インフィニット・ストラトス~悪魔は乙女と踊る~   作:ラグ0109

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#18 白と青の輪舞

戦場を優美な青と鮮烈な白が行き交う。

片や獲物を狙いすました猟師が如く、片や猪突猛進の若武者が如く。

試合開始から早10分…一夏とセシリアは互いに決定打を与える事ができないまま、膠着状態に陥ってしまっている。

一夏の専用機…白式は、西洋騎士を思わせる甲冑の様なデザインに千冬の専用機が装備していた刀の後継モデル『雪片弐型』を装備している。

一夏には銃器を扱った経験が無い…どころか、白式には雪片弐型以外の装備が()()()()()()()()

フィッティングの際に見せられた仕様書を見る限り、白式には他に装備を積むだけの余裕が無いそうだ。

仕様としては、奇しくも暮桜と同じとなってしまっている。

もっとも、彼方は千冬が銃器を嫌って積んでないだけなんだがな…。

俺はアリーナの管制室で、不機嫌さを隠すことも無く椅子にふんぞり返ってモニターの試合内容を眺めている。

セシリアの専用機、ブルー・ティアーズは『Blue tears Innovation Trial』、通称ビット兵器を搭載した第三世代型ISだ。

ビットは、親機であるブルー・ティアーズからフィン状の攻撃端末を射出、自在に操ることであらゆる角度、方向からの攻撃を可能とするオールレンジ兵器だ。

故に、ブルー・ティアーズの特性は高機動射撃型。

一夏の白式とは非常に相性が悪い。

 

「…まぁ、すぐ気付くだろ」

「オルコットさんの弱点、ですか?」

「あぁ、どうにもポーズを付ける癖があるからなぁ…」

 

テーブルに足を乗せて組み、椅子をシーソーの様にユラユラと揺らしながら真耶の言葉に答える。

試合開始直後の武器呼び出しの時の動き、ビット射出時の動き、ビット制御時の動き…何れも動きが()()()()()()

1つ目と2つ目は単なる恰好付け、3つ目は技術的な問題だろう。

第三世代型ISの持つ第三世代兵装…これは第三世代型から搭載されているマン・マシーン・インターフェース・システムであるイメージ・インターフェース・システムを用いて制御している。

つまり、機体のコントロールと並行して、ビットのコントロールを行う必要があるのだ。

自身の機体コントロール、そして展開しているビットの制御及び攻撃指示…研究及び開発がつい最近だったことを考えると、頭でっかちの小娘には少しばかり荷が重いと言うものだ。

 

「だが、それをカバーするだけの動きはしている…オルコットは間違いなく一線級だ」

「千冬にしちゃ、評価が高いな」

「なに、優秀だと思えるものは優秀だと素直に褒めるさ。無論、劣っているのであれば厳しく指摘するがな」

 

千冬は真耶の隣で珈琲を啜りながら、一夏の一挙手一投足に舌打ちをする。

…初心者に何を期待してるんだかな…ともあれ、一夏は圧倒的不利な状況下で未だ撃破される事なく戦場を忙しなく駆け巡っている。

冷静に自分が今出来る事を探りながら。

対するセシリアは、試合開始当初にあった慢心が少しずつ薄れ始めている。

セシリアは常にビットを一夏の死角に配置して、隙を見つけては攻撃し、或いは牽制を行ってきた。

展開当初、ビットによる攻撃に翻弄されてきた一夏が動じなくなってきたどころか、被弾を抑えはじめた為だ。

…普段が普段だから心配ではあったものの、闘う者の心構え自体は出来上がっていたみたいだ。

一夏がISに慣れるまで…この膠着状態は続く事だろう。

 

「…チッ」

 

安定した試合展開に安堵しつつ、思考に余裕が出来てしまった所為か嫌な事を思い出す。

無意識に舌打ちをすると、千冬は目を伏せ、真耶は困ったように俺と千冬を見る。

何故、こうも苛ついてしまっているのか…話は30分ほど前まで遡る事になる。

 

 

