デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
冴島邸――― AM 9:30
昼前、千牙とゴンザはオーシャンパークへと行く四糸乃の見送りをしていた。
「行ってきますね、千牙さん、ゴンザさん」
「はい、楽しんできてくださいね」
『お土産は期待しないでね~』
「いや訳がわからん」
軽いツッコミした後、四糸乃の隣にいる令音に
「四糸乃を頼んだぞ、令音」
「任せてくれ、それじゃ行こうか四糸乃」
「はい」
令音が用意した車に乗り込む四糸乃。
「後は令音に任せれば安心か……」
見送りが終わり、千牙は邸に戻っていく。
「?」
何やら音が、客室にあるテレビがつけっぱなしなのだろう。それを消そうと千牙は客室に足を運び
「……」
「あら、見送りは終わりましたの?」
紅茶を飲む狂三。早朝、彼女は千牙に会うためにと冴島邸にやってきてこうして入り浸っているのだ。
「お前……昨日の今日でよく来るな」
「ダメ……でしょうか?」
悲しげな表情になる彼女に千牙はため息を吐き
「……別に、お前なら歓迎だよ」
「嬉しいですわ♪千牙さんのそういうところ好きですわよ」
「茶化すな……」
すると千牙の足が止まり画面に釘付けだ。
「どうかなさいました?」
彼が見ていたのは今人気のアイドル歌手『誘宵美九』だ。
「なんだ、千牙。お前さんアイドルってのに興味あるのか?」
「別に、だがこの娘の歌は前に聞いたことがあるが、結構気に入っててな」
「それもまた珍しいな」
「うるさい。しかし……」
流れるような紫銀の髪に美しい銀色の瞳。まさに美少女と言った表現が正しいだろう。千牙は彼女に少し思い当たる節があった。
「なあザルバ、この娘どこかで会ったことがないか?」
「俺様は知らんな、お前さんの思い違いじゃないか?」
「……そうか」
「……」
じーっと千牙の顔を見る狂三。
「なんだ」
「……妬けますわ」
「そうか」
相変わらずの塩対応の千牙に不機嫌な狂三。
「千牙様」
客室へやって来たゴンザは手に見覚えのある封筒を持っている。
「……指令か」
「はい、こちらを……」
指令書を受け取り、魔導火で燃やし宙に浮いた内容を確認する。
「『影を憑り代とする、偽りの影シャジェドニが出現。黄金騎士・牙狼に告ぐ、直ちにこれを探しだし討伐せよ』……シャジェドニか……」
「厄介だな」
千牙とザルバは同じく表情を曇らせる。
「そのシャジェドニというのはどのようなホラーなのですか?」
「本来ならホラーは人間に憑依し行動するが、シャジェドニは影に憑依する」
「正体を現した時しか気配が辿れない、おまけに人間自体に憑依しないから魔導火で瞳を灯しても判別できない、面倒な奴だ」
「だが探すしかないだろう……ゴンザ、行ってくる」
「かしこまりました、お気を付けて」
狂三も立ち上がり
「私もついていきますわ」
同行しようとする狂三だが千牙は
「駄目だ、遊びではないんだぞ」
「存じておりますわ、ですが私は貴方に返しても返しきれない恩が……何かのお役に立ちたいのです」
彼は数秒悩み、狂三に背を向け
「……気持ちは有難い、だが態々お前を危険が孕む場所へと連れていきたくない……わかってくれ、お前は俺にとって掛け替えのない存在の一人なんだ」
「……」
そのまま彼女は椅子に座り直し
「わかりましたわ……御免なさい、我が儘を言ってしまって」
「良い……さて、改めて行ってくるよ、ゴンザ」
「はい、お気をつけて」
千牙は客室を出ていき、狂三は彼が無事、此処へ戻ってこれるよう願い見送った。
※
天宮市・市街地――― AM 9:53
「まずは何がゲートになったのかを把握が先だ」
「ああ、残った邪念を辿ってみるぜ」
ザルバは意識を集中させる。シャジェドニが出現したゲートの状況さえ解ればある程度は行動をしやすくなる、千牙はザルバの言葉を待つ。
「お?」
「何か解ったか?」
「あっちの方角は……千牙、病院だ、病院に向かえ」
千牙は頷きザルバの言う病院へと足を動かす。
ザルバの言われる通りにやってきた天宮市の病院、此処にゲートとなったオブジェクトがある。千牙は直ぐに院内へと入ると、ザルバが気配を感じとり
『三階から匂ってくるぜ』
階段へと進むが思わぬ人物から声が掛かる。
「そこの白コートのお兄さん、待ちやがれです」
この場で白いコートを着てるのは千牙しか居ないだろう。振り替えると、何時か見たことある顔、とある少年を思い出させる少女だ。
「……お前はあの時の」
体の至るところに包帯を巻いている、崇宮真那が居た。
「貴方に聞きたい事があるんで、ちょっと付き合いやがれです」
