デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

26 / 31
第二十三話 双迅

或美島・郊外 ――― PM6:09

 

「二人とも無事か?」

 

 

ハンプティを殲滅した後、二人を近くの木に寄り懸ける。

 

 

「千牙、あんた一体何者なの……」

 

「疑問、私達の攻撃を一切受け付けなかったあれをいとも簡単に倒すなんて」

 

「……俺は魔戒騎士、人知れず人々を守る存在だ」

 

 

千牙はコートの左胸についた指輪、魔封輪に触れ

 

 

「俺の事はとりあえずどうでもいい、まずはお前達の方だ……」

 

 

彼の視線が耶倶矢と夕弦を捉える。

 

 

「俺はずっと二つの選択しかないと思っていた、きっとお前達も同じだろう……耶倶矢が消えるか、夕弦が消えるか……」

 

「「……」」

 

 

しゃがんでいた千牙は立ち上がり

 

 

「俺には選べなかった……だからこそ気づいたんだ、お前達には三つ目の選択肢があると」

 

「三つ目の……」

 

「選択肢……?」

 

 

不審に思う耶倶矢と夕弦。当然だろう、今までどちらかが消えるという二択の状況しかなかった、それが突然彼が三つの選択を提案してきたのだから。

 

 

「そ、それで、三つ目の選択肢ってなによ」

 

「霊力を封印し普通の人間として“二人で共に”過ごす事だ」

 

 

一部強調された言葉、二人はその言葉を信じることは出来ない。

 

 

「疑問……そんなことが出来る筈ありません」

 

「出来る」

 

「ッ……」

 

 

はっきりと言われ口を閉ざす夕弦。

 

 

「……ねえ、千牙。もしその三つ目を選んだら、私達は本当に二人で居られるの?」

 

「ああ、約束する必ず二人を共に居させると」

 

 

耶倶矢は彼の曇りない真っ直ぐな瞳を見つめ、彼の言っていることは本当であろうと結論づけた。

 

 

「しかしその選択を選ぶのはお前達次第だ……まずは旅館に戻ろう」

 

「えっ、ちょ!」

 

 

動けない二人を抱える千牙。

 

 

「動揺、お、下ろしてください……」

 

「怪我人が何を言ってるんだ、大人しく抱えられてろ」

 

 

二人の反論を聞きながら、千牙は旅館へ進路を向けた。

 

 

 

 

 

 

或美島・岬 ――― PM 6:09

 

 

灰色のコート、目元まで隠したフードを被った青年が月を見ていた。

 

 

「どうするんだ、我等はここのまま見ているか」

 

「……」

 

 

何処からか声が掛かるが青年は無言、だが

 

 

「……そうか、時が来れば……か。ならば我もお前に付き合おう」

 

「……」

 

「気にすることなどない、我はお前の魔導具……手を貸すのが道理よ」

 

 

こくりと青年が頷くと踵を返し歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

或美島・旅館―――PM 6:30

 

 

「令音」

 

「……何だい、夜這いには少し早い……」

 

 

令音の部屋に来て早々、彼女は的外れな事を口走ろうとしたが千牙の両脇に抱えられている夕弦と耶倶矢を見て固まる。

 

 

「千牙、本当にさ、もう少し持ち方ってのがあるでしょ……」

 

「無理言うな」

 

「不服、こんなバッグみたいな持たれ方するのは少し……」

 

「諦めろ」

 

 

文句をたれる八舞姉妹を布団に放り投げる。

 

 

「ところでチー、シン達と会わなかったかい?」

 

「いや、何故だ?」

 

「チーを探しにいった夕弦達が戻って来なかったからね、探しにいったんだが……」

 

「……そうか、迎えにいってくる」

 

 

 

 

 

 

或美島・海岸 ――PM 6:49

 

 

士道達を探しに来た千牙、何気なしに海岸に辿り着く。

 

 

「あいつらは一体何処に行ったのやら……」

 

「気配が辿れないから厄介極まりないぜ」

 

「未だにか……!?」

 

 

千牙は海に視線を変える。沖、そこで何かの気配を感じ取った。

 

 

「ザルバ」

 

「ああ、嫌な予感がするぜ……」

 

 

予感は的中、海は渦巻き黒い雷が発生する。中心では巨大な存在が蠢いていた。

 

 

「……」

 

 

あれは何だ、そう言う直前に渦巻きから黒く長大な竜のような異形が出現する。

 

 

「まさか……奴は“哭竜”だ!」

 

「哭竜だと……」

 

 

