デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

14 / 31
第十二話 冥黒

冴島邸―― AM9:12

 

 

 

「ふっ……せぇあっ!!」

 

 

庭にて千牙の声が響く。彼は今、魔戒剣を用いて目の前に敵が居ると想定した鍛練を行っている。そんな様子を見るのはゴンザ、四糸乃とよしのん、そして台座に置かれたザルバだ。

 

 

「千牙の奴、今日はなかなか精がでるな」

 

「そうですね、良いことです」

 

『カッコいいねぇ千牙くん』

 

 

ゴンザは四糸乃にココアを淹れたカップを出す。

 

 

「ありがとうございます」

 

「おかわりは幾らでもありますからね」

 

 

旨そうに四糸乃はココアを口に入れる。

 

 

「……」

 

 

千牙は静かに鞘へと魔戒剣を納め、ザルバの元へと行き台座から取り指にはめる。

 

 

「終わったんですか?」

 

「ああ……ゴンザ、街に出てくる」

 

「かしこまりました」

 

「四糸乃、何かあったら教えてくれ」

 

「わかりました……ッ♪」

 

 

彼は優しく四糸乃の頭を撫でる。

 

 

『ちょっとちょっと~千牙くん~よしのんも~』

 

「わかったよ」

 

 

よしのんにも同様に撫でる。そして手を離し椅子に掛けた魔戒衣を取りそのまま袖を通す。

 

 

「それじゃ行ってくる」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

「行って……らっしゃい」

 

『行ってらっしゃ~い』

 

 

 

彼の後ろ姿を見届けたよしのんは

 

 

『にしても何時も大変だねぇ千牙くんは、休む暇もないなんて』

 

「魔戒騎士に休息は御座いません。御辛い運命《さだめ》では御座いますが、千牙様は騎士であることに誇りを持っていますからね」

 

 

そんな彼に仕えているゴンザもまた、誇りを持って執事をしている。

 

 

「ゴンザさんは千牙さんのお父さんみたいな感じですね」

 

「そんな恐れ多い、ですが幼少の時から私は千牙様の御世話をしてきました……息子というよりはこう、孫のような感じになりますね。おお、そうだ、千牙様の昔のアルバムがあるのですが、千牙様に内緒で見てみませんか?」

 

『わぁお!千牙くんの子供の時のだね!、見たい見たい!四糸乃も気になるでしょ?』

 

「す、少しだけ……」

 

 

頬を赤らめて言う四糸乃にゴンザは笑顔になり

 

 

「それでは御持ちしますので少々お待ちください」

 

 

 

 

 

 

 

 

天宮市――AM9:31

 

 

 

「ザルバ、奴の気配は感じるか?」

 

「僅かにだが、異様な気配があるな……場所はよく解らんがな」

 

 

闇に堕ちた魔戒騎士を探すためザルバを頼りに探すが、足取りは殆ど掴めていない。一番気配が強くなったのは狂三と別れた後の事であり、千牙が辿り着く頃には何も残っていなかった。

 

 

「……む?」

 

「どうした?」

 

 

千牙の視界の先に見覚えのある少年が横切った気がした。

 

 

「今、士道が通ったような……」

 

「あのボウヤが?」

 

 

確かめに行こうとしたが、一人の青年とすれ違い

 

 

「!」

 

 

千牙は振り向き

 

 

「待て」

 

「……」

 

 

彼の言葉に青年は立ち止まる。

 

 

「久しぶりだな、輝」

 

「何だって?」

 

 

青年はふっと鼻で笑うとゆっくりと千牙の方に向く。

 

 

「ああ、久しいな……千牙」

 

 

真っ黒の髪、そして髪と同じ色のコートに赤い瞳をした青年だ。

 

 

「変わってないな、お前は」

 

「そうか?……お前は変わってしまったな、ホラーに成り果てるとは」

 

「……クク」

 

「何が可笑しい」

 

「ククク……いや……お前は何も解っていないんだな。さてどうする、俺を殺るんだろう?ここで殺り合うか?」

 

 

千牙は辺りを見渡す。人が多い、こんな所で戦っては被害が起こるだろう。

 

 

「そうだよなぁ、出来ないだろう。俺も全力のお前と殺りたい、来い……此処ではない所で殺し合おう」

 

「くっ……」

 

 

突風が巻き起こり千牙は眼を腕で隠す。直ぐに風は収まり前を向くと輝の姿はない。

 

 

「ザルバ!」

 

「ああ、あのビルの屋上だ。そこに奴の気配がするぜ」

 

「よし……」

 

 

ザルバの示すビルへと駆けていく千牙。

 

