インフィニット・ストラトス~悪魔は乙女と踊る~   作:ラグ0109

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#23 ランチタイムは憂鬱に

「ミュラー先生は、学園での生活には慣れましたか?」

「ん~、まぁ、自由に外出できないって事以外は概ね問題ないな」

「外出に関しては諦めろ…ちょっかいを出されてまだ日も浅いからな」

 

朝の会議を終えて、俺と千冬、真耶の3人で教室に向かって歩く。

学園での生活が始まってから、早2週間…気付けば桜は緑で生い茂り、徐々にではあるが外の気温も上がり始めている。

春の訪れは既に初夏の兆しとなり、これだけでも季節の移ろいというものを感じることができる。

凰 鈴音…鈴は、1組の預かりとはならず、2組での預かりとなった。

一夏や俺の存在を考えれば、無理矢理にでも1組に突っ込んでくると思ったが、各クラスのパワーバランスを少しは考えているらしい。

もし、1組にばかり専用機持ちが固まる…なんて事態になったら、他のクラスの意欲低下に繋がりかねない。

 

「ちょっかいがなきゃ、近くの公園で遊んでるんだがなぁ」

「公園ですか…少し、意外ですね」

「千冬ー、真耶が偏見の目で俺を見てるぞ?」

「だったら、その目つきをどうにかしろ」

「敵しかいねぇのかよ…」

 

遊ぶ…と言うより、本業を楽しむ、と言ったところだが。

あくまでも、俺は大道芸人の人形遣いだ。

教師なんて言う立場は、あくまでもこの学園に在籍するための方便であって、心からこの職を全うしようなんて思ってはいない。

ガキの面倒を見るのは嫌いじゃないんだけどな…ただ、物を教えるって言うことに苦手意識があるだけで。

人に物を教えるというのは、案外難しい。

何もないところにただ物を突っ込んでも上手く収まらないのと同じように、順序を立てて1つ1つの事柄を理解させていく必要がある。

俺が受け持っているのは座学…一般教科の類だからまだ楽なものの、この学園の大半の教師は命に関わるISの運用方法だ。

この時に間違った覚え方をさせてしまうと、取り返しがつかなくなってしまう。

 

「それにだ…曲がりなりにも公務員が、副業をしようとするんじゃない」

「はぁ?こっちが副業だっつの…ISに乗れるから此処に突っ込まれてるだけじゃねぇか」

「教師を副業扱いですか…」

 

千冬は諭すようにぴしゃりと言い放ち、真耶はズレた眼鏡を抑えなおしながら呆れた目で俺を見つめる。

一応、暇を見ては本業の道具である人形のサニティの整備や、動作の練習はやっている。

ガキどもに見られないようにこっそりと、だが。

ただの練習を見せるのは嫌だからな…やるなら、キチンとしたものを見せてやりたいと言うどうでも良いプライドだ。

 

「副業みたいなもんだろ…首輪代わりの肩書だからな。本音としちゃ、今すぐにでも俺を解体して調べつくしてやりたい奴らがゴマンと居るだろうよ」

「一夏の方にも変な宗教家や科学者が押し寄せてきた時期があったな…須らく叩きのめしてやったが」

「織斑先生、乱暴ですよ…それ…」

 

俺と千冬が不敵な笑みを浮かべると、真耶は乾いた笑いとともにため息を吐く。

俺にしても千冬にしても血気盛んだ…基本的に売られた喧嘩は買い取り、倍額で売ってきたやつに売りつける。

そうでもしないと、喧嘩を売る奴が後を絶えないからな…。

その後も穏やかに話しながら廊下を歩いていると、2組から鈴が出ていき1組に入り込んでいく姿を見つける。

 

「あいつ、自由だな…」

「あのフットワークの軽さは見習うべきところなんだが、その分協調性には欠けるな」

「お2人とも、凰さんとはお知り合いなのですか?」

 

