召喚術の世界に憑依したけれども、魔法を使っていく   作:クーネル・アソーブ

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短編から連載に移転しました。楽しんで読んでもらえば幸いです
設定を本文からあとがきに移動しました。
感想やご指摘いただいた皆さま、ありがとうございました。


1話

理想郷

それは、かつて楽園と呼ばれていた世界。四つの異世界に囲まれ、一つの世界とつながる世界。かつて隣接していた四つの世界、機界「ロレイラル」鬼妖界「シルターン」霊界「サプレス」幻獣界「メイトルパ」との争いの結果、「誓約者」によって結界がはられ、世界に平和を取り戻した世界。

しかし、異世界からの侵略により争いを覚えた人々によって平和は崩れ去ってしまう。また、異世界の強大な力に対抗するために編み出された力「召喚術」と「送還術」は隣接する世界にも多大な影響を与えることになった。

理想郷の名からほど遠くなっても人々は今日も生きている。結界により閉ざされた揺り籠の中で。

 

 

 

北の雪が降るその地で、彼女は一人瓦礫の中うずくまっていた。降り積もる雪は人の体温をたやすく奪い取る、そのことを知っている彼女は一人で瓦礫の中、なんとか屋根代わりになりそうな場所をみつけてわずかながらの休憩をとっていた。

彼女は全体的に汚れていた。洗ったことがないような服に、ボロボロの靴をはき、ぼろきれのシーツをその身にくるむように纏っていた。

ふと、なにか気になることがあったのだろうか、彼女はぼろきれのシーツから顔をのぞかせた。ボサボサでありながらも洗えば綺麗になるであろう紫色の髪がサラリとながれ、幼い年齢相応の目は大きく丸く、シーツから顔だけをのぞかせるその風貌はまるで、巣からはい出る小動物を連想させる。しかし、その頬はあまり物を食べてないのか痩せこけ、何より、その目は絶望の色に暗く沈んでいる。

そんな彼女はシーツから顔だけを出し、周囲を見渡すと、雪が降り積もっていることにため息をはいて――その様は子供というよりも、仕事疲れのサラリーマンのようである――現状を認めたくないような声色で

「どうして、こうなった…………」

と、ややしわがれながらも、子供の声でつぶやいた。

 

あるところに一人の男がいた。別に特別優れている部分はないが、劣っている部分もない、中間の男であった。男は未成年であり、学生の身分であり、趣味もなく、周りと同じように――というよりも、周りと合わせるように――娯楽に興じ、明日のことを考えない、刹那的な人生を送っていた。

そんな彼はある日、何でもない事故でその命を失う。それだけなら、どこにでもあるような悲劇で幕をしめるのだが、あることから彼の人生はもう一度幕を開けることになる。こうして本人の意思は関係なく、その魂が送られることになる。理想郷へと。

 

男が事故にあい、走馬燈をみて、自分の人生に諦め、痛みに意識を失った後、意識を取り戻したとき、見覚えのない土地に一人座り込んでいた。

「は?ここどこだよ…」

そう声を出した後、自分の声に異変を感じた彼は恐る恐る自分のことから確認を始めることにした。確認して分かったことは

①ここは知らない土地。②自分の体ではなくなっていること③意識すると、自分の日本人の時のではない、おそらく、この体の持ち主の記憶が入ってくること④女になっていること……………………………「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――!!!??なんで、俺、女になってんだぁーーーーーーー!!??」

しばらく騒いでいた彼、いや、彼女は落ち着いたのか、げっそりした顔でもう一度自分?の体を観察した。何日も洗ってないような汚い服に、同じ風呂に入ってないであろう茶色っぽい汚い肌、目に入る髪の色も暗めの紫色になっている。体の健康状態は悪いのか、幼児体系では説明しきれないほどでっぱった腹に比例して枯れ木のように細い手足、近くの水たまりで見た顔は骨が出っ張っており、子供らしい形の目が痛々しい。

「本当にどうなってんだよ、これ……。俺は憑依でもしたのか?」

自分のサブカルチャーから該当しそうなアタリを検討しながらも、周囲を見渡し確認する。

(どうなってんのかはわからないが、取りあえず人を探してみるか?いや、その前に、この体の前の持ち主の記憶をあさってみるか?…………ん?)

