召喚術の世界に憑依したけれども、魔法を使っていく   作:クーネル・アソーブ

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書きながら設定をつけ足している方法なので書いてて矛盾が出てきました。短編はポンポン書き始めているのに……
閑話回です。別名お茶濁し。
こっからどうやって進めようか悩み中です。
まぁ、何が言いたいのかというと、貯め書きできませんでした!
長編核の難しい。


閑話

片割れ

大きい蒼白く光る月が、夜空に大きい存在感を示していた。

蒼白く見えるのは、月の光には魔力が含まれているからだそうだ。つまり、魔力に色があるとしたら、青色なのだろうか?

そんなことをぼんやりと頭の片隅で考えながら、月を見上げる。

少し前ではこうやって月を見上げる余裕などなかった。朝早く起きて食べ物を探す必要があったからだ。食べ物だけではない。その日に得られる成果はどれほど朝早く起き、人手が必要なところに売り込めるか重要だった。

養ってくれる人がいない当時は仕事を探し対価をもらい、仕事がなければ残飯をあさっていた。

それが今では朝昼晩のご飯が勝手にもらえる。身を寄せ合って暖をとる必要もないベッドが与えられた。前とは比べ物にならないほど生活はよくなった。

それでも―――

「マグナ?まだ起きていたのか?」

自分の名前を呼ぶ声に振り返る。その先には眉を寄せてこちらを見てくる長身の眼鏡を掛けた兄弟子であるネスティが本を片手に立っていた。

「ネス……」

「明日も朝から授業があるんだ。こんな夜更けまで起きているな」

兄弟子の名前を口に出すといつものように小言が彼の口から飛び出てきた。

ネスティは初めて引き合わされたその日から小言を言ってくる。

「君が何か問題を起こせば師範が責任をとるんだぞ?明日、授業中に居眠りでもされたら困る。」

兄弟子はそう言ってこちらの腕をつかんできた。彼が言う通りだ。自分が問題を起こせばその責任はラウル師範や兄弟子であるネスティにいく。だから、兄弟子が言うように早く寝て、明日の授業の用意をしないと。でも――

兄弟子がつかんでいた腕を振りほどくように思いっきり腕を振る。そのことに兄弟子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに顔を怒らせ、こちらを睨みつけてきた。

