デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
天宮市・市街地―― AM 6:05
本日は晴天、雲一つない青空だ。そんな空のした、ビルの屋上で町を見下ろす少女が二人。
「どうします『私』?もう彼が此方に来ていますわよ」
「そうですわね……仕方ありませんが早急に事を起こす必要がありますわ。既に彼の元へ『私』を送っていますし……」
「では先に彼方から?」
「いえ、両方食べてしまいましょう。そのように上手く手筈はしますわ」
少女の口はつり上がる。
「では私は千牙さんの動向を監視していますわ」
「ええ、頼みましたわよ『私』」
片割れは何処かへと飛んでいき残された少女……時崎狂三はやや表情を曇らせる。
「困ったものですわね……あの娘、千牙さんに夢中ですもの。余計なことをしなければ良いのですが……私だって彼と……」
※
天宮市―――AM 10:35
メディルより指令を受けた千牙は翌日。現在、特に気配も感じず何時もと同じように浄化のために街を徘徊している。
「冥黒騎士・鎌威……か」
「知ってるのか?」
まるで会ったことが有るかのように言う千牙にザルバは問う。
「一度だけ顔を会わせた事がある。騎士としての誇りを重んじる男で、闇に墜ちるような面はなかったがな……」
「だが騎士だって人間だ、何時何処で変わるかはわからんぞ?」
「……」
ザルバの言葉に黙り混む千牙。
「おっと……」
前をよく見ていなかった千牙は少女とぶつかってしまう。その場に転んでしまった少女に手を差し伸べ
「すまない、こちらの不注意……だ」
「ご丁寧にどうも」
その少女は彼の手をとり立ち上がる。対する千牙は少女に
「……まさかこんな所で会うとはな、時崎狂三」
「あら、偶然ですわね、千牙さん」
髪を肩で流し、黒いヒラヒラとした衣服を着た狂三はにこりと笑む。
「偶然?どうだかな」
「もう、疑い過ぎでしてよ?」
彼女は両手を腰の後で組み半歩下がる。
「ところで千牙さん、此処で何をしていらしたのですか?」
「答える必要があるか?時崎狂三、お前の方こそ……」
人指し指で口を抑えられる。
「狂三でいいですわ、フルネームなんて堅苦しくて好きではありません」
「……ならば狂三」
「はい♪」
「お前は何をしに来た」
「それはですね」
千牙に近づき、彼の右腕にするりと腕を組ませる。
「千牙さん、この後お時間はあります?」
「……無い訳ではない」
「でしたら私と一緒にデートしませんこと?」
※
天宮市・来禅高校――― AM 10:50
この度、五河士道は困惑していた。今日彼のクラスに女子転校生がやってきて、彼に学校の案内を頼んだのだ。別にそれだけなら戸惑う事はない、だがその女子はHRで確かにこう言った。
『私、精霊ですのよ』
と。十香、千牙の元に居る四糸乃と同じ『時崎狂三』という名を持つ精霊。士道は直ぐにインカムで琴里と通信を繋ぎ指示を仰いでいた。
そして先ず案内するのは食堂と購買と決まり、向かう廊下にて。
「士道さん、冴島千牙さんという方をご存じで?」
「えっ?な、なんであの人の事を……」
予想もしない人間の名前が彼女の口から出たことにより、士道は驚いた表情を見せる。
「私と千牙はちょっとした知り合いでして……あの方はどういう男性なのですか?」
「うーん……俺も会って日が短いからあれだけど、とてもまっすぐな人って感じかな」
「まっすぐ?」
「ああ、自分の意思ってのをしっかりもって決めたことは絶対にやりとおす、そんな人かな」
「へぇ……素敵な方ですのね」
ふと士道は先日の事が頭に浮かんだ。
時崎狂三が彼のクラスへと転校してきた二日前の事、冴島邸に呼ばれた士道達は、ゴンザの言葉に唖然とする。
「空間震で……亡くなった?」