俺と千冬に疑問を持った真耶は、コテンと首をかしげながら俺たちの方へと顔を向ける。

凰は国家代表候補生の中でも、ずば抜けて知名度の高い存在だ。

理由は言わずもがな…その才覚にある。

基本的に国家代表候補生徒となる者は、幼い時分から英才教育を施されることが多い。

学園で学ぶことの大半を、早めに修める必要があるからだ。

だが、鈴はそれをたった半年で修めて国家代表候補生に選ばれただけでなく、専用機を受領するまでになっている。

おそらく、鈴はこの学園を卒業したら国家代表として世界に羽ばたくことになるだろう。

と、まぁそんな鬼才と知り合いなのが不思議でならないのだろう。

 

「凰は、去年の春ごろまで私の家の近くに住んでいてな…一夏とは仲良くしてもらってたんだ」

「で、千冬の家に転がり込んでいた俺は、必然的にアイツとも知り合いになったって訳よ」

「世間は狭いですね…」

 

鈴が1組に消えてすぐ、にわかに騒がしくなったのを感じた俺たちは、少しだけため息を吐いて少しだけ足を早める。

…分かりやすいあの2人が、鈴に食ってかかるのは目に見えてるしな。

もうちょい、大人に…なんて思うがまだまだ15歳…甘い夢を見がちであれば仕方がない、か?

一足先に教室へと足を踏み入れると、敵意むき出しのセシリアと箒、おろおろする一夏、不敵に笑みを浮かべる鈴と言う一触即発の状況を目の当たりにする。

よく見ると、一夏の机の上に可愛らしい包みが置かれている…弁当、か?

 

「なーにやってんだ、お前ら?」

「シショー、遅いわよ!」

「あ、アモン兄…」

「先生は黙っていただけますか!」

「わたくし達は、目の前の小娘と雌雄を決さなくてはなりませんので!」

「……」

 

俺は静かに指をパチンと鳴らす。

すると、ささーっと俺の隣に本音がやってきて俺に傅く。

…なんでかは分からないが、時々餌付けをしていたらこの様に懐かれてしまったのだ。

 

「どういうこった、これ」

「えっとですね~、2組の転入生のリンリンがね~、いっちーにお弁当つくってきたの~」

「OK、把握した」

 

俺は懐から米軍糧食由来のチョコの小袋を取り出して本音に渡すと、本音は恭しくお菓子を受け取りささーっと自分の席に戻る。

決して…決して変な関係では無いことは此処に宣言しておく。

ただ、あの娘…いろいろと耳聡いところがあるので、今後とも重宝しそうではあるが。

 

(餌付けされてる)

(そうだね)

(いいな~)

 

周りの生徒達の小声を無視し、改めて4人に向き直る。

気にしてもいられないし、餌付けしているのは事実と言えば事実だ。

 

「鈴、一夏とは何でもねぇんじゃなかったのか?」

「去り際の約束を遂行しただけよ。シショーが居なくなった後も料理の勉強はしてたしね」

「あー、酢豚を食わせてくれるってやつな。ありがとな、鈴」

「はぁ…こんなんだから周りの女泣かせるのよ…あんたは」

 

…酢豚…食わせる…あぁ…そういう…。

俺は少しだけ悲しくなってしまい、目頭を強く抑えながら一夏の脳天に拳骨を落とす。

いっそ地獄に落ちてしまえば良いと思う。

 

「いってぇ!?なにすんだよ!!」

「うるせぇ、バカ!マジで朴念神止めねぇと磨り潰すぞ!」

 

一夏は、どうして折檻を受けたのか分からず、涙目で此方を見上げて恨みがましい目で此方を睨み付けてくる。

詳細は鈴から聞き出す必要があるだろうが、恐らく一夏は鈴の精一杯の告白を勘違いして受け止めてしまったのだろう。

で、そんな一夏の様子を見て幻滅した…そんな所だろう。

幻滅と言うより、バカバカしくなったのかもしれないが。

鈴は口元を掌で隠しながらニヤニヤと一夏の事を見つめる。

 

「やーい、言われてやんのー」

「っつー…なんだってんだよ…もう…」

「箒とオルコットも、キチンと伝えてねぇなら近づいたくらいでガタガタ言うな。敵作るだけだろうが」

「ぐっ…だ、だが…!」

「そ、それができれば苦労は…!」

 

好きと言う感情よりも羞恥心が勝る…その程度ならば、そもそも恋愛はまだ早い。

恋愛と言うよりも、憧れ…に近い感情だろう。

 