そう結論付けかかったとき、人の声が近づいてきた。接触するか、隠れるか………。

(とりあえず、隠れて何話しているか盗み聞きしてみるか。)

そう結論付け、近くの瓦礫に隠れると、二人の男が、暗い顔で何やら話しながら近づいてきた。

「これから、おれたちどうすればいいんよ………」困り切っているような声色でつぶやく黒髪の男に対し、もう一人の赤髪の男は「知るかよ…。どうしようもないだろ」と自棄になっているように返す。「これもそれも、全てあの紫の髪のガキが悪いんだ!」黒髪の男は思い出してまた怒りが沸いてきたのか、怒鳴るように話す。「しかたねーだろ?あのガキは召喚術師のお偉いさんたちに連れていかれちまったんだから。」赤髪の男は変わらない調子でそう返答した。「そういや、もう一人女のガキがいなかったか?」思い出したのか黒髪の男に話すと「あぁ、いたなそんな奴。死んだんじゃねーの?他の孤児のガキどももみんな死んじまったようだし。仮に生きていたら、俺がころしてやる!」その事を想像したのか荒い口調で話す黒髪に「その時は、俺も呼べよ?俺も楽しみたいし。」こちらは想像したのか楽しそうに話す。「お前、幼児趣味だったのか……?」そう聞きながら、少し距離をとる黒髪に対し「ちげーよ!幼児も行けるだけだよ!だいたい、俺も鬱憤を晴らしたいしな」そう話しながら、二人は隠れている瓦礫の傍を通り過ぎていった。しばらく待って、完全に行ったことを確認すると、彼女はその場にうずくまり、

「どうして、こうなった…………!」と絞り出すように、自分のではない声をだした。

 

立ち直ってこの町の住人との接触をあきらめた彼女はこの体の記憶をさかのぼりだした。そしてわかったことは、身寄りがないこと。とある孤児グループに男たちが話していた兄である紫色の髪男の子と所属していたこと。昨日、兄が綺麗な石を拾ってきたこと。そして、その石から呼び出された獣が全て壊したこと。この少女の名前が『トリス』であること。

「つまり、この時に何らかの事故で俺がこの体の持ち主となったってことか……」

おそらく、兄が獣を呼び出した時、この体の持ち主であった少女の魂は死んでしまったのだろう。それについてはいろいろ思うところがあるが、それよりも気になることが判明した。それはこの体の持ち主が何と呼ばれていたかだ。

「トリスって、あのトリスだよな?このシチュエーションてきにも……?」

『トリス』それは『サモンナイト2』の女版主人公だったキャラクターだ。彼女は幼いころ召喚術に必要な道具『サモナイト石』を偶然拾って暴走させてしまい、『蒼の派閥』に引き取られる。成長した彼女は自分に絡みつく因果に抗い世界を救う、というお話だったはずだ。しかし、『蒼の派閥』に連れていかれたのは兄である『マグナ』だけであり、彼女はこうして置いていかれてしまった。

「まじかよ……。きちんと仕事しろよ『蒼の派閥』……」

このままおいていかれた『トリス』が兄と同じような事故をおこしたらどうするつもりであったのだろうかという考えを一旦横に置いて、何が必要かピックアップする。先立って欲しいものは……

「防寒具が欲しいなぁ……」

雪降る中、彼女は寒そうに体を震わせ、クチュンっとくしゃみをした。

 

 

そうして何とか防寒具として使えそうなシーツを見つけ、食べられそうなパンと、水筒を掘り当て、冒頭に戻る。とりあえず必要そうなものは見つけた。しかし、ここから先どうするか

(あの二人の男の会話から察するに、この町の人からの助けは期待できない。でも、こんな体で他の町にいくのは自殺行為だ。記憶にもこの町以外のことはないし……)

そうやって、変わらない景色の中、自分と取り巻く現状をしばらく考えて出した結論は

「ムリゲー……」であった。さもあらん。彼女の現状は文字どおり、世界が変わったのだ。元の世界の常識が通用するとは限らない中で、ガリガリの子供の体なのだ。死ニゲ―をクリアするのとはわけが違う。蘇りなどもう一度あるともわからないのだから。そうして彼女がとった行動は……

