デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第三話 令音

天宮市・市内――― PM11:11

 

 

空間震によって家屋などが壊れた地点。とある建物の中、そこで男性がすすり泣きながら膝を地面につけていた。

 

 

「ちくしょう……ちくしょう……」

 

 

目線の先にあるのはボロボロになり原型を留めていないペンダントだ。彼の大切なものであろう。

 

 

「空間震さえ起こらなければ……こんな……うわあああああ!!!!」

 

 

その時

 

 

『サアチリサ?』

 

 

突然聞こえる声に驚き周囲を見渡すが誰もいない、空耳かと思ったが

 

 

『ロナレバチマアリ、ソオゼユチョルヨビシロソチケリムゼユショルヨ』

 

「空間震を起こしている元凶?何なんだそれは!!そんなのがいたとしたら絶対に……!」

 

 

何故かその言語を理解した男は、先程までの表情から一変憤怒の顔へと変わる。

 

 

『アマパトオサアチニ、イスチニイサレケワモル』

 

「ひぃっ!」

 

 

歪んだペンダントから黒く異臭を放つ腕が飛び出し、男の頭を掴む。

 

 

「ぎゃあああああああ!!!!」

 

 

腕は露のように散り、そのまま男の体内へと入り込んでいった。男の体はビクリと跳ね上がり

 

 

「……キシィ……!!」

 

 

獣の如く唸り声を上げると瞳が白く濁り、不気味に笑いだした。

 

 

「この憎しみを糧に……ヒヒヒ……」

 

 

 

 

 

 

武道場――― AM9:00

 

 

「……」

 

 

冴島邸の地下に存在する鍛練の間、武道場で千牙は魔戒剣を右手に、鞘を左手に構えていた。少しすると暗闇から鈍く光る何かが千牙目掛ける。

 

 

「はあっ!!」

 

 

それを魔戒剣で薙ぎはらい弾き飛ばす。だが背後から再び襲い来る。これはグラウ竜の牙、魔戒騎士が鍛練に使用する物だ。危険な物で生半可な得物の使い手では大怪我を間逃れない道具となっている。千牙は勢い良く振り返り

 

 

「せぁあっ!!」

 

 

力強く蹴り飛ばす。何度かグラウ竜の牙をいなし続ける様はまるで一種の舞を思わせる。

 

 

「でぇえい!!……はー……」

 

 

最後の一振りの後、呼吸を整えてゆっくりと刀身を鞘に納めていく。すると扉が開きゴンザがやって来る。

 

 

「お疲れ様です、千牙様。お水をお持ちしました」

 

「ありがとうゴンザ」

 

 

ゴンザが持ってきてくれた水の入ったコップを受け取り、一気に喉に流していく。一心地ついた千牙からコップをあずかると

 

 

「千牙様、お疲れのところ申しわけ御座いません、お客様がお見えになっております」

 

「客?……」

 

 

心当たりはある。フラクシナスの司令官、五河琴里と接触してから数日が経っていた。恐らくは彼女の関係者が来たのであろう。

 

 

「解った、呼んでおいてくれ」

 

「かしこまりました」

 

 

ゴンザは礼をし武道場を後にした。

 

 

「……さてどうするか」

 

 

 

 

 

 

冴島邸・客室――― AM10:03

 

 

鍛練服から、何時もコートの下に着る黒い服に着替えた千牙は部屋へ入る。既にゴンザは待機していた。ソファーに座っていたのは若い外見の女性だ。彼女は千牙の姿を見ると立ち上がり

 

 

「まさか家に上がらせてもらえるなんて思ってなかったよ」

 

「態々来たんだ、門前払いをするのは気が引ける」

 

「へえ……優しいんだな」

 

「茶化すな」

 

「まあまあ、どうぞお座りください」

 

 

ゴンザの言葉に女性はソファーに腰を掛け、千牙もその向かいのソファーに座りゴンザは女性の前に紅茶が淹れられたカップ置き、千牙の傍らに立つ。

 

 

「冷めぬ内にどうぞ」

 

「ありがとう」

 

 

彼女は紅茶をゆっくりと飲むと驚いた表情をする。

 

 

「美味しいな、こんな紅茶初めてだ」

 

「はっはっ、恐縮で御座います。自己紹介が遅れました私、執事の倉橋ゴンザともうします」

 

「……おっと、私も申し遅れたね。私はフラクシナスの解析官の令音、村雨令音だよ」

 

「……俺のことはあの娘から聞いているだろう」

 

