艦これTSモノ   作:五々階道寺希ノ之乃

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文中で設定説明するの面倒なんで後書きに解説載せてます


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「海の平和を取り戻したいとは思ったことはないかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅ……?」

 

 自分の意識がハッキリとしていくのがわかる。

 

「…………あれ……」

 

 ここは、どこだ。

 

 まだ体が重い。起きようとしても、何だか自分の体じゃないみたいで、起き上がれない。

 

「おはよう、お姫様。調子はどうだい?」

 

 真横から声がする。随分最近になって聞いた覚えのある、女性の声。

 視線を巡らせると、その人影が目に入った。

 艶のある黒髪、前髪を綺麗にパッツリ揃えた、小柄な影。自分が寝ているらしいベッドの横に椅子を構えて座っている、らしい。

 

 ……ああ、思い出した。確か、この人と話をしていた。それから……それから? それから、どうしたんだろう。気付いたら、眠っていた。バカな、何で、いきなり。

 

「んー。やはりあちらよりこちらの方が見栄えも良い。良かったな、これで特徴も何もない奴と罵られることもなくなるぞ」

「ここは……」

「おや、自分の事より周りの心配かい? 安心すると言い、ここは病室だ。君が寝てしまったのでね、ベッドのあるここに移動したのさ」

 

 ……ゆっくりと記憶が蘇ってくる。この人に連れられて、会議室で話をしていた。

 

 

 

 

 

“我々がまた海を自由に行く為に、君には協力して欲しい”

 

 

 

 

 

 そんな言葉に乗せられて。話の途中、何をした訳でもないのにそこでブッツリと記憶が途切れていた。

 

「さて、目が覚めて早速なんだがまだ君に教えることはたくさんあるんだ。よろしいかね?」

 

 女性、と言うよりは少女な彼女が薄く笑って言った。彼女の笑みは、何と言うか、人を食ったような笑みだ。決して醜い訳でもないのに、不気味な雰囲気が滲み出てくるように見えてしまう。その鋭い目尻も、釣り上がった口角も、薄い唇から覗く鋭利な犬歯も。赤い瞳が、せせら笑う。

 

「ああ、安心したまえ。君のバイタルに異常はなかったよ。これからもそうであっては欲しいところだ。さて、改めて君の現状を確認するとしよう。話の内容はどこまで覚えているか、言えるかね? 別に全部覚えてなくたって怒りはしないさ。正直に言ってくれて構わないよ」

 

 ……どこまで話してたか。そうだ、契約書だ。これから話すことは他言無用だとか、そう言った、機密にかかわる関係の書類にサインをした。

 

「……サイン、を……」

「ふむ、契約書のサインを書いた所までは覚えてる、とね。ではその続きから話をするとしよう。そう身構えずリラックスして聴いてくれたまえ」

 

 頷くと、彼女は笑みを崩さずに満足そうに1つ頷いて話を続けた。

 

「さて。君にはこれから私の指示の元で色々と動いてもらうことになる。契約書を書く前に言ったとは思うが、君は以後今までとは全く異なる生活環境で生きて行く事となる。1週間後、君の元に迎えが来るので、その行く先が君の第二の人生だ」

 

 楽しみだろう? と彼女は笑う。

 そう聞かれて、素直には頷けなかった。言葉の端々に潜む違和感のようなモノが拭いきれない。

 

「1週間だ。1週間で君は技術をモノにしなければならない。と言っても素体は完璧だから後は君の意志次第。如何に性能を引き出せるかと言い換えてもいい。これから先は忙しくなるぞ」

 

 いやはや愉快愉快、とケタケタ笑う。素体、技術、1週間、第二の人生。まるで、やり直し……。

 

「ところで1つたずねるが、すぐに歩けるかい? ちょっとばかし確認したいこともあるから場所を移したいのだが」

 

 まるで試すような、からかう様な口調と表情。見下ろすようなその視線に少しムッとなって体を起こす。寝起きから少し経ってもう体も普通に動くようにはなったのだ。何も問題はない……。

 

「えっ」

「ん?」

 

 ――――足元が見えない。

 

 何故?