ゴンザは重く首を縦に振った。一方の琴里は青ざめる、千牙に空間震を起こしているのは精霊だと教えたのは自分だ。言うなれば彼の母を殺したのは精霊と教えたと同義、ならば何故彼は十香や四糸乃を憎まず普通に接しているのだろうか。
十香も四糸乃もどちらも顔色が優れない。
「もしかしたら、千牙様はお忘れになっているかもしれません……あの時は突然の事でしたから……申し訳御座いません、今の話は千牙様にはご内密に……」
忘れているなら合点がいく、だがもし記憶が戻れば彼は精霊を敵と見なし剣を向けるかもしれない……そうならないよう願うしか無いのが現状であろう。
「千牙さんは何で……」
「士道さん?」
狂三に声をかけられ我に帰る士道。
「随分と難しそうな表情をなさってたみたいですが……」
「何でもないよ。あ、そろそろ購買につくぞ」
※
天宮市―――AM 10:40
「デート、だと?」
「ええ、ダメですか?」
彼女の目的は千牙を喰らうことの筈。これは罠の可能性が高い、断ろうとした千牙だがザルバから
『面白そうだ、この話乗ってみようぜ千牙』
『何を言っている、自ら罠に飛び込むような物だぞ』
『日本の諺で“虎穴に入らずんば虎子得ず”って言うだろ?』
『それとこれとは……全く、わかったよ』
「どうなさいました?……もしかして御嫌でしたとか……」
不安そうな顔を見せる狂三に
「……申し出を受けよう」
「本当ですか?嬉しいですわ」
うってかわって心底嬉しそうな表情に変わる。
「それでは参りましょう、千牙さん」
「……ああ」
そうして冴島千牙と時崎狂三によるデートが始まるのであった。
「どこへ連れていってくれるのですか?」
「静かに過ごせる場所だ」
そうして歩き続け、彼等が立ち止まったのは少し小さなカフェだ。
「此処は?」
「俺の知り合いが居る店でな」
千牙と狂三は中に入ると、そこは比較的綺麗な内装で洋風のインテリアで揃われている。
「いらっしゃい……おや?」
「邪魔をする」
カウンターにいる店長と思わしき男性にそう言い、二人は近くの椅子に向かい合わせに座る。
「素敵な場所ですわね」
「此処は落ち着ける良い所だ……好きなのを頼め、金は出してやる」
「まあ♪では御言葉に甘えさせていただきますわ」
差し出されたメニューを受け取り狂三は目を通していく。
「店長、俺は……」
「何時ものですよね、わかってますよ」
「?」
狂三はメニューを机に広げ
「千牙さんは何れを召し上がるのですか?」
「これだ」
彼が指差したのはキャラメルカプチーノだ。
「では私もそれで」
「わかりました」
店長は作業へと移り出す。
「千牙さんはこういう落ち着いた所が御好きですのね」
「うるさい所は嫌いでな」
「それと千牙さんは甘いのが御好きなのですか?」
「俺は甘党でな」
「ではこうして此処に足を運ぶのですね」
「時々な」
「……」
不満そうな色を見せる狂三。
「何だか千牙さん、楽しくなさそうですわね」
「……そうか?」
すると店長がカプチーノを持って二人のもとに。
「お待たせしました。にしても千牙さん、何時帰ってきたんですか?」
「数日前だよ」
「なら顔くらい出してくださいよ、ご馳走したのに」
「ふっ、ああすまない……だがこうして顔を出しに来たんだ、許してくれ」
「まあ良いですけど……と、こ、ろ、でこの娘は彼女さんで?」
「彼女だなんて……♪」
頬を手で抑えて狂三は恥ずかしがるが
「……だと思うか?」
「ですよねー……この人落とすの大変だろうけども頑張って下さいね」
「ええ、その様ですわね……心得ましたわ」
笑いながら店長は去っていく。
カフェを出た千牙達はぶらりと街を歩く。
「御馳走様でした、あんな美味しいカプチーノは初めてですわ」
「舌に合うようでよかったよ」
「あ……」
狂三が立ち止まり、千牙は振り向く。