「おい、マグナ!いい加減にしろ!ここは前いたところみたいにお前の勝手にはならないんだぞ!」

怒鳴られることには慣れていたが、言われた内容は自分の体を突き刺す剣のように刺さった。

そうだ、ここは前いたとことは違う。だって、あの場所は自分が―――

「どうした、マグナ?顔色が悪いぞ?夜風に当たりすぎたか?」

ついさっきまで怒っていたのに、こちらの顔色が悪いのに気づいたネスティが、心配そうに顔を覗き込んできた。顔を横に振ってもほっとけないのか。部屋に戻そうとする。

それでも座り込んで、嫌がる挙動を続けていると怪訝そうにこちらを見てきた。

「おや、ネスティ。そんなところでどうかしたのか?」

優しそうな年季の入った声がネスティの向こう側から聞こえてきた。声の持ち主について考えを巡らせると、後ろを振り向いたネスティの

「ラウル師範!?こんな夜更けにどうしたのですか?」

要件を聞く声を聴きながら、目線を蒼白く光る月へと目を向ける。

「なに、派閥の仕事がながびいての。ついさきほど終わったのじゃよ。それよりこんなところでどうした?」

「それが、マグナがここから動こうとしないんです。体調も悪そうなので部屋に運びたいのですが……」

そう言われてネスティの陰に隠れて見えなかった自分が見えたのであろう。こちらへ近づきながら視線を向ける気配がする。

「ふむ、マグナどうしたのじゃ?ここは寒いぞ?早く寝室へ戻りなさい」

そう諭すように言われるが、無視するように月を見ていることに怒り口調でネスティが注意してくる。

「マグナ!師範を無視するんじゃない!時間をとらせてすいませんでした、師範。すぐに部屋に運びます。」

そういって抱え込もうとする手に対し身をよじって、抵抗の意を示す。

「マグナ!いい加減に「よい、ネスや。離してやりなさい」師範……」

そうしていると師範が横から口を出してくる。そのおかげでネスティは渋々ながら離してくれた。

「さて、マグナや。どうしてここにいたいのか教えてくれんか?」

此方と目線を合わせ、いつもの穏やかな口調で聞いてくる。その穏やかさに自然と口が開いていた。

「どこにいても月の光は同じなんだと思っていました。」

そう返すと、こちらの言いたいことを察したのか、師範が眉を寄せる。

「マグナや。分かっておるだろうが、お主は【蒼の派閥】におるにはそれ相応の理由がある。そのことは分かっておるじゃろう?」

いつもより少し厳しい口調で諭された。

わかっている。ここにいるのは自分が悪いから。みんながいないのも自分のせい。本当なら罰せられても仕方なかったのにこうして生活できるのは、自分に才能があったから。周りがオレのことを悪く言うのも仕方ない。そして――――

「わかっています……」そう口から出た言葉疲れ切っていた。

「マグ「わかっているんです。全部俺が悪いんです。あの日綺麗だと思って落ちていた石を拾ったことも。その石からでた化け物が町を壊し、人を傷つけたことも。俺がここにいるのは、また、ああいったことがないようにするためだということも」

こちらを気遣うように読んだ師範の言葉を無視して、自分の中で貯めこんでいた感情を言葉にする。

ああ、そうだ。全部俺が悪い。街を壊したのも、人が傷ついたのも、派閥で悪く言われるのも、師範たちの重りになっているのも。それでも―――!

「それでも!妹は!トリスは何も悪くなかった!悪いのは全部俺なのに!どうしてトリスが……!」

そこまで言って、息を荒くして顔を俯かせる。

トリス――おそらく、オレのただ一人の肉親。覚えている限り一番昔からオレの傍にいた一番大切な存在。いつも笑って励ましてくれた。寒い時は抱き合って眠った。食べ物がない時は分け合った。いつも一緒にいた。なのに―――

「オレが、オレがトリスを殺した!!一番大事だったのに!!オレはあいつの兄貴だったのに!オレだけがこうしてのうのうと暮らしてる!!」

悪いのはオレだけなのに。トリスは悪くないのに―――

「……マグナや。お主の心のうちは分かった。じゃから、今日は休みなさい」

オレの叫びを聞いてしばらく経ったころ、師範はそう声をかけてきた。

「お主の妹はいまだ捜索中じゃ。もし見つかったらお主にも知らせる。それに、起きてしまったことは、元には戻らん。過去のことを気にするなとは言わん。じゃが、過去にとらわれてはいかん。お主はまだ生きておるのじゃから」

そこまで聞くと、唐突に眠気が襲ってきた。ついさっきまで眠くはなかったのに…

「おやすみ、マグナ。せめて、良い夢を」

師範の祈るような声を最後に意識が絶えた。ああ、でも確かに夢の中ではトリスと居たいなぁ……

 

 

 

 

「師範……」

ネスティの心配するような声を聴きながらラウルはマグナを抱える。その横では【召喚】されていたポワソが【送還】されていた。

マグナが急に眠くなってきたのはラウルが【召喚】したポワソの〈ドリームスモッグ〉によるものであった。

マグナを優しく抱き上げたラウルはそのまま、寝室へと足を運んだ。

「師範!マグナなら僕が……」

「いや、わしが運ぼう。」

ネスティの言葉に首を横に振りながら否定の言葉をだし、歩き出す。その横をネスティが並んで歩いていく。

「師範。聞いてもいいですか」しばらく迷ったようにしていたネスティがそう声をかけてきた。

「なんじゃ?言ってもなさい」

そう返すと、意を決したように目線をラウルに向け、口ごもりながら聞いてくる。

「本当に、その、マグナの妹は探されているんですか?」

そう尋ねられて、マグナの顔は歪み、首を横に振った。

「妹がいると聞かされた時は確かに捜索隊を出していた。【召喚術】の才能は血筋に大きく影響を受けるからの。しかし」

そこまで言って、マグナが眠っているのかチラリと目を落とす

「マグナが言っていたトリスは発見されなかった。復興が進んでもそれらしき死体は出てこなかった。例え【召喚術】に巻き込まれていなかったとしても、あの雪降る土地を一人で生きるのは不可能じゃ。ゆえに、一か月前に捜索は打ち切られた」

