新たなる者逹の軌跡   作:美華

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新キャラクターを出すので、是非とも見ていってください。


第一章 勇猛な王子

ルネスの村に現れた山賊を討伐したアーサーは、再び仕事に追われる日々を迎えた。

 

目の前の事務机に山積みになる書類を見て、アーサーは思わず嘆息を吐いた。

 

書類に片っ端からペンを走らせながら、ふとアーサーは従兄弟であり顔馴染みでもある少年の顔を思い浮かべる。

 

(エヴァンスは上手くやっているかな?まあエヴァンスなら母上の元でのんびりやっているだろう。)

 

ルネス王子エヴァンス。

 

彼は〝勇王の再来〟と謳われるルネス国王エフラムの息子だった。

 

*

*

*

 

─エルダ密林─

 

ルネス城の南に広がる自然豊かなエルダ密林。

 

日の光を遮る木々の緑は目の錯覚すら引き起こしそうな程に深い。

 

普段は静寂に包まれているエルダ密林だが、今は何時もとは違い何処かなしか緊迫した雰囲気が充満していた。

 

その正体は、密林を駆け抜ける一人の少年だった。

 

緑の世界の中にまるでそこだけ異世界の様に広がる後ろで束ねられた蒼い長髪。

 

鋭い緑の眼に漂う高貴な雰囲気。

 

少年から漂う雰囲気を感じれば、誰でも彼が上級階級の生まれだと思うだろう。

 

少年の身分を決定付ける証拠は、腰に収まった一本の槍だった。

 

緑色の布を巻き付けられた白銀の槍には銘が彫られていた。

 

〝勇槍レギンレイヴ〟

 

嘗てのルネス国王で〝勇王〟と称えられた先代国王ファードが若かりし頃所持していた物であり、それを息子のエフラムに譲った事によりエフラムの愛槍となった槍である。

 

現ルネス国王エフラムが隣国フレリアの王女ターナと結婚した事により、レギンレイヴの所持権は息子のルネス王子に移った。

 

それから基づくにこの少年の正体はルネス第一王子のエヴァンス王子という事になる。

 

少年改めエヴァンス王子は今非常に緊迫した事態に陥っていた。

 

足はもう既に感覚すら無くなり、額や首筋に浮かぶ汗は彼が走る度に飛ばされ、途切れる事なく角砂糖を見つけた蟻の様にエヴァンスの首筋に群がる様に浮かぶ。

 

背後を振り返ったエヴァンスは、思わず短く舌打ちをした。

 

「チッ。しつこいな。俺が逃げても逃げても追いかけてくる。こうなったら迎え撃ってやろうか。」

 

そう言うとエヴァンスは父王から譲り受けたレギンレイヴを背後に広が漆黒の闇に突きだした。

 

次の瞬間、エヴァンスは槍を横に無尽蔵に振った。

 

ブシュッ。

 

何かが噴出する様な音と共に闇の一部が動く。

 

エヴァンスは蠢いた闇を睨み付けると、挑発めいた口調で闇に向かって言った。

 

「おい。いい加減俺の後を追いかけるのを止めろ。止めないと痛い目に合うぞ。これ以上痛い目に合いたく無いだろう?」

 

その挑発に蠢いた闇が正体を現した。

 

闇と勘違いしそうな程に暗い漆黒のローブに、フードの隙間から僅かに覗く生気を感じられない白い肌。

 

血を連想させる紅眼はエヴァンスを映していない。

 

単なる獲物であり殺さなければならない標的(ターゲット)としか認識していない。

 

その冷徹な感情の中に人情や情けは一切感じられない。

 

在るのは標的(ターゲット)を殺害する為にはどの様な手段を選ぼうともする、深淵の闇を覗き込んだ様に暗く深い達成欲だけだ。

 

その事を察知したエヴァンスは和解の交渉をかなぐり捨て、レギンレイヴを構えた。

 

幸いついさっきの攻撃で相手側は傷を負っている。

 

戦闘開始直後からかなり有利な状況を造る事に成功した。

 

数秒の静寂の後、好機を見たエヴァンスは容赦無く敵に襲い掛かった。

 

