兵役に就いて学んだ教訓。幾つかあるそれらの教訓は、俺の頭の中でたった一言に集約された。
人は、過ちを繰り返す。
アメリカ合衆国正規軍 第八機械化師団 第四大隊第一中隊 特別強襲戦隊。
それが俺の所属してきた部隊。俺の踊った舞台。
アンカレッジでの戦い。共産主義圏の軍からあの場所を奪還する戦いにおいて、俺は名も無き孤児として銃をとっていた。
巻き込まれただけ、偶然か必然か、ミサイルランチャーの至近弾を受けて父母の家族が死に、迫り来る戦火の猛威を生き抜く為に15歳の少年は撃鉄を起こす事となる。
共産主義でも資本主義でも、撃ってきそうな奴はとにかく殺した。現地調達・現地改造の銃剣付きライフルは大いに殺してくれた。4人5人の話では無い。少なく見積もっても10人は殺めた筈だ。
そこで戦うち、傷ついたパワーアーマーを拾った。
中にいた兵士の遺言。
中隊指揮官への連絡と、愛する家族への、最期の言葉だった。
息を引き取った男を埋葬し、男の遺品たるパワーアーマーを纏った俺は戦場の端っこから躍り出た。目指すは前線基地。男の遺言とパワーアーマーを携えてレーザーライフルを撃ちまくった。
今度は共産主義っぽい奴だけ撃った。
「伝令!」
そう言って基地司令室に駆け込んだ時、パワーアーマーはもうボロボロで、男の言葉を伝えるや否やさっさとドッグ入りになった。
そこでとある小隊長に志願兵の形をとって戦地徴兵され、代わりに相応の待遇を約束してもらった。
それからは激戦だった。
修理したパワーアーマーを赤と黒に塗り、コンドルの紋章で胸部を飾ると休む暇もなく駆り出された。
アンカレッジは合衆国の大勝に終わった。
多数導入されたパワーアーマーは絶大な戦果を挙げ、多くの勝利をもたらした。
俺は正規兵になり、パワーアーマー兵の先駆者として准尉に昇格。この時すでに50人以上を手にかけていたと、そう記憶している。
そうしてその後の数年間、合衆国の鉄の死神と呼ばれ続ける事になる。
赤と黒の鉄器兵。
死を振りまく伝説の猟犬、と。
*
「……鉄の……死神…」
呟いた女に鎮静剤を注射すると、女はみるみる瞳孔を緩めて、見開いた目を閉じた。
ハウンド5が女を回収し、降下してくるベルチバードに飛び乗る。
「うわあ!……ととっ、ハウンド2!本ベルチバードは飛び乗り禁止だこの野郎!!」
「すまん」
「すまん、じゃねえ!俺のベルチバードがへこんだらどうしてくれる!?第一戦闘ヘリにパワーアーマーで飛び乗り搭乗する奴があるか!」
戦闘ヘリの操縦を務める男が怒鳴る。長い付き合いだが、未だに名前を覚える気になれ無いのは何故だろうか。
俺がヘルメットを取りミニガンを構えたところで、雪を掻き分けてハウンド5が乗り込んできた。両腕で女を抱え、先に女を乗せてから自分も、という七面倒な事をやっている。
「コイツはそういう人間です。そんな事よりも、こんな寒い中薄着の女性をヘリに乗せるのはどうかと。せめて急ぎましょう」
紳士か。
顔に比例して紳士度も増す、それがイギリス系アメリカンらしい。
「はいよー。離陸するぞ!ハウンド2!敵が来たらちゃーんとソレでミンチにしとけよ?間違っても俺のベルチに傷なんかつけやがたら」
「いいから早く上がれ、パワーアーマー着てても寒みぃよ」
他愛無い会話をしながら、今日も漆黒の鳥が夜空に舞い上がった。
その時だ、ハウンド5の声が背中越しに聞こえてくる。
その様子は緊迫しており、とてもいつものコイツとは思えなかったのを、よく覚えている。
「ニューヨークとペンシルバニアで……核爆発……?!司令!それは一体!司令!!」
嗚呼、何故だろうか。
人よ何故、過ちを、繰り返すのか。