デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
或美島・旅館前――― PM6:49
「これは……」
折紙は旅館の外で、不審な人影を見つけた。それを追って来たのだが……
「テリトリーを展開している……」
目の前にいるのはDEM社が作り上げた緑のモノアイが揺らめく無人機“バンダースナッチ”と呼ばれるもの、それが彼女の前に立ち塞がる。
「……」
この機械人形をどう対処するか、そう考えた彼女だが
「鳶一折紙、そこで何を――」
令音が彼女の側にやって来たその時、バンダースナッチは飛び上がり……
「先生、逃げて!」
令音の身体を押し、バンダースナッチからの攻撃が折紙に直撃する。
「うっ……」
「鳶一折紙!」
彼女を抱き起こす令音、そんな二人に慈悲もなく迫る鋼鉄の傀儡……
「あんまり好き勝手やられたら困るんだよねぇー」
『!!!!!!』
狂ったような機械音声が流れる。バンダースナッチの背後には、折紙を反転させたような少女、現影ホラーシャジェドニがバンダースナッチの胴体を貫いていた。
「君は……」
「ねーねー、せんせー。宿主様の事頼むね」
けらけらとシャジェドニは笑う。
「なんかおもちゃ沢山有るみたいだしさ」
振り向くと5機程のバンダースナッチが彼女の目の前に位置していた。
「君は……味方なのかい?」
「んー、強いて言うなら宿主様のね。他は知らないや」
「……そうか、鳶一折紙の事は任せてくれ」
「はいはーい、頼んだよー」
ニヤリと笑いシャジェドニは両手を刃に変える。
「最近暴れてないから溜まってたんだよねぇ……それじゃー遊ぼうか!」
※
或美島・中央区―――PM 6:49
「期待外れとはこのことですか……」
「はっ……はっ……」
息を荒げ、十香はエレンを睨み付ける。彼女の実力は確かなものだ、十香の攻撃を全て交わし一撃どころがかすり傷すら負わせることが出来ない。
「どうしました、もう来ないのですか?」
「嘗めるなぁぁ!!」
鏖殺公をエレンに振り下ろす……だが
「踏み込みも、力も足りませんね」
エレンの光剣で受け止め、十香を逆に押し返す。
「残念ですが、貴女では私に勝つことなど出来ません……終わりです」
光剣を振るうエレン、十香それを鏖殺公で受けた。しかし鏖殺公は砕け、十香は吹き飛ばされ地に伏せてしまった。
「十香!」
士道は彼女の元に駆け寄ろうとしたが、バンダースナッチがそれを阻む。そして倒れた十香へ迫るエレン。
「捕獲が命令でしたが、やはりダメですね。殺意が抑えきれません……抵抗したからやむを得ず、討伐したとアルバテルに伝えておきましょう」
「何を……言ってるんだあんたは!」
バンダースナッチを押し退けようとするが、彼の力ではびくともしない。
「止めろ!止めてくれ!!」
彼の声は虚しくも彼女には届かない、エレンは光剣をゆっくりと掲げる。
俺は何も出来ないのか……狂三の時のように、ただ何も出来ずに見ているだけなのか。俺も千牙さんのように強ければ、こんなことには……
士道は己の無力を呪う、大切な者が目の前で殺されそうになっているのに……沸き上がってくる感情、そして叫ぶ
「十香ぁぁぁぁ!!!!」
斬ッ!!!!
