デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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今回長くなりそうなので、前編と後編で分けました。ご了承ください。


第二十一話 斬馬・前編

 

 

或美島・旅館――AM 10:56

 

 

「一体これはどう言うことなのか、説明を求めたいね」

 

 

ベットに腰を掛けている千牙に、フラクシナス解析官の令音が、彼の左右にいる少女達を見て問う。

 

 

「俺に聞くな、寧ろ俺が説明をしてほしいくらいだ」

 

 

そんなやや機嫌の悪い千牙を余所に

 

 

「こら千牙、無視するでない。貴様は我の事をしかと見つめ、ただ我の事を選べば良いのだ」

 

「誘惑、耶倶矢ではなく夕弦を選んでください、さあ……」

 

 

千牙にまとわり付くように甘い声を掛ける八舞夕弦と八舞耶倶矢。

 

士道達を救出し教師達が居る旅館につれてくるところまでは良かった。だが夕弦と耶倶矢までついてきてしまい、千牙に対して自分を選べ、此方を選べ、とずっと言い寄られているのだ。

 

理由は簡単、夕弦と耶倶矢、元は“八舞”という一人の精霊であった。しかし理由は不明だが、二つの人格に別れてしまい今の状況が出来上がったと、いずれは再び一つの存在に戻り、その際はどちらかの人格が消えてしまうとのことだ。

 

どちらが真の八舞かを決めるため、彼女達は長きにわたる勝負をしてきた。そして自分の魅力を持って千牙を堕とすこと。それが最後の決闘となってしまったのだ。

 

とりあえず令音にはある程度の事情を話し、耶倶矢達は急ではあるが転校生という形でここに入ることが出来た。因みに千牙は泊りはしないが旅館に急遽名前だけ登録し、此処に居る。

 

 

「まあ大方のことは理解できた、しかしチーがこんな事に巻き込まれるとはね」

 

「本当だ、こういうのは士道が適任だろうに」

 

「えぇっ!?」

 

 

思いもよらぬ矛先を向けられ声を上げる士道。

 

 

「しかもフラクシナスとも連絡が取れないとはな」

 

「そうだね、そちらは私の方で調べておくよ」

 

 

千牙は二人を振り払いベットから腰を離す。

 

 

「何処に行くのだ、千牙よ」

 

「言っておくが俺は忙しい、お前達の勝負に付き合っている暇は無い」

 

「な、何故だ!」

 

「質問、理由を聞きたいのですが」

 

「答えるつもりは無い……令音、少し外に来てくれ」

 

「わかった」

 

 

先に千牙は退室し、令音は残った八舞姉妹に

 

 

「まあなんだ、君達は最も厄介な男を勝負に巻き込んでしまったようだね……こちらも少しは手を貸すさ」

 

 

 

 

 

壁に背を預ける千牙、令音が部屋を出てくるのを確認すると。

 

 

「令音、お前には伝えておくが……この或美島にホラーが現れた」

 

「!!」

 

 

ホラーという単語を耳にしたし瞬間、令音の表情は強張る。

 

 

「成る程、そのホラーを倒すためにチーはこの島に来たんだね」

 

「ああ、夕弦と耶倶矢には悪いが、あいつ等の勝負に付き合う余裕はない」

 

「……確かにそうだと思うけど」

 

「?」

 

 

令音が部屋の扉を少しだけ開きちょいっと指を指す。何事かと思い千牙は小さく開いた扉を覗くと

 

 

「士道!千牙はどんな攻めかたに弱い!」

 

「希求、是非とも千牙を堕とすために協力を」

 

「え、えっとぉ……」

 

 

質問攻めに合う士道、ゆっくりと扉から顔を離し頭を抑える千牙。

 

 

「どうやらシンの事よりもチーの方に熱心のようだね、彼女達の矛先をシンに向ける事は出来なさそうだ」

 

「……はぁ」

 

 

盛大なため息をつく。

 

 

「フラクシナスとは連絡が出来ないが、インカムは私に繋げておくといい、協力するよ」

 

「……頼りにしてる」

 

 

 

 

 

とりあえず、千牙は令音達と一旦別れた。広間へと彼がやってくるとそこで見覚えのある女性が目につく。

 

