デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
来禅高校・屋上 ―― AM 11:36
「琴里、どうやって狂三を止めるつもりだ」
千牙は彼女の隣に立ちそう問う。
「そうね、一回ぶっ飛ばして抵抗する気が起きなくなるまで叩き潰すだけよ」
「……なら俺がやる。今のお前は危うい―――」
突然琴里は斧を千牙に振るうが、彼はくるりと宙へと飛び交わす。
「なんの真似だ」
「あんたは引っ込んでなさい、千牙」
「……」
鋭く千牙を睨む琴里。
「千牙さん大丈夫ですか!」
彼の近くへと駆け寄る士道。
「琴里の奴……何で……!」
「全く、お転婆が過ぎるぜ」
視線を琴里に戻すと既に狂三と戦闘を繰り広げていた。狂三は銃身で何度も殴り掛かるが全て斧に防がれ直撃させることができない。
「邪魔、しないで、ください、まし!」
「落ち着きが無いわね、レディならもっと慎みを持つものよっ!」
振り下ろされた斧を回避する。
「そうですわね、でしたら淑やかにあなたを葬らせていただきましょう……七の弾《ザイン》!」
彼女より放たれた弾丸は一発は打ち払われたが、もう一発は受けてしまう。
「不味いあれは……!」
琴里の動きはまるで時間が止まったかのように静止する。彼女の周囲に狂三の分身が現れ、皆銃口を琴里に向ける。
「さあ、撃ちなさい!」
四方八方から弾丸が放たれ、琴里の身体に穴を開けていく。そして本体であろう狂三が近づき
「如何なる力を持ってしても、時を止められてしまってはどうしようもありませんわね……では、御機嫌よう」
そのまま眉間を撃ち抜き、彼女は吹き飛ぶ。
「琴里ぃぃぃ!!」
悲痛な叫びが木霊し琴里の元へ行こうとしたが、千牙に肩を抑えられ止められる。
「千牙さん止めないでください!」
「少し落ち着け」
勝利を勝ち取った狂三はゆらりと千牙の方を向く。
「きひっ……!さあ邪魔者は消え去りましたわ。千牙さん、続きを始めましょう!」
「……どうやらそうはいかないみたいだぞ」
「?」
琴里の方を向き直ると、彼女の身体の幾箇所に青い炎が起こり、傷口が元々無かったかのように塞がる。
「全く、派手にやってくれたわねぇ」
むくっと琴里は起き上がり服の埃を払う。
「何ですって……!」
「驚いたかしら?いいわ、その
「お戯れを!」
分身が琴里目掛け一斉に飛び掛かる。
「切り裂け、灼爛殲鬼《カマエル》!!」
炎を纏った斧は赤い残像を残しながら振るわれ、分身を全て凪ぎ払った。
「くっ!」
分は此方が悪い、ならばと狂三は次の手を打つ。
「
自らの天使の名を叫ぶ狂三。
「させるものですか――」
突然頭痛に襲われ、琴里はその場にしゃがみこむ。
「悪運付きましたわねぇ、これで終わりに……」
「灼熱殲鬼《カマエル》……砲《メギド》」
斧の刃部が棍に収まり灼熱殲鬼《カマエル》は砲台の如く姿へと変貌する。砲口には炎が集まっていき出力をあげていく。
「私達!!」
あれは危険だ、狂三の本能がそう告げ分身を自身の前に位置させるが
「灰燼と化せ、灼熱殲鬼《カマエル》」
砲口より放たれし烈火の炎は分身を焼き払う所か、コンクリートで出来た床もその灼熱で焼き溶かした。
直撃は辛うじて間逃れた狂三、しかし左腕は消失し刻々帝も一部に風穴が空いている。
「勝負ありか」
膝を付き肩で息をする狂三をみて千牙は呟く。だが琴里は尚をも攻撃を止めようとしない。
「まだ終わっていないわ、さあ立ちなさい……」
言葉は届いているだろうが、彼女からは反応が返ってこない。
