デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第二話 接触

白の管轄・番犬所―― AM11:50

 

 

千牙が冴島邸へと帰還した翌日、彼は番犬所と呼ばれる場所へも赴いていた。中は暗く奥だけ光に照らされており、そこにはスーツを着、顔を黒い布で隠している男が立ち、後ろには若い女性が白と青の椅子に座っている。千牙は一定の距離を置き、女性の前に立ち浅く頭を下げる。

 

 

 

「お待ちしていました、冴島千牙。先日のコカグローグの討伐、ご苦労様です」

 

「はい……」

 

「……さて、貴方が何故この白の管轄に所属することになったか、理由は御存じですね」

 

「本当に……彼は死んだのですか?」

 

 

彼の真っ直ぐな瞳に番犬所の神官、メディルは表情を変えずに頷く。

 

 

「この白の管轄に所属していた魔戒騎士……双刄《ソウジン》騎士・迅儀《ジンギ》は何者かによって殺されました……」

 

「遺体は」

 

「見つかっていません、代わりに彼の身に付けていた物が血に染まった状態で見つかりました」

 

「ならばまだ!」

 

 

メディルは首を横に振り

 

 

「生きているのならば、如何なる手段を用いても報告に来るでしょう……」

 

「ッ……」

 

「冴島千牙、今は彼のことを忘れ自分のすべきことを全うするのです」

 

「……はい」

 

 

千牙は奥歯をギリッと噛みしめ一礼したあとメディルに背を向け、出口へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

天宮市・市内―― AM12:00

 

 

「千牙、まだ納得いかないのか?」

 

 

ザルバは番犬所に出てから自棄に不機嫌な千牙に声を掛ける。

 

 

「あまり外で話し掛けるな」

 

「誰も居ないだろ、そうピリピリするな」

 

「……すまない」

 

 

歩きながら謝罪の言葉を。

 

 

「んで、どうなんだ」

 

「納得いかない、あの人は簡単に殺られるような騎士じゃない。だがメディル様の言う通り、連絡も無いと言うことは……」

 

「可能性は無きにしもあらずって所だな、まあ俺達は何時もと変わらず使命を全うしようぜ」

 

「……ふっ、そうだな」

 

 

その時、町中にけたたましいサイレンの音が鳴り響く。

 

 

「これは……空間震警報か」

 

「さてどうする、大人しく避難するか?」

 

「……ザルバ、どこで空間震が起こるか解るか?」

 

「ん?まあ何となくだが解るぜ、何故だ?」

 

 

千牙は少しだけ口角を上げる。

 

 

「お前は空間震が起きた時、妙な気配を感じたことはないか?」

 

「気配?」

 

「ああ、前に空間震の発生した近くに場所に居たとき、俺は何か大きな力の出現を感じた事がある」

 

「……成る程、お前はそれを確かめたい訳だな」

 

 

千牙が頷くとザルバは大きなため息を漏らす。

 

 

「解った、付き合うぜ。だが規模までは解らない、巻き込まれるのだけは御免だぜ?」

 

「ああ」

 

 

決まりだ、千牙はザルバの導かれるままに目的の場所へ駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

 

天宮市・市内―― AM12:02

 

 

ゴオオオオオォォォォォ―――!!!!

 

 

轟音と共に衝撃波が千牙を襲う。彼は腕で眼を隠し衝撃に耐える。

 

 

「チッ」

 

「凄まじいな」

 

 

普通の人間ならば吹き飛ばされるだろうが、千牙とザルバは余裕の色が見えその場に立つ。衝撃波が収まりゆっくりとそちらに視線を変える。辺りは瓦礫やガラスの破片、倒れた看板等で滅茶苦茶だ。

 

 

「やはり……ザルバ、何かがこの先に居る」

 

「何?……確かに、気配を感じるぞ。人間とは違う……待て、側に人間も居る」

 

「……行くぞ」

 

 

瓦礫の中を走り抜け空間震が起きた中心部付近へと、千牙とザルバは辿り着く。其処に居るのは背部に飛行ユニットのような物を装備し、独特な衣服を身にまとっている銀髪の、片やドレスのような服に両刃の剣を手にした黒髪の少女二人。やや遠目に少年が一人だ。何故空間震が起きた場所に彼女達は居るのか、そして何故……

 

 

「戦っているのか?」

 

「のようだな、あのお嬢ちゃん達はともかく彼処の小僧、どう見ても一般人だ」

 

 

少女達の戦闘に巻き込まれないよう迂回し、千牙は少年の近くに。

 

 

「大丈夫か」

 

「え?」

 

 

呆気に取られた表情をする少年だが、千牙の顔を見て

 

 

「貴方はあの時の!」

 

「無駄口はいい、早くここから離れるぞ」

 

 