竜の姿をした異形……名を哭竜、本来であれば内なる魔界等に姿を現す赤い角を生やした大型のホラーだ。何故そんなものが此方の世界へと姿を現したのであろうか。

 

哭竜は天へと登り、その顎を勢いよく閉じると空中で突然爆発が起こる。

 

 

「あれは……船か?」

 

 

先程まで視認出来なかったが、哭竜が噛み砕いたのはフラクシナスに少し似ていた艦であった。

 

 

「乗組員、あれじゃ助からないぜ」

 

「……」

 

 

哭竜は何度も顎を動かし空中艦を砕いていく。

 

 

「もしあれが島に来たら被害は甚大か……その前に」

 

 

魔戒剣を抜き

 

 

「仕留める!!」

 

 

鎧を召還し跳躍する。それでも哭竜の元へは届かない、だが今の彼には助けとなる力がある。

 

 

「轟天!!」

 

 

陣が千牙の背後に浮かび、嘶きと共に轟天が現れ千牙を背に乗せ、蹄に魔力を纏わせ空を駆ける。

 

 

「気を付けろ千牙、奴の力はとてつもないからな!」

 

「ああ!」

 

 

千牙と轟天が哭竜に近づくと奴は此方に気づき

 

 

『ガオアアアアッ!!』

 

 

燃えたぎるブレスを吐き出してくる。

 

 

「くっ!」

 

 

手綱を引き轟天に回避行動をとらせる。尚も此方に炎を吐き続ける哭竜。

 

 

「くっ、近づき辛いな……」

 

「……千牙交わせぇ!!」

 

「何!?」

 

 

哭竜は目と鼻の先、しかし哭竜の尾が千牙に迫って来ており回避するのは困難な状況だ。直撃は逃れない、千牙は迎え撃とうとするが

 

 

「轟天!?」

 

 

轟天は千牙を背から降ろし、盾代わりとなったのだ。

 

 

「ぐうっ!!」

 

 

それでも吹き飛ばされる千牙と轟天、轟天は魔界に強制送還され千牙は鎧が解除、そのまま海に向かい落下していく。このまま海に叩きつけられたら流石の彼でも危険であろう。

 

「チッ、まずいな……」

 

 

 

 

 

 

或美島・中央区―――PM 6:53

 

 

千牙が哭竜との戦闘の最中、士道と十香は非常事態に陥っていた。

 

 

「なんだこいつら……」

 

 

猫背気味の姿勢でゆっくりと距離を詰めてくる人型の機械、士道はそれに言い様のない恐怖を感じていた。その機械人形の背後に、人影が。

 

 

「DD-007《バンダースナッチ》……といっても、分からないでしょうか」

 

 

金髪を揺らし月明かりに照らされる女性、彼女は今回の士道達の修学旅行に同行した……

 

 

「エレンさん……?」

 

「ようやく人気の無いところに来てくれましたね、十香さん、士道さん」

 

 

冷たい笑顔のエレン、十香は身構える。

 

 

「シドー、奴から嫌な気配がする……」

 

「嫌な……まさかホラー!?」

 

 

エレンは興味深そうに

 

 

「あなた方はホラーを知っているのですか……ご安心を、私はホラーではありませんよ……しかし」

 

 

顎に手を添え

 

 

「何故あなた方がホラーを知ってるのか……もしかして冴島千牙さんが関わっているのでは?」

 

「!?」

 

「なんで千牙さんの事を……」

 

「やはりお知り合いでしたか……妙ですね、私も言えた口ではありませんが、魔界に関わった一般の人間は掟により魔戒騎士及びホラーの事について記憶を消されてるのですが……」

 

 

彼女の言葉に耳を疑う。千牙の口からはそんな事を聞いたことは一度もなかったし、それに此方の記憶を消そうとする事もなかった。

 

 

「千牙さんはあなた方の事を信頼しているのでしょう、だから記憶を操作しなかった……ですが皮肉ですね、信頼した相手が片方は人間だとしても、もう片方は彼の母を死に追いやった精霊だとは」

 

「ッ……」

 

 

以前にゴンザから聞いたことがある、千牙の母は彼が幼少の時に空間震でなくなったと。

 

 

「ならば彼に代わり、精霊を討つとしましょう。それに……いえ、これ以上の言葉は不用でしょう」

 

 

瞼を閉じ、意識を集中させると彼女はASTのスーツに酷似した物へと変わる。

 

 

「音に聞いたプリンセス、どれ程のものか確かめてあげましょう」

 

「シドー下がっていろ!」

 