「?……」
士道の足止めをしていたバンダースナッチがバタリと倒れ、エレンは士道を見て目を疑った。彼の手には、自分が砕いた十香の剣……鏖殺公が握られていたから。
「こ、これは……鏖殺公!?なんで……」
自分でも何故これが手にあるのか理解出来ない士道、エレンは冷静にバンダースナッチに指示をだす。
「彼は普通の人間の筈ですが……興味深い、プリンセスの代わりに彼方を連れていくことにしましょう。バンダースナッチ隊、彼の捕獲を……最悪手足は折っても構いません……ん?」
バンダースナッチの動きが突然止まった。不審に思ったエレンは空中艦アルバテルに通信をするが
「アルバテル、バンダースナッチの動きが鈍っていますよ」
ノイズだけが聞こえ返答は返ってこない。
「一体何が……まさか落とされた?」
「うおおおお!!」
士道から目を離した隙に、彼は鏖殺公をエレンに振り下ろす。
「想定外の事ばかり起きますね……」
「ぐっ……!」
容易く防がれ、士道はエレンの眼光に足が少しすくむ。
「威勢よく向かってきたことには褒めますが、あなた……戦い慣れていませんね」
「ぐッ!!」
彼は弾き飛ばされ、背を地面に着ける。
「シドー……!」
十香は片腕を庇いながら士道の側に。
「大丈夫か、シドー……」
「うっ、なんとか……」
身体を起こし、エレンを視界に写す。彼女は二人にゆっくりと迫り、光剣を構える。
「……」
だが、エレンは立ち止まり一点を見つめている。
「?」
それは士道の背後、彼は後ろを振り向くとコートにフードが深々と頭を覆う青年が立っていた。
「……誰ですか?」
「答える必要は無かろう、小娘よ」
返ってくる声は低く年老いた男の物。
「では……何の用でしょうか」
「……あまり騒がれると困るのでな」
コートの内から銀色の刃をT字に組まれたトンファーのような武器を両手に携える。
「少し静かにしてもらおうか」
「成る程……」
青年の視線が士道へ向けられ
「邪魔だ、小僧共。行け」
「え?は、はい……十香、行こう」
十香は頷き、士道を支えながら立ち上がらせ
「誰かは知らないが助かったぞ」
「礼はいい、さっさと行け」
士道と十香、二人は青年の横を通りすぎていく。
「……事は上手く運ばないものですね。あなたを倒して二人を追うことにしましょう」
「吠えよるわ、貴様に倒せるか?この男を」
「……」
刃を回転させ、腰を深く落とし構えをとる。来る静寂、エレンと青年は互いに出方を伺う。木から剥がれ落ちた葉が静かに地面に着く、その刹那
「行きます……!」
「……!」
両者、放たれた弾丸のように駆け出した。
※
或美島・海岸―――PM 7:02
「やったな、千牙」
「……ああ」
千牙は夕弦、耶倶矢の元に降り立つ。鎧を解くと身体に負担が掛かったのか、表情を曇らせ片膝を着く。
「「千牙!」」
二人は千牙の側に駆け寄る。
「ありがとう、お前達のお陰で勝つことができた」
「……か、勝ってもらわないと困るし!」
プイッと顔を背ける夕弦、素直ではないと千牙は苦笑する。
「安堵、勝ててよかったです……」
「ああ」
笑顔で千牙を迎える夕弦。耶倶矢は一歩前に出て
「……あのさ、千牙。私達決めたよ……私は夕弦と一緒に居たい」
「決断、私も、耶倶矢と一緒に居たいです……」
「……そうか、その答えを聞けてよかったよ」
千牙は魔封輪をコートから二つ外し、二人にそれぞれ手渡す。
「それをつければお前達の霊力は封じられ、普通の人間として暮らすことができる」
「これが……ありがとう、千牙」
「深謝、千牙には感謝してもしきれません……」
二人の言葉に彼は首を振り
「礼なんていい、俺はお前達が二人で居られるように選択を作っただけだ……さて、俺は寄るところがある、お前達は旅館に戻るといい……そうだ、その指輪、部屋でつけろよ。特に側に替わりの服があると尚良いな」
それではな、と千牙は微笑み背を向けて歩いていく。
「疑問、何のことでしょう」
「さあ……でも、これで二人で一緒に居られるんだよね」
残された夕弦と耶倶矢は魔封輪を見る。
「質問、耶倶矢はこれから何がしたいですか?」
「私?そうねー……十香の言ってたきなこパンが食べてみたいな、なんでも至高の美味って話だし」
「期待、それは美味しそうです……!」
「夕弦は何がしたいの?」
「回答、夕弦は……学校に行きたいです」
「それ良いわね!……」
「……」
二人は静まり、もう遠くに行き小さくなった千牙の姿に視線を移し
「……私ね、千牙に会わなかったらって思うとちょっと怖かったんだ」
「同調、夕弦もです……千牙には命を救ってもらい、夕弦達が一緒に居られる道を作ってくれました。もし千牙と出会わなければ今こうして、耶倶矢と話していません」
「うん……人間ってあんまり好きじゃないけど、千牙は別かな」