「こんだけ雪が降ってたら、雪だるまがいくつ作れるだろうなぁ……」

現実逃避であった。空腹な胃袋も、凍死しかねない気温も、見つかったらやばい町の人のことも考えるのをやめて心の安静をとった。

だからだろうか、彼女は近づいてくる外套の人影に気が付かなかった。気が付いた時には人影はすぐ目の前に立っていた。気づいた時には目の前にいた外套の姿に危機感を抱いた彼女であったが、逃げるに逃げるのことのできない状況、固まるしかできなかった。そんな彼女に外套の男は静かな声で「お主がトリスか?」と聞いてきた。どう答えればいいのかわからない彼女が答えられずにいると「違うのなら、別にいい。邪魔したのう」と言って去ろうとする。慌てて彼女は

「トリスです!トリスは俺です!」と答えた。男の対応に思わす答えてしまったのは日本人だった意識の影響だった。

「おれ?まあ、いいわい。お主がトリスなんじゃな?」

一人称に疑問を感じながらも流した彼は、確認するように聞いてきた。それに答えて、首を縦に振ると男は一度うなずき、改めて顔を覗き込んできた。しばらく確認して納得いったのかもう一度うなずいた彼はこちらに確認するように質問してきた。

「それでは、トリスよ。お前に聞いておきたいことがある。まず、お前の現状は最悪に近いものじゃ。お前には身寄りがなく、仲間がおらず、さらにはお前の兄のせいで、町の人々に恨まれている。そのことはわかっておるな?」

言い聞かせるように聞いてくる男に、うなずくと満足したのか男は

「そして今、お前には選択肢がある」と言って、手を広げて突き出してきた。

「一つは、この町に留まること。これは死ぬようなものだ。召喚獣のせいで半壊したこの町には縁もゆかりもないお前を養う余力はない。それどころか、お前の兄に対する鬱憤をお前にぶつけてくるだろう。

二つ目は、『蒼の派閥』に所属すること。召喚師の力は血筋により左右される。このような事件を起こしたお前の兄と同様、お前にも力があるだろう。ただし、『蒼の派閥』は血統主義だ。成り上がりと分類されるお前には厳しいだろう。そして最後は……」そこまで口に出して男は外套のフードを外し、皺だらけながらも、優しさと厳しさの入り混じった眼でこちらをみて、もう一つ選択肢をだしてきた。

「わしの弟子になることじゃ。わしは召喚術ではない技術について研究しておるが、後継者がおらん。そこでこれほどの召喚獣を呼び出すほど元から素質があるヤツを弟子にしようと思ってきたら、『蒼の派閥』に先を越されてしまった。無駄足かと思ったが、その妹がおると聞いてこうして勧誘しに来たというわけじゃ」

そこまで話すと、こちらの出方を見るように黙り込んだ。

降ってわいた選択肢に今までないほど真面目に考えた。まず、一つ目のこの町の留まるはアウトだ。そんなの死ぬようなもんだ。二つ目の『蒼の派閥』も避けたい。ゲームで見る限り居心地は悪そうだし、接触するのも難しそうだ。なにより、マグナと会うのはまずい。もし、別人だとばれたらやばい。ならば、選択肢は……

「いくつか確認したいんですが、いいですか?」恐々と尋ねると「なんじゃ」と方眉をあげて聞いてくる。

「まず、待遇はどうなんでしょうか?無茶なことを言われたり、殴られたりしませんか?」そう聞くと

「待遇は三食風呂付ベッド付き。無茶は言わないつもりだが、弟子になる以上、きちんと教えは受けてもらう。あんまりやる気がないようなら罰は与えるだろう」

と淡々とこたえた。なるほど悪くないな、と思いながら

「次に、俺に本当にあなたが求める力があるのでしょうか?もしも求められている力がなかったらどうなりますか?」と確認すると、またも淡々として

「力ならある。ついさっきそのことは確認した。もしも力を失っても、他にも色々してもらうつもりじゃ。ほかには?」そう聞き返す男に

「あなたの言う技術とは何と言うんですか?」と尋ねると男は目を丸くして、苦笑を浮かべる。「確かに、その名を言ってはおらなんだな。わしの落ち度じゃな。わしが研究している技術は……」手を近くの瓦礫に向けると「【魔法】という」手から光の塊が飛んでゆき、瓦礫を粉々にした。

ポカーンとその光景を見ていたこちらに男は笑いが残る顔で

「それで、どうする?」と聞いてきた。どうするだって?そんなの決まっている。俺は……!