「そんな…」

そう言われて、ネスティはラウルに抱かれているマグナへと目を向ける。

つい先ほどの慟哭からもマグナがトリスを大事に思っていることわかる。そして、自分がトリスを傷つけたことも

「どうにかならないんですか?このままではマグナが……」

ラウルへと訴えるように言ってもその顔は渋い

「残念じゃが不可能じゃ。すでに捜索は打ち切られておる。いつまでも人員を割くことはできん」

そう言われてネスティは落ち込む。彼にはマグナへの、正確にはマグナの血筋への特別な思いがある。その相手が一人は死んでいるかもしれず、もう一人には何もできない。そのことは彼を苦しませるのに十分だった。

「じゃからの、ネス。お主がマグナをしっかり見てやってくれ」

だから師範からそう言われた時は思わず師範のほうへ顔を向けた。ネスティへ向けられる目は優しそうな色合いをたたえていた。

「わしは派閥の責務などがあるし、マグナとは年が離れている。今日みたいに帰りも遅い。お主は傍に入れる。立場も近いじゃろう」

「しかし、ぼくでは……」

自分の事情のこともあり、足踏みするネスティに、立ち止まり、しゃがみ込むことで目線を合わせたラウルが優しい顔で言葉を紡ぐ。

「ネスティ、わしはお主を息子のように思っている。そして、マグナのことも。息子たちには仲良くしてほしいと思う。大変じゃろうが、この年寄りのわがままを聞いてくれんかのう?」

そう言われて、顔を赤くし、横を向きながら小さな声で

「善処します……」

と返した。そのことに微笑みながらうなずき、腕の中のマグナへと目を向ける。

「マグナ、人はいつまでも不幸でいるわけじゃない。お主にも幸福になれる権利はあるのじゃよ。どうか、そのことを分かってほしい。」

そう言って、マグナを見るラウルと、覗き込むネスティ、寝ているトリスは親子のようであった。

 

 

 

悪魔

聖王国と召喚術によって破壊されたという大絶壁を隔てて崖の上に建てられた雪深い都市、崖上都市デグレア。旧王国最大の軍事力を有するこの年には近年ある男が軍事顧問召喚師として引き立てられていた。男の名はレイム。少し、衣服のセンスがぶっ飛んでいる男であるがその実態は霊界サプレスにおいて魔王と称されるほどの存在である。

そんな彼は与えられた一室で、手に楽器をもち、調整を進めていた。楽器を弄りながら時折確認するように演奏する姿はまるで吟遊詩人のようであった。

しばらく作業に没頭していると、扉をノックする音に顔を上げた

「はい?開いていますよ?」許可を出すと「失礼します」その声とともに顔色の悪い襟が立ちすぎている独特な服装の男が入ってきた。男の名はキュラー。レイムの部下の一人であり、その正体はとある技術により、召喚術を操ることができる悪魔である。

「お忙しいところ、申し訳ありません。例のことでご報告したいことが……」

頭を下げながら来訪の理由を告げるキュラーに、手に持っていた楽器を机に置きレイムは向き直す。

「構いませよ。所詮暇つぶしの一環ですから。それで……?」

そう言うレイムに頭を上げ、手に持っていた報告書をキュラーが読み上げる。

「ハッ、以前レイム様が感じたという例の一族の魔力でしたが、あれは召喚術の暴走によるものだったそうです。召喚術を暴走させたものの名はマグナ。こいつはその後【蒼の派閥】に連れていかれたそうです。」

