ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか Two Rabbits   作:朝灯

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1話を読んで下さった方々ありがとうございます!
見るに堪えなかったものだったかもしれませんが、ちゃんと改善はしていきたいとは思っているので改善点を指摘してもらえれば幸いです。



発現

「それで?5階層まで下りた挙句......ミノタウロスに遭遇、そしてベル君がヴァレンシュタイン氏に助けられて今に至ると?」

 

「「...はい、ごめんなさい」」

 

 ベルがシャワーを浴びて帰ってきたら、今度はエイナさんからの説教を2人揃って浴びることになる。

 物腰は柔らかいが、美人が怒るとそれはもう尋常じゃなく怖い。

 エイナさんはハーフエルフ、ヒューマンとエルフのハーフだ。

 

「キミたちはどうして私の言いつけを守らないの!?パーティを組んでも今のキミたちが下層に潜ったところで何も出来ないんだよ!?冒険しちゃダメっていつも口を酸っぱくして言ってるでしょう!?」

 

「「は、はぃぃ!!ごめんなさい!!」」

 

 『冒険者は冒険しちゃいけない』これはエイナさんの口癖で一見矛盾しているように見えるが、常に保険をかけて安全を第一に、という意味らしい。

 俺たちみたいな駆け出しの時期が1番命を落としやすく、肝に銘じておかないといけないみたいだ。

 

「ベル君もシキ君も......ダンジョンに変な夢見てるからこういうことになるんじゃないの?」

 

 ダンジョンに潜る理由は人それぞれだが、俺たちみたいなやつはそうはいないだろう。

 ベルは異性との出会い、俺は両親のようになれるパートナーを見つける為、つまりは目的が一緒なのだ。

 

「...それで?どうしてアイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報が必要なの?まさか君も惚れちゃった口?」

 

「えぇ......はぃ、そう......です」

 

 もう少しで瞳と同じぐらい赤くなるんじゃないか?

 それぐらい今のベルは真っ赤だった。

 髪の毛の白さが余計際立つ。

 

「...え?......まじで?」

 

「う、うん......」

 

 女性が男性に助けられて惚れるというのは聞いたことがあるが、逆パターンは全くもってレアケースなのではないだろうか?

 ベルみたいなタイプは引っ張ってくれるような......年上が好みなんだな。

 

「...教えられることって言っても、公開されている情報ぐらいだよ?」

 

 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。

 【ロキ・ファミリア】所属のLv:5。

 その剣技はまさに最強と謳われても過言ではなく、俺みたいな新米冒険者でもその名前は知っている。

 1人でモンスターの大群を壊滅させ、その凄まじさから2つ名をもじって『戦姫』とも言われているらしい。

 

「...それで......付き合っている人とかは......」

 

「う~ん......そういう話は一切聞かないよ?彼女は有名人だから浮いた話があればすぐに耳にするはずだし......ってこれは仕事の話じゃないでしょ!?これ以上はダメ!!」

 

 まぁ、その情報だけでベルは十分舞い上がってるみたいだから......収穫はあったっぽいな。

 手放しにガッツポーズしているベルを苦笑しながら眺める。

 

「よし、今日はもう換金して帰ろうぜ」

 

「あ、うん!そうだね!」

 

 いつもより切り上げるのが早いが、それなりにモンスターは倒して魔石の回収を行っていた為、雀の涙ほどでも収入があるはずだ。

 換金所に魔石を差し出し、差し出された袋の中を2人で確認する。

 

「合わせて2700ヴァリスか......」

 

「いつもと比べて収入は低いけど......命あってのものだしね、仕方ないよ」

 

 本当に雀の涙ほどの収入を見て、2人でガックリと肩を落とす。

 ベルの言う通りではあるけど、どうにも割り切れない。

 

 そのままギルドの出入り口まで歩き、そこで見送りに来てくれたエイナさんがベルを励ますかのように口を開く。

 

「ファミリアが違う以上お近づきになるのは難しいとは思うけど......いつの世も女性は強い男性に魅力を感じるものだから......その、ベル君が頑張っていれば、ね?」

 

