デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第八話 氷獣

街は凍てつき、空には対精霊部隊『AST』が展開していた。対する相手はビルより巨大な獣のような生物。

 

そして近くのビルの屋上に二人、少年と青年が。

 

 

「後は俺に任せろ。お前達は安全な所に行け」

 

「はい!」

 

 

青年は剣の切っ先を天へと向け、円を刻む。

 

 

「四糸乃……今行くぞ……!」

 

 

 

 

 

時間は一日前へと遡る……

 

 

 

 

 

冴島邸・客室――― PM 6:34

 

 

 

「クスッ、そんな怖い顔をしないでくださいまし」

 

 

狂三はニコッと笑い千牙をなだめるように言う。当の千牙は警戒を一切解かず彼女から視線を反らさない。

 

 

「答えろ、何をしに来た?まさかだとは思うが……」

 

「残念ですが今日は違いますわ」

 

「……何?」

 

 

ならば何をしに来た、そう言葉を放つ前に

 

 

「ただ貴方の顔を見たくなっただけですわ、食べに来たわけではありません」

 

「……」

 

「本当ですのよ?」

 

 

当然信じられるわけがない、千牙は少しでも狂三が不振な行動を取った時のために右手をコートの裏に仕込む。

 

 

「信用ありませんわね、悲しいですわ……それと千牙さんに言いたいことが御座いまして……実は私――」

 

 

 

―――精霊ですの

 

 

 

「!?」

 

 

精霊。夜刀神 十香と同じ存在……彼が彼女に感じていた異質な気配は精霊の物だったのだ。

 

 

「ご存知でしょう、精霊の事については」

 

「ああ、他の精霊を一人知っているからな」

 

「一人?」

 

 

不思議そうな表情で彼女は首を傾げる。

 

 

「それは妙な話ですわね、貴方はもう既にもう一人……いえ、今は黙っておきましょう」

 

「何の話だ」

 

「お気になさらず……それでは私はこれでお暇御させて頂きますわ。またお会いになりましょう」

 

 

 

 

狂三が冴島邸を去った後、千牙は自室の前に出て月を眺めていた。

 

 

「まさかあの嬢ちゃんが精霊だったとはな……」

 

「十香だけだとは思っていなかったが、な」

 

 

千牙はコートの右側に付いた四つの指輪を指で撫でる。ふと人の気配を感じ首をそちらに向けると四糸乃が暗い面持ちで廊下に居る。

 

 

「千牙さんは……今誰と……話してたん……ですか?」

 

「……いや、ただの独り言だ」

 

「そう、なんですか……」

 

 

すると四糸乃は瞳に涙を溜め頬に伝わせる。彼は四糸乃の側に寄りしゃがむ。

 

 

「どうした、四糸乃」

 

「ごめんな……さい……もし、よしのんが……見つからなかったらって……思ったら……」

 

 

あれから進展がない、彼女に必ず見つけてくると言った千牙はズキッと胸に何かが刺さる香のような感覚になる。探していない訳ではない、ザルバに頼んで彼女の残留思念を元に辿っているのだが、どうにも上手くいっていないのだ。

 

千牙は四糸乃の涙を拭い

 

 

「千牙……さん」

 

「言っただろう、よしのんは俺が必ず探すと」

 

 

優しく彼女の頬を撫でる。

 

 

「……千牙さんの手……とても暖かいです」

 

 

小さなその手で彼の手に触れる。

 

 

「一つ聞いてなかったな、よしのんはお前にとって何なんだ?」

 

 

彼女の頬から手を離し疑問に思ったことを尋ねる。

 

 

「よしのんは……私にとってヒーローなんです……こんな私を守ってくれる大切な……」

 

「そうか……尚更だ、よしのんと必ず会わせてやる。だから待っていてほしい」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

天宮市・来禅高校教室――― AM 9:45

 

 

佑都が千牙に斬られてから翌日、士道は自分の席で物思いにふけっていた。今日の朝、佑都のクラスの生徒に彼の事を聞くと突然の転校で来ていないと言われたのだ。高梨も同様、誰も二人が死んだと言うことを知らない。

 

恐らく千牙が手回しをしたのだろう、ホラーになったとはいえ自分の友人を切った千牙に複雑な感情を抱いていた。だが、彼も好きで斬ったのではない。

 