そこまで報告すると顔をあげ、レイムの顔色を見る。

レイムの顔は喜色に満ち溢れていた。

「生き残っていたんですね、【調律者】の末裔が……。フフ、何という偶然でしょうか?私たちが封印から解かれ力を貯めているときに、末裔が表舞台に立つとは……!」

そう言って嗤うレイムからは友好的な色が読み取ることはできない。

なぜなら彼は【調律者】――クレスメントによって封印された過去があるからだ。それも、その前には目をかけてやっていたのにも関わらず。

彼がどう復讐してやろうかと考え込んでいると、キュラーが何か言いたそうにしていることに気づく。

「ふむ、どうしたのですか、キュラー?報告はもう終わったのでは?」

そう言われて口ごもりながらキュラーはまだ報告していなかったことを告げる。

「それが、クレスメントの小僧が言うには妹がいるらしいのです」

「ほう、妹が?しかしらしい、とはあやふやな。どういうことですか?」

報告されていなかったことに興味を抱き、追及するとキュラーは報告書をめくりながら読み上げる

「妹の名前はトリス。同じ髪色の子供で、男のほうが召喚術を暴走させて以来、姿を見たものがいないのです。【蒼の派閥】でもすでに死んだものとして捜索をやめています」

「死んだのならそう言えばいいではないですか。何か気になることがあるのですか?

キュラーに不思議そうに聞くと、自信がなさそうにしながら続きを告げる。

「それが、事故の後男のほうを聞きこむものが町を訪れたそうです。そいつは妹の方を聞くとまだ整理されていなかった地区へ赴いたようです。」

そこまで聞いて、レイムはしばし考え込み、キュラーに尋ねる

「なるほど、そいつがもしかしたら妹の方を連れて行ったかもしれない、と言いたいのですね?」

「ハッ、その通りです。」

レイムからの考えをきいて、同意するようにうなずく

「それで、そのものの特徴は?クレスメントと知ってか知らずかは知りませんが、復讐のために犠牲になってもらいましょう」

そう言われて、キュラーが困り顔になる。

「申し訳ありません。レイム様。その者の特徴は分からないのです。」

そう言われて、方眉をあげ、続きを促す。

「そいつと話した人間は多かったようですが誰一人特徴を覚えている者がいなかったのです。まるで化かされたように。」

そう申し訳なそうに報告するキュラーから目を離し、レイムは考え込む。

(何らかの術によるもの?しかし、そんな【召喚術】ありましたかねぇ)

その身に取り込んだ【召喚術】の知識から該当しそうなものをいくつか引き上げる。しかし、それらはそこそこ高位の【召喚術】であり、暴走させた男の方ならともかく、妹のためにする必要が……?

そこまで考えて、ふと頭に昔のことがよぎった。

彼女がまだ自分の隣にいた時、いつのまにか彼女の隣にあったあの器物を。

物でありながら魂を保持し、良く争っていたあの生きる図書館と言っていい存在を

(まさか…、あなたなのですか、ゼクト……?)

「どうなさいました、レイム様?」

心配するような声になんでもない。と言おうと思ったその時、

「っっっっ!!!」

その言葉は彼の口から出ることはなかった。窓の方を振り返り、聖王国のほうを睨みつける。

いま、感じ取った魔力は懐かしいものであった。昔、隣にいた彼女から感じ取ったような……

「キュラー、しばらく私は出かけます。その間のことをよろしくお願いしますね」

キュラーいきなり窓の方へ顔を向けた上司から言われたことに、すぐに頭をさげ、「行ってらっしゃいませ」とだけ告げた。

その様子を確認もせず、レイムは机から必要なものを取り出し、早足に部屋を出ていく。

「あのガラクタ。もしや彼女を……?」

自分の考えを口に出しながら歩いていく。

もし、自分の考えが正しければあのガラクタの所には……!

抑えきれない興奮がその足は速くなっていく。その可能性を思い描いて、レイムの顔は喜一色に染まっていた。

「待っていてくださいね、愛しき子よ……!」

もはや歩いてもいられないのか、全力で走っていった。

 

 

この日、軍事顧問召喚師が色気あふれる顔で走っていったのがあちこちで目撃された。

 

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