 

――

――――

――――――

 

 

 

「お待たせしました。織斑 一夏さんの専用機をお持ちしました」

 

ピットへと入ってきた男は、黒のスーツを着こなした如何にもインテリと言ったような風貌の男だった。

口許は何処か小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、見下しているような雰囲気も見受けられる。

ハッキリ言って、クズの匂いがプンプンしやがる。

 

「お待たせしましたじゃねぇよ…あんたらは約束も護れねぇのか?」

「遅れてしまう連絡を怠ってしまったのは、此方の責任…ですが、欠陥品を大事な大事な男性操縦者(モルモット)に引き渡す訳にもいきません。なんせ、試験運転も無しのぶっつけ本番ですから。それとも、事故を起こしたかったですか?」

「そう言う問題じゃねぇだろ…」

「無駄話はそこまでだ…貴様等は充分な対価を得ているだろう?」

 

流石に俺も堪忍袋の緒が切れたのか、目の前のサラリーマンに対して一歩踏み出そうとすると、それを制する様に千冬が前に出る。

千冬の言葉にサラリーマンは満足げに頷き、笑みを深める。

蛇野郎が…。

 

「えぇ、充分な見世物でしたし、必要なデータも手に入れる事ができました。あぁ、勿論継続的に彼のデータはいただきますが…熟練操縦者のデータは大変貴重ですからね」

 

サラリーマンもとい蛇野郎はニヤニヤとした笑みを浮かべたまま、千冬の姿を舐めまわす様に見つめ続ける。

言うまでも無く、俺と千冬はISスーツ姿…男としちゃ、千冬の美しい肢体をマジマジと見る機会はそうないだろうし、見てしまう気持ちも分からないでもない。

同意はしてやれるが理解はできない…どうにも、こいつは神経を逆なでするのが上手な様だ。

千冬もそんな視線が気に入らないのか、蛇野郎につかつかと歩み寄って襟元を掴み持ち上げる。

 

「黙って仕事をしろ…その舌を切り取られたいか?」

「滅相もございません!早速起動準備を始めます!」

 

千冬の機嫌が最高に悪い事を漸く察する事ができたのか、蛇野郎は顏を青褪めさせて首を横に振る。

俺は千冬の肩を掴んで首を横に振り、指で通路を指し示せば先に歩き始める。

聞かなくちゃならないことがあるからな…。

 

「真耶、一夏に連絡してピットに来るように伝えてくれ。ちっとばかし千冬借りるぞ」

「えっ、あっはい!」

 

去り際に真耶に頼みごとをして通路へと出て、出入り口の横の壁に寄りかかって腕を組む。

慣れないIS…しかも機体を壊さない様に気を使っての戦闘と言うのは、肉体的にも精神的にも負荷がかかる。

なまじ、いつも手加減無しで動いていると尚更だ。

無意識の内に煙草を取り出そうとして、いつも羽織っているコートを羽織っていない事に気付いて舌打ちをする。

 

「…それで、なんだ?」

 

千冬が通路へと出てくると、俺の前に立ち止まり見上げてくる。

どうにも不完全燃焼…そして、暮桜のあの反応が気になって仕方がないようだ。

俺は少しだけ深呼吸をして、千冬を真っ向から見つめる。

 

「お前…自分を質に出したな?」

「…あぁ、それが何か問題か?」

 

千冬は素直に頷けば、向かい側の壁に俺と同じように背を預けて胸の下に腕を通す様にして腕を組む。

声には若干の苛立ちが込められている。

 

「倉持は一刻も早くお前の戦闘データが欲しかったようだ。遅れてきたのは、態とだよ…恐らくな」

「随分と貪欲な企業だな…それにしたって遅刻なんぞ言語道断だろ?」

「そう言う訳にも行かん…この学園にあるISは大半が倉持とデュノア社製の機体だ。出資者のご機嫌は取らなくてはならない」

 