「弟子にしてください!」そう言って、頭を下げると、男はしばらくその様子をみて満足したようにうなずいて、

「よかろう、トリスよ。魔導の入口へ。歓迎するぞ?」

そう言ってこちらの体を立たせた。「それでは、行こうか」そういう彼、「そういえば、あなたの名前は何というんですか?」そう聞くと

「わしの名か?わしの名はゼクト。ゼクト・フィリウス。師匠とよぶように。魔法を伝えるものじゃよ」そう言って彼はこちらの体を引き寄せる。何をするのかと思い、見上げると、

「目を回さないようにな」そう彼が言った瞬間、周りの風景があやふやになり、鮮明になった時には、森に囲まれた家の前に立っていた。ポカーンと口を開けているこちらの手を引き家の中に入った彼はこちらを向いて

「ほれ、言うことがあるじゃろ?」と言ってきた。

慌てて頭を下げ「これから、よろしくお願いします!」といい、頭を上げるとニヤニヤ笑いながら「違う」という。何のことかわからず戸惑っていると、手を肩の高さまで上げ、ヤレヤレと言いそうなかっこで首を振り「ヤレヤレ」と本当に言いやがったのち、「今度から、ここはお主の家になるんじゃ。家に帰ったら言うことがあるじゃろ?」と言ってきた。戸惑いながらも「た、ただいま?」と言うと、「まあ、いいか。お帰り。トリスよ」そう言って笑顔をこちらに向けてきた。その笑顔になんだか気が抜けて、もう一度笑顔で「ただいま帰りました!」と答えた。それに満足したようにうなずいた彼は「とりあえず、風呂に入るか。そのあと飯を作ってやろう」そう言っておそらく風呂がある方向に歩いていく師匠についていく。最初はどうしようか思い途方に暮れていたが、ここから頑張っていこうと決意を固めていった。

 

 

 

この後、一瞬でお湯が張られた風呂に驚いたり、温かい料理に涙したり、偽装をといて少年の姿になった師匠に驚いたりと驚きの連続であった。

 

 

 

 

 

 




トリス・フィリウス……日本の男子学生の意識が魂が亡くなった体に入った結果。元のトリスの魂は暴走した召喚獣の力により消滅。その亡骸にエルゴにより招かれた。主要人物として大切な『トリス』が失われるのを防ぐための措置。元の世界の知識はあっても、記憶はないという禁書目録状態。それでも慌てないのは事なかれ主義と楽天家だったころの影響。徐々に意識が体にひっぱられ、女性に近づいてくる予定。『クレスメント』という古の家系の末裔の一人。そのためか魔力はバカのようにある。魔法について勉強中。最終的には、『闇の魔法』を編み出し、オレtueeeeeeeeeeをする予定。主人公だから、仕方ないね!なお、召喚術に関しては苦手意識を持つ  一人称俺→私の予定

ゼクト・フィリウス……師匠。元ネタは『魔法先生ネギま!』の『紅き翼』のメンバーの一人。ショタ爺。原作でも知識が豊富で『ナギ・スプリングフィールド』の師匠を務めていた。謎多き人物。原作では行方不明。この作品では実は人ではなく、人に知識を伝え、知識を貯めるための魔法具の付喪神的な存在。長年、前の主の屋敷を維持していたが、誰も弟子に来ない状況に嫌気がさし、世界を放浪。送還術に関する知識も持ち、召喚術の行使による末路を知りながらも「関係ない」の一言で切り捨てる。自分と自分にとって大事なものが大丈夫なら世界の崩壊すらもエンターテイメントとして観客になるほど。トリスに対し、厳しさと優しさ両方をもって接するお父さん兼お兄ちゃん兼師匠のような存在。一人称はワシ。

マグナ……『サモンナイト2』の男主人公。召喚術師よりも戦士向き?作者はアメルend以外では使用しなかった。召喚術を暴走させ『蒼の派閥』に輸送された。その後は原作どおりの展開だが、いつも妹でる『トリス』のことを気に病んでいた。どう絡ませていこうか検討中  一人称オレ
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