 

柄を握り、エレンに目掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

或美島・海岸 ―――PM 6:59

 

 

 

「……?」

 

 

唐突に来る浮遊感、誰かに両腕を掴まれているような感覚だ。

 

 

「大丈夫、千牙?」

 

「耶倶矢、それに夕弦……」

 

「応答、はい、間一髪でしたね」

 

 

千牙は二人に助けられ陸地へと戻ってくる。

 

 

「すまない、二人とも助かった」

 

「別に、私達だって助けてもらったし」

 

「同感、その通りです」

 

 

千牙は海上でうねる哭竜を睨む。

 

 

「どうしたものか、奴に近づくのに轟天ではきついか……」

 

 

だがやるしかない、千牙はもう一度哭竜に向かおうと鎧を召還しようとする。

 

 

「質問、勝算はあるのですか?」

 

「さあな」

 

「さあなって……」

 

「やるしかない、ただ黙ってここで突っ立って居ては何も進まん……そうだろう、狂三」

 

「「?」」

 

 

彼は自分の影に呼び掛けると

 

 

「フフフ……気づいていましたか」

 

 

影から声が聞こえ

 

 

「くるくるみんっと♪」

 

 

夕弦と耶倶矢は驚く、何故なら千牙の影から回りながら狂三が出てきたからだ。

 

 

「何時からお気づきに?」

 

「この島に着いてからだ、お前の気配は大体解る」

 

「成る程、隠れてついてきたつもりですが、侮れませんわね、千牙さんは」

 

 

狂三は夕弦達の方を向き

 

 

「初めまして、私、貴女方と同じ精霊の時崎狂三と言います」

 

「せ、精霊……」

 

「唖然、まさか千牙の影のなかに居るなんて」

 

 

二人を尻目に、狂三は千牙に向き直り

 

 

「お困りの千牙さんに助言をしてさしあげようと思います」

 

「聞かせてくれ、この現状を切り抜けられる手を」

 

「覚えておりますか?私が千牙さんに霊力を渡したときの事を」

 

 

鎌威との戦いで、千牙は狂三から霊力を受け取り“装天・牙狼”となり撃破することが出来た、忘れもしないであろう。あの姿はあの後も一度だけなれたが、彼女から受け取った霊力がきれたのか、普通の姿に戻ってしまったという。

 

 

「ですが、今回私は分身……あの姿に至れる程霊力をお渡しすることはできません」

 

「ならどうやって……まさか」

 

 

千牙は夕弦達に向く。

 

 

「そうですわ、御二方の……風の霊力を受けとればきっと、この状況を打破することが出来ますわ」

 

「……」

 

 

彼は二人に近づき

 

 

「夕弦、耶倶矢。お前達の力、俺に貸してくれないか」

 

 

彼の頼みに、夕弦と耶倶矢は顔を見合わせ

 

 

「わかった、私達が力になれるなら」

 

「同意、ですが具体的にどうすればよいのでしょうか?」

 

「……そうだな、霊力を込めた攻撃を俺に放ってくれ。恐らくそれで何とかなる筈だ」

 

 

それを吸収し、力に変えるつもりなのであろう。一方の狂三は首をかしげ

 

 

「何故そのような面倒な事を?私が前にやったような方法なら直ぐですのに」

 

「あんなの何回もやられたらたまったものではない、第一こっ恥ずかしい」

 

「成る程……そういうところ、可愛いですわよ千牙さん」

 

「茶化すな」

 

 

彼女はくすりと笑い

 

 

「それでは私はこれで失礼します、私の本体が千牙さんとの再会を楽しみにしていますわ」

 

「ああ、必ず帰るさ」

 

「はい♪」

 

 

狂三はスカートの端を少しだけ持ち上げ、再び千牙の影に溶け込んでいった。

 

 

「さて……夕弦、耶倶矢、頼むぞ」

 

 

彼の言葉に二人は首を縦に振る。そして耶倶矢が左手を、夕弦が右手を差し出し、ぴたりと合わせると霊装と翼が光り輝き、耶倶矢の右肩の翼と夕弦の左肩の翼が合わり、弓のような形状を作る。そして夕弦のペンデュラムが弦に、耶倶矢の槍が矢となった。

 

 

「よし……」

 

 

千牙は彼女達から少し離れ、鎧を呼び出し装着し彼女達の方を向き

 

 

「耶倶矢!夕弦!撃て!」

 

「……わかった、やるよ夕弦!」

 

「応答、はい!やっちゃいます!」

 

 