 

「……何やってるんだ、エレン」

 

「は?……はぁぁ!!??」

 

 

その美貌からは想像も付かない間の抜けた声が上がる。人類最強の魔導士、エレン・M・メイザースは生徒の波をかき分け

 

 

「ちょーっとこっちに来てください!」

 

「ああ」

 

 

そんな彼らを見ていた女子生徒三人組が

 

 

「誰、あの男の人。彼氏?」

 

「けど何処かで見たときある顔だなー」

 

「マジ引くわー」

 

 

 

 

 

彼女に引っ張られて連れてこられたのは建物の裏だ。

 

 

「何で貴方が此処に居るのですか!」

 

「此方の台詞だ、DEMのNo.2が此処に居ること自体妙だと思うがな」

 

「そ、それはそうですが……」

 

 

ふっと千牙は笑い

 

 

「なに、俺が此処に居るのは仕事だからだ」

 

「……そういうことですか」

 

 

一転して鋭い目付きになるエレン。

 

 

「お前が此処に居るのも大方アイクの指示だろうな。安心しろ、そっちが邪魔しない限り何もしないさ」

 

「そうしてくれると助かります、すいません引っ張ってしまって」

 

「気にするな」

 

「……では私はこれで」

 

「ああ」

 

 

軽く礼をしたあと、千牙に背を向けて旅館へと戻る。が、彼女は足を止め

 

 

「私は……アイクは人々の生命を守るために動いているのです……貴方と同じように」

 

 

そう言い残し、エレンは千牙の前から居なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

或美島・郊外―― PM 7:00

 

 

令音から明日の予定を聞き、大空の家へと戻っている最中の千牙。

 

明日、令音が用意したプライベートビーチで夕弦と耶倶矢と共に過ごし親交を深めるという計画がなされた。何をするかは知らされておらず千牙には不安しか残らない現状だ。

 

 

「面倒な事に巻き込まれたな」

 

「全くだ、何故俺なんだろうな……」

 

 

大空の家の側までやってきたが、何か様子がおかしい。

 

 

「おい千牙、うっすらとだがホラーの気配がするぜ」

 

「ホラーだと?」

 

 

その時

 

 

「うわあああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

大空の叫び声が木霊する。

 

 

「大空!ッ!」

 

 

玄関の扉を蹴破ろうとしたが、その前に扉からホラーが飛び出してくる。

 

 

「チィッ!」

 

 

掴みかかるホラーの手を払い、首を蹴りあげ

 

 

「はぁぁっ!」

 

 

逆手に構えた魔戒剣でホラーの胴体を切り裂く。断末魔を上げホラーは消滅、千牙は直ぐに家屋へ走り込む。

 

 

「大空!!……」

 

 

横たわっていたのは、四肢を食い散らかされ恐怖と涙で歪んだ顔。無惨な光景が広がっている。

 

 

「……」

 

 

千牙は黙し大空の元へ歩み、開いた瞼を静かに下ろす。

 

 

「すまん、大空」

 

 

ホラーと戦うということは常に死と隣り合わせ、何時死んでもおかしくはない。だが、少しでも早く来ていれば彼は助かっただろう、その後悔の念が千牙の心を一杯にする。

 

まずはララに報告をと、彼は家を離れる。暫くしてから

 

 

「……ッ!?」

 

 

突然千牙を襲う激しい頭痛。

 

 

「なんだ、これは……」

 

 

よろよろと近くの木へと向かい

 

 

「どうした千牙!!」

 

「わからな、い……急に……!!」

 

 

木に寄り添いながら千牙は意識を遠退かせてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

???――― ??:??

