デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第九話 輝天

白の管轄・番犬所――― AM 11:13

 

 

「冴島千牙、ここ最近天宮市に異変が起きてることは御存じですね」

 

「はい、コカグローグを討伐して直ぐにヘイフレイドの出現、更に近い日に低級とはいえホラーが……こうも頻繁にホラーが現れるのは異常事態かと」

 

「……貴方がエレメントの浄化及び封印を怠っているとは思いません、別の影響があると考えます」

 

 

千牙は思考を張り巡らし、原因を考えるが全く思い付かない。

 

 

「……実は数日前からこの街の気の流れに異常が生じております、それが陰我の集束を手助けしてるものと思われます」

 

「何故気の流れが?」

 

「それは調査をしているところです……冴島千牙、貴方には多忙な日々を送らせるかもしれません。ですが人々の明日のために、尽力して欲しいのです」

 

「わかりました、御期待に添えるように励みましょう」

 

「頼みます、黄金騎士・牙狼の称号を受け継ぎし者よ……」

 

 

 

 

 

 

天宮市・市街地――― AM 11:25

 

 

 

番犬所を離れ街並みを歩いていく千牙、その途中で仲良く手を握る兄妹の姿が目に映る。妹と思われる少女は彼の思い浮かぶ少女と同じくらいの背丈だ。

 

 

「……まさかだとは思うが、あの嬢ちゃんを思い出してるのか?」

 

「……」

 

 

無言、詰まりは肯定を意味する。

 

 

「お前さんがお人好しなのは今に始まった事じゃないが、何故そこまであの嬢ちゃんに肩入れする?」

 

「……」

 

 

彼は晴れ晴れとした空を見つめ

 

 

「何故だろうな……あの娘は泣いているよりも笑っている方が良い……そう思ったから、かな」

 

「なんだそりゃ」

 

「俺にもよくわからん」

 

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥ――――!!!!

 

 

「!?」

 

 

突如鳴り響く警報、これがなんのためのものか千牙は直ぐに理解する。

 

 

「空間震警報か」

 

「ってことはだ……」

 

「……精霊が出現する」

 

 

 

妙な胸騒ぎに襲われた千牙はコートの内を探り、線の付いていないイヤホンのようなものを取りだし耳に付け起動する。

 

これは精霊専門の機関、ラタトスクの艦フラクシナスへと通信できるインカムだ。千牙が琴里と協力関係を結んだときに彼女から渡されたものだ。

 

 

「冴島千牙だ、聞こえるか」

 

『これは珍しいわね、ええちゃんと聞こえるわ』

 

 

若干皮肉げに言う相手はフラクシナスの艦長、五河琴里だった。

 

 

「空間震警報が発令した」

 

『そうね、来るわよ精霊が』

 

 

彼の予想は的中だ。

 

 

「……フラクシナスに乗せてくれ、今回現れる精霊がどんなのか気になるのでな」

 

『構わないわ、そこでじっとしていて、今から回収するから』

 

「助かる」

 

 

そこから少し待つと、何時か体験した浮遊感に覆われ視界が一瞬暗くなった。

 

 

 

 

 

 

フラクシナス・ブリッジ―― AM 11:32

 

 

 

「よく来たわね、千牙」

 

 

「すまないな、突然乗せてくれなんて言って」

 

「別にいいわ、貴方には借りがあるもの」

 

「……それで、今回の精霊はどんな奴だ」

 

 

ん、と琴里は顎でモニターを指す。千牙はそちらを見ると氷のような物に覆われた街が映る。

 

 

「AST、もう動いてるわね」

 

「……AST、奴等か」

 

 

精霊の殲滅を目的とした特殊部隊AST。その隊員達が空中にて、巻き起こった爆煙を中心に展開している。

 

爆煙の中からはウサギの面影がある巨大な獣のような生物が現れた。

 

 

「あれが精霊?」

 

「いえ、あれは天使。精霊の保有する武器よ」

 

「武器?それにしては随分と……当の精霊はどこなんだ?」

 

「あれの背中にくっついてる娘、彼女よ」

 

 

モニターがその獣の背を映すと、緑の衣装に身を包んだ小さな娘が。千牙はその娘の姿を見て驚愕する。

 

 

「識別名ハーミット、基本的に大人しい精霊で攻撃はしてこない筈なんだけど―――」

 

「違う」

 

 

ぼそりと呟く千牙に琴里と横に立つ神無月の視線が集まる。

 

 

「彼女の名は四糸乃だ」

 

「四糸乃?貴方なんでそんなこと……」

 

 

数秒黙った後、千牙は琴里の方を向き

 

 

