デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第十六話 装天

天宮市・公園――― PM 7:42

 

 

 

輝は目の前で起こった事に、眼を疑う。

 

 

「霊力を取り込みソウルメタルが変化したというのか!?」

 

 

一方の千牙は背後に横たわる狂三を見つめ

 

 

「直ぐに終わらせてくる」

 

 

右手には牙狼剣、左手には魔戒銃『牙狼装天銃』を構え、輝を視界に納める。

 

 

「……幾ら姿が変わろうが貴様の不利は揺るがん!!」

 

 

繰り出される漆黒の衝撃、千牙へとそれは迫るが

 

 

「……」

 

 

静かにマントを掴み、そして払う。衝撃波がマントに接触すると一瞬にして四散した。

 

 

「やるな……いけ!」

 

 

二体の分身が向かってくるが、牙狼装天銃の銃口を分身に合わせ引き金を引く。放たれた緑の炎の弾丸は分身を貫き消滅させる。

 

 

「クハハハ!これならどうだ!」

 

 

輝の影が肥大し、中から十人に及ぶ分身を出現させる。

 

 

「数が多ければ良いってもんじゃないぜ」

 

 

皮肉げに言葉を放つザルバ。既に輝の分身は彼に近づいている。

 

千牙は牙狼剣を地に突き刺し立て、銃口を自身の右手の掌に押し当て、なんと引き金を引いてしまった。

 

 

「なんの真似かは知らんが、棒立ちとは関心しないな!」

 

 

四方八方から振り下ろされる刃、しかし鎌は千牙を捉えておらず空を切った。

 

 

「消えた?」

 

「何処に……」

 

 

次の瞬間、十人居た分身は銃声と共に跡形もなく消え去った。だが千牙の姿は何処にもない。

 

 

「奴は何処に行った……!」

 

 

背後に気配、直ぐに振り向くと此方を睨む千牙の姿が。

 

 

「貴様、どうやってあれを交わした……」

 

「簡単だ、俺自身の速度を上げただけだ」

 

「速度を……まさか!」

 

 

時裂狂三の能力の一つ、一の弾《アレフ》、撃ち込んだ対象の時間を加速することが出来る。今の千牙はその能力と全く同じ物を使用したのだ。

 

千牙は牙狼装天銃をクルクルと回し

 

 

「来い、終わらせてやる」

 

「……」

 

 

弾の鎧から禍々しい黒いオーラが湧き出る。

 

 

「挑発か……乗ってやる、後悔……するなよ!!」

 

 

冥黒鎌を両手で握り締め、千牙目掛け駆ける。次に決めるのは渾身の一撃、まともに受ければ一溜まりも無いであろう。しかし千牙はただ静かに銃口を輝に向ける。

 

牙狼装天銃の銃口に緑の光が集まって行きそれが最大なった瞬間、彼は引き金を引く。

 

 

「!?」

 

 

放たれたのは人間を軽く覆える程の、魔導火の塊……最早レーザーと言っても過言ではない弾丸が撃たれ

 

 

「終わりだ、輝」

 

「ぐ、おおおおお―――」

 

 

叫ぶが魔導火は彼の身体を覆い尽くし、収まると既にそこには輝の姿はなかった。

 

 

「……くっ」

 

 

鎧を解除しその場に膝を着く。先程の弾丸は鎧の装着可能時間を削って放ったものであり、更に千牙の身体に大きな負担を駆けてしまった。

 

 

「千牙、大丈夫か?」

 

「俺は大丈夫だ……それより」

 

 

彼は狂三の元へと行き、身体を抱き起こす。

 

 

「安心しろ、意識を失っているだけだ」

 

「そうか」

 

 

彼女の身体を、所謂お姫さま抱っこで持ち上げ

 

 

「連れて帰るのか」

 

「こんな所で放っておける訳がないだろう。それに今回は狂三のお掛けで勝てたんだ」

 

「……ま、いいがな」

 

「?」

 

 

千牙は軽く笑い、冴島邸へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

その時はたまたま居合わせた彼に、不思議な物を感じ興味半分で近づいた。

 

 

「こんにちは」

 

 

目の前で座り込んでいる少年は此方を振り向く。

 

 

「……誰だよ」

 

「隣宜しいですか?」

 

 

少年の隣に座ると、彼は不機嫌そうな表情になる。

 

 

「誰も良いって言ってないのに」

 

「そう固いこと言わないでくださいまし。ボウヤは此処で何をしているのですか?」

 

「別に何も、ただこうして座ってるだけ」

 

「もう夕暮れですわよ、ご両親が心配されますわ」

 

「居ないよ」

 

「え―――」

 

 

俯き、少年は肩を震わせながら

 

 

「父さんも母さんもどっちも居ない、死んだんだ……もう帰ってこない……俺は……」

 

 

声を殺し涙を流す。私はそんな彼を哀れに思ったのでしょうか、それとも別の……

 

 

「あ……」

 

「可哀想に……私が慰めてあげますわ……」

 

 

小さな彼の身体を優しく抱き締める。

 

 

「辛かったのですね……けど今は我慢しなくてもいいんです……お泣きなさい」

 

「うっ……うぅ……」

 

 

堪える事を止め声を漏らす。それから数分が経ち

 

 

「落ち着きましたか?」

 

「うん……お姉さんありがとう」

 

「別に構いませんわ」

 

 

すると少年は立ち上がり

 

 

「俺、決めた……俺は父さんの称号を受け継ぐ……お姉さんのような優しい人を守る魔戒騎士になる!」

 

 