 

「悲しそうな表情だったな……」

 

 

教室から去る時の彼の表情、本当は切りたくはない……だがホラーになった人間は更に人間を喰らっていく、その場で斬るのがその者の為にもなる。そう、彼から読み取れた。

 

 

「……ん?」

 

 

肩を指で数度叩かれ、横を向くと視界一杯に眼帯のついたウサギの顔が映る。

 

 

「驚いた?」

 

「鳶一……」

 

 

彼の同級生、鳶一折紙がパペットを右手にはめて士道の目の前で左右に揺らしていた。

 

 

「どうしたの、そんな暗い顔をして」

 

「何でもない……所でそのパペットどうしたんだ?」

 

「拾った」

 

「拾ったって……あれ?」

 

 

彼女の持つパペット、何処かで見覚えがある。何処で見たかは思い出せないが……

 

 

「シドー……って貴様!またシドーに近づきおって!」

 

 

満面の笑みでやってきた十香は折紙の顔を見るや否や、怒った表情へと変わる。

 

 

「彼と一緒に居るのに貴女の許可が必要?」

 

「そ、それは……ええい!うるさい!」

 

「喧嘩するなよ二人とも……」

 

 

先日の異様な光景から一変、二人のこうしたやり取りを見てると日常に帰ってきたと感じる士道だった。

 

 

 

 

 

 

天宮市・住宅街 ――― AM 9:58

 

 

「ダメだ、千牙、わからん」

 

「諦めるな、ちゃんと探せ」

 

 

よしのんを捜索している千牙とザルバ。どうやら四糸乃の微弱な思念を感じザルバの言われるままに行動していたのだが、途中でとぎれザルバは諦めモードに入っていたのだ。

 

 

「そうは言ってもだな、以外と難しいんだぜ?」

 

「頼れるのはお前しかいないんだ、頼む」

 

「……」

 

 

仕方ないとザルバは更に集中力を高める。

 

 

「……見つけた!」

 

「本当か?」

 

「ああ、この先だ」

 

 

ザルバが言うこの先とは……

 

 

「来禅高校……」

 

「あの建物から嬢ちゃんの気配がほんの少しだが感じ取れるぜ」

 

「……」

 

 

だが学校に入るわけにはいかない、どうするか千牙は悩む。

 

 

「……とりあえず、夕方まで浄化に専念しよう」

 

 

結論、もしかしたら誰かがよしのんを所持しているかもしれないと考え、帰宅時間まで街の見回りに出ることに。学校を一瞥すると千牙は踵を返した。

 

 

 

 

 

 

天宮市・商店街――― AM 10:01

 

 

 

「我が儘言って……ごめんなさい」

 

「とんでもありません、こうして誰かと買い物に出掛けるのは久々で、私も嬉しいですよ」

 

 

ゴンザと四糸乃、二人は夕飯の買い出しに出歩いていた。四糸乃が一緒にいきたいと言いゴンザもそれを快く了承したようだ。

 

スーパーにつくと四糸乃は驚きの声を上げた。

 

 

「人がたくさん……」

 

「では行きましょう」

 

 

彼のあとをトコトコとついていく四糸乃。彼女達は色んなコーナーへと行きその度に四糸乃は目を輝かせており、ゴンザはその様子を微笑ましく見ていた。

 

スーパーでの買い物が済み、ゴンザ達はそこを後にする。

 

 

「色んなものが……沢山ありました」

 

「あそこのスーパーは品揃えが宜しいですからね、さて次は何処に行きましょうか……あれ?」

 

 

ほんの数秒前に後ろに居た筈の四糸乃、彼女の姿が消えていた。

 

 

「四糸乃様!四糸乃様ー!」

 

 

返事は無い、ゴンザは青ざめ来た道を引き返していった。

 

 

 

 

「……」

 

 

ゴンザからはぐれてしまった四糸乃は、好奇心からふらふらと路地裏へと入ってしまう。

 

自分の知らない世界、それをもっと知りたいと思った故の行動。ふと後ろを見ると誰もいない、そこはほの暗く彼女だけが居る。

 

 

「ゴンザ……さん?」

 

 

彼の名前を呼んでも返事は返ってくる筈もない。

 

 

「千牙さ……ん……」

 

 

当然彼の名を呼んでも返ってこない。

 