「いつまで!話を!して!いるんだ!貴様らは!?」

「あだっ!」

「ひっ!?」

「いっ!!」

「ぎゃっ!?」

「グワーッ!!」

 

俺が一夏達と話し込んでいると、痺れを切らした千冬が神速の踏み込みと振り下ろしで脳天に出席簿を叩き落していく。

時間にして5秒も経っていないだろう…人の身でここまでとは…。

頭を押さえながら涙目で千冬を見ると、まるで野良犬を追い払うように手で払われる。

 

「もうSHRの時間だ!散れ!」

「「は、はいぃ!!」」

「うげ、千冬さ…!?」

「織斑先生だ!」

 

鈴は、千冬の事をいつも通りに呼んでしまったがために、追加で制裁を受けてしまう。

心なしか、少し厳しめの気がする…。

 

「貴様は2組だろう、転入早々に面倒をかけさせるな」

「ぐう…昼、食堂に来なさいよ!」

 

鈴は教室を出て扉を閉める前に宣戦布告の様に言い放ち、勢いよく扉を閉める。

まるで嵐のようだったな…教室は痛みに呻く声しか響いてこない。

 

「はぁ…SHRを始める…山田先生、連絡事項を」

「は、はいぃっ」

 

千冬は聊か機嫌が悪いのか、鋭い目つきで真耶に指示を送る。

真耶は涙目で小走りで教壇に駆け寄り、連絡事項を話していく。

俺はいつも通りに教室の後ろの席に座り、様子を見守るだけだ。

聊か、騒がしい1日になりそうで、背筋に悪寒が走った気がした。

 

 

 

 

午前中の授業は滞りなく終わった。

休憩時間ごとに鈴が襲撃に来ると思ったが、2組の生徒と仲良くなってからにするつもりなのか、1組に現れることは無かった。

一度、職員室に戻ってから必要な荷物を手に取り、中庭へと向かう。

中庭には、設計者の趣味なのかちょっとした噴水とバラ園が設えてあり、さながら洋風庭園の様相を呈している。

アーチ状のバラの門をくぐり、噴水の近くにあるパーゴラへと向かいテーブル席のベンチに腰掛ける。

格子状の宿にもバラが生い茂っていて、真夏でも涼しく過ごすことができそうだ。

あいにくと今は4月…バラはまださほど咲いてはおらず、庭園にはやや華やかさが足りない。

 

「とは言え、すぐに華やかにはなるんだがねぇ…」

 

いそいそと持ってきた荷物を袋から取り出し、2段の重箱を広げていく。

中身は、色とりどりのおかずとおにぎりが詰まっている。

少しすると、千冬が此方へと歩いてやってくる。

 

「待たせたな」

「女を待つのは男の甲斐性ってな。腹、減ったろ?」

「悩んでいても腹が空く、と言うのは喜んでいいのか分からんな」

 

千冬は俺の隣に座って、ペットボトルのお茶を差し出してくる。

俺は軽く礼を言ってからペットボトルを受け取り、少し大きめの水筒からお椀に味噌汁を注いでいく。

中身は王道の油揚げと豆腐だ。

時折、日本の食卓は大豆に支えられているような気がしてならないな…。

豆腐、油揚げ、味噌汁の味噌の原材料は全て大豆から出来上がっている。

最近は大豆を肉に見立てたソイパテなるものもあるし、色々と代替えが効くと言うのは純粋に凄いことだろう。

 

「「いただきます」」

 

2人そろって食事の挨拶を行い、黙々と食事を行う。

小さめの小判型のハンバーグ、きんぴらごぼうにヒジキの煮つけ、ブロッコリーと人参の炒め物にデザートのカットフルーツ…おにぎりの中身は無難に鮭のハラミと梅干だ。

 

「朝からよくも作れるものだな」

「大体は夕飯作るときに仕込んでおくのさ、調理器具使うから洗い物も押さえたいしな」

「純粋に食堂で良くないか?」

「んなことしたら、お前…コンビニ弁当で済まそうとするだろうが」

 