 

 この、目の前の膨らみは何?

 

 ブラウスとカーディガンを押し上げてネクタイを上乗せする、これは……?

 

「……何、だよ……これ……!?」

 

 もにゅ、と掴む。跳ね返ってくる柔らかい弾力。手が触っている感触、ソレを触られている感覚が、ダイレクトに脳を突き抜けた。

 

「……()ぇッ!?」

 

 胸だ。まごうことなき、女性の象徴とも言える胸だ。デカい。

 

「え、何で……!?」

「何でって、そりゃあ君が艦娘になったからさ」

「かん……む、す?」

「そう!! 艦娘だ。あの、深海棲艦と戦うが為に創られた人工生命体、生命の神秘を超越した人ならざるモノ!!」

「は……オレ、が、艦娘……?」

「そうだよ、()()。第二の人生のスタートだ、噛み締めたまえ」

 

 ベッドの置かれた部屋は殺風景で、あとは扉と台が1つ。台の上には鏡が立てかけられ、そこに移っていたのは少女と、自分の姿。

 ショートカットの髪、細く引き締まった体、こちらを覗く黄色の瞳。まごうことなき、女。

 

「そう言えば、君は元男だったな。どうだ、美少女になった感想は…………おや?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、眠っていたらしい。というのは、鏡を見た後、事態に追い付けなくて気絶したんだとか。

 再び起きて、現実を目の当たりにして、立ちくらみに襲われながらも現実を理解した。納得はしてないけど、無理矢理理解して押し通るしかなかった。そうしないと、事態が進まなかったから。

 

「……全然慣れねェ……」

 

 歩いてみても、深呼吸をしても、ジャンプしても、自分の体と全く同じような感覚がして逆に気持ち悪かった。特に胸と股下だ。男の時にはこんなデカいの無かったし、下はミニスカートでずっとスースーする。

 色々と説明をされつつ場所を移動する間はうーうー言いつつスカートと胸を押さえて歩いた。だって落ち着かないし。

 しかも独り言まで全部女声。声帯まで変わってしまったと言うのか。気付いたらこんなになってたなんていくら何でも酷過ぎる。

 これだったらいっそのこと思考回路まで女になってればまだ気が楽だった。中身が男で外見が女とか、ちぐはぐすぎてこっちが混乱する。

 

「さぁ天龍。これから君は基礎的な訓練を受けてもらうぞ」

 

 前を歩いていた少女がある扉を開け放ちながらそう言った。

 

 ()()の名は天龍。天龍型軽巡洋艦の1番艦(ネームシップ)だ。そう目の前の少女に説明された。

 オレは正真正銘の艦娘で。今、海を支配している深海棲艦と戦うための一戦力になった。

 

 ……複雑な気分だ。

 

「入口で何をしてるんだい。そう怖がらずに入って来たまえ」

 

 手招きをする彼女に言われ、その部屋に脚を踏み入れる。

 

 そこは広い、ドームのような場所だった。高い天井に覆われ、奥行も横幅も数百メートル以上はあるんじゃないか。

 そしてその中は殆どが人工プールだった。不規則な波が水面を揺らし、時折縁に高い飛沫が打ち上げられる。

 

「うわぁ……」

「おっ、良い反応をありがとう。ここはね、君のような新人が訓練を行う場所なんだ。俗にいう素人講習会場。今日の参加者は君1人だがね」

 

 曰く、ここで艦娘としての修業を積めとのこと。1週間で基礎を全て覚えなければならんのだとか。すごい無茶ぶりを聞いてる気しかしない。

 

「では早速、と言いたいところだが、残念ながら私も忙しい身でね。君の訓練を全て見てやることはできない。よって私の代わりに講師が着く。彼女らの言い分をよく守って全てを学び自分の物にしてくれ」

