!!
という激しい光が起きたかと思ったら、その光が収まったところに現れたのは……
『……うお、翼がある』
進化したボーマンダであった。
「……おい、ボーマンダ?」
『つ……』
「……つ?」
『翼だああぁぁぁぁ!イヤッホウゥゥゥゥ!』
「ちょっ、嬉しいのはわかるが火を噴くな……火を噴くなぁぁぁ!」
ボーマンダ、全力ではしゃぐ。
そして怒りながらも、ボーマンダに進化したことが嬉しいのか、どこか笑顔のリョウスケ。
『リョウスケ、早速飛ぼうぜ!夢、かなえてやるよ!』
リョウスケとボーマンダの共通の夢。
それを叶える瞬間が、ここに来たのだ。
「ああ、頼むぞ、ボーマンダ!……センリさん!」
「……どうした?」
「この三ヶ月間、本当に、本当にありがとうございました!今の俺があるのは、センリさんのおかげです!」
「……そんなセリフは一流トレーナーになってから言うんだな。道中、気をつけろよ」
「……はいっ!よし、行こうぜボーマンダ!」
『おう!落ちないよう、しっかり背中に乗れよ!』
リョウスケは、バトルを教えてくれた師匠に別れを告げる。
ゴォォォッ!と、かなりの勢いのいい音を立て、一瞬のうちにセンリのうちから姿を消した。
~~~
「しかし、リョウスケ君か……本当に、彼はいいトレーナーになれそうだな」
センリは、旅立った新米トレーナーのことを思い、そう呟く。
「さて、俺がここで出来るレックウザの調査も終わった……やる事も無くなったし、さっさと移動するか」
センリは思う。
レックウザの調査で家族とも離れ、辛いことしかなかった旅だったが久々に楽しめた、と。
「……俺もさっさと家族の下に帰れるよう、頑張らないとな。」
リョウスケよりも少し年下の自分の子供、ルビーは元気だろうか。そんなことを思いながら、彼はまた別の調査場所へと旅立つ。
はい、ようやく五話目にして旅立つことが出来ました。……この展開の遅さ、うーん。
正直、ぶっちゃけた話本来トレーナーになるならトレーナーIDだの、カードだの必要だった記憶があるんですが……まぁ気にしたら負けですよね、こういうのは勢いで何とかするもんです。←
あと、センリに人がトレーナーになれるかなれないかなんて決める権利もないとは思いますが、まぁそこは、もし仮にリョウスケに実力がなかった場合旅立たせるわけにはいかないので、それを見極めたって感じです。
あと戦闘描写の書き方……難しい。