デート・ア・ライブ-GOLD KIGHT GARO-   作:深淵騎士

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第六話 泣天

天宮市・住宅街―――― AM 9:24

 

 

魔獣ヘイフレイドを無事討伐し指令を完遂させた翌日、千牙はいつも通りエレメントの浄化に出ていた。

 

 

「いい天気だぜ」

 

「ああ、ゴンザも今日は降らないと言っていたからな」

 

 

他愛のない会話、だがこの指令も無くこうしてエレメントの浄化をしてる瞬間、彼等にとって細やかな平和なのだろう。と思うのもつかの間、空には雨雲が現れ始める。

 

 

「……如何にも降りそうな雲だ。ゴンザの奴の宛も外れたな」

 

「妙だな……」

 

 

奇妙に思った千牙だが案の定ポツポツと雫がコートに付く。

 

 

「これは強くなりそうだぜ。ん?」

 

 

神社を通り掛かり鳥居の向こうにふと視線を変えると、フードにウサギの耳が付いた可愛らしい衣服を着た少女がふらふらと歩いている。そしてその少女はぱたりと倒れた。千牙は直ぐに少女の側に寄る。

 

 

「大丈夫か」

 

 

返事はない。

 

 

「……一度家に戻るぞ」

 

「この嬢ちゃん連れてくのか?」

 

「放ってはおけないだろう」

 

「……お前さんらしい」

 

 

半ば呆れながらザルバ。小さな身体を抱き抱え千牙は鳥居を潜る。先程まで降っていた雨はいつの間にか止んでいた事に千牙が気づいたのは後の事であった。

 

 

 

 

 

 

冴島邸・寝室前――― AM10:05

 

 

「寒くないようにはしましたが、まさか千牙様が女の子を連れてくるとは……」

 

 

意外そうに千牙に言うゴンザ。千牙があの少女を抱えている所を見たゴンザは心底驚いたそうだ。

 

 

「拐った訳ではないぞ」

 

「ええ!勿論存じております!千牙様あろう方が誘拐なんて事はしないと信じておりますから!」

 

「ならいいんだが……少し様子を見てみる、何かあったら呼ぶよ」

 

「かしこまりました」

 

 

寝室へと入る千牙、ベッドには静かな寝息をたてる少女が。彼はベッドの近くにある椅子へと腰を掛け腕を組む。

 

 

「どうした千牙、そんな難しい顔をして」

 

「……いや、何でもない」

 

 

千牙は熱はないか何気無く少女の額に触れようとするが、丁度少女の瞼がゆっくりと上がる。

 

 

「目が覚めたか」

 

「!?」

 

 

彼の顔を見るや否や怯えたような表情で距離を置く。

 

 

「おい、どうし―――」

 

「こ、来ないでください……」

 

 

予想しない言葉に千牙はピタッと止まる。何が悪かったんだろうか、別にやましい気持ちで居た訳でも無いし怖がられるような事はしていない、彼の何かが一瞬傷ついたような気がした。はっと彼は我に帰り

 

 

「大丈夫だ、別にとって食う訳でもない、安心しろ」

 

「本当……ですか?痛い事しません……か?」

 

 

この娘は一体どれ程の苦痛を受けたのだろう、ここまで怯え他人を拒絶するのは普通ではない。尚更千牙は彼女の事を放って置けなくなってしまった。彼は微笑み彼女の問いに答える。

 

 

「ああ……そうだ、名前を言ってなかったな。俺は冴島千牙、お前は」

 

「よ、四糸乃です……」

 

「四糸乃か、良い名だ」

 

 

その言葉に彼女の表情が少し和らぐ。すると何かに気づいたのか辺りを見渡し始めた。

 

 

「あの……よしのんは……何処ですか?」

 

「よしのん?」

 

「私の……大切な……う、うぅ……」

 

 

青い瞳からポロポロと涙がこぼれ始めた、だが

 

 

「あっ……」

 

「泣くな」

 

 

彼女の頭を優しく撫でると四糸乃は顔をあげ、千牙と視線が交わる。

 

 

「そのよしのんというの、お前にとって本当に大切なものなんだな」

 

「はい……」

 

「わかった、ならば俺が探してくる」

 

「せ、千牙さんが……?」

 

 

千牙は頷き肯定を示す。

 

 

「少し時間は掛かるかもしれない、だが今は俺を信じろ必ず見つけて見せる……言葉では信用できないとは思うが」

 

 

曇りない真っ直ぐな強い瞳に、四糸乃の心に響く物があったのだろう。頭に置かれていた手を小さい両手で包み

 

 

「信じ……ます、千牙さんとても優しい人みたいだから……」

 

 

後半の方はよく聞き取れなかったが、千牙は微笑み

 

 

「ところでだ、お前家は何処なんだ?家まで送るが……」

 

「帰るところは……ないです」

 

「!?」

 

 

言葉を失う、怖い思いをした、ましてや帰るところもない。千牙は何かに突き動かされたように言葉を放つ。

 

 

「ならば宛が出来るまで此処に居ると良い」

 