しかし、敵も一筋縄では行かない。

 

懐から取り出した剣でエヴァンスのレギンレイヴを弾き飛ばす。

 

レギンレイヴを再度構えたエヴァンスは、内心の苛立ちを現すかの様に舌打ちをした。

 

エヴァンスの苛立ちの理由は相手が握る剣に在った。

 

白い刃身に薄く通った紅い線。

 

周りを細やかに飾る緑の握り手。

 

それはマギ・ヴァルの兵法に措いて重要な知識の一つである三竦みすらも覆す特殊な剣、ランスバスターであった。

 

ランスバスターはその名の通り三竦みの一つである【剣は槍に弱い】という方式を【剣は槍に強い】に変えてしまうという、恐ろしい剣だった。

 

(ランスバスター………まさか父上の言う通り、存在していたとはな。)

 

父王が語っていた昔の戦いの中に登場した三竦みを覆す剣。

 

エヴァンスは父が誇張したのだろうと思っていたが、それは現実の前に崩れ去った。

 

流石のエヴァンスもランスバスター相手には苦戦を強いられざるを得ない。

 

エヴァンスは再度襲い掛かってくる敵の攻撃を必死に回避しながら、三竦みの逆転を元に戻す方法を思案する。

 

(只の槍じゃ駄目だ。ランスバスターに敵う物………)

 

エヴァンスの脳裏に斧が浮かび上がる。

 

(ランスバスターに敵う物、それは斧だ。だが…………)

 

ランスバスターは三竦みの逆転の代償に、斧が通常とは違い弱点となる。

 

エヴァンスは斧は不得手だ。

 

例えこの場に在ったとしても、エヴァンスにとって猫に小判なのだ。

 

敵は一切疲れを感じさせない。

 

それどころかエヴァンスの隙を探り理想的とも思える一閃をエヴァンスの隙に叩き込む。

 

脇腹から血が噴出し、蒼い鎧を深紅に染め上げる。

 

脇腹を押さえ現時点で出来る精一杯の止血の応急措置を施すと、エヴァンスは再度唸り声を上げる。

 

(ちくしょう。せめて援軍でも来ないか……………)

 

脳裏に浮かぶ微かながらの希望を祈る程、エヴァンスは絶体絶命の状況に追い込まれていた。

 

敵の一閃が一瞬動きの止まったエヴァンスを捉える。

 

(くそ………もう駄目か………)

 

の死を覚悟したエヴァンスだが、何時まで経っても死なない。

 

思わず困惑したエヴァンスは、視界の隅に敵の攻撃を必死に押し戻している一人の男を見つけた。

 

「バレンス!何で………」

 

驚愕するエヴァンスに向かってその男──エヴァンスの臣下のバレンス──は叫ぶ。

 

「エヴァンス様!早く〝これ〟を!」

 

バレンスがエヴァンスに向かって投げたのは一振りの槍。

 

鎌の様な穂先に全体を水色で統一された爽やかさすら感じさせる見た目。

 

バレンスの言う〝これ〟の正体はランスバスターと同様、三竦みを覆す武器の一つであるアクスバスターだった。

 

三竦みの法則の一つ、【槍は斧に弱い】という法則を【槍は斧に強い】に変える効用を持つアクスバスターだが、他にも使い道が一つ在った。

 

それはアクスバスターに限らずランスバスター、同種のソードバスター、ソードキラーにもある事だが、例えばアクスバスターとランスバスターが戦った場合、アクスバスターの方が有利になるのだ。

 

詰まり、通常の武器と戦った場合に逆転していた三竦みが、同種の武器同士で戦った場合三竦みの逆転は無効になるのだ。

 

その兵法は以外に巷には知られておらず、エフラムが極秘にルネス騎士団やルネス王家の者に伝授していたものだった。

 

バレンスがアクスバスターを寄越した意味を理解したエヴァンスは、アクスバスターを手に尚もバレンスを排除しようとランスバスターを動かす敵に向かって背後から襲い掛かった。

 

突然の奇襲に一瞬敵の反応が遅れる。

 

その隙を見逃す程エヴァンスは鈍感では無かった。

 

アクスバスターで敵のランスバスターを押し返す。

 