 チラリとベルを見る。

 ブツブツと何かを呟いていたと思えば、いきなりバッと顔を上げる。

 

「はいっ!頑張ります!」

 

 ベルは笑顔でそう言い、勢いよくギルドを飛び出していく。

 

「お、おい!ベル!待てって!!」

 

 雑踏の中を駆けていくベルは急にくるりと振り返る。

 そこでようやく背中に追い付いた。

 

「エイナさん、大好きーっ!!」

 

「......えぅっ!?」

 

「お前節操ないな......」

 

 奇妙な声を上げて真っ赤に染まるエイナさんを見て、また走り出したベルにツッコミを入れつつ俺は隣を並走する。

 この天然ジゴロめ......

 喉元まで言葉が出かかったが、きっと今のベルにはどんな皮肉も聞こえないだろうなぁと隣を走っている満面の笑みのヒューマンの少年を見て、俺はそう思った。

 

♦♦♦

 

 どんなファミリアにもホームというものが存在する。

 文字通り家だ。

 そんな俺の前にあるのは古ぼけて崩れかけたような教会。

 

 必要もないが一応辺りを確認してドアのない建物に入る。 

 中に入ると外見とは違い立派な内装が――

 

 ――というわけもなく、内装もボロボロの教会を見て、俺はどうにもため息を隠し切れない。

 無名ファミリアというのはどうしても資金面での苦労が出てきてしまうものだ。

 とは言ってもこれはもう少し何とかならなかったのだろうか?

 床のタイルが壊れた部分から伸びる雑草を見て、俺は再びため息を吐く。

 

 そんな俺たちが目指すのはかろうじて原型をとどめている祭壇の奥の小部屋だ。

 薄暗い部屋には本の入っていない本棚が並び、1番奥の棚の裏側には地下へと下りる階段が続いている。

 目的地はその階段の下にある部屋だ。

 

 中からは少しだけ光が漏れ、俺はその部屋の扉を間違って壊さないように慎重に開く。

 ギッと少々耳障りな音を立てて、扉が開く。

 部屋の内装はPみたいな形をした部屋にボロボロな机、古ぼけたベッド、そしてソファがありあとはいくつか本棚がある、といった感じだ。

 

「神様ーっ!今帰りましたーっ!ただいまー!!」

 

「ヘスティア様ー帰りましたー」

 

 そんな俺たちの声に反応して、ベッドに寝転がり仰向けに本を読んでいた人物がトテトテと俺たちの前にやってきた。

 容姿は幼女と少女の間を行き来しているような感じの女性。

 銀の鐘が付いた青いリボンで結われたツインテールと外見不相応の大きな胸。

 更にその大きな胸の下を何故か青い紐が通っている独特なファッション。

 

「やぁやぁお帰りー!2人とも今日は早かったんだね!」

 

 この人が俺たちが所属する【ヘスティア・ファミリア】の主神ヘスティア様だ。

 

「あはは......今日はちょっと死にかけちゃって......」

 

 まさか第5階層にLv:2に該当するミノタウロスが出るなんて誰も思わないだろ......

 あいつは確か少なくとも15階層から出現するモンスターのはずだぞ?

 

「おいおい、大丈夫かい?君たちに死なれたらボクはかなりショックだよ。柄にもなく悲しんでしまうかもしれない」

 

 ヘスティア様は俺たちの体をぺたぺたと触り怪我の有無を確かめてくる。

 そもそも死にかけたのはベル1人なんだけどな......

 俺もピンチといえばそうかもしれなかったけど、ベルに比べれば可愛いものだ。

 

「大丈夫です。神様を路頭に迷わせることはしませんから」

 

 ヘスティア様に体を触られて照れているのか、ベルは頬をほんのりと赤く染めて言う。

 こいつ今日はよく赤くなるな......

 

「それはもう手遅れじゃないか?既に俺たちは路頭に迷いかけてるし」

 

「もう、シキ君はいつも一言多いね......大丈夫!なんてったって君たちはこのボクが選んだ眷族なんだぜ?」

 

 大きな胸を更に強調するように胸を張るヘスティア様。

 拾ってくれて感謝はしているけど......その自信は一体どこから湧いて出るものなんだろうか?