「同感、不思議な人ですけどね」
思わず耶倶矢は笑う。
「そうだね……それじゃ戻ろうか」
「肯定、はい、戻りましょう」
夕弦と耶倶矢は手を繋ぐ、固く互いを話さないようにぎゅっと。
※
或美島・海岸――― PM7:26
波が岩を打ち付ける音が響く、或美島の海岸。エレンはスーツ姿に戻っており、海を眺めている。
「アルバテルは何者かに落とされ、作戦も失敗……これではアイクに見せる顔がありません……」
胸ポケットから掌大の両刃の剣を取り出す。
「これがなければ危うかったですね……それにあの男」
思い起こすのは、ブレードトンファーを使う、フードの青年だ。
「あの風貌に人間離れした動き……間違いありませんね、あれは……」
剣を握りしめ
「魔戒騎士……!」
※
赤の管轄・番犬所―――PM 7:28
「今回の活躍、見事だった千牙」
にこやかな笑顔で称賛の言葉を千牙に送るララ。
「まさか哭竜が出てくるなんて思いもしなかったよ、あれはあまり
ララはそれにと付けたし
「哭竜が消滅した直ぐ後に、この島の気の乱れが治まったんだ。恐らく哭竜を呼び出すため、私達に気づかれないように施した細工だろうね。ほんと、一体何処のどいつなんだか……」
うーむと声を上げた後、はっと我に返り
「とりあえず、千牙の指令はこれで終わりだ。白の管轄に帰還してそこでの役目をこなしてくれ」
「解りました、それでは自分はこれで」
一礼し、ララに背を向けて歩みだそうとすると
「そうだ千牙。一つ伝え忘れてたことがあるんだ」
「……なんでしょう」
「この朱の管轄を担当していた騎士……“銀旋騎士・
※
或美島・旅館前―――― AM6:30
「もう帰ってしまうんだね」
早朝、番犬所へ報告を終えた千牙は令音に先に帰えると伝えに来ていた。
「俺は遊びに来てるわけでは無いのでな、早く帰還してやることがある。士道達にまたなと伝えておいてくれ」
「わかった……といいたいのだが」
「?」
令音が振り向くとバタバタ走ってくる二人の少女。
「待った待ったー!」
「限限、間に合いました」
「耶倶矢、それに夕弦……」
息を切らしながら来た八舞姉妹。耶倶矢は千牙に指をさし
「何勝手に帰ろうとしてるの!千牙!」
「何故と言われてもな、この島での俺の仕事は終わった。ならば帰るしかないだろう」
「そうだろうけど……けど……その……」
彼から視線を反らし、はっきりしない耶倶矢。そんな彼女に夕弦は後ろから肩に手を置き
「要約、私達も一緒に連れていってください」
「ちょ、夕弦!?」
彼女の言いたいことを夕弦に言われ、慌ててそちらを向く。
「何だ、そんなことか……まあ、別に構わんがな」
「ほんと!?」
「ああ、だが天宮市に着いた後はどうするんだ?」
「君の家に彼女達を住まわせたら良いだろう、君の家なら任せられるし安全だからね」
令音からの提案に千牙は複雑な表情に変わる。
「俺の家か……いや、良いんだが、部屋は空いてるしな……他にも一人住んでるが、構わないか?」
「私は構わないよ」
「同意、同じくです」
彼は数秒悩んだあと
「まあ、家では暴れないでくれよ」
「暴れないわよ!」
ふっと千牙は鼻で笑い
「それでは令音、この二人は連れていくぞ。後であの怖い司令官殿にも精霊二人匿ったと伝えてくれ」
「ふふ、わかった。夕弦達を頼んだよ、チー」
「ああ、夕弦、耶倶矢行くぞ」
「うん!」
「応答、はい!」
令音に一瞥し、夕弦と耶倶矢の二人を引き連れる。
そうして或美島における彼の激闘は幕を下ろした。残る謎を残しながら……
※
冴島邸―――AM 10:21
「ただいま」
冴島邸へ無事到着した千牙達は、玄関を潜り
「千牙様、お帰りなさいませ」
「お帰りなさい千牙さん」
『千牙くんおかえりー!』
ゴンザ、四紙乃、よしのんが出迎える。
「或美島での指令御苦労様です……ところでそこの御二方は……」
『千牙くんまーた女の子引っ掻けてきたのー?』
「人聞きの悪いことを言うな……こいつらは八舞夕弦と八舞耶倶矢、まあなんだ精霊、といえばわかるだろう」
「せ、精霊……」
「成る程、では本日から此処に住まわれるということですね」
「そうなる」
夕弦、耶倶矢は前に出て
「今日からお世話になるわね」
「挨拶、お世話になります」
「ええ、ええ、勿論ですとも。おっと自己紹介が遅れました、私は執事の倉橋ゴンザと申します」
「四紙乃……です」
『よしのんだよーよろしくー!』
挨拶が済むとゴンザが千牙の側に寄り
「また家が賑やかになりますな、千牙様」
「ああ、そうなるな……」
彼は微笑み、ゴンザにそう答えた。
人間ってのは寝てるときに夢をみるそうだな。
良い夢、悪い夢、どれも鮮明に覚えてるもんだ。
俺様か?ふふふ、どんな夢を見てると思う?
次回、『悪夢』
夢の世界へご招待…。