 

 おーい、と少女が手を振る。その方向を見ると、1人の女性が水面の上をスケートのように滑って来るのが見えた。

 長身で引き締まったボディ、だけど主張するところはしっかり出ていて、それでいて太さを全く感じさせないバランス。脚だってスラリと長い。大きめの主機を履いたその女性は、優雅でありながら力強く波間を割ってこちらに向かってきていた。

 開いていた距離はあっという間に近付いて、波打ち際に彼女がやって来る。近場で見て、見惚れてしまった。

 目を引く艶やかなロングヘア。膝近くまで伸びたそれは大きなリボンで先を纏められている。サイドヘアは三つ編みが3本ずつ、前髪は全て綺麗に切り揃えられており、その顔立ちはまさしく大和撫子と言ったところか。

 しかし服装がまさかの軍服だ。どこの軍隊だろう。自衛隊? アメリカ? わからない。迷彩柄の上下士官服。ミスマッチなのに妙に似合っているのは元の素材が良いからだろうか。どこか妖艶さも持ち合わせたその雰囲気に思わず固唾を飲んだ。

 

「やぁタケちゃん。紹介しよう、今日から艦娘になった天龍だ」

「なるほど、彼女が……初めまして、天龍さん。話は伺っております。貴方の教官をするよう承っております。短い間ですが、よろしくお願いします」

「……あ、おう、よろしく……です」

 

 手を差し出してくる彼女におっかなびっくりこっちも手を伸ばして握手を交わす。細いのにガッシリとした、矛盾したような印象を受ける手だった。

 

「今日適合した、という割にはとても順調のようですね。よく馴染んでいます」

「まぁね。そんな訳だからそこまで手間にもならない筈だ。1週間以内にみっちり頼むよ」

「承りました」

「という訳で天龍、今後はタケちゃんのメニューに従って訓練をしてくれたまえ。私はしばらく用事があるのでまたここを空けるが……大体の事は彼女に聞けばわかる筈だ。では、頑張れよ。未来の極一部の命運は君に委ねられているのでね」

 

 そう言って彼女はひらひらと手を振ってどこかへ行ってしまった。ドームにはオレと、タケちゃんと呼ばれた、多分艦娘の人だけが残る。

 

「それでは始めて行きましょうか。1つずつ、丁寧に教えますから、しっかり覚えて下さいね。あまり固くならないで結構ですよ。私達はあくまで艦娘、そこに階級はありませんから。精神と肉体の矛盾は酷く混乱するでしょうが、リラックスして慣れて言って下さい。先人たちからのアドバイスです」

 

 タケちゃんと呼ばれた彼女はオレを見下ろすように優しく微笑んだ。取り敢えず、この人ならさっきのあの少女とは違って不意打ち気味にとんでもないことをやらかすことはなさそうだ。

 

 

 

 

 

 




解説

【世界観】
 現代。制海権が深海棲艦に奪われている。対抗戦力には“艦娘”が起用されており日本各地で戦闘が行われている。

【深海棲艦】
 深海から表れた謎の兵器群。通常兵器では大きなダメージが期待できない。
 現在では全世界の制海権を有しており、この影響で海上貿易が全て閉鎖された。
 また深海棲艦の艦載機により制空権も喪失、日本は海外との貿易を完全に断絶された。

【艦娘】
 深海棲艦に対抗しうる生体兵器。少女を素体とし兵器を操ることで深海棲艦の駆逐を目指す。人工艦娘と天然艦娘にカテゴリー分けが可能。

【天龍】
 今日から艦娘。中身は男。どこにでもいるような一般人だったが意識を人工艦娘の体に移植された。

【少女】
 天龍の中に男の意識を移植させた張本人。色々と謎で名前もわからない。取り敢えず権力は持ってる。

【タケちゃん】
 少女曰く、タケちゃん。艦娘だが登録されたデータベースには彼女に該当する艦種は見つかっていない。
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