『リョウスケ、気持ちいいか!?』
「……ああ、最高だ!」
自由に空を飛び、移動するリョウスケ達。
念願の夢がかなって、両者共々嬉しさを前面に出す。
「最高……だけどさ」
『どうした?』
「これ、どこに向かってるの?いや、てっきりホウエン地方をそれとなく回るのかと思ってたけどさ……海しか見えないんだが」
変わらない景色が続き、さすがに少し不安になってくるリョウスケ。
『……え、とりあえず、風の向くままに?』
「なるほど、なるほど。……陸すら見えないんだが」
ボーマンダがはしゃぎすぎて適当に飛び続けていたせいで、今いる場所が全く把握できないリョウスケであった。
「陸はどこだ……陸が恋しい」
『大丈夫だって、かなりのスピードで飛んでるからそのうちどっかに着くって』
「その台詞、何回目だ?」
『……うっ』
かれこれ、海しか見えないところを何時間も飛んでいるのだ。
……これはさすがに、不安にもなるだろう。
『なんだよ!だったら最初に目的地を言ってくれればいいだろ!』
「いや、目的地も何も地理が全く把握できないんだって……でもさすがに海しかないところを飛ぶなんて予想できるかよ!?」
空中遊泳を楽しみながらギャーギャー言い争うリョウスケ達。
だが、その言い争いも終わりを告げる。
「おい、陸見えたぞ!ここはどこだ!」
『……わからん!とりあえずそこらへんの砂浜に着陸するかなっと』
「ちょっ……そのスピードでいきなり止まったら」
~~~
「ふぁぁ……なかなか釣れないなぁ」
のんびりと釣りをしているこの人物、名前はイエローという。レッドという人物を探し、救出すべく旅をしているのだが……
「ピ、ピカピ」
「ん、どうしたのピカ?」
ピカというニックネームのこのピカチュウ、本来はイエローの手持ちではなく現在行方不明になっているレッドのポケモンである。
レッドをイエローと共に探すべく、現在は一時的にイエローのパートナーとなっているが。
「ピカ!ピカピ!」
「いきなり大声出してピカ、一体どうしたの?」
ピカは空を指してイエローに注意を促しているが、悲しいかな、イエローは上空の異変には全く気がつかない。
「あぶねぇぇぇぇ!!」
「ん?今人の声が聞こえたような……って、ええええ!?」
突如空から勢いよく降りてくる少年、リョウスケ。それを間一髪の所でかわすことに成功したイエローであったが……
ズザァァァァッ!
「ゲフゥゥッ!?」
『あ、これはやばい』
思いっきり砂浜にヘッドスライディングをしていくリョウスケであった。
砂浜が無かったら死んで……たかも?
~~~
「え?え?」
いきなりのことに頭が回らなくなるイエロー。
人が空から飛んでくるという誰に話しても信じてくれなさそうな現象が今自分の目の前で起きたのだ、無理も無いだろう。
「……」
(あの人、生きてるのかな……?)
吹き飛んでからピクリとも動こうとすらしないリョウスケを見て、かなり心配になってきたイエローである。
「それにしても……見たことないポケモンだなぁ」
『ぎゃうっ?(誰だこいつ?)』
一体どこから来たんだろ?と不思議がるイエローと、何だこのじろじろ見てくる麦わら少年は?と不思議がるボーマンダ。
「う……ぐぉぉ」
「あ、起きた!だ、大丈夫ですか……?」
空から吹き飛んできた少年を心配するイエロー。
あのスピードで落ちたのだ。大丈夫なはずが……
「大丈夫……だ」
意外と大丈夫だったみたいだ。
「おい、ボーマンダ」
『うん……マジでごめん』
ようやく目覚めるリョウスケ。吹き飛んだ勢いこそ凄まじかったものの、地面が砂浜だったということもあってかそこまで身体に傷はついていなかった。
「いや、まぁ初めての着陸だから仕方ないっちゃ仕方ないが……今度から、降りるときはゆっくり頼む、じゃないとマジで死ぬ」
『おう……俺もテンション上がりすぎてたわ、今度からは気をつけるよ』
「ああ、正直俺もテンション上がってた……お互い気をつけるか」
(な、何だろ?人とポケモンで会話が成立しているような?)
リョウスケとボーマンダのやりとりを見て困惑するイエロー。……イエロー自身も、ポケモンの気持ちをなんとなく読み取るというトキワの力を所持している。が、それでもあそこまでポケモンと会話を成立させることなど、出来ないだろう。
ボーマンダをボールに戻した後、リョウスケはここがどこかを確かめるためにイエローに問いかける。
「で、えっと……ここはどこだ。あの……そこの麦わら君」
「え?ボクですか?」
「うん、君。……ここってどこかな?」
「えっと、ちょっとした釣りの名所ですけど……?」
「……あー、うん。俺の質問が悪かったな。……ここってホウエン地方?」
あれだけ長い時間空を飛んでいたのだ、ホウエン地方から離れていてもおかしくは無いだろうとリョウスケは考えた。
だが、イエローの回答は想像範囲外の物であった。
「ホ、ホウエン!?そんな遠いところから来たんですか……?」
「遠い……?まぁ、あれだけの時間を飛んでいたらそうなるのかなぁ。……ホウエンじゃないってことは、どこ?」
「えっと、カントー地方ですけど……」
「……は?あの、ごめんもう一度」
「カントー地方ですよ、ここは」
(……マジかよ?)
リョウスケは考える。
今まで自分は『ポケットモンスタールビー・サファイア』の世界に迷い込んでいたとばかり思っていた。しかし、目の前にいる少年から聞いた答えはカントー地方。
(どういうことだ……?今まで俺はポケモンのゲームの世界は初代、金銀はともかくその他は別々の世界だと思っていたが……この世界は、一つの世界として成り立っている?)
「……あの、大丈夫ですか?」
(そもそもゲームをやっていたからこそわかることだが、りゅうせいの滝にセンリさんが何かの調査をしたなんて過去設定なんかあったか……?ポケモンの世界ではあるけれど、微妙に何かが違う気もする)
「あの!」
「あっ、悪い!……少し考え事をしてたわ」
少なからず違和感を感じたが今はそこまで気にする必要もないか、と自己解決をするリョウスケ。
「何か心配かけちゃったみたいでごめんな。えっと、君は?」
「あ、えっと……(ブルーさんにあまり名乗るのはよくないって言われてるけど悪い人じゃなさそうだし……どうしよう)」
実は旅の際、自分を送り出してくれたブルーという人物に見知らぬ人にむやみに自分の名前を教えてはいけない、と忠告されていた。だが
「……おっと、人に名前を聞くときはまず自分から、だよな。俺はリョウスケ、ホウエンから来たんだ。よろしくな!」
と、先に名乗るリョウスケ。それを聞いたイエローも、悪い人じゃなさそうだし大丈夫かな、と思い自己紹介をする事に。
「……ボクはイエロー。イエロー・デ・トキワグローブです!よろしくお願いします、リョウスケさん!」
はい、いきなりですがカントー地方編に突入でございます。
原作では、5~6巻あたりといったところでしょうかね?