艦これTSモノ   作:五々階道寺希ノ之乃

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 セーラー服の少女とバッチリ目が合う。酷く驚いているらしく大きく目を見開いてこっちを見てる。

 

「…………あー……軽巡洋艦の天龍だ。提督はいるか?」

「……………………え、あっ!? あ、あぁっ、すっ、スミマセン!!」

「お、おぉ」

 

 慌てて、取り乱してわたわたと頭を下げる。提督はいるかと聞いたんだが……。

 

「す、すぐにご案内しますっ」

 

 若干目を回しながら中にまた引っ込んで行った。大丈夫かコイツ、なんて思いながら後を追う。

 

 平屋の内部もこれまた一昔前を彷彿とさせる内装だった。床や天井、壁までも板張りで隙間風の入ってきそうな窓。歩いていると時折ギシギシ音が鳴るのがより一層古さを彷彿とさせる。前線だと言うのにこんな造りで大丈夫なのか……?

 

 玄関からその部屋まではすぐだった。「こっ、ここですっ」と示された部屋。両開きの扉でここだけは少し真新しさを感じる。新規で拡張でもしたんだろうか。

 まぁ考えても仕方ない。案内してくれた彼女に礼を述べ、ノックをする。中から青年の声が返ってきたのを確認してから扉を開けた。

 

 部屋の中は小奇麗だった。10畳程度の広さの部屋に、扉に向かう形で執務机が1つ。その後ろは海を見渡せる大きな窓が設えられている。両サイドには本棚が設置されているが、極一部が資料や書籍で埋まっている程度。右手側には年季の入ったソファー2つがテーブルを囲み、その内の片方には茶色の、さっきの少女とはまた違うセーラー服を身に着けた子が座っていた。

 

「おや……君は……、」

 

 そして、執務机には1人、2種軍装を着込んだ男が座っていて、執務中だった手を止めてこちらを見上げた。

 日本人らしいさっぱりと短く整えられた黒髪と弱さを感じさせない黒目。長身なのだろう、不意に立ち上がると容易にオレが見上げる形になった。

 

「今日から配属になった、天龍型軽巡洋艦1番艦、天龍だ」

「やっぱりか。吹雪を迎えに出して良かった。俺がここの提督を務めている。よろしく頼むよ、天龍」

 

 そう言って彼は、提督は机を迂回しオレの前に立って手を差し出してきた。オレも「よろしく」と握手を交わす。

 

「随分と、まぁ今にしちゃ古めかしい鎮守府だな」

「元は小さな小学校だったのをそのまま利用してるんだ。新しく施設を建てるまでの仮屋としてね。……っと、立ち話もアレだし座ってくれ」

 

 自己紹介はお菓子でもつまみながらね、との言葉に賛同する。悪い気はしないし、これから一緒の仲間とは今のうちに親睦を深めておくのが吉ってやつだろう。

 

 

 

 上座に提督、オレの対面には2人の少女が並んで座った。さっき案内してくれた子と、最初から座っていた子だ。

 

 改めて容姿を見てみる。

 案内してくれた子は、黒髪黒目。うなじでショートカットの髪をまとめており、顔はまだまだ幼げ。身長も小学校高学年の平均くらいだろうか。オレに比べるとまだまだ小さい。素朴なセーラー服を来ていて、第一印象は素直そうな子ってところか。今も若干緊張して固くなってる。

 その隣、茶色の髪を髪止めで後ろに纏める子は更に幼い。ぱっちりとした丸い瞳で表情はどこか怯えているように見える。身長の低さもあって本当に艦娘かどうかも疑うところだが、まぁ艦娘らしい。セーラー服は襟が紺色でスカーフも色が赤となっていた。と言うことは、この2人は姉妹艦ではないということになる。

 

「じゃあまずはうちの鎮守府の子から紹介しよう。左から吹雪と電だ。2人共、挨拶を」

 

 前者が吹雪、後者が電か。覚えた。

 

「特I型駆逐艦一番艦の吹雪ですっ。よろしくお願いします!!」

「初めまして……い、電です……。特III型駆逐艦の、四番艦、なのです……」

 

 ……第一印象。吹雪はあがり症で、電はかなりの人見知りってところか。初めてで緊張してるのか……いや、電には何となく怯えられてるように見えるんだが気のせいであってほしい。あれか、眼帯か? 眼帯してるからか?

