召喚術の世界に憑依したけれども、魔法を使っていく   作:クーネル・アソーブ

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お待たせしました。難産でした。今回は例のあの人がでてきます。
主人公の隠された事情って王道ですよね


4話

初めて攻撃魔法を使ってその結果、周りに大きな被害を出してから三カ月がたった。

最初のあれ以来、攻撃に転用できそうな魔法は使わせてもらえてない。使わせてもらっても回復魔法や防御魔法、生活に使える基本的な魔法ばかりであった。

「どうしてあんな結果が起こったのかわからんうちは、攻撃魔法を教えるわけにはいかんのう。」

とは師匠の談だ。まぁ、それは仕方ないとおもう。私だって別に周りに被害を与えたいとは思わないのだから。

あの事故?から私は様々な検査を受けることとなった。単純な身体検査から魔力に関する検査、心理的な検査と多岐にわたった。

ただ、受ける検査には似たようなことも多く、そのことについて質問すると

「少し気になることがあっての」

と躱されてしまい、すこしもやもやしていた。

だからだろう、師匠から「話がある」と言われてついて行ったとき、そのことについて答えてもらえると思った。しかし―――――

「……………………………」

「……………………………」

呼ばれて部屋に入った時から師匠は重い空気を纏っていた。そのせいで私もうかつに口を開くことができず、罪人のように首を垂れている。というか、お腹がだんだん痛くなってきた。部屋に戻って寝ていいですか?

「………トリスよ」

「ハイっ!?」

唐突に名前を呼ばれて思はず素っ頓狂な声を出して首を上げると、何かが飛んできた。慌てながらそれを手につかむとそれは紫色の宝石がつけられた金で作られた禍々しい置物だった。その置物を観察していると師匠から声がかけられる。

「トリスよ。その置物に魔力をこめなさい」

「は、はい?魔力を込めればいいんですね?」

言われたことに確認を取ると首肯されたので、魔力を置物に込め始める。

魔力を込められた置物は私が込める魔力に比例してか、輝きが強くなる。それとともに置物からは音が聞こえてきた。何かと思い、耳をそばだてると中から親しげに私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。

「師匠、これなんですか?なにか声が聞こえるんですけど?」

尋ねながら師匠を見ると師匠は目をつぶって考え込んでいた。こういう時は黙っていればそのうち答えてくれると経験からわかっていたので私も黙り込む。

しばらくして、師匠は重々しく口を開いた。

「トリスよ、今渡したアイテムは使用者の死んだ親族と会話できるという触れ込みの物じゃ。もっとも、実際はただそれっぽい声をまねるだけのアイテムじゃがな」

いつも通りこちらの質問に答えてもらったがまだ、疑問がある。

「師匠、どうして私にこのアイテムを使わせたんですか?」

そう聞くとつぶっていた目を開きこちらを見据えてきた。なぜだろう、なぜかザワザワする。

「トリスよ。そのアイテムは、ある特定の種族しか使うことができないんじゃ」

「ある特定の種族………?」

私はただ聞き返すしかできない。なぜか胸のザワザワは強まってくる。そんな私をよそに師匠は話を続ける。

「うむ、その種族というなは」

一泊空き、答えを師匠は口に出した。

「悪魔じゃよ」

その言葉とともに、爆発音が門の方から響いてきた。

 

◇◇◇

 

森の中を一人の男が歩いていた。男の恰好は深い森を歩くのに適しているとは言えなかった。旅道具もなく、手には楽器を抱え、時折かき鳴らしながら進んでいく。

男の足取りは目的がはっきりしているのか留まることはない。

やがて、男は森のある部分で足をとめた。男の前には後ろと同様に森が広がっているだけである。しかし、男には何かが見えているのか壁につくように片手を前にかざした。

「さぁ、愛しい子よ。私のただ一人の契約者よ。迎えに来ましたよ?」

次の瞬間、男の手からは莫大な魔力が黒い光となって目の前の隠された結界を貫いた。

 

 

◆◆◆

 

「キャッ!!?」

自分で起こした数か月前の衝撃には劣るだろうが、それでも大きい衝撃が館を揺らした。その揺れにたまらず床に座り込む私に比べて、師匠は空中に浮かび、門のほうを睨んでいる。私も浮かせてほしい……。

「まさか、アヤツが来たのか…?」

師匠は座り込む私に目もくれず、部屋から文字通り飛んで行った。って

「師匠!どこへ行くんですか!?」

突然の状況の変化について行けず、ただそう聞くしかなかった私にを放っておいて師匠は行ってしまった。ああ、もう!

「待ってくださいよ、師匠!私も行きます!」

揺れが収まり、立ち直った私は師匠を追うために走り出した。

向かう先は門!

 

 

 

私ができる限りの速さで門に向かった。廊下を走り、窓を跳び超え、呼び止めようとしたシルキーを振り切り、門についたとき、師匠と一人の男が向かい合っていた。

二人の間では何かされているのだろうか、バシッ、という音とともに空気がはじけている。おそらくは魔力同士のぶつかり合いだろう。

二人の表情は相対的だ。

師匠は何時もよりも無機質に近い無表情だ。ただ、その内側は怒っているのだろう。

男の方は笑顔のようである。人のよさそうな笑顔と評価できそうなのになぜか寒いものを感じる。

いざ駆け付けたというものの二人の放つ空気に飲まれ、何もすることができず、ただ隠れて見ていた。向かい合う二人と、その二人を隠れて見る私という構図から時間が立ち、師匠が口を開き、今までにないほどの平坦な声で男に質問した。怖い。