「琴里、今すぐ四糸乃の居る地点に下ろしてくれ」

 

「ちょっと待って千牙、貴方は……」

 

「頼む、下ろしてくれ」

 

 

彼女の眼を視線を反らさずに捉え彼は黙る。

 

 

「むー……わかったわよ、相変わらず説明しない奴なんだから。終わったら教えなさいよ!」

 

 

ありがとう、そう言い千牙はブリッジの扉を開け駆けていった。一方の琴里は不機嫌そうに頬杖を付く。

 

 

「ほんっと、融通の利かない男ね」

 

「しかしハーミットと彼に接点があるなんて思いもしませんでしたが」

 

「……まあいいわ、後できっちり聞けば良いんだから。こっちは士道のサポートに専念するわよ!」

 

 

 

 

 

 

天宮市・市街地―――AM 11:50

 

 

 

「はっ……はっ……」

 

 

士道と十香はビルの階段を駆け上がっていた。理由は一つ、今回出現した精霊と接触するためだ。ハーミットは巨大な獣に誇り地上からはとてもではないが話しかけられない、極力同じ高さに位置する事が重要だ。

 

 

「……ついた」

 

 

息を切らしながら屋上へとたどり着く。

 

 

「大丈夫か、シドー」

 

「大丈夫だよ、それよりも……」

 

 

視界に映るのは獣、思わず息を飲む。しかし此処まで来てしまった以上、後戻りは出来ない。士道は大きく息を吸い直す。

 

 

「おーいっ!!」

 

 

獣はゆっくりと士道の方を向いた。

 

 

「声が届いた!」

 

 

よしと呟く士道だが、獣はその大きな口を開き光が集束していく。十香は直ぐに危険を察知し

 

 

「シドー逃げるぞ!あれを喰らったらまずい!」

 

「え――」

 

 

十香が士道の手を掴みその場を離れようとしたが、時は既に遅し。二人は凄まじい氷のブレスに包まれてしまった……

 

 

の筈だった。

 

 

 

「中々無茶をする」

 

「む!貴様は!」

 

「千牙さん!?」

 

 

寸前の所で千牙が二人を救出し、隣のビルに飛び退いていた。二人は脇に抱えられそのまま落とされる。士道はぐえっと短く、十香はひゃっと可愛らしく悲鳴を上げた。

 

 

「士道、十香、此処から離れろ。あいつは俺がどうにかする」

 

「どうにかって……」

 

 

 

尚も移動を続ける四糸乃と獣、それを視界に映しながら千牙はフラクシナスの琴里に通信を送る。

 

 

 

「琴里、直ぐに士道達を回収しろ」

 

『はぁ!?士道がいなきゃどうやってハーミットを封印するのよ!』

 

「方法はある」

 

 

コートの胸元に付いた四つの指輪の内、一つを外す。

 

 

「《魔封輪》……異能の力を封印することができる強力な指輪だ。魔界の力だけではなく、他の物にも対応はしている。これなら四糸乃を抑えることが可能な筈だ」

 

『そんな物持ってたのね……』

 

「希少な物だ、俺が持っているのは四つしか無い。だが四糸乃の為なら一つや二つだろうが使ってやる」

 

 

すると士道が

 

 

「何で千牙さんはあの子の為にそこまで……」

 

「……俺は四糸乃を助けたい、ただそれだけだ」

 

 

複雑な理由なんてない、ただ一つの意思。士道は思い出す、自分もあの時、十香の事を救いたい。それ以外に考えてなかった。ふと千牙は士道の手にする袋を見て

 

 

「士道、その袋は……」

 

「これですか?」

 

 

袋から取り出されたのは白いウサギのパペット。

 

 

「これは……!」

 

「千牙さんが探していたものです、取ってくるのにちょっと大変な目には合いましたけど……」

 

 

苦笑する士道から千牙はパペットを受け取る。

 

 

「ありがとう、士道。これで約束が果たせる」

 

 

パペットをコートの内へとしまい、更に魔戒剣を取り出す。

 

 

「そうだ、十香。一つ頼みたいことがあるのだが……」

 

「何だ?」

 

「少し囮になってくれ」

 

 

 

 

 

「あの吹雪、厄介ね……」

 

 

折紙とASTの隊長はドーム状に発生した吹雪に手を焼いていた。

 

 

「どうします?」

 

「どうにか策を……!!」

 

「あれは……!?」

 

 

吹雪の真上に居た存在に気づき、折紙の表情は険しくなる。

 

 

「夜刀神十香……」

 

 

何時しか持っていた剣、そしてドレスを纏った十香が居た。

 

 

「総員、対象をプリンセスに変更!行くわよ、折紙!」

 

