デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
天宮市・公園――― PM 7:42
輝は目の前で起こった事に、眼を疑う。
「霊力を取り込みソウルメタルが変化したというのか!?」
一方の千牙は背後に横たわる狂三を見つめ
「直ぐに終わらせてくる」
右手には牙狼剣、左手には魔戒銃『牙狼装天銃』を構え、輝を視界に納める。
「……幾ら姿が変わろうが貴様の不利は揺るがん!!」
繰り出される漆黒の衝撃、千牙へとそれは迫るが
「……」
静かにマントを掴み、そして払う。衝撃波がマントに接触すると一瞬にして四散した。
「やるな……いけ!」
二体の分身が向かってくるが、牙狼装天銃の銃口を分身に合わせ引き金を引く。放たれた緑の炎の弾丸は分身を貫き消滅させる。
「クハハハ!これならどうだ!」
輝の影が肥大し、中から十人に及ぶ分身を出現させる。
「数が多ければ良いってもんじゃないぜ」
皮肉げに言葉を放つザルバ。既に輝の分身は彼に近づいている。
千牙は牙狼剣を地に突き刺し立て、銃口を自身の右手の掌に押し当て、なんと引き金を引いてしまった。
「なんの真似かは知らんが、棒立ちとは関心しないな!」
四方八方から振り下ろされる刃、しかし鎌は千牙を捉えておらず空を切った。
「消えた?」
「何処に……」
次の瞬間、十人居た分身は銃声と共に跡形もなく消え去った。だが千牙の姿は何処にもない。
「奴は何処に行った……!」
背後に気配、直ぐに振り向くと此方を睨む千牙の姿が。
「貴様、どうやってあれを交わした……」
「簡単だ、俺自身の速度を上げただけだ」
「速度を……まさか!」
時裂狂三の能力の一つ、一の弾《アレフ》、撃ち込んだ対象の時間を加速することが出来る。今の千牙はその能力と全く同じ物を使用したのだ。
千牙は牙狼装天銃をクルクルと回し
「来い、終わらせてやる」
「……」
弾の鎧から禍々しい黒いオーラが湧き出る。
「挑発か……乗ってやる、後悔……するなよ!!」
冥黒鎌を両手で握り締め、千牙目掛け駆ける。次に決めるのは渾身の一撃、まともに受ければ一溜まりも無いであろう。しかし千牙はただ静かに銃口を輝に向ける。
牙狼装天銃の銃口に緑の光が集まって行きそれが最大なった瞬間、彼は引き金を引く。
「!?」
放たれたのは人間を軽く覆える程の、魔導火の塊……最早レーザーと言っても過言ではない弾丸が撃たれ
「終わりだ、輝」
「ぐ、おおおおお―――」
叫ぶが魔導火は彼の身体を覆い尽くし、収まると既にそこには輝の姿はなかった。
「……くっ」
鎧を解除しその場に膝を着く。先程の弾丸は鎧の装着可能時間を削って放ったものであり、更に千牙の身体に大きな負担を駆けてしまった。
「千牙、大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ……それより」
彼は狂三の元へと行き、身体を抱き起こす。
「安心しろ、意識を失っているだけだ」
「そうか」
彼女の身体を、所謂お姫さま抱っこで持ち上げ
「連れて帰るのか」
「こんな所で放っておける訳がないだろう。それに今回は狂三のお掛けで勝てたんだ」
「……ま、いいがな」
「?」
千牙は軽く笑い、冴島邸へと足を向けたのだった。
※
その時はたまたま居合わせた彼に、不思議な物を感じ興味半分で近づいた。
「こんにちは」
目の前で座り込んでいる少年は此方を振り向く。
「……誰だよ」
「隣宜しいですか?」
少年の隣に座ると、彼は不機嫌そうな表情になる。
「誰も良いって言ってないのに」
「そう固いこと言わないでくださいまし。ボウヤは此処で何をしているのですか?」
「別に何も、ただこうして座ってるだけ」
「もう夕暮れですわよ、ご両親が心配されますわ」
「居ないよ」
「え―――」
俯き、少年は肩を震わせながら
「父さんも母さんもどっちも居ない、死んだんだ……もう帰ってこない……俺は……」
声を殺し涙を流す。私はそんな彼を哀れに思ったのでしょうか、それとも別の……
「あ……」
「可哀想に……私が慰めてあげますわ……」
小さな彼の身体を優しく抱き締める。
「辛かったのですね……けど今は我慢しなくてもいいんです……お泣きなさい」
「うっ……うぅ……」
堪える事を止め声を漏らす。それから数分が経ち
「落ち着きましたか?」
「うん……お姉さんありがとう」
「別に構いませんわ」
すると少年は立ち上がり
「俺、決めた……俺は父さんの称号を受け継ぐ……お姉さんのような優しい人を守る魔戒騎士になる!」
