デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO- 作:深淵騎士
冴島邸・玄関―――AM 5:03
「行ってくる。四糸乃達の事は頼んだ」
「はい、お気をつけてくださいませ」
深々と礼をするゴンザ。千牙はこくりと頷き、玄関の扉を開け外にくり出す。
「……何だ、狂三」
彼は突然立ち止まると、その名を呼び振り向く。
「こんな朝早くから何処へ行かれるのですか?」
そこに居るのは時崎狂三、千牙にそう問いかけると
「少し遠出だ、直ぐに帰ってくる」
「そうですか……御安心を、着いていくなんて言いませんわ。ただ……」
一歩、千牙に近づき
「私だけではありません、四糸乃さん達も貴方の帰りを待っていますわ。だから必ず帰ってきてくださいまし」
「わかった……そうだ狂三、一つ頼みたいことがあるのだが」
「何でしょう?」
「実はだな……」
※
天宮市・竜胆女学院――― AM 8:02
天宮市に存在する竜胆女学院、その屋上にてこの学院の生徒であり今人気のアイドル、誘宵美九が屋上から景色を見て溜め息を吐く。
「はぁ……何時になったらまたあえるんでしょうか」
美九は儚げな表情になる。彼女が脳裏に浮かばせているのは四月の始めごろ、迫り来る異形から救ってくれた存在。
「金色の騎士様……」
※
某所森林地帯――― AM 9:39
「千牙、日頃の行いが悪いからこんな目に合うんじゃないか?」
「バカな事を言うな」
皮肉げにザルバから愚痴られる千牙。今、何故に彼等が森を歩いているのかというと魔界道が、何時ぞやのように不安定になり使用出来ずこうして徒歩で向かうしかないからだ。
彼等が向かっているのは魔戒法師の里と呼ばれる“閑岱”という地だ。先日、閑岱より召集が掛かり急遽向かうことになった。
天宮市から閑岱までは決して近くはない。しかし車では絶対に来れず、特定の道を知るものしか、かの地へと辿り着くことは出来ない。
「こうして閑岱へ行くのは何年ぶりだろうか」
「さあな、俺様は覚えていないな」
だろうな、と呟く千牙。
歩いてどれだけ経ったのであろうか。彼は息を乱さず森の中をただひたすら歩く。そんな彼が今考えるのは耶具矢と夕弦の事だ。
今日は天央祭当日、絶対来て欲しい、約束だ、そう彼女達と言った筈だか現に天央祭開場ではなく此処にいる。恐らく怒っているに違いないと千牙は考える。
「……埋め合わせをしなくてはな」
「なんの事だ?」
「いや、何でもない……」
再び千牙は口を閉ざし、歩き続ける。
※
天央祭開場―――AM 10:00
『これより第二十五回、天宮市高等学校総合文化祭、天央祭を開催します!』
始まりの放送と共に沸き起こる声、天央祭がたった今開催され生徒一同は既に盛り上がりを見せ始めていた。そんなとある一角、“メイドカフェ”と大きく掛かれた場所では。
「そっか、千牙さん来れないんだ……」
髪の長く、可愛らしいメイド服を着た少女……いや、少年、五河士道が残念そうな顔で耶具矢と夕弦に言う。
「そうだ!我等に言付けも無しにだぞ!」
「不服、絶対に来ると約束したのに……」
明らかに不機嫌な耶具矢と夕弦。士道は苦笑いをしながら
「千牙さんも何かあったんだよ、そうでもなきゃ二人の約束を破るはずないだろ?」
「そ、そうだが……」
納得はしているがどうにも府が落ちない耶具矢である。
「……千牙さん、か」
千牙の名を呟き、ふと士道は数日前の事を思い起こす……それはとある少女と接触した時の事だ。
空間震警報が鳴り、フラクシナスにより現場へと向かった士道。そこに居たのはステージで紫銀の髪を揺らし、可憐に歌う『ディーヴァ』と呼ばれる精霊。半年前に出現を確認してから音沙汰がなかったと琴里は言う。