「どうした?」
「ようやく笑って下さいましたわね」
「何?」
そういえば先程、彼女に微笑んだ事を思い出す。
「だって千牙さん、ずっと険しい顔をなさっていたのですもの……」
「……すまないな」
悲しい顔をしている狂三を見て、千牙は少し前の事を脳裏に浮かばせる。
“精霊としての力を使っていない時は人間となんら変わりない……だからこそ傷付け合うだけじゃない、解り合うことが大事なの”
「解り合う……か」
「何か?」
「……いや、何でもない」
「そうですか、ならいいですわ」
狂三は彼の腕に組み付き
「さあ次に行きましょう、千牙さん」
軽く引っ張られながら二人は歩き始めた。が狂三は突然立ち止まり、千牙から離れた。
「?」
狂三はしゃがみこみ、何事かと思った千牙は彼女に近づくと。
ニャー
「……猫か」
彼女は黒猫の頭を撫でていた、とても穏やかな顔で。
※
天宮市・住宅街――― PM 5:02
そして、あれから時間は断ち夕暮れ時だ。
「今日は楽しかったですわ」
「そうか……にしてもお前は相当の猫好きのようだな」
あの人懐っこい黒猫と小一時間狂三は戯れていて、千牙は彼女の意外な一面を見れたことに少し興味を持っていた。
「だって可愛いじゃないですか猫」
狂三は彼より前に出て踵を返す。
「では私はこれで失礼しますわ、千牙さん。また会いましょう」
「次は喰いに来るか?」
「クスッ……さあ、どうでしょう?それでは御機嫌よう……」
彼女はそのまま前を向き路地へと向かい、姿を消した。
「どうだった、千牙?」
今まで黙っていたザルバが口を開く。
「何がだ」
「デートだよ、面白かったか?」
「……さあな、だが悪くはなかった。それだけは言える」
「お前さんにも春が来たか……相手があれとはいえってイテッ!!」
ザルバを指で弾いたあと、もう見えなくなった狂三を思い起こす。彼女の話し方、振る舞いは千牙から見てどれも作ったかのような感覚を覚えさせた。だが猫と触れ合っていた彼女を見たとき、その時は本当の狂三を見れたかのような気がしたのだ。
「時崎 狂三……か」
千牙はそう呟き家へと進路を向けたのであった。
「……」
路地を歩いていく狂三、ふと足を止め。
「そろそろ出てきたらどうです?」
背後を向くとポニーテールに小柄な女子が居る。
「気づいていやがりましたか」
「まあ、貴女でしたか。彼かと思ったのですが」
「何の事で?」
「いえ、こちらの事ですわ……それで?今回も“殺しに”来てくれたのでしょう?」
相対する少女は狂三を睨み
「当然です『ナイトメア』。今回もしっかりと殺して―――」
ズシャアァッ!!!!
何かが切り裂かれる音が聞こえたと同時に、狂三は力なく前に倒れる。
「お前は!!」
黒い布で頭まで隠した男が狂三の後ろに立っていた。
「何時の間に……そこに……?」
「たった今だ」
「油断……しました、わ……」
手にした巨大な鎌の刃を狂三に振り下ろすと、彼女は悲鳴も上げる間もなく体は光の粒子になり
「ふぅぅっ……」
男が息を吸うと口に光が流れていった。
「……ふぅ、そうかこの街に居るのか……当たりだ」
「『リーパー』お前も居やがりましたか!!」
リーパーと呼ばれた男は少女に鎌を向け
「小娘、残念だがお前には興味がない……お前は……不味そうだ」
「何を……!」
リーパーは布を少女へ投げ視界を塞ぐ。
「小癪な!」
布を取り払うとリーパーは既にそこには居なかった。
「また逃げられましたか、けど奴がナイトメアを狙っているということがはっきりわかりやがったですね……」
少女、『崇宮真那』は苦虫を噛み潰したかのような表情で空を見上げた。
黒き刃が少女を狩る。
そして対峙するのは金色の剣。
二つの意思がぶつかるとき、少女達は……
次回、『冥黒』
振り下ろすは暗黒の鎌。