「こんなところに何の用じゃ?ワシに何か用でもあったのか?」

そう尋ねられた方もその笑みを深いものとしながら返答する。そういえば、本来笑顔というものは威嚇の意味があったっけ……。

「あなたのような道具になど、要はありませんよ。ここには別の用事できました」

「別のようじゃと?」

手に抱える楽器をかき鳴らしてきれいな音を出しながら男は答える。

「えぇ、私の愛しい子に用事があったのですよ」

そう答えられて、師匠は驚いたように声を上げた。

「愛しい子じゃと!?まさか、トリスは!」

いきなり私の名前を挙げられて驚いたが、それよりも男の様子に驚かされた。

男はつい先ほどの笑顔が作りものだとわかるやさしい笑顔を浮かべ熱にうなされるようにしゃべりだした。

「あぁ、あの子の名前はトリスというのですね!どんな子でしょうか、私はもう我慢できません。早く案内しなさいこの古本が」

師匠は青筋を無表情に浮かべ反論する

「案内しろじゃと?ふざける出ないぞこの粘着質変態悪魔が。お主にわしの弟子を渡すはずがなかろう。とっととサプレスに帰って、お山の大将でもしておれ」

そのもの言いに、同じように青筋を浮かべながら男が答える。

「フフ、あなたの弟子ですって?あの子は私が何百年前から思い続けているのです!ポッと出の貴様のような骨董品ごときに預けられますか!私が連れて帰ります!」

「なんじゃと貴様……」

「何ですかやりますか?」

二人の間でぶつかる魔力は相変わらずだけど、言い合っている内容を聞いてなぜだか、気が抜けてしまった。どうやら私に用があるようなので出て行った方がいいのだろうか?

そんな風に悩んでいると、魔力が飛んできて私が隠れていた茂みにぶつかり、驚いて出てしまった。

「うわっ、危ないな……」

まったく、当たったら怪我しそうな威力だ。これでただの魔力の放出だから恐れ入る。

「トリス?なぜここにいる?」

驚いた声で師匠が訪ねてくる。師匠のほうを向いて弁解しようとしたら、男の人がこちらをみて微笑んでいるのがみえ、黙り込んでしまった。

男は銀色の髪に、独特な服を着ている。顔は中性的な綺麗な顔であるって、どこかで見たような……?

「ようやく、会えましたね?愛しい子よ」

どこかで見たことがあるその顔を思い出そうとしていると、男は魔力の放出をやめ、こちらに手を広げ歩いてくる。私が飛び込むことでも期待しているのだろうか?

「さぁ、私の胸に飛びこ「隙ありじゃ」んでっ!?」

無防備にこちらにあるいてくる男の後頭部に師匠のかかと落としが直撃。あわれ、男は倒れこんでしまった。って、

「師匠!?後頭部にかかと落としはまずいですよ!」

そんな注意する私をよそに師匠はつま先で男をつついて意識の有無を確認している。えげつねぇ。

「ふん、この程度でこやつが死ぬものか。放っておけ」

それだけ言って、師匠は館に戻っていく、って

「師匠、この人放っておいていいんですか?」

「かまわん、そのうち起きるじゃろう。」

おそらく害はないじゃろうしな、と質問にそっけなく返して師匠は先に館に戻っていく。チラリと男を見るとピクピク痙攣をおこしている。仕方ない……

「”治癒”。これで、よし」

“治癒”を掛けて痙攣が収まったのを確認して館にむかう。これぐらいならね。

 

 

 

 

 

食堂では師匠がコーヒーを飲んでいた。ただ、そのペースは何時もよりも早く、やけ酒のようであった。

「もどったか。トリスよ」

コーヒーカップをおきながら此方へと視線を向けてくる。

「師匠、あの男の人は誰ですか?」

部屋に入ってすぐの質問に顔をしかめながら師匠は答えてくれた。曰く、サプレスの大悪魔。曰く、人間を使って遊ぶのが好き。曰く、結界がリィンバウムに張られる一因。曰く、昔ある人間と契約した内容を未だ保持している粘着質変態。

「じゃあ、師匠。どうしてあの人は私に対してあんな好意的だったんですか?」

次々出てくる、曰くが途切れた時の質問で師匠の顔は険しくなる。

「おそらくじゃが、お主の魂に理由があるのじゃろう」

「魂ですか?」

そう返すとどこからともなく声が聞こえてくる。

「ええ、そうですよトリス。あなたは私が長年探し続けた愛しい子なんですから」

そう言いながら、男は食堂の入り口から入ってくる。

男の方を向いている私の後ろから物が男に飛んでいく。師匠が投げたのだろう。

「危ないですねぇ、フィリウス。トリスに当たったらどうするんですか?」

男は軽々とカップをキャッチしながら文句を師匠に伝える。

というか、なんで私はこんなに好感度が高いの?

「ふん、外すわけがなかろう。それよりも、何の用じゃ。トリスは一目見たのであろう?それならさっさと帰れ」

喧嘩腰で言われることに反応せず、男は私に近づいていきなり抱き着いてきた。って、えぇ!

「あ。あの。何していらっしゃるんでしょうか?」

思わず丁寧口調で返すも反応がない。というか、微妙に体が震えているのが感じられる。

「すみません、今のあなたにはわからないかもしれませんが、もう少しこのままでいさせてください」

男から懇願された内容に仕方ないと思い、こちらも手を回し抱きしめてやる。まったく、

「仕方ないですね、少しだけですよ」

手を回されたことに一瞬男の体が強張ったが、すぐに優しく抱き着いてきた。まるで、迷子の子供がようやく親を見つけたような様子に私は拒絶することはできなかったのだ。

なお、後ろの方では師匠は冷たい目線をだらしない顔つきの男に注いでいたことにまた市は気づかなかった。

 

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