「……え?」

 

「部屋は空いてるし好きに使え」

 

「いいんですか……?」

 

「ああ、俺はお前を放っては置けん。此処に居れば幾分かは安全だ、怖い思いをすることはないだろう」

 

「……」

 

 

先程よりも幾分穏やかな表情に変わった少女に

 

 

「そうだ、丁度軽く何かを食おうと思ってな。お前も一緒にどうだ?」

 

「は、はい……いただきます……」

 

「よし、少し待っていてくれ」

 

 

千牙はゴンザを呼びに部屋を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

冴島邸・ダイニングルーム――― AM 10:24

 

 

「……美味しかったです」

 

 

温かいスープとサンドイッチを完食した四糸乃は満足げに呟く。

 

 

「ゴンザの手料理は美味い、俺も好きだからな」

 

 

食器を片付ける次いでにゴンザは小さな皿に、綺麗に盛られたプリンを四糸乃の前に出す。

 

 

「食後のデザートで御座います」

 

「……これなんですか?」

 

「プリンで御座いますよ、スプーンを使ってこう食べるのです」

 

 

手にスプーンを持ったようなジェスチャーでゴンザは四糸乃に説明すると、美味しゅう御座いますよと付け足す。四糸乃は言われるまま、一口

 

 

「―――!?」

 

 

驚いた表情の次はぱあっと明るくなり、机を軽く数回叩く。

 

 

「とても美味しい……です」

 

「おお、左様ですか!それはなによりで御座います」

 

 

ふと千牙はゴンザに視線を送り、一度部屋に出るように促す。

 

 

「ゆっくり食べていてくれ」

 

 

そういい残しゴンザと一度部屋を出る。

 

 

「あの娘だが、宛が見つかるまで家で預かることにしたのだが……構わないだろう?」

 

「勿論です。ふふ、この家も少し賑やかになりそうですな」

 

「少しの間だ……な。さて、俺はもう一度町に出るよ、そうだな……今日は早く切り上げることが出来そうだ」

 

「かしこまりました、四糸乃様の事はお任せ下さい」

 

「頼んだ」

 

 

 

 

 

天宮市・神社敷地内―――― PM 4:24

 

 

「……」

 

 

エレメントの浄化をしつつ、四糸乃と出会った神社へと足を運んだ千牙だが、辺りを見渡してもそのよしのんというものは見つからない。コートの内から一枚の紙を取り出す。それには兎のぬいぐるみのような絵が書かれており、千牙はため息を吐く。

 

 

「此処に無いとなると……次は何処を探せばいいのやら」

 

「いきなり行き止まりにぶち当たったって所だな」

 

「……ザルバ、よしのんに残留した彼女の気配を辿ることは出来るか?」

 

「出来ないことはないが……まあやってみるぜ、あまり期待をするなよ」

 

「助かる……む?」

 

 

鳥居の向こうから視線を感じ、視界を変えると

 

 

「お前は……」

 

「えっと……どうも」

 

 

先日知り合った少年、五河士道が居た。彼は千牙へと近づき

 

 

「確か千牙さん……ですよね、此処で何をしているんですか?」

 

「探し物だ」

 

「探し物?」

 

 

士道によしのんの絵を見せる。

 

 

「これに心当たりは無いか?」

 

「んー……すいません、見たことないです」

 

「そうか……」

 

 

コートに紙を仕舞い、千牙思い出したように

 

 

「そういえば、十香だったか。あの娘は今どうしてる?」

 

「……実はうちの学校に転校って形で入りまして……今は普通の女の子として居ますよ」

 

「ほう」

 

 

彼女の力はこの士道によって封印された、ならば人間として活動し社会に馴染んだ方が得策であるだろう。恐らく十香を学校に入れる手引きをしたのは、あの赤ツインテールの少女だろうと千牙は推測する。

 

 

「……さて、俺はそろそろ行く」

 

「なんか引き留めたようで、すいません」

 

「気にするな、そうだお前の妹にもよろしく言っておいてくれ」

 

「はい、琴里の奴も千牙さんに感謝してるって言ってましたよ」

 

 

そうかと、ふっと軽く笑み士道の横を通りすぎようとしたが

 

 

「お前の力は異質だ、それをどう使うかは自由……だが道だけは逸れるな。間違った力の使い方をした者の末路は悲惨だ」

 

「!?」

 

 

ポンと千牙は士道の肩に手を置き

 

 

「まあ何かあれば家に来ると良い、個人的に俺はお前を気に入っている。相談事くらいには乗ろう」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「それではな」

 

 

肩から手を離し鳥居の向こうへと歩いていく。

 

 

「お前があの小僧の事を気に入るとはな」

 

「何だろうな、士道からは邪念が一切感じられない、真っ直ぐな少年だ。ああ言う男は肩を持ちたくなるものだ」

 

「……お前さんも物好きだなぁ」

 

 

 




魔獣に憑依された者は誰であろうが切らねばならない。
例え家族であろうが親しい友人であろうとな。
次回、『使命』
それが魔戒騎士って奴だ。
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