 

「...それなら大船に乗った気でいてもらわないとですね。とりあえずこれが今日の稼ぎです」

 

 辛うじて空ではない小袋をヘスティア様に差し出す。

 これは今日の食事も侘しいものになりそうだ。

 

「おぉっ!いつもご苦労様!...悪いねぇ、ボクはあまり資金集めに貢献出来なくて......」

 

「そんなっ!?神様がアルバイトしてくれているから今こうして少ない収入でも暮らしていけてるんですよ!?僕たちもっと頑張りますから!!」

 

 神様がアルバイトしているご時世とはどんな世界なのだろうか?

 神と言っても下界に降りてきている以上は神の力というのは使わないのが暗黙のルールらしい。

 いくら人知を越えた神々であろうと食べなきゃ生きていけない。

 それが世界のルールってわけだ。

 

「君たちみたいないい子が眷族でボクは幸せだよ!!そんな君たちにボクからご褒美だ!!テーブルの上を見てくれよ!!」

 

 ベルの言葉に一転テンションが上がったヘスティア様は誇らしげにテーブルまで歩いていき、被せられていた布を取って、布の下にあった膨らみの正体を晒しだす。

 

「「こ......これは!?」」

 

「どうだい?すごいだろう!?」

 

「どうしたんですか!?この大量のジャガ丸くん!!」

 

 そこにあったのは庶民の味方ジャガ丸くん。

 1個30ヴァリスとお手頃な価格ながら、味は多種多様、もちろん美味しい。

 そんな俺たちのソウルフードだった。

 

「露店の売り上げに貢献したことでたくさん頂戴することが出来たんだ!!夕飯はパーティだ!今夜は君たちを寝かせないぜ?」

 

「ス、スパイシー風味は!?」

 

「もちろんあるよ!!」

 

「一生着いて行きますヘスティア様ぁ!!!」

 

 俺の人生はジャガ丸くんスパイシー風味によって決まった。 

 

♦♦♦

 

「それじゃそろそろ【ステイタス】を更新しておこうか」

 

「はい!」

 

「了解です」

 

 服を脱いでうつ伏せに寝転がる。

 神の恩恵(ファルナ)は比喩ではなく、本当に背中に文字として刻み込まれている。

 ファミリアに所属する者は皆、例外無くだ。

 

「それで?死にかけたって言ってたけど一体どうしたんだい?」

 

 ヘスティア様はまずベルの背中に跨って今日の体験談をベルから直接聞いている。

 アイズ・ヴァレシュタインさんの名前が出てきた瞬間ヘスティア様の眉がピクっと跳ね上がった。

 

「...【ロキ・ファミリア】所属してしまっている以上そのヴァレン何某とかいう女とは婚約出来ないし、諦めたらどうだい?」

 

 容赦のない神の言葉にベルはうぐっ!?と声を上げて、そのままソファに突っ伏して動かなくなる。

 ファミリアが違うもの同士で結婚し、子供を授かってしまうとその子供は一体どちらのファミリアになるのか?というややこしい事態が発生しかねないため、違うファミリアに所属している者同士では結婚は出来ないというわけだ。

 

「ほら、更新終わったよ!次はシキ君だ」

 

「はい、ほらベル。早く退いてくれ」

 

 今日も【ステイタス】の伸びはあまり期待出来そうにないな......

 こればっかりは地道にやるしかないわけだけど......

 

「ベル~、お前の【ステイタス】見せて~」

 

「はい」

 

 寝転がった状態のまま、俺はベルから渡された用紙を見る。

 

 ベル・クラネル

 Lv:1

 力:I77→I82

 耐久:I13

 器用:I93→I96

 敏捷:H148→H172

 魔力:I0

 

 《魔法》【】

 《スキル》【】

 

「敏捷伸びたな~......ミノタウロスに追い回された恩恵か?」

 

「そうみたいだね......」

 

 それで魔法もスキルもまだ未開化。

 ...でもこのスキル欄少し消されたあとがあるような?