へたり込んでいる少年の襟元を掴み無理やり立ち上がらせる。視線を横に移すと、黒髪の少女が飛来してくるミサイルに似た物を叩き落としているのが解る。どう考えても普通ではない状況、自分ならともかくこの少年を安全な場所へ、そう考えていた千牙だが此方に銀髪の少女が飛び退いてきた。

 

 

「鳶一……折紙!?」

 

「五河士道……」

 

 

どうやら二人は顔見知りのようだ。折紙という名の少女は千牙の方を向き

 

 

「貴方は……?ッ!!」

 

「くっ!」

 

 

黒髪の少女が剣を振るうと衝撃波を飛ばす。折紙は光の剣を抜きながら少女に向け飛び、千牙はコートの中より赤鞘の剣、魔戒剣をとりだし抜刀する。

 

 

「はっ!!」

 

 

魔戒剣から繰り出された鋭い斬撃で迫り来る衝撃波を消し飛ばした。

 

 

「凄い……」

 

 

彼は剣を鞘へと納めコートに仕舞う。

 

 

「……あ、ありがとうございます」

 

「礼などいい、今の内に―――」

 

 

その時折紙と少女の剣がふつかりあった瞬間、眼を覆いたくなるほどの閃光が千牙と少年を包んだ……

 

 

 

 

 

 

???―― AM12:46

 

 

あれ……何処だろうここ……真っ暗で何も見えない。

 

 

「……」

 

 

声も出せない……俺は何で……?何か聞こえる……

 

 

『きさ……が……る!』

 

 

光?狼?誰だ、あんたは……

 

 

『わが……が……!』

 

 

 

「ん……」

 

 

士道は重たい瞼を上げ、意識を戻す。

 

 

「眼が覚めたようだね」

 

 

 

彼に声を掛けたのは目の下に濃い隈がある女性だ。士道は身体を起こし

 

 

「だ、誰ですか?」

 

「私は村雨令音、この船フラクシナスで解析官をやっている。気絶していた君を保護させてもらった」

 

「はぁ……」

 

 

聞き慣れない単語に士道は疑問を浮かべるが、それよりも先にあることが真っ先に頭のなかに。

 

 

「琴里……そうだ!琴里!」

 

「彼女なら大丈夫だよ」

 

「へ?それってどういう……」

 

「言葉通りだ……所でだ、君の側に居た彼は……友人かい?」

 

「彼?……あっ!」

 

 

士道は思い出す。先日子供を助け、そして今日自分を助けてくれたあの白コートの青年を。

 

 

「あの人は無事なんですか!?」

 

「落ち着きたまえ、その口振りからすると友人でもないようだね……彼も無事だよ。副司令官が取り調べをしてるところさ」

 

 

 

 

 

 

フラクシナス・応接室―― AM12:46

 

 

「……」

 

 

フラクシナス副司令官、神無月恭平は困り果てていた。机を挟んで向かいに居る青年に、千牙に話を聞こうとしたが全く喋らない。それどころか腕を組み目をつぶったままだ。

 

 

「そろそろ何か話してくれないと、君を開放できないのですが……」

 

「話すことはない、俺はたまたまあの場に居合わせた。ただそれだけだ」

 

「……」

 

 

たまたま居合わせたの一点張り、会話が成立しない。神無月としても、彼が何者なのかを知りたいのだが当の本人は話すつもりは皆無だ。数秒の沈黙のあとようやく千牙から口を開いた。

 

 

「あの少年は無事か?」

 

「少年?ああ、士道君ですか。彼なら無事ですよ」

 

「そうか」

 

 

再び口を閉じた千牙。すると神無月の背後の扉が開き、赤髪の少女が入室する。

 

 

「何か喋った?」

 

「いえ、あの場に居合わせただけだと。それ以外は……」

 

「へぇ~……」

 

 

神無月は席を立ち、その少女に椅子を譲る。くわえていた棒つきキャンディーを一度口から離し

 

 

「さて、あんたの事を少し調べさせてもらったわ」

 

 

その言葉に千牙は僅かに眉を動かす。

 

 

「冴島千牙、若くして冴島財閥のトップに居座る資産家、それ以外の事は殆んど解らなかった……何者なのかしらね」

 

「そういうお前は何者だ、ただの子供には見えない」

 

「質問してるのは此方よ。まあいいわ、私は五河琴里、ラタトスク機関の船フラクシナスの司令官よ」

 

 

知らない言葉に疑問符を浮かべるが、千牙はザルバに念話を試みる。

 

 

『ラタトスク、フラクシナス……知っているか?』

 

『いや、どれも聞いたことない単語ばかりだ……どうする、千牙。このままじゃ帰れないぜ?』

 

『……此方の事を話すわけにはいかない、どうにか誤魔化すしかないだろう』

 

『どうかな、この嬢ちゃん手強そうだぜ』

 

 

念話を終えると千牙は琴里の方に向き直る。

 

 

「それで、あんたは何者かしら」

 

