デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
天宮市・オーシャンパーク―― AM 11:01
「……♪」
浮き輪に乗っかり、四糸乃は気持ち良さそうに流れるプールを堪能していた。
『いいね~落ち着くね~』
彼女の左手に居るよしのんも満更でもない様子。だが一方の四糸乃には一つ心残りに近いものが。
「……千牙さんも一緒だったらな」
『そうだねぇ、けど千牙くんは忙しいみたいだしなかなか機会がないもんね~そいえばさー四糸乃ー』
「?」
『何時千牙くんに告白するの?』
「ひゃっ!」
よしのんの言葉にバランスを崩し、危うくプールへ落ちそうになる四糸乃。
「なななななにをいって……!」
『だって四糸乃、千牙くんの事好きなんでしょー?』
「……ん」
頬を赤らめながら彼女は頷く。千牙が彼女を救った……いや、それよりも前からだろう。彼女の事をいつも気にかけ、優しくしてくれた彼。四糸乃は千牙に淡い恋心を抱いていたのだ。
『早くしないと、あの黒いおねーさんに獲られちゃうぞー』
恐らく狂三の事だ、彼女は千牙と何処か仲良さげであり四糸乃は危機感を多少なりとも感じていた。
「け、けど千牙さんが私の事どう思ってるか解らないし……」
『怖がっちゃダメだよ!ガツンとアタックしなきゃ!なんならよしのんが四糸乃と千牙くんの恋を成就させ――』
「ここに居たか四糸乃!」
よしのんの声が、元気な十香の声に被ってしまう。
「十香さん、どうしました……?」
「一緒に“うぉたぁすらいだぁ”なるものに行こうと思ってな!四糸乃も行くぞ!」
「うぉたぁすらいだぁ?」
「……これ、ですか?」
四糸乃が見上げると、次々に勢いよく流されていく人達が。ウォータースライダーの側に集まった士道、琴里、十香、四糸乃とよしのんだが
「えっと……私は遠慮しておきます、もしよしのんが飛んでいったら危ないので……」
「私もよ、子供じゃあるまいし」
「そうかぁ……」
乗り気ではない二人、十香は士道の腕に組み
「では士道、二人で行こう!」
「……待って」
琴里は少し不機嫌そうではあるが
「私も行く……」
「おお!では早く行くぞ!」
そうして十香は士道と琴里の腕を引っ張りウォータースライダーの天辺へと向かったのであった。
※
天宮市・病院―― AM 11:03
「成る程な……」
とある病室の前に千牙が居た。退院したのだろうか、その部屋には既に人は居ない。
「あの嬢ちゃんの影に憑依した可能性が高いぜ」
「確かあの娘は……」
「鳶一折紙だったか、ボウヤと同じ学校の生徒だな」
やや険しい表情になり、踵を返す。
「確かにあの娘、十香等に対して並々ならぬ殺意を向けていたな……負の感情は確かにあった、そこをジャジェドニに狙われたか」
「嬢ちゃんの気配は覚えてる、探してみるぜ」
階段を下り一階へ、そして出口を出て一人の男性と少女が通りすがる。
が、千牙は足を止めた。
「……」
「これは、久しぶりだね。千牙君」
先に声をかけたのは白髪の男性だ。千牙の方を向き笑む。
「……アイク、まさかこんなところで会うとはな」
彼は『アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット』。“デウス・エクス・マキナ・インダストリー”通称“DEM社”と呼ばれる世界屈指の大企業のトップに座する男性だ。
その傍らにブロンドの長髪の美しい少女、DEM社のNo.2『エレン・ミラ・メイザース』が一歩前に出る。
「お久しぶりですね、冴島さん」
「これは自称“人類最強”お前もいたのか。どうだ?25mは泳げるようになったか?」
「む、無論です……25m等私に掛かれば……って何笑いを堪えているのですか!!」
千牙は笑みを抑えていたようだが、どうやらエレンには見抜かれていたようだ。
「フフ……いやすまない、やはりお前は変わらんか」