 あとでヘスティア様に聞いてみよう。

 

「にしてもこの敏捷高くて耐久低いっていうのはまさにヒットアンドウェイ型のパラメーターだよな」

 

「極力攻撃には当たらないようにしてたからね、痛いし怖いし」

 

 ふと、俺の背中から微かな重みが消える。 

 どうやら俺の更新も終わったらしい。

 早速用紙を受け取り、中身を拝見する。

 

 シキ・アスティリア

 Lv:1

 力:I82→I85

 耐久:H120→H122

 器用:I83→I84

 敏捷:I88→I90

 魔力:I0

 

 《魔法》【】

 《スキル》【】

 

「シキはバランスいいよね......耐久もあるし.......」

 

「日頃の鍛錬の成果、なのか?俺もほとんど攻撃は受けていないはずだけど......」

 

 よくモンスターとのつばぜり合いとかギリギリの勝負してるからこういう感じになるのか?

 まぁ、耐久が高いのは俺にとってはありがたいことだけど。

 その分誰かを守れるし。

 

「でもやっぱり魔法やスキルが欲しいよな~」

 

「そうだよね、早く出ないかな~」

 

 魔法には個体の性質や種族に由来する先天性魔法と神の恩恵(ファルナ)に由来する後天性魔法があるらしく、俺とベルは紛れもなく後者らしい。

 

「知識の経験値(エクセリア)が関係しているらしいというのは聞いたことがあるけど......ベル君もシキ君も本なんて読まないからね」

 

「...偶には読んでみるかな」

 

「じゃあこの神話の本を――」

 

「――おやすみなさい!」

 

 ダメだ!文字がたくさん書いてあると思うだけで......持病の睡魔がっ!

 ヘスティア様の言葉を遮り、俺は床に敷かれたシーツに包まる。

 

「あ、そういえば神様。このスキル欄どうしたんですか?何か消された跡があるんですけど......」

 

「それ、俺も気になってました」

 

「あぁ、ちょっと手元が狂ってね。気にしなくていいよ」

 

 ふ~ん......?

 それならいいか。明日も早いし今日は本当に寝てしまおう。

 

「シキ君?寝る前にシャワーぐらい浴びたらどうなんだい?」

 

「嫌だ!あれはシャワーじゃない!!あれはただの滝だ!!」

 

 この教会にはシャワーなんて豪勢なものはない。

 いや、正確にはあるのだが......水なんて出ない。

 俺の知っているシャワーは暖かい水が出るはずなんだ!

 その為俺たちは近くにある滝にお世話になっているというわけだ。

 それなら明日ギルドで浴びるから!!!

 

「ベル君、シキ君を連れていってあげてくれ!」

 

「分かりました!ほら!シキ、行くよ!!」

 

「離してくれぇぇぇええええええ!!!」

 

 襟首を掴まれた俺に成す術は無く、俺はそのまま引きずられていった。

 

♦♦♦

 

「ベルッ!!後ろ!!」

 

 目の前にいるコボルドを相手にしながら、俺はベルに警告する。

 

「うわっ!!......っと!」

 

 背中から飛びかかってくるモンスターをいなし、ベルは武器のナイフを使い反撃を見舞う。

 そのまま流れるように前蹴りし、俺の方へとコボルドを蹴飛ばしてきた。

 

「俺まだこいつと戦ってるんだけど!?......しっ!!」

 

 逆手に持った短刀を振るい、自分の前にいるコボルドを怯ませてその間に後ろに回って飛んでくるコボルド目がけて蹴り飛ばす。

 

『グエッ!?』

 

『グッ!?』

 

 似たり寄ったりの悲鳴を上げて、2匹のコボルドは空中で激突する。

 そのまま、俺とベルはすれ違う形で入れ替わり、お互いに斬撃で確実に1体ずつ(ほふ)る。

 

「今のはいいコンビネーションだったんじゃないか?」

 

「うんっ!僕もそう思うよ!!」

 

 パンっと手の平を合わせてハイタッチし、魔石回収に取りかかる。

 今日の稼ぎは上々といったところ。

 朝早くからダンジョンに潜った甲斐があるというものだ。

 