…IS学園は本来、国家や企業と言ったあらゆる組織に対して中立の立場を貫いている。

これは保有しているISの機体数が日本やその他の国家よりもずば抜けて多く、その気になれば国に対して戦争を吹っ掛ける事ができるからだ。

よって、スイスの様に基本的には干渉を受けず、干渉せずに学園が持つ独自の権利を以って運営がなされている。

だが、IS学園自体にはISを整備する能力はあっても、独自に開発するだけの能力は与えられていないし、運営費に関しても日本が独自に捻出している。

基本的に、学園の授業費だけではどうしたって運営費を賄う事はできず、仮に機体を購入するとなると、それだけで学園の経営が傾きかねない。

そこで、日本とは別にIS開発会社が()()で出資、あるいは物資の提供をする事でこの学園は何事もなく運営されている。

学園の持つ立場はまるで薄氷の様だ…。

もし、企業の機嫌を損ねる事があれば、扱っている機体の部品に何をされるか分かった物ではない。

無論、そうならない様に生徒会が、ひいては学園上層部が日夜暗躍しているわけなんだが。

 

「腹立たしい話だがな…言ってしまえば常に子供たちを人質に取られているようなものだ」

「中立公平なんて、やっぱ言葉だけって事かよ…」

「このままでは終わらせん…どこぞの生徒会長が酷くやる気を出してるからな」

「?」

 

千冬の顏にはザマァミロと言った顔と、同情の顏とが入り乱れた複雑なものになる。

生徒会長ってことは楯無の奴か…なんでまた、あの猫娘がやる気を出してるんだ?

不思議そうに首を傾げていると、呼び出された一夏が慌てた様子で此方へと走ってくる。

 

「遅いぞ、織斑!」

「す、すみません!!」

「時間がおしているから、早くフィッティングを済ませろ!5分以内に終わらせなければそのまま放り出すからな!」

「うわぁ…鬼かよ…」

 

千冬は、鬼教官もかくやと言わんばかりの鋭い声で一夏に声をかけ叱咤する

勿論その言葉は腑抜けていれば、お前は負けるぞ…と言う意味なんだがな。

どうにも、公を気にしすぎて姉弟らしく振舞えないでいる辺り、千冬は不器用な気がする。

 

「アモン…何かコツってあるか?」

「あぁ?んなもん、ねぇよ…。そうだなぁ…強いて言えばいつも通りか?飛びたい方向に意識を向けりゃ勝手に飛ぶしな。あぁ、でも空中じゃ踏ん張りがきかねぇから、殴り合いには気を付けろよ」

「わかった。勝ってくるよ、アモン、千冬姉!」

 

一夏は拳と拳を打ち合わせれば、不敵な笑みを浮かべてピットへと入っていく。

出会ったばかりの頃はガキだガキだと思ってたもんだが、知らない内にデカくなっていくもんだな…なんて思っていると、千冬は軽く頭を抱えて溜息を吐く。

 

「織斑先生だ、馬鹿者め…」

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「いつまでもそう、むくれているな」

「わかってら…ガキじゃねぇしな」

「あはは…それよりも暮桜は、地下施設に移動させておきました。今、解析班がデータを取っています」

 

あの一瞬…恐らく、俺の方が速かったであろうあの剣戟は、視界の端に映った暮桜の異変によって止められた。

ISはその特性もあいまって、装甲の材質に特殊な合金を用いている。

だが所詮は金属…あんな風化したかのような鉱物になるとは、とてもではないが思えない。

仮に進化した、と言うのであれば頷くしかないが、進化とはその状況に適応するための力だ…劣化するなんてことは進化とは言わない。

ISコアがブラックボックス化されている以上、何が起こるか判明している事は少ない…と、言うより皆無だろう。

シフトに関してだって、これだけの事をしたらこうなりましたと言う記録が数件あるだけで、推測の域を出ていない。

そんなものを国防の要にしているってんだから、割かしこの世界はトチ狂っていると言える。

 

「手間をかけさせたな…試合が終わり次第、私も地下へと向かおう」

「いえ!気にしないでください!でも…暮桜の使用…良かったんですか?」

「あぁ…国…いや、委員会側の認証があっさり通ったくらいだ…こんな事になるとは思わなかったが」

 