 

「天龍型一番艦、軽巡洋艦の天龍だ。今日からここに着任する。よろしくな、吹雪、電」

 

 2人は相も変わらず緊張した面持ちで「は、はいっ」と返してくる。どうやら親睦を深めていくって言うのは前途多難らしい。

 

「じゃあ今後の予定を確認して行こう」

 

 区切りがついたと見たらしい提督がそう言って苦笑した。彼も彼で状況の理解が早い。提督になるだけの才能がある訳だ。

 

 この鎮守府は前にあの小さいのに聞いた通り、鎮守府らしい機能はまだ殆どが未完成だ。提督が言うには修理施設も簡易的な物しかないとのことで、中破や大破状態のものまで来るとここでは直せないらしい。つまり戦闘出撃が許可されていない。

 主だった任務は隔日での巡回警備となり、吹雪と電がやっているそうだ。本来なら毎日やりたいところだが、まだ着任して日の浅い2人には訓練もやらせなければならないという。訓練、哨戒、訓練、哨戒と休みがないんだとか。

 他にも、鎮守府の機能実装に向けて日々役人が多く訪れて来るらしくどの対応にも追われている。それについては秘書艦が提督について補助を担当するが、知っての通り駆逐艦娘の2人は手が空いてない。よってここにオレが組み込まれることになった。ついでに2人の訓練も見て欲しいとのこと。

 

「てか、いいのか、それで。オレもそこまで練度が高い訳じゃないぞ?」

「それについてはいいさ。俺が訓練を見てやれてなくてな。形だけでも教導艦を頼む」

 

 ようは客観的な報告書が欲しいんだとか。訓練については吹雪、電共に口頭や報告やレポートを課しているが謙遜気味の2人の実力を計るのは紙面だけだと難しいと言う。

 

「っと、こんな時間か。吹雪、電。いつも通り哨戒を頼む」

 

 壁の時計を見て提督が言った。対面に座っていた2人はすぐさま立ち上がり「はいっ」と返事をし執務室を飛び出して行く。

 

「すまないね、騒がしくて」

「いや、軍隊なんだから大体こんなモンだろ。……しかし、哨戒か。今まで会敵したことは?」

「幸い、今のところはゼロだよ。それに例え見付けたとしても交戦しないようにして、近くの鎮守府に救援要請をするようにしてるのさ。まだ2人には、早過ぎる。まぁ万が一でも一応勢力圏内だからそこまで危険はないと思うんだが」

 

 湯呑を傾けて苦笑する提督。まぁ確かに、相手がガチガチの艦隊とかだと駆逐艦2隻じゃ一方的にやられるのがオチだろう。オレが加わったところでたかが軽巡1隻。あまり期待はできない。

 

「哨戒ルートは勢力圏内だけ。それにあまり外側に行かせるようなこともない。上からもその辺りは特に通知がないから、こちらの自由にやらせてもらってるよ」

 

 提督が指を差すのは本棚の一部を借りて掛けられた海図。隣の鎮守府が担当する海域が大きく書かれていて、この鎮守府の担当海域は実に少ない。

 

「もっと艦娘がいれば楽に回せるんだけど、何分ここに好んで来る子は少なくてね……」

 

 オレは強制的にここだったんだが。言わない方がいいのかこれ。

 

「こうも予定を聴いてると、中々休む暇は無さそうだな」

「苦労をかけることになる。なるべく応援を呼ぶように上には打診してるんだけど、如何せん結果は察しの通りだ」

「隣辺りから出向させたらどうなんだよ。そこそこデカいんだろ?」

「そうしたいんだけどねぇ……。俺はどうやら嫌われ者らしい」

「はぁ? まさか、断られたのか」

 

 提督は1つ、頷いた。

 呆れた、人類の危機だってのに人間同士でいざこざ起こすたどういう神経してるんだか。

 

「寧ろ向こうはこちらを潰したいらしくてね。自分のテリトリーに突然やってこられたのが不愉快なんだろう」

「何だァ、勲章目当てか? ケッ、下らねェの」

 

 保身に走るなら周りに迷惑かけない状況でやれっての。そう文句をたれてお茶を飲んでいると、提督がクツクツ笑っていた。

 

「可笑しいか?」

「はは、いや。君は上司に対して物怖じしない性格らしいと、ね。吹雪や電とは正反対だから新鮮だった」

 

 あの2人は嫌でも本音は言えないだろうに。

 

「オレは一般常識に従うだけだ。間違ってるなら間違ってるって言うし、それを守れない奴はどう言い訳したところでオレの中では役立たずと同義だ、従う気はない」

「よくぞ言ってくれた。俺も内心はそう思ってる」

「思ってるなら言えば良いのに」

「問題にして、吹雪や電に嫌な思いはさせたくないんだ。それに今日からは天龍、君にもだ。提督は艦娘を守る義務がある。ペンで戦うには忍耐力がいるのさ」

 

 そりゃ、嫌な仕事だ。そう言うと、提督はまた苦笑した。オレだったら全力で遠慮したい。

 って言うか恥ずかしげもなく恥ずかしい台詞を言うとは……本人は気付いてないみたいだけど。

 

「……因みに聞くけどさ、自分の発言に自信と確信は持ってるか?」

「無論。俺は提督である以上、全ての責務を負う。当たり前だろう?」

 

 ニカッ、と音がつきそうな朗らかな笑み。嗚呼、コイツはこういうやつなんだと、オレは確信した。

 

 

 

 

 

 

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