「今日はこれぐらいにしとくか?」

 

 そろそろ時間も良い頃のはずだ。

 数時間潜っていた為、胃袋の中身が空になり腹の虫が抗議をし始めた。

 

「そうだね、まだ昼過ぎぐらいだと思うけど......今日はどれくらい潜ってたっけ?」

 

「ん~......大体6時間ってところじゃないか?」

 

 俺たちがダンジョンに潜ったのは恐らく朝の6時頃。

 そして今が昼ぐらいなら大まかに言って6時間というわけだ。

 

「これだけやれば【ステイタス】も期待出来そうだな」

 

「魔石も小さいのばかりだけど数なら結構集まったしね!」

 

 今俺たちがいるのは第2階層。

 地上へはすぐに戻れる位置だ。

 しかし、油断はしないようにして俺たちは地上へと抜け出した。

 

「これなら神様に美味しいものを食べさせてあげられるよ!!」

 

 メインストリートを歩きながら、ベルは喜びの声をあげる。

 

「今日は侘しい食事にならないですみそうだな。昨日のジャガ丸くんは例外もいいところだし......あーでも節約しないといけないのか......」

 

 なんてことを言い合いながら、そのまま歩いていたのだが......ふと、へばりつくような視線を感じた気がして立ち止まる。

 まるで俺の存在自体を見透かそうとするような......そんな気持ち悪い視線。

 隣を歩いていたベルも不思議そうな顔をしてきょろきょろと首を動かしていた。

 

「...ベルも何か感じたのか?」

 

「...ってことはシキも?」

 

 コクリと無言で頷き返す。

 俺が感じたのはほんの僅かな時間だったが、確かに誰かに視られていたような気がしたのだ。

 

「あの......落としましたよ?」

 

「ひゃい!?」

 

 さっきまで気味の悪い視線を感じて敏感になっているのか、俺は背後からかけられた声に少し飛び上がる。

 バクバクする左胸を右手で押さえて、振り返る。

 

「...?」

 

 年齢は俺より少しだけ上だろうか?

 薄鈍色の髪の毛で髪型はお団子とポニーテイルの融合体みたいな感じ。

 服装は白いブラウスに膝下まである若葉色のジャンパースカート。

 その上から長めのサロンエプロン。

 

「あっ!すいません!ちょっとぼうっとしていて!」

 

 どうやら小さな魔石が転がり落ちてしまっていたみたいだ。

 今日の収入が減るところだった......

 

「今帰ってるってことは朝早くからダンジョンに潜っていたんですか?」

 

「はい。実はそうなんです」

 

 俺が当たり障りの無い返事をすると横にいる白髪の少年からグゥっという情けない音が聞こえた。

 それに呼応するように俺の腹部がグゥっと鳴る。

 そして2人揃って真っ赤になる。

 初対面の人に聞かれたっ......

 

「うふふ、お腹空いていらっしゃるんですか?」

 

 俺は羞恥に耐えるようにコクリと頷く。

 ベルに至っては首を何度も小刻みに振っている。

 

「それなら私が働いている酒場で昼食を食べていかれませんか?」

 

 何とも魅力的な提案をされた。

 是非ともそうしたいところだが、まずは換金が先。

 そうしないと鍛えた敏捷のパラメーターを食い逃げに使う羽目になってしまう。

 

「えっと......今からは少し無理そうなので、夕食の時に......」

 

「そうですか!お待ちしてますね!」

 

 そう言ってにこっと華やかな笑顔を浮かべる......えっと......

 

「俺はシキ・アスティリアです」

 

 未だに赤くなっているベルを肘で小突き、自己紹介を促す。

 

「あっ!僕はベル・クラネルです!」

 

「私はシル・フローヴァと言います!」

 

 にこっと華やかな笑顔を浮かべるシルさんと約束を交わして、俺たちはホームへと急いだ。

 

♦♦♦

 

 ベル・クラネル

 Lv:1

 力:I82→H120

 耐久:I13→I42

 器用:I96→H139

 敏捷:H172→G225

 魔力:I0

 

 《魔法》【】

 《スキル》【】

 

「ふぁっ!?」

 

 【ステイタス】を先に更新し終えたベルはヘスティア様から渡された用紙を見るなり、形容しがたい声を上げる。

 

「何だよ?そんな驚くことがあったのか?」

 

 ベルは震える手でうつ伏せの俺の前に用紙を突き出してきた。

 いくら何でもあんな変な叫び声を上げることは......