「もう引き金を引く気力も無いのかしら?」
灼熱殲鬼の砲口に再び炎が灯る。士道は彼女の傍らに寄り
「琴里止めろ!このままじゃ……」
彼の言葉は届いていない、炎の精霊はこれまでにない笑みを浮かべ砲身を一切反らさずにいる。
「消えなさい」
凄まじい勢いで炎は発射され、狂三を守ろうと士道は駆けるが誰かに腕を引っ張られ尻餅をつく。
「ッ!?千牙さん!?」
腕を引っ張ったのは千牙、狂三の前に立ち
「馬鹿が……」
そう吐き捨て千牙と狂三は炎に包まれた。
「そんな……千牙さん……狂三」
彼は絶望した……だが直ぐにその絶望は打ち払われる。赤く燃ゆる炎は吹き飛ばされ金色の狼が姿を表す。
「千牙……さん……」
牙狼の鎧を纏ったまま千牙は狂三の方を首だけ動かし向く。
「なんで……私を守ったのですか?」
「……」
無言、目線だけを彼女に送り
「引け、狂三。これ以上やられるのはお前も望まんだろう」
「ッ……」
すると
「退きなさい……千牙」
三度目、灼熱殲鬼の砲口が灯る。
「断る、と言ったら?」
「貴方事撃ち抜くわ」
「……やってみろ、お前にはこの鎧は抜けん」
チャージは完了した、琴里は笑い
「そんな金メッキ、簡単に砕いてあげるわ!!」
砲口より撃たれた剛炎は金色の騎士へと向かう。千牙は牙狼剣を抜刀し
「無駄だ」
振るわれた金色の一閃にて、いとも簡単に炎は切り払われた。
「そん、な……」
「……琴里、一回落ち着け」
牙狼を鞘に勢いよく納めると、凄まじい衝撃波を生み琴里を襲う。
「くっううっ!」
そのまま吹き飛ばされ、地に着く頃には気を失っていた。
「琴里!」
士道が彼女に近づき身体を起こすのを見届けると、千牙は鎧を解き狂三へと向く。
「お前には色々と聞きたいことがあるが、今は止めておく。さっさと行け」
「……感謝しますわ、千牙さん」
彼女は軽く頭を下げ、千牙の影へと沈んでいった。
「……やれやれ、だな」
溶けた床を眺めながらに呟く千牙。これで狂三が引き起こした事態はこれで終わりを迎えるのだった。
※
フラクシナス・船内――― AM 12:56
医務室前に千牙は腕を組み、令音はその隣で壁に背を預けている。
「アイツの容態は?」
「身体の方は大丈夫だよ、ただ他がちょっと著しくはない状況であるけど」
「そうか」
暫しの沈黙が訪れ
「……感謝するよ、琴里を止めてくれて」
「別に礼を言われる程ではない」
「それでも、さ」
「……士道は?」
「シンは琴里に付きっきりだよ」
「……そういえばあの真那という娘、士道の妹だったか」
「ああ、あの娘か。彼女も無事だよ」
「そうか」
再び来る沈黙、だがそれを破ったのは千牙の方からだ。
「令音、一つ聞きたい」
「なんだい?」
「今更だが、あんたは俺に良く似た風貌の騎士に会ったと言ったな。名前とか解らないか?」
顎に手を添え考える。
「確か……零牙だったかな」
「何?」
彼の表情が変わり
「苗字までは解らないが……」
「冴島だ」
「?」
「冴島零牙、俺の親父だ」
「!……成る程ね、チーから懐かしい感じしたのはそういうことだったんだね」
「まさか、あんたを救ったのが親父とはな……解らんものだ」
「そうだね」
組んでいた腕を解き
「そろそろ俺は帰るが構わないな」
「うん、そこまで送るよ」
「頼む、それとだ士道に“琴里を傷つけて済まなかった”そう伝えてほしい」
「……わかったよ」
「ありがとう、それじゃあ行くか」
禍々しき刃が映すのは黒き少女。
そして漆黒と金色が再び対峙する。
次回、『金銃』
黄金の弾丸を今こそ放て!