「……ただの一般人だ」

 

「……はぁ、意地でも正体を明かさないつもりね。いいわ、今日はあんたを開放する、こっちも色々と立て込んでるし。住んでいるところも解ったことだし近いうち、あんたの元を訪ねるわ」

 

「勝手にしろ」

 

「それじゃ、こいつを地上に送り返しなさい」

 

「解りました、此方へ」

 

 

神無月の誘導により千牙は椅子から腰を離し応接室を出ることに……

 

 

 

 

 

 

フラクシナス・ブリッジ―― AM12:56

 

 

千牙を地上へと送り、ブリッジへと戻ってきた神無月は司令席に深々と腰を下ろしている琴里に。

 

 

「よかったんですか、彼を帰して」

 

「仕方ないでしょ、こっちはプリンセスの事と士道の事に専念しなきゃならないんだから」

 

「ですが事情を話せば協力してくれるかも……」

 

「無駄よ、あの手の頭かたい奴には何言っても、ね。けど気になるわ……」

 

 

琴里は椅子に設けられたコンソールを操作しモニターに映像を流す。其処に映っているのは、プリンセスと呼称される少女が放つ衝撃波を切り裂いた千牙の姿だ。

 

 

「この時あいつからは何の反応も出なかった、つまり自分の実力だけでプリンセスの攻撃を打ち払ったのよ」

 

「とても人間技ではありませんね……」

 

「何はともあれ、この男の事も頭に入れておかないといけないって訳ね……ほんと、厄介」

 

 

 

 

 

 

天宮市郊外―― PM6:20

 

 

フラクシナスから開放された千牙は町中を見回っていた。魔戒騎士の任務の一つ、ホラーが出現するゲートとなりえる人々の邪念、陰我と呼ばれる物が溜まったオブジェクトの浄化だ。これをこなせばホラーは基本現れることはない。

 

ふと千牙は先程の剣を持っていた少女を思い出す。空間震が起きた時に感じた気配、それは間違いなく彼女のものであろう。人間とは違う圧倒的な力、果たして彼女は人間の敵か味方か……今はまだ解らない。そしてラタトスク機関という組織だ。恐らくあの少女について何か知っているのだろう、だがそう簡単に教えてくれるとも限らない。

 

千牙は様々な事を考えつつ路地に入り、乱雑に捨てられた鳩時計を発見する。

 

 

「良い感じに溜まってるぜ」

 

「ならば……」

 

 

魔戒剣をコートより取りだしそのまま鞘を抜く。切っ先を鳩時計に向けると中から黒い靄が現れる。

 

 

「はっ!」

 

 

靄は一瞬で斬られ四散していく。

 

 

「よし、次だ……と言いたい所だが」

 

 

背後に気配を察知し静かにそちらに向く。其処にいるのは黒髪をツインテールにし、赤と黒の配色のドレスを着た少女だ。

 

 

「……ザルバ、この娘はホラーか?」

 

「違うぞ、だがこの感じどこかで……」

 

 

先ずホラーではないことを確認した千牙だが、少女から発する異質な気配に身構える。少女はにこりと笑み、両手でスカートの裾をつまみ、軽く持ち上げる。

 

 

「こんばんは……私、時崎狂三と申します」

 

「……何の用だ」

 

「あら、冷たい方ですのね。女性が名前を告げたら返すのが礼儀でしてよ」

 

「……」

 

 

自分のペースに引き込もうとする、このタイプの娘は千牙にとって苦手な部類に位置する。仕方なく千牙は

 

 

「冴島千牙だ……」

 

「千牙さん、よい名前ですわね……クスッ、そう身構えなくてもよろしいのに……今日は挨拶に来ただけですの」

 

「挨拶だと?」

 

 

ええと相槌

 

 

「近々……貴方を食べに来ますわ」

 

「ッ!?」

 

 

狂三の手には短銃があり、千牙に向けて引き金を引いた。弾丸は彼に届くことなく魔戒剣によって切り捨てられる。気づくと狂三の姿はない。

 

 

「また御会いしましょう、愛しい騎士様……」

 

 

声のみが千牙の耳に届く。気配が消えたことで魔戒剣を納刀、コートへと仕舞う。ザルバを自分の方へと向け

 

 

「何なんだ、あの娘は」

 

「さあな、喰うとは言ってたがホラーの気配は微塵も感じなかったぜ。ただわかることは、あの嬢ちゃんはこちらが魔戒騎士だと知っている、そして近々お前さんを殺しに来るってことだけだ」

 

「……全く次から次へと。気にはなるが今は捨て置くか……行くぞ此処で立ち止まっている暇はない」

 

 

コートの裾を払い次のオブジェクトを探しに千牙は歩き始めた。

 

 




運命は動き始めた、それに抗うか身を任せるかはお前さん次第だ。
次回、『令音』
思わぬお客さんだなぁ、相棒。
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