左右から同時に二人は弦を最大まで引く。

 

 

「「颶風騎(ラファエル)――天を駆ける者《エル・カナフ》ッ!!」」

 

 

放たれるは颶風の矢、一直線に千牙へと向かう。

 

 

「来たぜぇ!」

 

「わかっている!」

 

 

彼は左手を翳し、風の加護を纏った矢を受け止める。

 

 

「お前達の力……受け取った!」

 

 

そのまま矢を掴むと同時に牙狼の鎧は光を放つ。やがて光は消え、その姿を徐々に現していく。

 

両肩の部位は後方へと刃が伸び、背中からは先端に狼型のアンカーが付属された一対の鎖が。牙狼剣は二つに別れ片刃の剣へ変貌。瞳は耶倶矢、夕弦と同じように美しい淡い水色に変わっている。

 

 

「鎧が……変わった」

 

「驚愕、それだけではありません……これは……」

 

 

霊装を解いた夕弦と耶倶矢は驚きの色を隠せない、今の千牙からは自分達と同じ精霊の力を、霊力を纏っていたからだ。

 

 

「二人とも下がっていてくれ」

 

 

千牙はくるりと後ろを向き、哭竜へ向かう。

 

 

「……」

 

「どうしたの、夕弦」

 

「心配、千牙は勝てるのでしょうか……」

 

 

夕弦の表情は優れない、ハンプティよりも巨大な化け物、それに果たして千牙は勝てるのであろうかと。すると耶倶矢はニコッと笑い夕弦の手を握る。

 

 

「大丈夫、千牙なら勝てる!それに勝ってもらわないと約束、守ってもらえないじゃん」

 

「!……そう、ですね……」

 

 

哭竜に向かう千牙の背中を見て

 

 

「信頼……千牙、勝ってください……!」

 

 

 

 

『グオオオオオオオッ!!!!』

 

 

灼熱のブレスを撃ち出す哭竜、千牙は側方へと交わす。八舞姉妹の霊力を受け取ったことにより風を纏い、飛行能力を得た千牙は、哭竜の攻撃を宙を舞うように回避する。

 

 

「存外、空を飛んでみるのも悪くないもんだな」

 

「まあな」

 

 

哭竜に接近すると背部の鎖“双風烈鎖(ソウフウレッサ)”を伸ばし、哭竜の身体に接触、鱗を貫きアンカーは固定する。

 

 

「ふっ!」

 

 

鎖を引き寄せ勢いを生かし二振りの剣“牙狼双迅剣”を哭竜の身体に突き立てる。

 

 

『ガアオォォォォ!!』

 

 

身体を捩らせ、千牙を振り落とそうとする。しかし深々と固定された双鎖はそれを許さない。

 

 

「千牙、ロデオを楽しんでいるのはいいが、さっさと決めちまおうぜ」

 

「楽しんでいないがな!」

 

 

鎖と剣を引き抜き、哭竜から飛び退くと再び尾による攻撃が仕掛けられる。

 

 

「二度は食らわん」

 

 

双風烈鎖のアンカーを、牙狼双迅剣の柄頭に接続し遠方に位置する哭竜の頭部目掛け投擲

 

 

「はっ!」

 

 

牙狼双迅剣は哭竜の角に突き刺さり、鎖を引くことによって尾を交わす。ヒビの入った哭竜の角を蹴り飛ばすと鈍い音と共にへし折れる。当然、哭竜は雄叫びを上げ身を捩らせる。

 

 

「そろそろ決めさせてもらうぞ」

 

 

哭竜から離れ、鎖を持ちくるくると回すと刀身を風が覆っていく。そして柄を握ると、刀身には10mはある旋風の刃を形成していた。

 

 

「これは……夕弦と耶倶矢の……思いの力だ……!」

 

 

柄を握り直し、哭竜目掛け飛翔する。

 

 

『ガアアアッ!!』

 

 

襲い来る炎、しかし剣を振るうと凄まじい風の勢いに掻き消され、炎は四散する。

 

 

「はあああああっ!!!!」

 

 

雄々しい声を上げ牙狼双迅剣を持って頭部をクロスに切り下ろす。

 

 

『グギャッァ!!!!』

 

 

短い叫びを放ち二振りの刃の元に切り裂かれる哭竜、頭部から徐々に消滅していき、その巨駆は跡形もなく消え去った。

 




慈悲無き鋼鉄の傀儡。
絶望する少年は力に目覚め、剣を握る!
次回、『銀旋』
闇夜に紛れ、今…銀色の旋棍が姿を現す。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。