ずずっと啜る様に味噌汁を飲むと、口いっぱいにカツオ出汁の豊かな香りが広がる。

市販の粉末出汁を利用したが、なかなかどうして…やるな。

千冬は、食に関しては非常にズボラなタイプで、取り敢えず腹が膨れればそれで良しとする人間だ。

酷いときは、飲むゼリーで終わらせることなんかもあったな。

一夏の料理上手は、間違いなく千冬のこのズボラさに起因したものだろう。

おにぎりを一つ取ろうとしたところで、重箱の中身が無くなっていることに気付く。

 

「んま、んま…」

「はぁ…」

「なぁ…暇なん…?」

 

千冬は溜息をついて目の前に座る人物を見つめ、俺は俺で呆れた顔で口を開く。

目の前にもう見慣れてしまった豊満兎である、篠ノ之 束が座っていたからだ。

音も気配もなく現れるあたり、どこぞの疫病神の様で気味が悪い。

 

「ん~、塩加減ばっちり」

「それで、今度は何用だ…束?」

 

束は満足げに指についたご飯粒を舐め取り、笑みを深める。

千冬はどこかイラついたような声を上げて、威嚇するようにパーゴラ内に設えてあるテーブルを指でトントンと叩いている。

 

「ん~、あっくんに会いに来ただけ?」

「帰れ」

「や~だ~、ちーちゃんばっかあっくんといい感じじゃん!」

 

束は人差し指を頬に添えながらコテンと首を傾げると、千冬はぴしゃっと言い放ちながらささっと俺に身を寄せてくる。

…修羅場なら他所でやってくれまいか。

束は頬をプクーっと膨らませると、俺からお椀を奪って水筒の中身である味噌汁を注いで一気に飲み干す。

 

「骨身に染みるわ~、あっくん!毎日作って!」

「お前が作るんじゃねぇのかよ?」

「作ったらデートしてくれる?」

「お前もしつこいな…しねぇっつの」

 

頭痛がする…なんと言うか、束は非常にマイペースだ。

いや、マイペースだからこそ、非情な事を非情と思わず実行に移す気概がある。

故の『天災』…こいつのメンタルは鋼ではなく、柔軟なスライムメンタルな気がする。

他人の言葉に傷つかず、かと言って嵌めようとすれば逆に飲み込まれる。

千冬は俺の束に対する返答に安堵したのか、胸を撫で下ろしている。

…俺の事をどう思っているのかは分かっているが、果たして…答えていいものか、な。

 

「束、こいつが今学園から出たら上に下にの大騒ぎになる。この間起きた襲撃事件は把握しているのだろう?」

「ま~ね~、IS3機運用しての暗殺とか、よ~やるわ~って感じ」

「…束、お前犯人知ってるだろ」

 

俺はスッと視線を鋭くさせ、束の事を睨み付ける。

あの襲撃事件のせいで、変なフラストレーションが溜まっている最中だ。

できることなら懇切丁寧に叩いてあげて、2度と手出しができないようにしてやりたい。

そんな俺の様子を見て、束は笑みを深めるものの静かに首を横に振る。

 

「それが、分からないんだよね。ISはISなんだけど…コア・ネットワークから隔離されてて、裏口が使えなかったんだよね」

「…はぁ?お前の管轄で何もできなかったってか?」

「そゆこと。束さんとしてもね~、草の根かき分けて探し回っている最中なんだよね。あんまり派手にはやってないけど」

「束…どうやら、嘘ではないようだな」

 

千冬は神妙な顔で束の顔を見つめ、親指の爪を噛みながら思案に耽る。

基本的に、全世界のISはIS委員会で管理していることになっている。

だが、それは表向きな話であって、真実は違う。

真の意味でISを管理しているのは、目の前にいるうさ耳女、束なのだ。

束は、全てのISコアを繋げているコア・ネットワークを唯一掌握していて、そこから起動も停止も思いのままに行っている。

つまり、気に入らない実験を行っていれば、すぐに察知して緊急停止…なんて芸当も可能な訳だ。

それができないとなると、本当にISを使っているのかが疑わしくなってくるのだが…。

 

「あっくんが疑うような顔で…濡れるッ!」

「茶化すな茶化すな…ISに匹敵するものが出来上がっているとか聞いてねぇぞ?」

「出来損ないでも作れる筈がない…レシピは誰も知らないし、そもそもコアはバラせない。バラそうとした自壊するように作ってるからね!」

「…もしかして、中途半端な数なのって…」

「おバカさんがバラしたんじゃないかな~」

 