「……」
※
天宮市・オーシャンパーク――― AM 10:09
「おー!建物の中にこんなものが!」
「すごいですね……!」
『なんだろねー!テンション上がっちゃうねー!』
パーク内に入って早々、はしゃぐ水着に着替えた十香と四糸乃達。そんな彼女達を後ろで眺める士道と琴里。
「まさかあの娘達も連れてくるなんてね」
「ははは……ごめん」
「別にいいわ、ここのチケット用意してくれたの千牙でしょ?十香は兎も角として、四糸乃はあいつが連れていって欲しいって頼んだって予想がつくし、あーだこーだ言うつもりは無いわ」
鋭い琴里に苦笑いになる士道。そんな彼に十香は満面の笑みで
「シドー!あの湖に入ってきて良いのか!?」
「ああ、行ってこい」
「よーしっ!四糸乃いくぞー!」
浮き輪を持って十香は意気揚々とプールへとダッシュしていった。残った四糸乃は
「士道さん、琴里さん、私達も行ってきます」
『行ってくるねー!』
一度頭を下げ、十香の後を追っていく四糸乃達。
「いい娘ね四糸乃は、礼儀正しくて。千牙の所に居るからかしら?」
「そうだな、ゴンザさんもいるしな……ほら琴里、俺達も行くぞ」
彼は琴里の手を引きプールへと向かった。
※
陸上自衛隊・天宮駐屯地―――AM 10:10
「……」
折紙は暗い部屋に一人、一昨日の戦闘を録画した映像を見ていた。炎を纏う精霊……イフリートを写した物だ。彼女の側には同じ服だが黒い髪に褐色の肌、瞳は赤く白目が黒い妙な少女が。
「ふぅん、こいつが宿主様が殺したくて止まない奴ねぇ」
「そう、私の両親を殺した……!」
血が滲むような強さで握る。机に腰掛けているシャジェドニは足をぶらぶらさせながら
「何時の時代も人間の憎き対象は人間か、変わらないねぇ」
「……昨日は混乱してて良く状況を判断できなかったけど、貴女は本当に何者?」
んーと前髪を指でくるくると弄りながら答える。
「まーざっくり説明するとねぇ、太古の昔より人間に取り憑き人間を喰らい糧としてきた種族……ホラーって呼ばれる存在だよ」
「!?」
身構える折紙。
「貴女も私を喰らうの?」
「警戒しなくてもいいよ、オレは別に他のホラーと違って人間を喰うつもりなんて無いし、宿主様を襲うつもりはないんだよねぇ……言ったでしょ?“お前の力になってやる”って」
「味方……という認識でいいの……?」
「うん、そう思ってくれればいいよ。オレ結構強いからね!期待してもいいよ!」
ニコニコしながらシャジェドニは彼女に言う。一方の折紙は信用していない様子。
「あー疑ってるでしょ、まあ仕方ないよねぇ。じゃあさ、早速だけど殺しに行こうよ、その……」
シャジェドニもモニターに視線を変え
「五河琴里って奴を……の前にさー」
くるっと折紙の方に顔を向け
「ホワイトルシアンだっけ、あのおもちゃ」
「違う、ホワイトリコリス。そんなお酒の名前じゃない」
彼女達が先程から言っているのは今日、この駐屯地に配備された特殊兵装“ホワイトリコリス”一個中隊の火力を一つの兵装に纏めた異形のCR-ユニットである。
「まーどっちでもいいじゃんーあれさ、ちょっと借りていこうよ。宿主様もあれ使いたいでしょ?」
「でも警備が……」
「オレに任せなさい!……ソッコーで奪ってやるよ」
※
天宮市・病院――― AM 10:23
真那に連れられ人気のないところに来た千牙。
「何のようだ、俺は忙しいのだがな」
「単刀直入に聞きましょう、あの時の鎧について教えやがれです」
恐らくは牙狼の鎧の事だろう。当然教える訳にもいかないし、必要もない。
「何の事だろうな、俺にはわからん。用は済んだだろう、俺はもう行く……」
「私はあんたの鎧とよく似た黒い鎧の男を知っていやがります」
千牙はピクッと眉が動く。
「……黒の鎧?」
「そうです、鎌を持った狼みたいな顔をした鎧で……」
「そいつはもう死んだ」
「……え?」
呆気に取られる真那、千牙は彼女の横を通りすぎ
「俺が殺した。もう居ない、すまないが俺はやることがあるのでな、失礼する」
それだけを言い残し真那の視界から消え去った。
「リーパーを殺した……?ありえねーです、ヤツは特殊指定討伐で誰もキズつけるどころか、まともに攻撃すら許されなかったヤツなのに……」
一層千牙に対する不信感が増す真那、今回は引くが次にあったときは確実に問い詰める。そう決めたのであった。
兄ってのは、何時だってその下のヤツの事を考えてやらないといけない。
兄ってのは、何時だってその下のヤツを守ってやらないといけない。
全く、兄は大変なもんだな。
次回、『琴里』
そうさ、嬢ちゃんを守れるのはボウヤだけなんだぜ?