 

「よし……の……ん」

 

 

その名を呟くと急に寂しい感情で心が一杯に。自分は一人、誰もいない。千牙もゴンザも、そして大切なよしのんも。

 

 

「う、うう……あああああ……!!」

 

 

 

 

 

 

天宮市・来禅高校 校門前――― PM 4:36

 

 

 

帰宅時間に丁度よく千牙は学校にたどり着き、校門を通っていく学生達に視線を向ける。

 

 

「……さて」

 

 

ザルバへと念話を試みる。

 

 

『ザルバ、四糸乃の気配を見逃すな』

 

『やってみるぜ』

 

 

離し終え、彼の視線に少年と少女が入る。その二人が此方に気づくと

 

 

「あ……」

 

「む、貴様は……」

 

 

士道と十香、共に帰宅する所のようだ。

 

 

「昨日振りだな、士道」

 

「……はい」

 

「何だ?二人は昨日会ったのか?」

 

「え?……まあ、そうだけど」

 

 

先日の事を思い出し、士道は再び複雑な心境になり始めた。

 

 

「千牙さんは何で此処に?まさかまたホラーが……」

 

「いや、今日は野暮用で……」

 

『おい、千牙』

 

 

突然のザルバからの念話で言葉を途絶えさせる。

 

 

『残念だが嬢ちゃんの気配が消えやがったぜ』

 

『何……辿れないのか?』

 

『厳しいな、人の気配が多すぎて上手く辿れん』

 

『……わかった』

 

「あの、千牙さん?」

 

 

話の途中で黙った千牙に声をかける士道。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「何でもない……」

 

 

踵を返し、彼等の元から去ろうとした千牙だが、士道が思い出したかのように

 

 

「あ、千牙さん!」

 

「どうした?」

 

「前に探していたウサギのパペットって見つかったんですか?」

 

「まだだ」

 

「……実はなんですが」

 

 

 

 

立ち話も何だ、ということで五河宅へ招かれた千牙。十香は先に風呂へと入り、居間では千牙と士道の二人だけ。

 

千牙はそこで非常に有力な話を聞くことが出来た。

 

 

「その鳶一という少女が持っているということか」

 

「間違いありません、拾ったって言ってましたし」

 

 

机に広げられたよしのんの絵を見ながらそう言う士道。すると千牙は頭を下げ

 

 

「頼む……その少女からよしのんを返してもらってくれないか?」

 

「ちょ、ちょっと千牙さん!別に頭を下げなくても……」

 

 

彼の頭を上げさせる士道。

 

 

「それを探している者がいる……そいつにとってよしのんは大切な存在なんだ」

 

「……わかりました、明日休みなんで鳶一の家から取ってきます」

 

「……ありがとう、士道」

 

「貴方には助けてもらった恩がありますし……それに―――」

 

 

 

 

 

 

冴島邸――― PM 7:01

 

 

想定外ではあるがよしのんの所在がわかった、これで四糸乃の不安は解消されるだろう。しかし千牙としては士道が存外協力的なことに驚く。彼の友人を斬った、その事に自分を恨んでいるのではないのかと考えた、だが少し距離を離しているようにも見えたが比較的友好的な様子であった。

 

そうして千牙は冴島邸へと入ると

 

 

「……ゴンザ?」

 

 

何時も出迎えてくれるゴンザが今日に限って来ない、と思いきや

 

 

 

「千牙様ぁー!!」

 

 

昨日の慌てようとはまた違った様子のゴンザ。

 

 

「どうした、ゴンザ」

 

「よ、四糸乃様が……!」

 

 

 

 

一先ずゴンザを落ち着かせ、ダイングルームの椅子に座らせる。千牙は水を持ってきてゴンザに手渡す。

 

 

「申し訳ありません、私が目を離したばっかりに……」

 

「自分を責めるな、」

 

「千牙様……」

 

 

その言葉にゴンザは幾分か表情が和らぐ。

 

だが千牙は念のためと街を出歩き探したが見つからず、その日、四糸乃は帰ってこなかった……

 




雨ってのはどうも好きじゃない。
人間も雨は嫌いなもんだろ。
降ってれば暗い気持ちになるし、気分も沈む。
次回、『輝天』
お?ようやく空が晴れて来やがったな。
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