 

「……あれ?今の千牙さん?」

 

「どうなさいました?」

 

「いや、今……」

 

 

 

 

 

「此処か」

 

「間違いないぜ」

 

 

屋上へと踏み込み周囲を確認する。するとゆっくりと姿を現す暗黒の騎士。

 

 

「来たか……さあ、殺し合おう……」

 

「……」

 

 

千牙は構え正面に輝を捉える。

 

先に動き出したのは輝、千牙の顔を砕かんとばかりに距離を詰め掌打を放つが、千牙は頭を傾け左手で輝の腕を抑え軌道をずらす。直ぐに輝は腕を引き、身体を回し右脚で蹴る。

 

 

「はっ!」

 

 

千牙も身体を回転させ蹴るが輝の蹴りとぶつかり、膝裏で組み合いお互いの脚を固定する。

 

 

「はぁっ!」

 

「くっ、がぁっ!」

 

 

次にぶつかるのは裏拳、千牙の拳は弾かれ輝の拳が彼の頬に直撃する。

 

 

「ちっ!せぁっ!」

 

「ぐぁっ!」

 

 

輝の拳は払い除けられ鋭い拳が叩き込まれる。その勢いに固定した脚は解かれ、二人は離れる。

 

間合いが近い、千牙は足払いを仕掛けるが輝はその場でジャンプし回避、着地と同時に

 

 

「ふんっ!」

 

 

千牙の顔面へと脚を動かす、彼は両手で受け止め蹴りの衝撃で浮き上がり体制を立て直す。

 

 

「よく受け止めたな、これはどうだ!はっ!」

 

 

駆ける事で慣性を付け、千牙目掛け脚を付き出す。

 

 

「……見切った!」

 

 

横に身体を向け腕で輝の脚を掴む。

 

 

「何っ!?」

 

 

掴んだまま輝の脚を捻り巻き投げる。彼の身体が宙へと浮かび

 

 

「うおおおおっ!!」

 

 

膝を一瞬突き立て、直ぐに伸ばし輝の胴を蹴り飛ばす。

 

 

「ぐうぅっ!!」

 

 

輝は屋上から飛ばされ、千牙もその後を追い宙にいる輝に組付き拳による連撃を叩き込む。

 

 

「図に……乗るな!!」

 

「ッ!?」

 

 

千牙は輝からの掌打を顎に受け、よろけた隙を突かれ

 

 

「でぇあっ!」

 

「ちぃっ!」

 

 

二人は同時に蹴り合い吹き飛ぶ。建物の壁に激突する前に千牙はくるりと体制を変え、壁へ脚を着けバネのように脚を伸ばし

 

 

「ふっ」

 

 

横に跳ねた千牙、しかし眼前に輝は迫っていた。迎撃しようと再び体制を変えて蹴りを放つが

 

 

「がっ!!」

 

「ぐぉっ!!」

 

 

ほぼ同時に打った拳と脚がそれぞれに決まり、磁石の如く反発する。

 

 

「ぐあああっ!」

 

 

窓に叩き込まれ千牙は建物内へと転がり込む。

 

 

「くっ……かはっ……」

 

 

口の中で苦い鉄の味が広がる。血の混じった唾を吐き捨て、自分が突き破った窓の外を覗く。

 

輝も同様に建物の中へと居り、此方を捉えていた。輝はコートの裏から黒い鞘の剣を取りだし、彼の影が全身を覆った。

 

 

「……!」

 

 

影は元の場所へ戻ると輝の姿は、闇の如く深い漆黒の鎧に、顔が半分骨のような風貌で左右非対称という異様な姿へと変わっていた。

 

 

「ようやく本気という訳だな」

 

「ああ……」

 

 

魔戒剣を手に取り、抜刀。天へと掲げ円を切る。纏うは金色の鎧、手にするは黄金の剣。

 

 

「こちらも全力で行くぞ……!!」

 

 

魔導火を灯し牙狼剣の刀身に沿っていく。刀身は緑の炎に包まれ千牙は剣を構える。

 

 

「はあああっ!!!!」

 

 

建物から飛び出し輝の元へと向かう。

 

 

「おおおおぉぉ!!!!」

 

 

千牙と輝の剣は激しい火花を散らしせめぎ合う。二人は落下しつつ互いに譲らぬ唾競り合い……

 

 

「ふっ、うおおおおおお!!!!」

 

「!?ぐおおおぉぉ!!!!」

 

 

力の限り振り抜いた炎の牙狼剣は、漆黒の剣を砕き闇へと堕ちた鎧を切り裂いた。千牙は切り抜いた勢いで隣の建物の窓を破り内部へと着地する。

 