千冬はそこで会話を切り、試合へと意識を集中させる。

なんだかんだ言ってブラコンの類だ…一夏の事で気が気でないんだろう。

俺と真耶も千冬に倣って事の推移を見守る事にする。

暫くして、余裕が出てきてしまったのか、一夏の悪い癖が出始める。

一夏は調子に乗り始めると、左手を握っては開いてと言うのを繰り返す。

まるで運命を手繰り寄せるかのように。

だが、調子に乗るのも仕方がないだろう…恐らくはセシリア攻略の糸口を見つけたのだろうから。

一夏は回避運動を常に最適化させ、最小限の動きでビットによるオールレンジ攻撃を簡単に避ける様になった。

ISに搭載されているハイパーセンサーは、人間の視界だけではなく、360°全天を脳内に映像として認識させる。

人間の能力的限界もあるのだが、人間は常に物を目で見ようとする…しかし、このハイパーセンサーさえあれば、例え目を瞑っていても物を認識する事が可能となる。

…全盲の人にも使わせるべきではないだろうか?

兎に角、人間の視野的には死角があっても、ISには死角がないのだ。

あるとすれば、それは意識的な死角だけだろう。

 

「随分、器用に避ける…」

「初心者の動きじゃないですよ…ミュラー先生にも言える事ですが」

「だが、誘い込まれたな…」

 

一夏は、セシリアが動きを止めるタイミングで死角に配置されているビットを確認して避けている。

セシリアも自身の弱点をキチンと把握はしているようで、当たらなくなった辺りから見破られたのを悟ったのだろう…意識を改め、覚悟を決めたかのような面構えになる。

セシリアは四基のビットを操ることで四方八方から断続的に射撃をするが、右側面への弾幕だけが妙に薄い。

言ってしまえばあからさまなくらいだ。

 

「あいつ、試験の時は近接戦闘やってんのか?」

「いえ、その前に射撃戦で教師を沈めていますね…」

「爪を隠してるのか、それとも…まぁ、奥の手は隠しているだろうな」

「あの顔は罠をしかけた人間の顏だ…もう少し、ポーカーフェイスを覚えなくては」

 

一夏はニヤリと笑みを浮かべて開いた拳をグッと握り込み、雪片弐型を盾のように構えればウィング・スラスターの推力を全開にして右側面から回り込み、ビットの猛攻を物ともせずにセシリアへと肉薄する。

遂に有効打が入るかと思われた瞬間、ブルー・ティアーズの腰部スカートアーマーが外れて新たなビット兵器となる。

至近距離…絶対に避ける事ができないと思われた瞬間、セシリアの攻撃は空を切る事となる。

 

「あ、あれは!?」

「千冬…お前、アレ教えたのか?」

「い、いや…恐らく偶然ではないだろうか…」

 

一夏の姿が残像を残して消え、セシリアの背後へと雪片弐型から光を迸らせながら現れたのだ。

…なんてことはない、PICをカットしてからの不完全な瞬時加速で旋回しながらセシリアの背後へと回り込んだだけだ。

もっとも、あの白式…高機動近接格闘を主眼に設計されているようなので、不完全と言え度相当な速度が出る。

生体補助機能があるとは言え、後で検査を受けさせなくちゃなぁ…。

一夏は何かを叫びながら横薙ぎで雪片弐型を一閃、セシリアのウィング・スラスターを一刀両断にし、返す刀で唐竹割りを叩き込もうとして…試合終了を告げるブザーが鳴り響く。

スクリーンにはセシリアの勝利がデカデカと表示されている。

 

「は?」

「え?」

「はぁ…馬鹿者…」

 

三者三様…気の抜けた吐息が管制室に響いた。

 

 

 

 

「ワンオフ・アビリティ…同じものが発現する確率なんてあんのか?」

「さぁな…そもそもワンオフ・アビリティを使える操縦者自体が一握りしかいない。何とも言えないだろう」

 