「ああ、今日来たのは……まあ君の素性を聞きたいのだが……断る、だろう?それよりも私は君に確認を取りたいんだ」

 

「?」

 

 

何時も眠そうな目をしているが、その時はキッと千牙を視線に捉える。

 

 

「君は普通の人間とは明らかに違う、そんな君は私達の敵か?味方か?」

 

 

その問いに千牙は戸惑うことなく答える。

 

 

「俺は人間の味方だ。これまでも、そしてこれからも」

 

「……」

 

 

曇りない真っ直ぐな、そして同時に力強さを感じるその眼、令音はこの言葉にふっと笑む。

 

 

「……そうか。良かった、やはり騎士は皆そう答えるのかな」

 

「当たり前だ……まて」

 

 

彼女の放ったワンフレーズに千牙は

 

 

「あんた今何て言った」

 

「え?良かったって」

 

「違う、騎士と言っていただろう……まさか、あんた……」

 

「ん、ああ……君は魔戒騎士なのだろう?」

 

 

思わぬ言葉に千牙は耳を疑った。何故彼女が此方の事を知っているのか……それは直ぐに彼女の口から答えが出る。

 

 

「そんな怖い顔をしないでくれ。過去に私は、君に良く似た風貌の騎士に命を救われたことがあるんだよ」

 

「……成る程な。此方の事を知っているならばあの小さな司令官様にバラせば良いものを、そうすれば来なくてもすんだろう」

 

「いや、君と直接話してみたかったんだ……君達の事情は知ってるし騎士には恩がある、安心してくれ、皆にはこの事を言っていないし言うつもりはない」

 

 

紅茶を飲み干し令音は千牙に視線を戻す。

 

 

「本当に美味しい紅茶だったよ」

 

「また御越しくだされば何時でも淹れて差し上げますよ」

 

「ふふ……さて、私はこれで失礼するかな。うちの司令官には君は何も喋らなかったと伝えておくよ」

 

「ああ、そうしてくれると助かる。ゴンザ、彼女を玄関まで送ってやってくれ」

 

「かしこまりました」

 

 

ゴンザは扉を開けに行き、令音は腰を椅子から離しゴンザの元へ。すると突然足を止め

 

 

「……この町にはあの化け物は居るのか?」

 

 

化け物、恐らくはホラーの事だろう。千牙は首を横に振る。

 

 

「今はいない、もし現れても俺が倒す」

 

「……心強いね。それじゃあまたな、チー」

 

「……は?」

 

 

ゴンザと共に令音は客室を出ていくが、残された千牙は少し固まった後ザルバを自分に向け

 

 

「……チーって何だ」

 

「お前のことじゃないのか?」

 

「いや、おかしいだろ」

 

「……ああ、そう言うことか」

 

 

何か閃いたように声をあげるザルバ。

 

 

「千牙の千はチとも読むだろう?それを伸ばしてチー何じゃないか?」

 

「名前間違って覚えられてたのか?……知的な女かと思ってたんだがな……」

 

 

すると令音を見送ったゴンザが客室に戻ってきた。

 

 

「千牙様、こちらが届いておりました」

 

 

ゴンザが千牙に差し出したのは赤い手紙の封筒だ。

 

 

「指令か?この間コカグローグを討伐したばかりだが……」

 

 

胸ポケットからライターを取り出し、その手紙を燃やす。手紙は一瞬にして燃え消え文字が宙に浮かび上がる。

 

 

「『負の感情を焔へと代える魔獣、ヘイフレイド現れり。出現より数度の太陽が沈んだ、速やかにその陰我の焔を消し去り、剣をもって殲滅せよ』……か」

 

「お仕事で御座いますね」

 

「ああ、準備したら直ぐに出る」

 

「かしこまりました、お手伝い致します」

 

 

千牙は頷き、ゴンザと共に部屋を出る。

 

 

「しかし番犬所が出現して数日たってから気づくとはな……」

 

「上手く隠れていたんだろう、早く仕留めないとな……」

 

 

 

 

 

 

天宮市・来禅高校近辺――― PM3:30

 

 

千牙は駆け抜けている。数時間前に空間震が起き、そして先程ザルバがその付近でホラーの気配を察知したことが理由だ。空間震が発生した地点にはあの剣の少女がいるのだろう、いまだに気配は残ったまま。ホラーが彼女を見つければ間違いなく襲い掛かる。

 

 

「ザルバ、気配は途絶えていないか?」

 

「ああ、それどころか……上だ!!」

 

「何っ!」

 

 