 

「んがっ!?」

 

 俺の叫び声はベルと同等、それ以上のものだった。

 何だ!?この異常な伸び方!?

 力と器用はIからHまで上がり、敏捷はHからGに上がっている。

 

「か、か、神様!?これ写し間違えてません!?」

 

 ヘスティア様はブスッとした表情をしながら、本当に恨めしそうに口を開く。

 

「...君はボクが数字や文字が見えないように見えるのかい?」

 

「い、いえ!?でもこれは!?」

 

 ベルが騒ぎたくなる気持ちも良く分かる。

 

「...ベル君は多分成長期なんだろうねっ!」

 

 ぷいっとそっぽを向きながらヘスティア様は俺の背中から飛び降りる。

 

「【ステイタス】に成長期なんてあるんですか!?初耳ですけど!?」

 

「知るもんかっ!」

 

 成長期か......なら俺にも来ている可能性が!?

 期待して渡された用紙に目を落とす。

 

 シキ・アスティリア

 Lv:1

 力:I85→I90

 耐久:H122→H125

 器用:I84→I86

 敏捷:I90→I94

 魔力:I0

 

 《魔法》【】

 《スキル》【】

 

 ...うん、相応だな。

 成長期なんて微塵も感じさせないような平均的な上がり方。

 

 というかやっぱり何か腑に落ちない。

 そう思った俺は驚愕したままのベルから離れ、こっそりとヘスティア様に話を聞くことにした。

 でも一応念を入れておいたほうがいいかもしれない。

 

「おい、ベルお前先に行ってこれ換金してもらってくれ」

 

「へ?あ、うん。分かったよ」

 

 どうせ夕食は外で食べるなら先にホームで【ステイタス】を更新してから換金しに行った方がいいと判断した為持ち帰って来ていた魔石袋をベルに渡す。

 

「シキは?」

 

「俺は少し武器を手入れして行くから」

 

 少々無理のある言い訳だったかもしれないが、人を疑うことを知らないベルは素直に先に行った。

 そして、完全に足音が消えたこと確認してヘスティア様に向き直る。

 

「で?あれはどういうことですか?」

 

「...ベル君には絶対秘密だよ?あの子はとても物事を隠せるような子ではないからね」

 

 知ってる。

 あの白髪のヒューマン、ベル・クラネルは超がつくほどのお人好しで、呆れるぐらい素直な男だ。

 

「あれが他の神々に知られれば絶対にベル君は面白がってオモチャにされちゃうだろうからね......シキ君、これはベル君には絶対言わないと約束して欲しい」

 

「はい、神に誓って言いません」

 

 文字通り目の前の俺を拾ってくれた女神様に誓って嘘は吐かないと誓おう。

 

「...これを見てくれ」

 

 そう言ってヘスティア様が渡してきたのは1枚の用紙、ベルの【ステイタス】が表記されたものだった。

 だけど、さっき見たものとは1つ異なる。

 

「このスキルは......」

 

 消し跡のあったスキル欄に文字がある。

 

 《スキル》【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 ・早熟する。

 ・懸想(おもい)が続く限り効果持続。

 ・懸想の丈により効果向上。

 

 ベルの急成長の正体は、遥かなる高みへの憧れによるスキルの出現によるものだった。

 

Continue to next time――

 




いかがだったでしょうか?
前回投稿する前に感想をログインユーザーからしか受け付けないとしてしまっていましたがログインされていない方からも感想が頂けるように設定を直しました。
この小説についてのご指摘が頂ければ大いに助かります。

何分ファンタジーを書くのには慣れていないものですから......

次回もよろしくお願いします。
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