先程とは想像もつかない、雄々しく凛々しい顔つき。ふと私は
「騎士、ですか……そうですわ、大きくなったら私を守る騎士になってくださいまし」
「わかった!俺、お姉さんの事を守ってあげるから!絶対に!」
「約束ですわよ、楽しみにしていますわ」
笑顔で答える。すると遠くから彼の名前を呼んでいる男性が居た。
「ゴンザだ!ごめんね、お姉さん。俺、行くよ」
「はい」
「また、会えるかな?」
「ええ、必ず会えますわ。次に会うのを心待ちにしてます」
「うん!バイバイ!」
元気な笑顔と共に姿の見えなくなった彼。何時になるかはわかりません、けど私は……
※
冴島邸・寝室――― PM 11:59
「う……ん」
狂三は瞼を上げるとそこは知らない天井。
「ここ……は」
「目が覚めたか」
声のする方を向くと、椅子に座っている千牙が。
「此処は俺の家だ、安心しろ」
「そうですか……ありがとうございます」
千牙はふっと笑う。
「お前から礼を言われるのは二回目だな」
「まるで私が普段からお礼を言わないみたいな扱いですわね」
ぷくっと頬を膨らませて不機嫌になる狂三。
「……狂三」
「何でしょうか?」
「お前に謝らなければならないことがある」
千牙は一拍置き
「約束……忘れていてすまない」
「……」
彼は彼女に軽く頭を下げる。
「お前から霊力を送られたとき、思い出したんだ。子供の頃、俺はお前と……」
狂三が人差し指で彼の口を塞ぎ、言葉を途切れさせる。
「全くですわ、レディとの約束どころか私の事まで忘れるなんて極刑ものですわ」
「す、すまない……」
首を横に振り、狂三は笑む。
「良いです、千牙さんは私の事をちゃんと守ってくれた……だからこうして私は此処に居るのです。ですからと・く・べ・つ・に、許して差し上げますわ」
一部強調して言う。千牙は頭を掻き苦笑いをし
「はは……参ったな、どうやらお前には敵いそうにないな」
よしと呟き千牙は立ち上がる。
「そろそろ俺は寝るよ、ゆっくり休め」
「はい、お休みなさい」
「ああ、おやすみ」
部屋を出ていく彼の背中を見届け、一人天井に視線を移す。
「……千牙さん」
彼を自分救ってくれた騎士の名を。
翌朝
「狂三起きてるか?……」
扉を開けるとベッドには彼女の姿はない、代わりに書き置きが。千牙はそれを手に取り読む。
私の愛しい騎士様へ
本当に貴方には感謝しています。私の思いは一層強まりました、絶対に貴方を私の物にしてみせます。その時までどうか死なないでくださいまし。
狂三より
「フッ……どうやらまた厄介な状況を作ってしまったようだな」
手紙を持ったまま、千牙はゴンザや四糸乃達の待つ食卓へと向かう。
※
天宮市・病院――― AM 7:12
鳶一折紙は先日、狂三の襲撃で受けた怪我の為病院に居た。自身に設けられた個室で彼女は思い出す、あの時に現れた炎の精霊を。
「イフリート……!」
深い憎しみと憎悪が彼女の表情から読み取れる。ようやく見つけた、炎の精霊は自分の……
『リリサロガ』
「誰!?」
見渡すがその部屋には彼女しかいない。
『キサマザボチリサ?』
「ち、力?」
『トルガ、イスヌペシラリケヨルキカロテムキサマガ……』
折紙は拳を強く握る。狂三の時はなす術もなくやられた、あの白いコートの青年が現れなければどうなっていたか。今欲しいのは奴を、炎の精霊を殺せる力だ。
「欲しい……私は力が欲しい!」
『リリガモル、ロナレオキサマイアッケワム。トオサヤミ、ロナレオサゼヨリカガスド』
「!!」
ベッドから突然突き飛ばされ、そちらを向く。そこに居たのはおぞましい姿の悪魔。
「シャァァ!!」
「!!」
此方に飛び掛かってくる。折紙は思わず眼を閉じたが何も起こらない。恐る恐る眼を開けると悪魔は何処に居ない。
「今のは幻覚?……!?」
彼女の影がまるで意思を持ったように蠢いていた。影は不気味な動きと共に姿を作っていき
「ふー……」
現れたのは、折紙と瓜二つの少女。だが髪の色や瞳が全て反転している。
「驚いた?まあ無理もないよねぇ」
自分の身体を確かめるように触れていく。何故か折紙にはむずむずとした違和感が感じられる。
「んー、女の姿になったのは初めてだねぇ……まあいいか」
それはニッと笑い
「オレはシャジェドニ、ヨロシクな、宿主様よ」
影とは己の存在している証、自分が居るから影がある、影があるから自分が居る。
そう、何時だって影はお前の事を見ているんだ。
次回、『現影』
だが影に踏み込みすぎるな、戻れなくなるぜ?