空より火玉が飛来する。前方へ飛び退きそれを交わし、気配を感じる方へ向く。

 

 

「流石は魔戒騎士か、簡単に避けられるとは思わなかったぞ」

 

 

赤黒いパーカーとジーンズを履いた男が千牙を睨み付けている。

 

 

「貴様……」

 

「千牙、こいつがヘイフレイドだ。気を付けろ、奴の炎を喰らったら一溜まりもないぞ!」

 

「わかった」

 

 

腕を交差し、ゆっくり解きながら右手は広げ前に、左手は握り後ろへと持っていき構えを取る。

 

 

「待て、魔戒騎士……今は相手をしている暇はない」

 

「何だと……」

 

「見えるか」

 

 

ヘイフレイドは空間震によって崩壊した校舎を指差す。

 

 

「空間震、人間を脅かしている驚異的な災害だ……だが、それは何者かによって引き起こされているとしたらどうする?」

 

「何者か……まさか……」

 

 

脳裏に浮かぶ少女の姿。

 

 

「そう、あの校舎の中にはその元凶が居る。俺はな、それを喰らいたいだけなんだよ。人間を喰らうつもりなんて無い」

 

「戯けた事を……例え人間を喰らうつもりが無くとも、貴様はホラーだ。狩ることが俺の使命!」

 

 

千牙は飛びヘイフレイドの顎を蹴り抜こうとしたが、ヘイフレイドはバックステップで回避し千牙はそのまま地面に着く。

 

 

「身軽な奴だ」

 

「ふん……」

 

「ちっ!待て!!」

 

 

ヘイフレイドは校舎に向けて走っていく。奴は校舎の中へと逃げその後を追おうとしたが、上の教室が突然爆ぜる。

 

 

「何だ今のは」

 

「奴のせいじゃないな、あの嬢ちゃんがやったんだろう」

 

「……急ぐぞ」

 

 

校舎へと入り。

 

 

「ザルバ、奴は何処にいった」

 

「上の階だ、嬢ちゃんの方に近づいていっている」

 

「狙いはあの娘か」

 

 

ザルバの言う通り階段を駆け上がっていく。ヘイフレイドが居ると思われる階へたどり着き廊下を走ると火玉が前から迫る。

 

 

「でぇあっ!」

 

 

外へと蹴り飛ばし直撃を間逃れる。ヘイフレイドは少女が居る教室の側に居た。千牙の位置からでも少女の姿を確認できる。

 

 

「魔戒騎士、あの娘だ、あの娘が空間震を引き起こしている元凶だ」

 

「……だからどうした」

 

「あの娘が消えれば空間震が発生せずに済む、人間は安心して暮らせるのだぞ?」

 

 

ヘイフレイドは左手を教室に向ける。すると手には小さな火が起こり徐々に巨大化していく。

 

 

「おい千牙!教室に人間が居るぞ!」

 

「何!?」

 

 

力強く踏み込み、ヘイフレイドの側面へと飛び込んだ。手には既に魔戒剣を抜いている。

 

 

「ふっ!!」

 

「があおっおお!!貴様ぁ!!」

 

 

ヘイフレイドの腕を切り裂くが、もう火の玉は放たれており、千牙の身体に直撃し吹き飛ばされる。

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

教室に転がり込み体制を立て直す。廊下を見るがヘイフレイドは傷を受けたことによってか、姿を消していた。討伐こそ出来なかったが犠牲を出さずに退ける事が出来た……だが千牙にとって最悪な状況が起こる。

 

 

「貴様は誰だ!」

 

 

剣の少女が紛れもない敵意を持って千牙を捉えていた。教室には千牙、剣の少女の他に以前会った銀髪の少女と少年が居る。

 

 

「塵殺公《サンダルフォン》!」

 

 

踵を突き立てると床から玉座のような物が出現する。銀髪の少女が千牙に叫ぶ。

 

 

「逃げて!」

 

 

時既に遅し、剣の少女は手に大剣を持ち横凪ぎに払う。

 

 

「はあああっ!!!!」

 

 

千牙は剣の少女から放たれた紫の斬撃を避けようと、教室の窓を破り飛び降りた。しかし彼は落下せず、一度感じたことのある重力が身体に掛からない状態になっていた。

 

 

「まさかこれは……」

 

 

全てを言い終える前に千牙の視界は一瞬白く染まった。

 




あの嬢ちゃんが元凶ね、信じがたい話だ。
どうする千牙、お前はあの嬢ちゃんを守るのか?
次回、『精霊』
お前の決意、見せてもらうぜ。
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