「はい!」

 

 

隊長と折紙は十香に目掛け飛翔、十香はそのまま何処かへと飛んでいった。

 

 

「上手くいったな」

 

「ああ」

 

 

先程まで折紙達が居た場所に降り立った千牙とザルバ。あの十香は、彼が特殊な秘薬を染み込ませた札を用いた《変幻の術》で作り出した十香の偽物だ。彼女はこの術を見て大いに面白がったとか。彼は吹雪に近づき、魔戒剣を天に向ける。

 

 

 

「まさかホラーも居ないのに鎧を召還するつもりか?」

 

 

ザルバは千牙に問う。

 

 

「ああ、生身では確実に死ぬ。俺は士道のような再生能力はないからな……それに」

 

 

左手に持ったパペット、よしのんを見つめながら

 

 

「一人の少女を救えずして何が騎士だ。俺の鎧は誰かを守るために、誰かを救うためにある」

 

「仕方がない……こうなったら最後まで付き合うぜぇ!」

 

「いくぞ、ザルバ!」

 

 

 

 

真っ暗な空間。そこには一人、泣いている少女が。

 

 

「よしのん……よしのん……」

 

 

ずっと同じ名前を呼び続けるが、不意に違う名前を放つ。

 

 

「千牙……さん」

 

「呼んだか?」

 

「え……?」

 

 

声が聞こえた方を彼女は向く。この暗闇を照らす金色の輝き。四糸乃は突然現れた存在に対し、恐怖ではなく何処か暖かさを感じていた。

 

 

「待たせたな、四糸乃」

 

 

鎧を解除し、微笑む千牙。

 

 

「せ、せん……がさん」

 

「ああ、千牙だ」

 

 

彼は四糸乃の側に歩みよりしゃがむ。

 

 

「どうして此処に……」

 

「約束を果たしに来た」

 

 

コートからパペットが出され彼女の手に渡る。

 

 

「よし……のん……!」

 

 

ぎゅっと抱きしめ涙を流す。

 

 

「ありがとう……ございます……よしのんを……うぅ……」

 

 

「言っただろう、必ず会わせてやると……さて」

 

 

右手に魔封輪を持ち彼女に差し出す。

 

 

「これは……?」

 

「お前の力を抑える指輪だ」

 

「……本当ですか……?」

 

 

ああと千牙は縦に首を振る。

 

 

「大丈夫、何も怖いことも起こらないし、痛くはならない。俺を信じろ」

 

「……はい」

 

 

言われるまま四糸乃はその指輪を手に取り

 

 

「私……信じます、千牙さんの事……」

 

 

右手の薬指に嵌めると指輪が一瞬光り

 

 

「あ……」

 

 

四糸乃の服が光の粒子になり消えていく。

 

 

「こ、これ……」

 

「成る程、お前の着ている服も霊力と呼ばれるもので形成されていたのか……霊力についてもっと琴里に聞く必要があるな……」

 

 

千牙はコートを脱ぎ四糸乃に掛ける。すると吹雪は天辺からおさまっていき、青空が顔を出す。ゆっくりと空が広がっていくと、綺麗な虹が天に出来上がっている。

 

 

「綺麗……ですね」

 

「ああ……さて、帰ろう四糸乃。ゴンザがプリンを用意して待ってるぞ」

 

「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

???―― PM 0:02

 

 

 

星が散りばめられた夜空の下に、闇に溶け込みそうな黒、鮮やかな赤の色合いのドレスを着た精霊、時崎狂三が妖艶な笑みを浮かべている。

 

目の前には誰かの物であろう帽子が転がっていた。

 

 

「御馳走様、そこそこでしたわよ……では次に―――」

 

 

その時

 

 

「うっ……」

 

 

口から血を吐き出し自分の体をみる。剣のような物が胴を貫き、服に血が滲み出す。

 

 

「あら……もう此処まで来たんですの……」

 

 

首を横に向け、目だけで後ろを見る。

 

 

「早く本体(オマエ)を喰いたいのでな、急いで来たんだよ」

 

「せっかちは嫌われますわよ?しつこいのもですが……くっああああ!!」

 

 

悲痛な声を上げ狂三の体は四散し、剣の持ち主の口に吸い込まれていく。

 

 

「っ……やはり美味い、だが分身は飽きたな……」

 

 

その瞳には奇怪な文字が浮かび上がる。

 

 

「そろそろ本体をいただくとしよう」

 




昔の記憶ってのは良い事よりも悪い事の方が鮮明にあるもんだ。
アイツだって例外じゃない。
次回、『過去』
俺様は昔の事は何も覚えてないがな。
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