試合終了後の夜…俺と千冬は学園の地下エリアに降りて、丁重に保管されている暮桜及び、俺が使用したラファールを眺めている。

一夏が試合に負けてしまった理由…それはワンオフ・アビリティである『零落白夜』による自滅だった。

白式の第三世代兵装は、ファースト・シフト時点でセカンド・シフト後のワンオフ・アビリティを引き出すと言うものだったらしく、それが偶々零落白夜だったと言う訳だ。

データ取りの件があるので、偶然とは言いにくいがな。

そっと暮桜に触れると、ひんやりとしている…その肌触りは金属と言うよりも、道端に落ちている石に近い。

軽くノックするだけで、まるで砂の像の様に皹が入るが、すぐにその皹は修復して元に戻る。

 

「装甲の一部を切り取ろうとしても、切断する先からくっついて再生しているそうだ。部品を外そうにも完全にくっついてしまって外せない…お手上げだと言われたよ」

「ISで同じ現象が起きたって記録はあるのか?」

「それは今委員会の方に問い合わせて、調べてもらっているが…今回が初めてのケースだろう」

 

千冬は恐る恐ると言った様子で暮桜に手を伸ばし、装甲を愛おしそうに撫でる。

二人三脚で戦ってきた大事な相棒だ…愛着だって湧くものだろう。

その相棒は、今もダンマリを決め込んでいるようだが。

 

「しかし、お前のラファール…相当に酷い事になっているそうだぞ?」

「だろうなぁ…あのままやり続けていたら、自壊してたろ…」

 

俺が扱っていたラファールは、データ吸出し用のケーブルが幾つも繋がれ、装甲と言う装甲が外されている。

関節部をよく見ると、駆動用のモーターの表面が焦げていて、相当な負荷がかかっている事を思わせる。

恐らく、片刃大剣を派手に振り回したことが原因だろう。

爆発的な推進力そのままに自在に振り回したツケと言う訳だ。

むしろ、良くもった方だとラファールの事を褒めてやるべきだろう。

 

「このデータ…兎の奴が見てるんだろうな…」

「お前と私の戦いだ…覗き見しない訳が無い。大方、今回のデータをお前の専用機に反映させるだろうさ」

 

そう簡単に専用機が壊れたらお話にならないからな…負荷のかかり方から何から全て調べ上げて設計に反映させる気だろう。

千冬との戦いも全てが無駄と言う訳ではなさそうだ。

暫くラファールを眺めていると、不意に背中から千冬が抱き付いてくる。

 

「…いきなりどうしたよ?」

「抱き付いては迷惑か?」

「いや、別嬪に抱き付かれるなら大歓迎だけどな…らしくないだろ?」

 

茶化す様に言うと、ハンギングベアー張りに腹に回った腕を締め付けられる。

言うまでも無く千冬は怪力の類に片足突っ込んでる人間なので、俺でも結構痛い。

 

「あだだだ!!」

「茶化すな!…私とて、女なんだ…良いだろう、別に」

「そらな、茶化してねぇと勘違いしちまうだろうが…」

 

腕が緩むと軽く溜息を吐いて千冬の腕に触れ、優しく撫でてやる。

鉄の女も人の目が無ければ子供みたいなもんだ。

俺に対して心を開いてくれている…と、言う事なのかもしれないが。

 

「…すまない、忘れてくれ」

「…あいよ」

 

暫くすると、千冬から離れて少しだけ距離を開けられる。

千冬の方へと振り返ると、顏を真っ赤にして背けている。

…こういうところ、本当に乙女だと思って、思わず笑みが浮かぶ。

 

「なっ!わ、笑う事か!?」

「いやいや、普段が普段だからよ…可愛いなぁってな」

「あ、頭を撫でるなぁっ!」

 

千冬の頭を撫でれば、俺は逃げる様に部屋を後にする。

…この後、寮長室でシコタマ関節技をかけられたが…。

まぁ、可愛いもの見れた対価としては上出来、か?

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