 

 

 

「……此処は」

 

 

視界が真っ白になりそれが晴れたかと思うと、周囲に魔戒文字が浮かぶ白い空間に千牙はたっていた。

 

 

「一体何が……」

 

 

何か気配を感じ取った、強く雄々しい何かが。千牙の目線の先にゆっくりと此方へ歩んでくる金色の存在が。

 

 

「……牙狼」

 

 

千牙の目の前に居るのは紛れもない、自身が継承した称号、牙狼の鎧だ。だが誰がこの鎧を身に纏っているか千牙にはわからない。

 

 

「冴島千牙、お前は大いなる力を手に入れる資格を得た」

 

「大いなる力……?」

 

「そうだ、だが今はまだその時ではない……再び己の意思で此処へと来い。その時に―――」

 

 

 

 

 

 

或美島・旅館―― AM 5:02

 

 

 

「うっ……」

 

 

二度目の意識の覚醒、そこは大空の家ではなく何処かの和室であろう。

 

 

「……?」

 

 

動こうとしたが、両腕に違和感を感じそちらを見る。

 

 

「う、にゅ……」

 

「むにゅ……」

 

 

夕弦と耶倶矢が千牙の腕を枕代わりに寝ていたのだ。

 

 

「何故こんな状況に……」

 

「それは君が旅館の側で倒れてたからだよ」

 

 

声の主は、窓に近い椅子に座っている令音だ。

 

 

「令音……」

 

「一応、チーの身体を診てみたが大丈夫、何ともなかったよ」

 

「助かる」

 

「所でチー、何であんなところで倒れてたんだい?」

 

「……わからない、ホラーを討伐したと思ったら激しい頭痛が起こってな。気づけば意思が途切れ、此処にいた」

 

「ふむ……」

 

 

千牙が疑問に思った事が一つ

 

 

「なあ令音、何故こいつらは俺の腕を枕にして寝てる」

 

「ん?ああ……君の看病をするのは私だーと言い争っていてね。いつのまにか寝てしまったようだね」

 

「そうか、なら退かしてくれ。動けない」

 

「さて、私は少しやることがあるから部屋に戻るよ」

 

「待て、こいつらをどうにかしてく―――」

 

「それじゃあチー、明日は大変だと思うけど頼んだよ。それと今なら人が居ないから温泉にでも使ってくればいい」

 

 

千牙の話を全く聞き入れてくれず、令音は何処かへと。

 

 

「……ザルバ、あの空間の事を覚えているか?」

 

「ああ、恐らくお前さんの“内なる魔界”だろうな」

 

「何?まさかだとは思うが……」

 

「討伐したホラーが昨日の時点で100を越えたということだな」

 

 

古くより魔戒騎士にはこのような伝統がある。

 

“100体のホラーを封印し試練を乗り越えた者は魔導馬と呼ばれる存在を召還する資格を得る”と。

 

そう、千牙もその試練を受ける資格を得たのだ。

 

 

「次から次へと……」

 

 

しかしこれは千牙の父、冴島零牙も歩んだ道。息子である自分が通らない道理はない。今日の夕弦と耶倶矢の件が終わり次第、魔界へと足を踏み込むことを決めた。

 

 

「……汗でも流すか」

 

 

令音の言葉が頭を過り、この旅館の施設は自分も使用出来る事を思い出し温泉へ入ろうと考えた。

 

 

 

 

 

「ふむ、中々に広い」

 

 

二人を起こさないように慎重に部屋を出た千牙は、温泉への暖簾をくぐり、服を脱ぎ、戸を開くと広がる露天風呂。空は朝焼けに染まっている。

 

千牙はタオルを片手に一度身体を洗い流した後、温泉にゆっくりと足から。

 

 

「……ほう、悪くない」

 

 

満足げに思わず声を漏らす。肩まで浸かり、一心地つく千牙。

 

 

「そういえばこうして温泉に入ったのは何時振りだろうか……」

 

 

凡そ十年前、彼が修行時代が一番記憶に新しいだろう。あの時は弱く、誰一人守れなかった未熟な自分だった。だが今は違う、牙狼の称号を受け継ぎ、守りし者として戦っている。が、彼にも思い詰めることはある。

 

一つは大空の事だ。彼はまだ若く、魔戒法師としては半人前だ。しかし才能はあり、将来に非常に期待を持てる存在であった。散らすには余りにも若すぎる。

 

二つ目は耶倶矢と夕弦。自分がどちらかを選ばなければならない、だが選ばれなかった方は消える。自分の選択で尊い命がこの世から消え失せてしまうのだ、どちらを選ばいいのか……千牙は思い悩んでいる。