先程とは想像もつかない、雄々しく凛々しい顔つき。ふと私は

 

 

「騎士、ですか……そうですわ、大きくなったら私を守る騎士になってくださいまし」

 

「わかった!俺、お姉さんの事を守ってあげるから!絶対に!」

 

「約束ですわよ、楽しみにしていますわ」

 

 

笑顔で答える。すると遠くから彼の名前を呼んでいる男性が居た。

 

 

「ゴンザだ!ごめんね、お姉さん。俺、行くよ」

 

「はい」

 

「また、会えるかな?」

 

「ええ、必ず会えますわ。次に会うのを心待ちにしてます」

 

「うん!バイバイ!」

 

 

元気な笑顔と共に姿の見えなくなった彼。何時になるかはわかりません、けど私は……

 

 

 

 

 

 

冴島邸・寝室――― PM 11:59

 

 

 

「う……ん」

 

 

狂三は瞼を上げるとそこは知らない天井。

 

 

「ここ……は」

 

「目が覚めたか」

 

 

声のする方を向くと、椅子に座っている千牙が。

 

 

「此処は俺の家だ、安心しろ」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

 

千牙はふっと笑う。

 

 

「お前から礼を言われるのは二回目だな」

 

「まるで私が普段からお礼を言わないみたいな扱いですわね」

 

 

ぷくっと頬を膨らませて不機嫌になる狂三。

 

 

「……狂三」

 

「何でしょうか?」

 

「お前に謝らなければならないことがある」

 

 

千牙は一拍置き

 

 

「約束……忘れていてすまない」

 

「……」

 

 

彼は彼女に軽く頭を下げる。

 

 

「お前から霊力を送られたとき、思い出したんだ。子供の頃、俺はお前と……」

 

 

狂三が人差し指で彼の口を塞ぎ、言葉を途切れさせる。

 

 

「全くですわ、レディとの約束どころか私の事まで忘れるなんて極刑ものですわ」

 

「す、すまない……」

 

 

首を横に振り、狂三は笑む。

 

 

「良いです、千牙さんは私の事をちゃんと守ってくれた……だからこうして私は此処に居るのです。ですからと・く・べ・つ・に、許して差し上げますわ」

 

 

一部強調して言う。千牙は頭を掻き苦笑いをし

 

 

「はは……参ったな、どうやらお前には敵いそうにないな」

 

 

よしと呟き千牙は立ち上がる。

 

 

「そろそろ俺は寝るよ、ゆっくり休め」

 

「はい、お休みなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

 

部屋を出ていく彼の背中を見届け、一人天井に視線を移す。

 

 

「……千牙さん」

 

 

彼を自分救ってくれた騎士の名を。

 

 

 

 

翌朝

 

 

「狂三起きてるか?……」

 

 

扉を開けるとベッドには彼女の姿はない、代わりに書き置きが。千牙はそれを手に取り読む。

 

 

私の愛しい騎士様へ

 

本当に貴方には感謝しています。私の思いは一層強まりました、絶対に貴方を私の物にしてみせます。その時までどうか死なないでくださいまし。

 

狂三より

 

 

「フッ……どうやらまた厄介な状況を作ってしまったようだな」

 

 

手紙を持ったまま、千牙はゴンザや四糸乃達の待つ食卓へと向かう。

 

 

 

 

 

 

天宮市・病院――― AM 7:12

 

 

鳶一折紙は先日、狂三の襲撃で受けた怪我の為病院に居た。自身に設けられた個室で彼女は思い出す、あの時に現れた炎の精霊を。

 

 

「イフリート……!」

 

 

深い憎しみと憎悪が彼女の表情から読み取れる。ようやく見つけた、炎の精霊は自分の……

 

 

『リリサロガ』

 

「誰!?」

 

 

見渡すがその部屋には彼女しかいない。

 

 

『キサマザボチリサ?』

 

「ち、力?」

 

『トルガ、イスヌペシラリケヨルキカロテムキサマガ……』

 

 

折紙は拳を強く握る。狂三の時はなす術もなくやられた、あの白いコートの青年が現れなければどうなっていたか。今欲しいのは奴を、炎の精霊を殺せる力だ。

 

 

「欲しい……私は力が欲しい!」

 

『リリガモル、ロナレオキサマイアッケワム。トオサヤミ、ロナレオサゼヨリカガスド』

 

「!!」

 

 

ベッドから突然突き飛ばされ、そちらを向く。そこに居たのはおぞましい姿の悪魔。

 

 

「シャァァ!!」

 

「!!」

 

 

此方に飛び掛かってくる。折紙は思わず眼を閉じたが何も起こらない。恐る恐る眼を開けると悪魔は何処に居ない。

 

 

「今のは幻覚?……!?」

 

 

彼女の影がまるで意思を持ったように蠢いていた。影は不気味な動きと共に姿を作っていき

 

 

「ふー……」

 

 

現れたのは、折紙と瓜二つの少女。だが髪の色や瞳が全て反転している。

 

 

「驚いた?まあ無理もないよねぇ」

 

 

自分の身体を確かめるように触れていく。何故か折紙にはむずむずとした違和感が感じられる。

 

 

「んー、女の姿になったのは初めてだねぇ……まあいいか」

 

 

それはニッと笑い

 

 

「オレはシャジェドニ、ヨロシクな、宿主様よ」




影とは己の存在している証、自分が居るから影がある、影があるから自分が居る。
そう、何時だって影はお前の事を見ているんだ。
次回、『現影』
だが影に踏み込みすぎるな、戻れなくなるぜ?
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