 

「……?」

 

 

気配を感じ振り向くと切り裂いた筈の輝が闇夜に沈みそうな色を持つ鎌を両手で持っており、千牙へと迫っていた。そして―――

 

 

「うぐあぁぁっ!!」

 

 

鎌は振り下ろされ、彼の身体を袈裟に傷つける。

 

 

「っ……ぐぅっ……」

 

 

鎧を解除し傷を見る。刃は鎧ごと肉体へと斬り込まれており、彼の身体に一閃に血が滲み出る。しかし輝の受けたダメージも軽くはない、彼もまた鎧を解除しよろける。

 

 

「流石は黄金騎士……一筋縄ではいかないようだな……今日の所は引いておくか」

 

「待てっ、がぁ……」

 

 

輝は影へと沈み姿を消した。

 

 

「ザルバ、奴の気配は」

 

「もう感じない……追うのは無理だ」

 

「くっ……」

 

 

傷口を抑え、苦しむ声を上げる。

 

 

「なんて威力だ、ここまで深く傷を付けられるとは……」

 

「呑気に言ってる場合か、直ぐに戻って手当てをしないと不味いぞ!」

 

「わかって……いる……!」

 

 

ふらつきながらも千牙はビルの外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

冴島邸―――PM1:47

 

 

 

「ゴン……ザ」

 

「御帰りなさいま……千牙様!!」

 

「千……牙さん……!」

 

 

身体から血を流しながらダイニングルームへと入ってきた千牙、ゴンザは吃驚し四糸乃は口元を抑える。

 

 

「すまない、手当てをしたいのだが……」

 

「今すぐ準備します!」

 

 

肩で息をし千牙は近くの椅子に座り込む。そんな彼を心配そうに寄り添う四糸乃。

 

 

「大丈夫ですか千牙さん!?」

 

「ああ、ちょっと斬られただけだ……」

 

『ちょっとどころじゃないよー!血が……』

 

 

千牙は苦しみながらコートを、上着を脱ぎ捨てる。

 

 

「御待たせしました!」

 

 

何やら妙な箱を持ってきたゴンザ。その箱を開け、中から青い液体の入った小さなビンを取り出す。

 

 

「ありがとう、ゴンザ……四糸乃、離れてろ」

 

「は、はい……」

 

 

ゴンザが蓋を開け、そのビンを受けとり一気に喉へと流し込む。次に魔導火を手に取り着火、傷口に炎を触れさせ

 

 

「うっ……」

 

 

顔を歪ませゆっくりと傷口になぞっていく。すると魔導火が傷を覆っていき消える頃には、始めから無かったかのように傷が塞いでいた。

 

 

「ケガが……」

 

『わあぉ、無くなったねぇ』

 

「ふぅ……心配掛けたな」

 

「御無事で何よりで御座います……何があったのでしょうか?」

 

 

ゴンザから用意してもらった替えの上着を着ながら答える。

 

 

「ホラーとなった騎士と戦った……相当手強い、烈火炎装でも倒しきれなかった」

 

「何と……」

 

「……?」

 

 

四糸乃をちらりと見ると何故か泣きそうな顔をしている。

 

 

「どうした、四糸乃」

 

「だって、千牙さん苦しそうだったから……千牙さんが死んじゃったら私……」

 

「……」

 

 

彼女の頭に彼はその手を優しく乗せる。

 

 

「安心しろ、四糸乃。俺は死にはしないさ、絶対に」

 

「本当ですか……?」

 

「ああ」

 

『約束だよ~千牙くん!死んじゃったらよしのんも悲しいからね!』

 

「わかってる、極力悲しませる事はしないよ」

 

 

静かに四糸乃の頭を撫でる千牙。だが輝は倒していない、ゴンザを心配させないためにも、四糸乃とよしのんを悲しませないためにも、次こそは討つ。千牙の心の中で一層強まった……

 

 

 

 

 

 

 

 

天宮市・路地裏―― PM 9:44

 

 

「……」

 

 

壁に寄り添い黙す冥黒騎士、輝は不気味な笑みを浮かべる。

 

 

「黄金騎士……面白い、やはり奴は今まで殺してきた騎士とは違う……」

 

 

千牙から受けた傷に触れると、皮膚が蠢き塞いでいく。

 

 

「奴こそ最高の獲物だ……!」

 

 




まさかあの騎士が千牙と互角とはな、驚いたぜ。
厄介な事になって……
何だって?狂三の奴が?
次回、『衝突』
どうやら一時の安らぎすら許されないようだな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。