 

そんな悩める彼に、予想だにもしないことが。

 

 

「此処にいたか、千牙!」

 

「……?」

 

 

元気のよい声、そちらを向くとタオルで身体を隠した耶倶矢と

 

 

「発見、令音さんに所在を聞いて正解でした」

 

 

同じく夕弦が扉の前に立っていた。

 

 

「……お前ら、なにしに来た」

 

「ふっふっふ、この我が千牙の身に溜まった穢れ浄化してやろうと思ってな!」

 

「翻訳、背中を流しに来ました」

 

 

先程まで悩んでいた自分がバカらしくなるような展開に、千牙は目元をひくつかせる。

 

 

「……結構だ」

 

 

はっきりと断る千牙だが

 

 

「遠慮することはないぞ」

 

 

耶倶矢も湯船へと入り、千牙の腕に抱きつく。すると彼の反対側に

 

 

「同感、夕弦に身を委ねるのです」

 

 

タオルに巻かれているが、柔らかい感触がもろに腕に掛かる。負けじと耶倶矢も腕に更にしがみつく

 

 

「ふふ……どうだ、千牙。我の色香を感じるであろう?」

 

「嘲笑、色香(笑)耶倶矢にそんなものが備わっているなんて初耳です」

 

「くく、今のうちに余裕ぶっているがいい。それを直ぐに吠え面に変えてくれるわ」

 

「応戦、望むところです」

 

 

二人の少女に挟まれる男、冴島千牙。普通の男性ならば、赤面ししどろもどろになっているだろう。しかし流石は魔戒騎士、このような状況でも一切の顔色を変えず、平静を保っている。

 

 

「……はぁ」

 

「溜め息!?」

 

 

盛大にした溜め息に耶倶矢は声を出す。

 

 

「せっかくゆっくりとしていたかったが、これでは台無しだ……悪いが俺は上がるぞ」

 

 

二人の拘束から抜け出し、タオルを腰に巻き湯船から上がる。

 

 

「待て千牙!」

 

「……なんだ」

 

 

若干煩わしそうに耶倶矢を向くと、雑誌等でよく見るようなセクシーポーズモドキを取っていた。

 

 

「……?」

 

「苦笑、耶倶矢の貧相な身体を見せつけられて千牙も相当げんなりしてる様子」

 

 

微妙な表情をしている千牙と口許を手で隠したくすくす笑っている夕弦、耶倶矢は両肩を抱き湯船に一気に身体をいれる。

 

 

「な、何よ!ちょっと千牙!少し位反応してもいいじゃない!」

 

「……訳がわからん」

 

「失笑、耶倶矢のペチャボディではダメダメです、やはり此処は夕弦の方に分があるみたいですね」

 

「対して私と変わんないじゃん!」

 

「反論、数字の上では此方が上です」

 

 

千牙をそっちのけでもめる耶倶矢と夕弦。ふと彼は二人の体型を見てとある少女を脳裏に思い起こす。

 

透き通るような白い肌、美しい黒色の髪、右は赤く左は黄色と特徴的な瞳。そしてスタイルは……

 

 

「……あまりこいつらと変わらんか」

 

「「?」」

 

 

何の事かわからない夕弦達は頭に?を浮かべる。

 

 

「いや、気にしないでくれ。お前等も身体を冷やさないように早くあがれよ」

 

 

結局、数分しか温泉を堪能出来なかった千牙は、二人を残し扉をあけて出ていった。

 

 

「……なんか普通に流されたんだけど」

 

「唖然、令音さんからは聞いていましたがここまで靡かないとは驚きです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

朱の管轄・番犬所―――AM 7:06

 

 

「そうか、大空が……」

 

 

ララは暗い表情で千牙からの報告を受ける。

 

 

「まさかハンプティ以外に、低級とはいえホラーが現れてるなんて……千牙、御苦労様。被害が最小限に抑えれたことが何よりだよ」

 

「はい」

 

「しかしホラーの出現も察知できないとは……困ったものだね、千牙。早急にハンプティを討伐してほしい……これ以上被害者を出さないために……」

 

 




次回は近日更新します。
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