前に感じた手強さは一切感じられない。

 

エヴァンスは敵のランスバスターを弾き飛ばすと、敵の頭に向かって加勢に来たバレンスと共に各々の武器で殴り付けた。

 

敵のローブに深紅の血が付着する。

 

そして、敵の体はフラりと宙を泳ぎ、呆気なく地面に突っ伏した。

 

敵の手を取り脈を計ったバレンスがエヴァンスの方を振り返り言う。

 

「もう息を引き取っています。何故、エヴァンス様を襲ったのか…………俺には分かりません。」

 

エヴァンスはその言葉に頷く。

 

「確かにな。俺が父上を訪ねに近道を進んでいただけだというのに、何故こいつは俺を襲ったのか………一人で襲ってきたのを見ると、只の山賊でも無さそうだしな。父上に言った方が良いだろうか。」

 

その言葉にバレンスは頷く。

 

「それが最適な方法でしょう。こんな奴等がルネスにうじゃうじゃいたら、国民は怯えっぱなしですよ。」

 

「ああ、それが良いな。父上に相談し、早急に対策を練らねばな。」

 

バレンスの言葉に相槌を打っていたエヴァンスはふと、脳裏に浮かんだ疑問をバレンスに言う。

 

「なあバレンス。どうして俺がエルダで襲われているのに気付いたんだ?お前は先に俺が来るのを父上に報告しに行っていた筈だが。」

 

「ああ。ちょっと俺の勘が主君がヤバイって知らせていて………ちょっ、どうしたんですか、その顔は!」

 

「いや…………相変わらずお前は勘が鋭いな。俺が襲われているのに気付いて、しかもその場所まで割り出すなんてな。」

 

「俺の事、馬鹿にしているのか、それとも誉めているかはっきりさせてくださいよ。」

 

「はは。すまない。それよりも早く行こう。城には父上がいるだろうし、アーサーも居る筈だ。久しぶりだな。アイツと会うのは。」

 

そんな呑気なやり取りをしながら、二人は死闘があったのは思えない程の静寂に満ちたエルダ密林を後にした。

 

木々から僅かに射す木漏れ日は、雑草に覆われた地面を優しく照らし出していた───

 

 

 

 

 

キャラクター紹介

 

 

エヴァンス

 

国籍:ルネス

性別:男性

年齢:16歳

属性:炎

使用武器:槍

武器レベル:槍E

クラス:ロード

両親  母親:ターナ 父親:エフラム

レベル:1

初期装備

レギンレイヴ

鋼の槍

スキル

追撃

怒り

見切り

未完の器

指揮官

 

 

ルネスの王子。父親のエフラムの元を離れ、フレリアに住む叔母のエイリークの元で山賊を討伐している。本作の第二の主人公。何故父の元を離れているのかというと、叔母のエイリークがフレリアの山賊の多さに首が回らず、父のエフラムも政治的手腕のある文官を探しており、丁度お互いの息子がそれに該当しており、一月に一度お互いの祖国に帰るという条件でアーサーはルネスに、エヴァンスはフレリアに赴いた。父に似て正義感が強く戦上手。アーサーとは従兄弟でもあり友人でもある。

 

 

 

バレンス

 

国籍:フレリア

性別:男性

年齢:18

属性:風

使用武器:剣・槍

クラス:ソシアルナイト

両親: 母親:ヴァネッサ 父親:フォルデ

レベル:3

初期装備

鋼の槍

鉄の剣

スキル

追撃

見切り

祈り

 

 

フレリア騎士団に所属する騎士。ヒーニアスの命令でエヴァンス直属の騎士となる。知的で生真面目な母に全く似ておらず、父親に性格や容姿が似ている。非常に勘が鋭く、エヴァンスがエルダ密林で襲われているのにも勘づいた。アリネという妹がいる。因みにバレンスという名は嘗てマギ・ヴァル中を歩き回った非常に勘の鋭い吟遊詩人の名に由来する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなり長文となってしまいました。皆さん御体は大丈夫ですか?私は風邪を引いてしまいましたが、皆さんはこの寒い季節、どうか気を付けてください。

コメント御待ちしております。
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