「あまり彼女をいじめないでやってくれ、それにしても本当に奇遇だね」
「そうだな……せっかくの再会の所だが、悪いが俺は急いでいる。これで失礼させてもらうぞ」
「君は多忙だからね、仕方ないか。また何処かで会おう」
ああと返答し、千牙は立ち去っていく。
※
天宮市・オーシャンパーク―― AM12:09
きりのいいところで士道達は昼食を取っていた。
「うむ、美味しい!」
「ならよかったよ」
サンドイッチを頬張る十香を微笑ましく思う士道、チラリと琴里に視線を変えると頬杖を着き何処か不機嫌な様子。フラクシナスにいる令音へと通信する。
「令音さん、今の琴里の機嫌と好感度の数値って……」
『上がってもいなければ下がってもいないよ』
「そうですか……」
こんな状況では封印なぞ儘ならない、士道は少し焦りに駆られる。すると琴里は席を立ち上がり
「悪いわね、少し席を外すわ」
「あ、ああ……」
何処かへと行く琴里を見届けると士道は深くため息を吐いてしまう。そんな彼をじっと見つめる十香と四糸乃。
「何かあったか士道?」
「琴里さんとケンカでもしたんですか?」
「いや、そういうわけじゃ……ごめん、俺もトイレ行ってくる……」
彼もまた席を立ち琴里と同じ方向へと歩いていった。
「大丈夫ですかね、士道さんは」
「ふむ……」
『何かあったのは間違いないよねー士道くんって何時もあんな感じじゃなさそうだし』
「心配だ……」
「……」
琴里の行方を知り、そこで聞いてしまった事実に士道は自販機の前で立ち尽くしていた。
彼女の限界が近い、もし封印が失敗すれば琴里は士道の知る存在ではなくなってしまう。これが最後になるかもしれない、兄妹の最後の一時に……思考が渦巻き、どうすれば良いか解らなくなる。だが今彼の言葉を思い出す。
琴里を救えるのはお前しか居ないんだ……臆するな、自分を信じろ、そして……琴里を救うんだ
「そうだ……これは……」
俺にしか出来ない、俺しか琴里を救うことが出来ないんだ。そう自分に言い聞かせ両頬を叩く。
「よしっ!気合い入った!」
「そうか……」
士道は十香達と合流し、琴里の状況を話し今だけは二人きりにしてほしいと頼んだ。十香は頷き
「わかったぞ、シドー。絶対にコトリを救うんだぞ!」
「頑張ってください、士道さん」
『応援してるからね!』
「皆……ありがとう」
十香、四糸乃とよしのんは彼の頼みを聞き入れその場から離れる。少しすると琴里が戻ってきた。
「十香達は?」
「二人は別のエリアに行ってもらったよ。それより琴里、今すぐ着替えてアミューズメントエリアに集合な」
何故士道がそんなことを言うのか、琴里はふーんと呟き
「フラクシナスからの指示ね?此処じゃ上手くいかないから遊園地エリアを行くわけね、別に構わないけど―――」
士道は首を横に振り、つけていたインカムをテーブルの上に置く。
「し、士道……?」
「そんなんじゃないさ、せっかくの兄妹水入らずのデートなんだ。フラクシナスの指示なんていらない」
琴里の手をとり
「それに久しぶりの遊園地だし思いきり遊ぼうぜ」
「え……う、うん……」
そうと決まれば、と士道は琴里の手を引きアミューズメントエリアへと向かった。
※
陸上自衛隊・天宮駐屯地――― AM 12:13
「う、うぅ……」
陸上自衛隊の格納庫、その中で警備を担当していた者達がうめき声を上げながら倒れていた。その側にいるのは……
「シャジェドニ」
「あ、宿主様ー警備の方はこれで大丈夫。気兼ねなくホワイトベースを持ってけるよ」
「だからホワイトリコリス」
「細かいこと気にしない気にしない」
折紙とシャジェドニは格納庫に保管されていたCR-ユニット、ホワイトリコリスの元へと歩む。
「これでイフリートを……」
「それじゃ行動開始しましょーか!」
あのボウヤと千牙は何処か似ている。
互いに守りたい者の為に戦い、救いたい者の為に命を懸ける。
だから気が合うんだろうな。
次回、『兄妹』
これにて一件落着か?