いざ士道が声を掛けてみるが好感度のパラメーター等が激減し、何とか話だけでもと思ったが彼女が大きな声を出すと士道の体は吹き飛び、辛うじて側にあったコードを掴み落下はま逃れた。
「可笑しいですね、何で落ちてないんですか、何で死んでないんですか?」
「へっ?」
彼女の口から次々放たれるのは士道に対する罵倒、先程綺麗な歌声で居たのは何だったのだろうかと士道は考える。
「なーにこっちを見てるんですか、見ないでください汚れます」
「ひ、ひど……」
「声も出さないでくれませんか……といいたい所ですが、一つだけ、ひとーつだけ貴方に訪ねたいことがあります」
「なん……だよ……」
腕もそろそろ限界に近づいてきた士道は、彼女の質問に驚きの色を見せる。
「金色の狼の鎧を着た騎士様について何か知りませんか?」
「なっ!?」
耳を疑う。金色、狼、騎士……それに確答するのは士道の記憶の中でも一人しか居ない。
もし教えたら助けてもらえるかもしれない、そう彼は僅かに思ったが魔戒騎士の事を、千牙の事を他人に教える事は出来ない、これはゴンザにも釘を刺された事だ。他言をするつもりはない。
「悪い……な、知らない……ッ」
「そうですかぁ……じゃあ……」
すうっと息を吸い、もう一度士道を吹き飛ばそうとするが、天井が崩れASTが乱入してきたところで士道はフラクシナスに転送されたのだ。
「……」
士道は考える、千牙とディーヴァにはどのような関係があるのだろうか。千牙は基本人目のつかないところであの鎧を召還している。ディーヴァは一度、牙狼の姿をみたことがあるのだろう。
だが幾ら考えても結論にたどり着くはずはない。今は何よりも自分の事に集中しなければならないだろう。
「俺も……千牙さんみたいに頑張らなきゃな」
※
閑岱―――AM 12:18
「……懐かしいな」
閑岱へと到着した千牙は視界に映る木造の建物、頬に触れる風、思い起こす昔の日々に懐かしく感じていた。
「千牙」
「!」
呼ばれた方を向くと、白と赤の魔法衣を着た青年が。青年は近づくと突如、棍をコートから抜き、千牙の首もとに棍の先を突きつけた。
「……鈍ってないようだな」
「ああ、お互いにな。相変わらず見事な突きだ」
千牙は既に魔戒剣を取り出し、鞘を少しだけ抜き棍を刀身で防いでいた。二人はそれぞれの得物をコートに納め固く握手を交わす。
「久しぶりだ、翔」
「こっちこそ、千牙。会いたかったよ」
笑う千牙と翔。
彼は『山刀 翔』。修行時代の千牙の数少ない友人だ。手をほどくと翔は少し表情を曇らせて
「すまない、話したいことは沢山あるが今はそれどころじゃないんだ。尊士が呼んでる、案内するよ」
「ああ」
翔の後を追いかける千牙。
「こうして閑岱を歩いていると昔の事を思い出すよ」
「そうだな……あの時は『クロ』も居たな」
「ああ……なあ千牙、俺達の三つの誓い、忘れてないよな」
「当たり前だ」
千牙は右の袖を捲り腕を晒す。彼の腕には大きな一筋の傷がついている。
「それを聞いて安心した」
そう言い、翔も右腕を晒すと千牙と同じように傷が。
「俺達は魔戒騎士になれた、あの時の誓いを胸に……」
「……」
そうこうしているうちに目的の建物にたどり着く。
「俺はここで待ってる」
「ああ」
扉を開け玄関を潜ると
「待っていたぞ、冴島千牙」
「お久しぶりです、尊士……いえ、“師匠”」
※
DEM社ビル屋上――― AM 12:59
「ふふ……さて、邪魔者は今は居ない。準備を始めるとしようか」
風が吹く屋上に黒いコートをはためかせる男が一人。男が振り向き、コートから身の丈はある鎌を取り出し
「ふっ!」
床を一閃、そこは黒く染まり裂け目が出来る。
「さあ、間に合うか?黄金騎士……!」
裂け目から見える空洞からは、何体もの素体ホラーが蠢いていた……
今宵邪悪な陰謀の中始まった宴、拐われしは剣の姫。
打つ手なしと思った矢先、黒き少女が現れる。
次回、『共闘』
騎士は未だ来ず……