…キリの悪い数字だと思っていたんだ。

467個…これが最初世界に配布された数だと思っていたが、実際は各国でコアの秘密を知ろうと躍起になっていたらしい。

だが、相次いで起こるコア自壊現象を止めることができず、バラす事を断念。

自壊した数も相当な数になるだろう…束も中々性格が悪いな。

 

「「趣味が悪い」」

「は、ハモらなくたっていいじゃん!」

 

千冬と同時に束を叱責すると、束はウソ泣きでテーブルに突っ伏すが、すぐに体を起こす。

その顔は悪戯が成功した子供のそれだ。

 

「第一さー、コアが自力でエネルギーを生む反応炉なのは既に説明してたし、仮に雑なバラし方してたら、核なんて目じゃない爆発起こるよ?」

「お前はなんちゅーもん作ってるんだよ…」

 

俺は顔を覆うようにして、深くため息を吐く。

ISは基本的に放っておけば、エネルギーを自前で作り出すことができる。

必要なのは推進剤だったり弾薬だったりと言ったところだ。

これは宇宙空間で活動するときの緊急事態に備えている為ではないか…と言う研究報告がされている。

そこまで分かっているのなら、とっとと宇宙開発をすれば良いのにな。

束は唇を尖らせてそっぽを向いてから口を開く。

 

「だって宇宙行きたかったんだもん」

「もんじゃねーよ、もんじゃ…」

「束は昔から欲求に忠実なんだ…こればかりは矯正できん…」

 

千冬は半ば諦めにも似た表情で、ペットボトルのお茶をゴクゴクと飲んでいく。

長い付き合いの中で、束の調教…もとい、躾を諦めてしまったのだろう。

マイペースさが生んだ悲劇とも言えるか?

 

「あ、そうそう…あっくんの専用機なんだけどね?難航してマス」

「ほう…お前にしては珍しいじゃないか」

「だって、あっくんが使うと、今のままじゃ壊すもん」

「出来上がってはいるのか…」

「ま~ね~」

 

束はフフンと笑いながら腰に手を当てながら胸を張る。

その動きに合わせてゆっさゆっさと大きな胸が揺れるのを目の当たりにして、思わずぽつりと漏らす。

 

「ブラくらい着けろよ」

「は?」

「へ?」

 

俺の口から漏れた一言は、老婆心からくるお節介と言うやつだ。

胸、と言うのは重みに負けてしまいがちだ…特に束の様な豊満なバストを持った人間だと顕著だ。

場合によっては、皮膚が裂けてしまうと言うことも起こりうるくらいだ。

そうならない為のブラであるし、着けないなら着けないで他の野郎共の視線に触れてしまう可能性も無きにしも非ず。

これもつまらないわけだ、何故か。

ただ、この言葉を口にしたのは不味かった…なんせ、俺は男だからな。

 

「…老婆心なんだろうがな…親友にセクハラとはいい度胸だな、んん?」

「いやん…でも、あっくんにいつ剥かれても良いようにするためなんだぜ~?」

 

千冬はコメカミに青筋を浮かべ、束はくねくねと体をくねらせながら発情したかのように息を荒げる。

俺はすぐに離脱しよう立ち上がろうとするが、まるで頭の上からとてつもないプレッシャーを当てられたかのように立ち上がることができない。

 

「まぁ、なんだ…次の授業までたっぷりと時間があるから、少し話そうか?」

「ちーちゃん、束さんもお話し混ざりたいぜ!」

 

束は椅子から座ったままの姿勢で飛び上がれば、俺の隣の席に座って千冬と挟み込んでくる。

束は隣に座るだけでは飽き足らず、俺の腕を胸で挟むようにして抱き着き、千冬は千冬で俺の頬を全力でつまんでねじろうとしてくる。

 

ひゃ()めるぉー!」

「この際、たっぷりと上下関係を叩き込んでやらねばな…?」

「え~、それよりもデートの算段話そうぜ~!」

 

俺の主張は一切無視し、千冬と束は自分の思うがままに話を進めていく。

俺は痛みと癒しとを感じながら、話を聞き流す他無かった…第三者の視線を感じながら。

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